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真・恋姫無双 〜新外史伝〜  作者: 殴って退場
第7章 蜀侵攻
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第64話

少々強引な愛し方ですが…

一刀たちが巴郡を占領してから1月後、一刀たちは益州・成都を占領していた。


一刀は巴郡占領後、劉璋に降伏の手紙を差し出したところ、劉璋は他からの援軍の見込みがないことや人心が自分から離れていることを分かり降伏を決意したのであった。


そして張任こと涼月に言っていた約束通り、一刀は劉璋の命を救い、そして本人の希望により成都郊外の村で隠居生活を送ることとなった。


こうして一刀は益州を治めることとなったのだが、しかし益州南部はまだ不穏な動きがあることから、軍を編成して鎮撫にあたることになった。一刀自身はこの鎮撫に同行するつもりであったが、しかしまだ人心が安定していない成都で構えて欲しいとの紫苑や朱里の説得を受け、一刀は成都で留守となった。


鎮撫に当るのが、紫苑、璃々、星、璃々の妹分である姜維こと菫、道案内で桔梗、一方成都に残るのが一刀、翠、蒲公英、黄忠、事務の引継ぎ中の朱里と夕霧という編成になったが、今回、紫苑と璃々が鎮撫に当るのは、2人は天の御遣いでもあり、一刀の代わりにその象徴になれるのは、この2人しか居なかったからである。


逆に成都に残ることになった一刀であるが、現在、一生懸命事務処理に当っていた。何せ劉璋時代の政策は無秩序状態に近く、劉璋自体は人間的に悪くは無かったのが、取り巻きの側近連中が悪政を働いていたため、そのため課題が山積み状態であった。

ただ一刀たちが成都入りしてからは、まずは治安面での改善が図られたことから、徐々にではあるが、好転し始めてきたのであった。


そしてそんな中、執務室で仕事に励んでいる一刀の元に


「ご~しゅじんさま~♪」


黄忠の娘である子供璃々がやって来た。こちらの璃々は成都占領後、遅れてやって来たが、最初紫苑と黄忠の2人を見た時は驚いていた、それで今のところ子供璃々にこのことを説明しても理解できないと判断した黄忠により、取り敢えず紫苑のことを黄忠の遠い親戚であったことを説明すると子供璃々は納得し、それからは紫苑のことを「紫苑お母さん」、璃々のことを「璃々お姉ちゃん」と呼んでいたが、子供璃々は自分と大人璃々の関係については今のところ、偶然名が一緒で遠い親戚であると思い、そして自分に新しい姉ができたと思い喜んでいた。


そして大人璃々が鎮撫で出て不在であったので、それ以降は、暇を持って余していた子供璃々がよく一刀のところに遊びに来ていたのであった。そして子供璃々が「ご主人様」と呼んでいたのは、黄忠が子供璃々と一刀との最初の挨拶時に黄忠が子供璃々に一刀の事を「ご主人様と呼ぶように」と仕込まれたため、子供璃々はそう呼んでいるのであるが、このことを当時横で聞いていた紫苑と大人璃々は「やっぱりそう呼ぶのね」と1人は微笑み、もう1人は呆れ返っていた。


一刀も因果は巡るのかと思っていたが、しかし子供璃々にそう呼ばれると、昔、大人璃々に幼い時にそう呼ばれていたことを懐かしく思い、そしてまたこれで呼ばれるのも悪くないかと思っていた。


「どうしたのかな、璃々ちゃん?」


「お母さんがね、もうお昼だから一緒にご飯を食べるから呼んできなさいって言っているの」


さっきの考えを顔に出さずに璃々の言葉を聞くと、一刀が窓の外を見ると太陽の位置が、いつの間にか高くなっており、一刀は集中していたあまりに時間の経過に気付いていなかった。


「じゃ璃々ちゃんは、昼食の誘いに来たの?」


「うん!」


にっこり笑う璃々を見て、一刀は


「わかった。お昼にしよっか」


「わーい。ねえねえ、早く町に行こうよ?」


「璃々ちゃん、急いだら危ないよ。……町に行く?えっ外で食べるの?」


「そうだよ?お母さんがこんな天気のいい日に城の食堂で食べるのはもったいないと言って外で食べようと言っているの」


「そうか…そうだなこんな天気のいい日だし、ここ2日くらい仕事が忙しかったから町に出てないから、一緒に行こうか」


「やったーー!早く行こう!」


子供璃々は駆け足をしながら、黄忠のところに案内した。


「ご~しゅじんさま~、おか~さん。はやくおいでよ~!」


そして案内され黄忠と合流した一刀であるが、子供璃々は一刀たちと一緒に出掛けるのが楽しみだったのか楽しげに街路を燥ぎまわっていた。


そんな子供璃々を見て一刀が


「璃々ちゃん、元気そうで良かったね」


「ええ、しばらく会っていなかったけど、子供は元気が何よりですわ」


一刀と黄忠はしばらく雑談していると


「でも璃々さんの小さい頃はどうでしたの?」


「そうだね…、今の璃々ちゃんみたいに可愛いらしい娘でしたよ。当時から俺のことを何故か気にいってくれて、親子で一緒に遊んでいましたよ」


「あら璃々も璃々さんと同じように可愛いと仰って戴けるのでしたら、将来有望かしら♪」


「いえいえ、それは拙いでしょう」


「あらそうかしら、先程ご主人様は璃々を娘とおっしゃってくれましたが、やはり母親としては璃々を変な男性に嫁がせたくはないですわ。ご主人様も璃々さんの時、そう思ったでしょう?」


黄忠がそう言うと一刀がそのことに考えてみると


「確かに考えてみると、璃々の場合、ずっと自分に懐いていたせいか、他の男性に嫁ぐ姿が想像つかなかったよな…」


「フフフ、ですので璃々もご主人様が気にいっていますから、私と一緒にどうですか」


「いやいやいや!それはおかしいでしょう!黄忠さんはともかく、俺は子供に手を出さないから!」


「あらそんなこと言っていただけるとは嬉しいですわ。それに子供でなければ璃々もいけるということですわね」


黄忠の笑みに一刀は


(「この世界の紫苑も相変わらず凄い考えをしてるし、それに俺たちのことを聞いても全く動じてしないから、ある意味紫苑より凄いな…」)


内心そう考えていると、ちょうど子供璃々が目的の店の前に到着したが、


「もうおかーさん!早く~!」


2人が話し込んでなかなか来ないのを見て、子供璃々は怒ってしまっていた。それを見て黄忠がこの話はここまでとばかりに


「あら残念。この話はまた改めてお願いしますわ」


一旦この話を打ち切ったのであった。


「あらごめんなさいね、璃々」


黄忠は頬を膨らませて怒る璃々の手を取ると、店の中に入り、そして3人は食事を堪能した。


そして食事を終え3人が街中を歩いて、あるお菓子屋の前を通過しようとすると、一刀の姿を見るなり、店外で出て来て


「これはこれは、北郷様」


「やあ親父さん、お店繁盛してるみたいだね」


一刀に挨拶したので、一刀も顔見知りだったのかこれに応じていた。


「これも北郷様のおかげでございます」


「いやこれも、親父さんが頑張ったからだよ」


お店の奥から店主らしき人が、一刀にお礼を言っていたことが気になったので、黄忠は質問をすることにした。


「あの、少々よろしいでしょうか?」


「はい、なんでございましょうか?」


「先程、何かご主人様のおかげと仰っていましたがどういうことなのですか?」


「へえ、実は……」


すると店主が口を開くと黄忠に事情を説明した。実は一刀たちが成都に来る前、ここの店主の奥さんが病気に罹っており、そして病気を治療するための薬を買いたくても劉璋の側近たちによる重税のせいで薬も買えない状態で病気は悪化する一方だった。その後、一刀たちが成都に来て重税からは開放されたものの資金不足で店を続けることが困難で途方に暮れていた所に仕事をさぼり、店に客として来店した一刀が悩んでいる店主の顔色を見て事情を聴くと、一刀は店の商品について提案を出すと、その商品が大当たりし、それ以降店が持ち直し、そのおかげで奥さんの病気も治ったことを説明したのであった。


「でも北郷様、本当にあの時は助かりました、ありがとうございます」


その店主がこれでもかという位、何度も一刀に頭を下げると


「や、止めてよ。俺はただ、自分の国の物を教えただけで、お店をここまで持ち直したのも親父さんの力によるものじゃないですか」


「それでもその切っ掛けを作ってくれたのは北郷様ですよ。本当に感謝しても仕切れないくらいですよ」


「まいったな……」


「あれ~ご主人様照れてる~!」


一刀は苦笑いを浮かべながら頬をかいて照れていると横にいた璃々は一刀の顔を見て茶化していた。そして黄忠はそんな一刀を見て


(「やはりこの方は人に対する厳しさだけでなく、天性で人を引き付ける魅力を持っているし、そして私が長い間忘れていたものをある感情を思い出してくれたわ…」)


黄忠があることに考えに更けていると、


「ねぇ、おかあさんどうかしたの?」


そんな黄忠を見て璃々が声を掛けると、黄忠は店主と話し込んでいる一刀を見て、一刀に聞こえないようにある事を璃々に告げるため、璃々の耳元でひそひそ話を始めた


「…ねぇ璃々。もしご主人様が璃々のお父さんになってくれたらどう思う?」


突然の質問に最初、首をかしげ不思議そうにしている璃々であったが、ようやく質問を理解した璃々はしゃがみ込んでいる黄忠の耳に近付き小声で返事をした


「うん、もしご主人様が璃々のお父さんになってくれたら嬉しいよ♪」


黄忠は璃々の答えに満足したのか、微笑みながら


「ありがとう璃々。でもねこのお話はまだ決まってないから、まだ誰にも言ってはいけないからね」


璃々は


「は~い、分かった~」


璃々は嬉しそうに返事をしていた。


そして璃々の返事を聞いて、一刀が


「何かあったの?」


「いいえ、何でもありませんわ」


黄忠が笑みを浮かべながら答えると一刀は店主に挨拶をしてその場を離れた。


店を離れると黄忠は先程の笑みを隠さず不意に


「ご主人様、一つお聞きしますが、先程の事、皆さんはご存じなのですか?」


「えっ?え~と」


一刀は黄忠の質問を聞いて明らかに動揺していた。と言うのは仕事を抜け出して、このようなことをしていることがばれたら、紫苑や璃々、朱里から説教を受けることは間違いなく、特に紫苑にばれた場合、その時の気分によって罰が変わるのだから、一刀としてはたまったものでは無かった。


以前紫苑の機嫌が悪い時に罰を受けた時は、ある意味、男として尊厳を失うのではないかという罰を受けたので、ぜひそれは避けておきたいと一刀は考えていた。


そして一刀は苦笑しながら


「黄忠さん、是非このことは内緒で…」


「困りましたわね。紫苑さんから仕事をさぼらないよう見張っていて欲しいと言われていたのに、このようなことを聞いては黙っていられませんわ」


黄忠はわざとらしく困った顔を作っていると、一刀も困惑した表情を見せ


「困ったな」


「フフフ、分かりましたわ。では私のお願いを一つ聞いていただけますでしょうか?」


「お願いですか?俺で出来ることであれば出来る範囲で聞きますけど」


「そんな難しいお話ではありませんわよ。そのお願いについては後でお話しますわ」


「うっ、分かりました…」


一刀は黄忠の願いを承諾することとなり、そして3人は再び城に戻ったのであった。


そして一刀は、再び城に戻り、夜遅くまで政務に励んだ。そして今日の分の仕事を終えると風呂に入る事なく、一刻も早く寝るために自分の部屋に向い、布団の中に潜り込んだ。


「疲れた…、取り敢えず明日起きた時に水でも浴びよう…」


と言って一刀は眠りに付こうとしたが…


…でも俺の布団の中から、温かくて、何かいい匂いがするな…一刀は思考が薄れていく中でそう感じていると手に何か人のいる感触を得た。そして暗闇の中を凝視すると布団の中に黄忠がいた。


一刀は困惑しながらも


「えっと…黄忠さん。部屋間違っていません?ここは俺の部屋なんですけど…」


辛うじて声を出すも、黄忠は一刀の指摘に動じることなく


「分かっていますわ♪。ご主人様に先程のお願いについて来ましたの」


「えっ…何ですか」


一刀は何かを感じながら敢えて聞くと


「今日から、私もご主人様のお仲間に加えて戴きたいですの」


一刀は黄忠の発言に内心、自分の事を本当に好きなのかとかそんな無粋な事を聞くつもりはなかったが、あまりにも唐突すぎる発言に何と声を掛けたらいいのか悩んでいると、黄忠が自ら話し始めた。


「ご主人様には紫苑さんや他の夫人が沢山居るのは分かっていますわ。でも私は璃々さんからのお話を聞いて、もし再婚するのでしたら、貴方しかいないと思っていました。困難な理想を掲げて弱き人を助ける。そして、天の御遣いという名に溺れず謙虚あり続ける。そんなご主人様を見て、私は好きになりましたの」


黄忠の告白に一刀は


「それは光栄なことだけど…」


「もしかして紫苑さんたちの事を考えているのですか?」


「うっ…そうだけど…」


「そうおっしゃると思いましたわ」


黄忠は微笑みながら、なぜか胸の隙間から一通の手紙を差し出した。そして手紙の差出人は紫苑からであった。


そして手紙に書かれていた内容は


「ご主人様へ

この手紙を見ていることは、黄忠さんと関係を結ばれることになったと言うことですね。

黄忠さんはご主人様の事を愛していますから、遠慮することなく愛してあげて下さい。

その代わり、私が遠征から帰ってきた時はたっぷりとこのお礼はさせて貰いますから…ご主人様♪                                紫苑より」


この手紙を見て一刀は溜め息を吐きながら


「流石だよ、紫苑は…。いつも俺の行動の先を読んでいるもんな…」


「あら♪よくできた奥さんですわよ」


「確かにそれは否定しないけどさ…って、何してるの!」


「ここまで来たらすることは1つですわ♪」


「ちょ、ちょっと待って!まだ心の準備が…それに俺、風呂に入っていないから汚いから!」


「あら、それはご主人様の匂いが付いた御馳走ですわ♪」


「ちょ!!黄忠さ…」


「ご主人様…、愛している時だけは紫苑と呼んで下さい…」


「……分かったよ…紫苑。愛しているよ」


黄忠の覚悟に一刀も腹を括ったのか、自ら黄忠の顔を近づけ、熱い口付けを躱した。


黄忠は一刀が自ら口付けを躱したことに驚いたが、しかしこれに火が付いてしまったのか


「これから紫苑さんを忘れさせるくらい、ご主人様を私の身体の虜にさせますわ。フフフ…」


黄忠の獣のような攻撃に一刀は骨の髄まで搾り取られ、そして翌朝、一刀が起きてこないので心配になった翠と朱里が一刀の部屋に入ると、部屋が男と女の匂いが充満し、そして一刀と黄忠の姿を見て2人は


「★■※@▼∀っ!!??」


「はっ、はわわわわーーーーー!」


翠と朱里の叫び声が城中を木霊していたのであった…。





ご意見・ご感想あれば喜んで返事させていただきます。(ただし非難・誹謗等は止めて下さいね)

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