第70話
ユニークが10万に到達し、大変嬉しく思っています。
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漢呉同盟が結ばれてから、桃香は愛紗の元に使者として鈴々を送った。
そして愛紗は桃香の手紙を一読して
「鈴々、…来て貰って悪いが、桃香様にこう伝えてくれ。ここには少ないと言えども私を慕ってくれる民や兵もいる。その民を見捨てて、私だけ逃げ出すわけにはいかぬとな」
「愛紗……お姉ちゃんとお互い意地を張って、死ぬ気なのか…?」
鈴々は愛紗の覚悟を聞いて、敢えて不吉な言葉を口にしたが、愛紗は
「鈴々、私はそんな積もりはないぞ」
愛紗は否定したが、鈴々はそんな愛紗を見て
「嘘だ!じゃあ何で愛紗はまるで覚悟を決めて、そんな透き通った顔をしているのだ!」
鈴々は野生の勘で普段と違う愛紗の表情を読み取っていたのであった。
「……そんな顔をしていたか、私は」
「そうなのだ。普段の愛紗の表情と全く違うのだ」
「そうか…では桃香様に更にこう伝えといてくれ。私は今も桃香様のやっていることは認める訳にはまいりません。主君の誤りを正すのは家臣の役目、死を賭けてでも桃香様の誤りを正しますと」
「愛紗……」
鈴々は愛紗の覚悟を聞いて、武人としてこれを止めるすべが無かったのであった。
そして愛紗は鈴々の記憶力に不安があったので、自ら筆を執り、先程の内容の言葉と別れの手紙を鈴々に手渡した。
鈴々は愛紗から手紙を受け取ると悲しそうな表情をしながら
「愛紗…三人で約束した誓いを覚えているのか…」
「ああ…忘れるはずがないだろう」
「「同年、同月、同日に生まれることを得ずとも」」
「「願わくば同年、同月、同日に死せんことを」」
愛紗と鈴々は、異口同音で桃香と三人で誓いあった言葉を口にしたのであった。
「分かっているのだったらいいのだ。愛紗、約束破ったら承知しないのだ」
「それは怖いな」
愛紗はそう口にしたが、しかし流石に「約束を破ったらどうするとは」言えず、そして鈴々も気配を察してか、それ以上の事は言わなかったのであった。
そして交渉の失敗は呉にも伝えられ、呉からも降伏して呉に仕えるようにと使者を送ったのだが、愛紗はこれを拒絶したのであった。
~建業~
呉は愛紗の降伏拒否の報を聞くと
「くっ…私たちが攻めればたやすく討ち取ることができるのに、降伏を拒否するとは…お姉様、こんな無礼者討ち取るべきです!」
烈火のごとく激怒している蓮華に対し、雪蓮は
「はいはい、落ち着きなさい蓮華。貴女が怒ってもしょうがないでしょう」
「それでだ雪蓮、今回の南郡攻略だが、どうする?」
冥琳から尋ねられると雪蓮は
「う~ん、今回、私が行くのは駄目?」
「どうしてだ雪蓮?」
「確かに蓮華が次の戦いの総大将にすると言っていたけど、何か嫌な予感がするのよね…」
「嫌な予感か…、確かに雪蓮の勘は並外れたところがあるからな。お前がそういうのであれば…」
「ちょっと待って下さい、お姉様!そんなお姉様の勘は確かに人よりいいのは分かっています。しかしそんな勘だけの理由で私を戦に出さないのは納得出来ません!」
蓮華が雪蓮の勘という理由で戦いの場から外されることは、真面目な蓮華が到底納得できるわけでは無かった。
それを見て冥琳も
「確かに…雪蓮の勘という理由だけで戦いから外されるのは納得できないか…」
「では蓮華様、今回の南郡攻略はお任せしますが、決して北郷…蜀を刺激しないようお願いします」
「蜀だと…、あのような天の御遣いとやら胡散臭い者が率いている国など、警戒する必要があるのか?」
「蓮華、貴女、蜀を甘く見ていたら、酷い目あうわよ。私や冥琳は北郷軍の戦いぶりを見ていたけど、君主の北郷一刀やその横にいる妻の北郷紫苑は少なくとも貴女より実力は上よ。特に北郷紫苑は私でも勝てるかどうか怪しいところだわ」
「珍しいな雪蓮がそんなことを言うなんて」
「接近戦だけだったら、まだ互角に戦う自信はあるわよ。でも向こうは更に弓も扱え、それも乱戦の中であの曹操軍の夏候惇の目を射貫いた実力は無視できないわよ」
「その割には嬉しそうな顔をしているぞ」
「まあ本来なら私が戦いたいところだけどね」
「蓮華様の気持ちは分からない訳ではないですが、まだ我々の力で蜀と一戦を交えるには時期尚早です。ですので、関羽がもし蜀に逃れた場合、決して無理な追撃はしないようお願いします」
「分かったわ。でももし蜀から攻めてきたら、その時は戦うわよ」
「その場合は仕方がないですが、穏や亜莎を付けていますので、その指示に従って下さい」
蓮華もそう言われると頷くしかなかった。
そして蓮華がその場から去ってから、雪蓮はまだ不服そうな顔をしていたが冥琳が
「雪蓮、お前が心配なのは分かるが、相手は関羽だけで、関羽が他と手を結んだという情報はない。安心しろ」
「そうだといいのだけどね…」
雪蓮の心配を余所に、呉は南郡攻略に向け準備を始めたのであった。
一方、洛陽では鈴々が持ち帰った愛紗からの手紙を見て桃香が、
「愛紗ちゃん…私が愛紗ちゃんをそこまで追い込んでしまったんだね…」
「しかし、呉との同盟もあります。直接南郡を攻める訳には行きませんが、少なくとも誠意を示すため、誰か国境近くに兵を展開する必要があります。誰を送りますか?」
雛里は軍師らしく冷静に桃香に助言したが、桃香は
「でもこんな事、誰も行きたくはないよね…」
「ええ…幾ら愛紗さんが軍を離れているとは言え、将は誰も行きたくないでしょう。できれば私も行きたくない位です」
「鈴々も行きたくないのだ…」
3人が嘆いていると兵が入ってきて
「龐統様!仕官したいと謁見を申し出ている者がいます!」
そして3人は一旦この話を打ち切り、仕官希望者と謁見したのであった。
~長安~
現在、城の調練場で一刀と黄忠の剣術の稽古が行われていた。
黄忠は以前に一刀と紫苑が剣術の訓練をしているのを見て、黄忠は接近戦での不安を無くすため自ら頼み込み一刀に剣術を教わり始めていたのであった。
元々、黄忠は剣をある程度は嗜んでいたが、一刀の指導も良くみるみる上達していたのであった。
そして二人が一通りの稽古を終えると傍で見ていた紫苑がやって来て
「漢升さん、ぜひ一度お相手していただきたいですわ」
「あらいいですわよ。ただ…普通に勝負と言っても面白くないので、何か賭けて勝負はいかがかしら?」
「そうね…では勝った方が今晩、ご主人様と夜を共にするというのは♪」
「ちょっ…」
一刀の制止を無視して、
「フフフ…面白いですわ。その勝負ぜひ受けさせて貰いますわ♪」
黄忠は喜んでこの勝負を受けたのであった。
二人は刃を交えるととても唯の稽古と思えないくらいの激しい打ち合いとなった。
普通であれば、黄忠の剣の腕自体はまだ紫苑に及ばないのであるが、黄忠は紫苑に勝てば一刀と夜を共にできるという欲望が実力以上の物が出ていたのであった。
流石に紫苑は、これに驚き
(「あらあら…、こちらの私もご主人様にぞっこんですわね♪」)
内心笑っていた、そして四半刻(約30分)以上稽古してもなかなか決着が付きそうでなかったので、紫苑は妥協案として一刀に聞こえないように小声で
「ねえ漢升さん、このままだとお互い決着つきそうでないわね。そこで提案がありますけど」
「あら乗ってもいいですわよ」
「まだ私、何も言っていませんわよ」
「紫苑さんの言おうすること分かっているつもりですわ♪」
「なら決まりですね」
「ええ決まりね」
お互い剣を引きそして一刀に勝負は引き分けに終えたことを伝え、紫苑と黄忠はお互い何か満足した表情を浮かべていたが、その笑顔の理由に一刀には何か背筋が凍るものを感じていたのであった。
そして晩、一刀の部屋では…
「あの~紫苑と黄忠さん、何で二人とも裸で俺の寝台で待っているのかな…」
何と風呂上がりの一刀を待っていたのは、生まれたままの姿で待っている紫苑と黄忠であった。流石の一刀もこれを見て驚きを通り越していた。
「あら私たちがいたらおかしいかしら♪」
「いいえ、間違いではありませんわよ」
「えっ、さっきの勝負は引き分けで決着がつかなかったんじゃ…」
「ええそうですわよ」
「ですので、今晩は二人一緒と言うことで話がつきましたわ♪」
黄忠があっさりと答える一刀から血の気が失われた。
そして紫苑が悪魔のような笑みを浮かべて
「さてご主人様、今宵はどちらの私が好みか存分に味わっていただきますわ…」
「そうですわね…、ご主人様。約束通り、閨では黄忠ではなく紫苑と呼んでもらいますわ…」
一刀が何か言おうする前に二人は一刀に襲い掛かったのであった…。
そして翌朝、紫苑と黄忠の肌が艶々になっており、
「フフフ…今日は清々しい朝ですわ」
「本当ね。何か10歳ほど若返ったみたいよ」
二人がそのような会話をしていると、それを見ていた翠が蒲公英に
「なあ、蒲公英…」
「お姉様、その先は言わないで!蒲公英まだ死にたくないもん!」
紫苑たちの後ろにいる一刀を見て、逆に10歳ほど年を取ったようだとは、誰も突っ込みを入れる勇気がある人物は居なかったのであった…。
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