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第71話

お気に入り登録が500件を超えて、大変喜んでいます。

引き続き、この駄作の応援よろしくお願いします。

愛紗と別れた涼月こと張任は、益州・白帝城にいる桔梗を訪ねていた。


「久しぶりだな涼月、元気していたか?」


「ええ、貴女はどうなの?」


「儂は、好きなように遣らせて貰っているよ」


涼月は、じっくりと桔梗の顔を見ると以前劉璋と喧嘩していた時の様な不機嫌が服を着ていたような顔ではなく、生き生きとした表情をしていた。


「どうした、儂の顔に何か付いているのか?」


「いいえ、貴女がそんな気分がいい顔をしているのを見るのは、戦以外で見るのが久しぶりで」


「言ってくれるわ。まあ儂の上にいる璃々…北郷璃々が、色々とやっているからのう。ただ仕事中に酒を飲むなと五月蝿いがな…」


「まあ、相変わらずね」


「お主も旅に出て、以前と違って生き生きしているから安心したぞ」


お互いしばらく雑談していると


「それで桔梗、悪いのだけど、お願いあるのだけど聞いて貰えるかしら…」


涼月の表情が真剣な顔つきになったのを見て、桔梗も


「儂に出来ることなら、いくらでも協力するが、一体何を頼むのじゃ?」


「…ええ、実は璃々さんにお願い事があって、会わせて欲しいのよ」


そして涼月は桔梗に、以前に一刀や紫苑、璃々と出会ったことを説明した。


「ふむ。会うことには問題ないが、お主…何を考えている?」


「詳しいことは璃々さんと会ってからお話しするけど、今、私の口から言えることは、ある人を助けて欲しいのよ」


桔梗は元々真面目な性格をしている涼月を信用していた、そして璃々と会っても問題ないと判断し


「分かった。明日にでも璃々に会わせるようにする」


桔梗がそう約束すると、璃々は桔梗からの話を聞くと早速に、明朝に会談することとなった。


そして翌朝


「お久しぶりです、涼月さん」


「本当、お久しぶりですわ、璃々さん。あの時はお世話になり、またこうしてあつかましくお願いに上がり申し訳ありません」


「別にいいですよ。それで桔梗さんから聞いたのですが、ある人を助けたいということをお聞きしましたが…、どういうことですか?」


「実は…」


涼月は、璃々に愛紗を助けるために愛紗を保護して欲しいと申し出たのであった。


涼月は、本来なら愛紗を助けるためには、荊州に兵を進めて欲しいところだが、流石にそれをすると呉との全面戦争を引き起こす恐れがあるため、益州で匿って欲しいことを申し出たのであった。


「張任殿、貴女が関羽を助けたいという話は分かったが、しかしあの脳き…失礼、関羽を助ける価値があるとお思いか?」


「そうです。簡単に言いますが一つ間違えば、我々と呉との戦になるっす。そんな危ない話に簡単に乗れないっす」


以前愛紗と刃を交えたことのある星は、愛紗に対して辛辣な言葉を言い、また菫こと姜維も軍師の立場から愛紗の保護に反対の立場を述べ、桔梗はどちらの言い分も分かるため、無言という形で中立の立場を取っていた。


「確かに皆さんのおっしゃられることは分かりますわ。でもね…関羽さんは、本来文武両道に優れた方だと思うの。ただ今、せっかくの才能が、元の主君である劉備殿の目を覚ますという考えに固執してしまって、全てにおいてそれが悪い方に出ているのよ。もしそれが上手く取り払われたら、きっとこの国を代表する将になると思うわ。それに関羽さんを見ていたら、以前の自分と重なるのよ…」


涼月は悲痛な表情をしていた愛紗を見て、まるで死を急ぐ過去の自分を見ているみたいであった。自分が留まって愛紗に協力することも考えたが、しかし敗戦濃厚の戦いで、自分一人が加わっても勝ち目は薄い。愛紗には何とか生きて貰い、自分のように新たな気持ちで再起する機会を与えてやりたかったのであった。


涼月からその話を聞いて、璃々も協力したい気持ちはあったが、しかし簡単に返事できる話では無かった。


「涼月さん、流石に事が重大で、私一存で決めるのは難しい話です。私からご主人様に手紙を差し出しますので、一度長安に行って貰えますか」


「ちょっと待って下さい。すでに呉は南郡に向け、軍勢を動かす準備をしています。私が長安に行っている間に関羽さんの籠る古城を囲まれてしまえば、助けることは取り返しの困難になります」


「涼月さん、今、愛紗さんが籠っている古城と言いましたが、その古城はどこですか?」


璃々は、荊州で愛紗が籠る古城と聞いて、ある事が頭の中に出て来てしまい、動揺からか愛紗の真名を呼んでしまっていた。そして涼月の口から出た言葉は


「確か…南郡の北にある…」






麦城ばくじょうというところよ…」






璃々はその言葉を聞いて大変驚いた。経緯はともあれ、現在の愛紗が置かれている状況と正史における関羽の末路の状況が似ており、そして今回は、他からの援軍の当てが無いため、正史の状況よりも事態は深刻であった。


そしてしばらく考えると、璃々は漸く結論を出した。


「私が…関羽さんを助けに行きます」


「ちょっと待て璃々。そんな危険なところ、お主をやる訳には行かん。行くなら代わりに私が行く」


「星お姉ちゃんは、この間の戦いで関羽さんを叩きのめしているでしょう。そんな状況で行っても説得に応じて貰えると思えないよ」


璃々の発言に星は待ったをかけたが、しかし今、この場でいる将で愛紗を助けに行くのに一番良いのは、唯一面識があり、真名を交換している璃々だけであった。


「それに呉と戦をする訳ではないし、まずは保護を優先したいから、兵も弓騎兵500騎だけしか連れて行かないつもりだよ」


「それは些か少なすぎるのではないか?璃々、悪い事は言わんもう少し兵を連れて行け」


「ちょっと待って下さい!何、桔梗さんは勝手に行く方向で話を進めているのですか!璃々お姉様、私は反対ですよ!」


桔梗が愛紗保護に賛成の姿勢を示したが、菫は納得していなかった。


反対する菫を見て、璃々はある言葉を発した


「義を見て為さざるは勇なき也」


これは一刀が月を助ける時に皆を説得した際に使った言葉で、璃々は敢えてこの言葉を使った。


「涼月さんは、私たちを頼ってここに来たのだと思う。私は最初、ここの責任者として皆をできるだけ危険な事を巻き込みたくないし、そして話が大きすぎてこの話を断ろうと思っていた。関羽さんが麦城にいることを聞いて……そして……お互いに真名を預けあった関羽さんが若しかしたら命を落とす危険な状態になっているのに、これを見捨てるなんて、私できないよ…」


「ちょっと待って下さい、璃々さん。命を落とすかもしれないとどういうことなの?まるで貴女何か知っているみたいな言い方よ」


そして璃々は涼月の疑問について皆には差支えのない範囲である程度説明したが、星は予測が付いていたが、涼月は以前紫苑と黄忠の件で別の世界があるということを知っていたので、簡単に別の世界でこういうことがあったという説明をすると納得したのであった。


桔梗や菫は実感が湧いていない様子であったが、桔梗については以前、両紫苑を見ていたので、あの驚きと比べ今回はあまり驚いている様子は無かった。


「ふむ…璃々の言うことは分かったが、流石にこのような事、お主一人でさせる訳には行かぬ。お主が何と言おうとも、私は付いて行くぞ」


星がそう言うと、璃々は星の性格上、決して引くことを良しとしないと分かっていたので


「はぁ…分かりました。桔梗さんと菫はここの留守をお願いします。そしてご主人様のところに急使を出して、後は…涼月さんも私たちと一緒に来ていただきますか?」


「勿論、一緒に行かせて貰うわ」


涼月はこれを承諾、翌朝には璃々たちは、弓騎兵500を引き連れ、麦城に向け出発したのであった。


一方、長安にいるに一刀は璃々が白帝城を出発してから2日後に璃々が今回の件についての詳細を記した手紙を受け取ったが、


「これは拙いかも…」


「そうですわね…」


その手紙を受け取った一刀や紫苑の表情は冴えなかった。


幾ら戦を避けるためとは言え、璃々の行動は結果的には荊州の争いに加わることなり、下手をすれば呉だけではなく、これに乗じて漢も加わり、蜀対漢呉同盟との全面戦争を覚悟する必要に迫られた。


しかし一刀や紫苑は、璃々の行為について攻める気持ちは無かった。真名を交した愛紗が命の危険に晒されている状態であれば、一刀も同じような行動を取ったかもしれない。


「取り敢えず紫苑、璃々の処置は後だ。璃々も罰を覚悟の上での行動したことを認めているんだ。それに呉が南郡に入り込むのは時間の問題だから、まずは今後について皆と話し合おう」


璃々の心情は分かるが、流石に君主や紫苑の立場から言えば、璃々の行動を褒める訳にも行かず、後日何らかの罰が必要だと一刀や紫苑は考えるのであった。


こうして会議が開かれたが、皆一様に渋い表情をしていたが、そんな中真里が


「璃々が行ってしまったのは仕方がないじゃない。皆だって同じ立場になれば璃々と同じ行動を取ったかもしれないんだし。それにここで悩んで始まらないからさ。まずは最悪の事を想定して考えた方がいいんじゃない?」


翠が怪訝そうな顔をして


「最悪の事って何だよ?」


「それは呉と漢との戦に決まっているでしょう」


「呉との戦いは分かるけどさ。どうして漢も戦いに入っているの?」


「恐らく漢は単独では我々と戦うのを不利だと見て、呉との同盟を模索し、恐らく同盟が成立したと見た方が良いでしょう。恐らく雛里ちゃんなら、それくらい位の事は仕掛けてくるでしょう…」

蒲公英の質問に朱里は、そう言って答えた。


「でも呉と戦うにしてもここや益州で兵を集めて荊州に向けるにしても時間が無いわ。それに白帝城にいる3万の兵だけでは呉と戦うのは無理があるわよ」


詠がそう発言すると、


「申し上げます!只今函谷関から急使が来ました!」


函谷関にいる霞からの急使がやって来た。


その急使が届けた内容は、漢の軍勢2万が洛陽から荊州方面に南下した知らせであった。


「これどう見る?」


「恐らく呉との約定もあるでしょうが、もう一つの理由は、荊州の安定化を図るためとそして呉を牽制するためでしょう。事実荊州は呉が江夏郡だけではなく南郡も手中にしようとしています。そしてこれ以上呉の勢力を荊州に広めないために兵を出したと思います」


一刀の疑問に朱里がそう答えると一刀は


「なあ翠…、翠の隊で翠の本気の動きに一緒に付いて行ける騎兵ってどれ位いる?」


「そうだな…私の全力に付いて行ける兵なら2千くらいかな。でもどうしてそんなこと聞くんだよ?ご主人様」


翠は一刀の質問に疑問を感じながらそう答えると、一刀は少し考え込んでから、何かを決意した様に顔を上げた。それを横で見ていた紫苑が


「まさか…ご主人様、それは止めて下さい!」


「まだ俺、何も言ってないけど?」


「ご主人様の事は分かっていますわ。璃々や愛紗ちゃんを助けに自分が荊州に行くとか言うつもりでしょう」


「うっ」


「ご主人様、何、考えているのでしゅか!?」


「一刀さん、自重して下さい。貴方は王として配下として治める、此方の総大将なのですよ!」


「そんな危険な事、却下に決まっているでしょう!」


一刀が発言しようとしたことを先に紫苑に言われてしまい、そして朱里や真里、詠の見事な追い打ちで一刀の発言を封じてしまった。


「どうしてご主人様は、そんな無茶を言うのですか…」


紫苑が呆れかえった表情で一刀を見ると、一刀は


「今回は戦いに行く訳じゃないし、前にも言ったけど、璃々が自ら危険を顧みず、前線で戦っているんだ。それを良しとして後ろから見ている父親というか…夫というか…何処にいるんだよ」


「璃々羨ましいわ…」


一刀がそう言うと紫苑は小声で無意識にそう呟いていた。その心情は母親としては嬉しくもあり、女としては嫉妬の部分もあった。


「それに劉備や関羽たちがあのようなことになった原因の一つに、俺の不用意な言葉があったかもしれないんだ」


「しかし、このような状況でご主人様を行かせる訳には行きませんので、ですので代わりに私が…」


「それは却下」


紫苑が一刀に代わって、自分が荊州に行くことを提案しようとしたが、これは一刀が普段と違う強い口調で却下した。


一刀は「演義」において黄忠が対呉戦における夷陵の戦いにおいて負傷し、その傷が元で亡くなっているため、一刀は紫苑に呉における戦いにおいては、後方に控えて貰おうとしたが、紫苑はこれを知ってか


「ご主人様、私の事は思っていただけるのは大変嬉しいですが、今の私は黄漢升ではなく北郷紫苑です。そのような心配ご無用ですわ」


紫苑は心配無用とばかりに優雅な笑みを浮かべていたが、それでも一刀は尚も食い下がり


「ちょっと待ってくれ、紫苑。そういうこと言っても俺が、はいそうですか引き下がる人間と思っているのか?俺は璃々の事も心配だけど、紫苑の事も心配なんだ。それに俺の勘だけど、愛…関羽を助けるには、他の誰か行くより俺が行った方がいいと思うんだ。だから皆が何言おうとも、俺は出陣するよ」


紫苑は一刀の言葉を聞くと、紫苑も説得を諦め、達観した表情となり


「分かりましたわ、ご主人様。では行く条件として、翠ちゃんだけでなく私も傍に加えて下さい」


「はわわーー!紫苑さん、な、何言っているのですか!?」


紫苑は自分を連れて行くという条件で、一刀の出陣を認めたので、この発言には朱里も驚いたが、改めて紫苑が、こんなに俺のことを想ってくれるなんて、ほろりとくるな…と一刀は内心そう思っていた。


そして朱里には


「大丈夫だよ、朱里。俺はそんなところで死ぬ気は無いよ。大好きな人を残して死ぬようなことは絶対にしないからさ」


一刀の言葉を聞いた朱里は、目は涙で潤んでいたが、顔を上げて一刀の顔をしっかりと見つめながら


「本当ですか…」


「ああ本当だよ…」


二人は瞳を閉じて、お互い唇を重ねようと…


「……一刀さん、朱里、二人ともせめてそういうことは人目に付かないところでお願いできないかな…」


突然の真里の声に二人は普段以上の動きを見せ素早く離れた。


周りを見ると、顔を赤らめたり、呆れ返っていたり、面白そうに笑っていたりと様々な反応をしており、そして黄忠や翠、蒲公英、月が


「あらあら、お二人さん熱いわね♪」


「こここ…こんなところで何やってるんだよ!このエロエロ魔人が!」


「いいな~朱里」


「へう~~」


それぞれ好き勝手に感想を述べて、紫苑も


「フフフ…ご主人様、これくらい精神的余裕があれば大丈夫ね。これなら無事に帰ってこれそうですわ」


そう言いながら紫苑は微笑んでいた。


そして軍議の結果、翠と紫苑の部隊からそれぞれ2千の騎兵部隊(紫苑の部隊は弓騎隊)を出すこととなり、一刀たちは翌朝には長安を出発し、一路荊州に向ったのであった。




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