第57話
話がシリアスなのか、ネタなのかよく分からない内容になってしまいました。
葭萌関を陥落させた一刀と紫苑それに璃々と朱里は、紫苑が捕えた涼月と引見した。
「張任さん、このまま自分たちの仲間になっていただけませんか若しくはそれが嫌なら成都に送り返しますが…」
そして一刀は涼月に対し仲間になるか若しくは助命して送り返すことを告げたが、
「申し出はありがたいのですが、私も武人の端くれ、今の主を裏切り、二君に仕えることは出来ません。そして兵たちの命を救っていただいたのであれば、この命は惜しくはありません」
「それにこのままおめおめと成都に戻っても、劉璋様やその取り巻きは私を敵に通じたと言って始末するでしょう…ですのでこのまま私を斬って下さい」
涼月は一刀の説得を断り、早々に処分して欲しい旨を伝えた。
「では、なぜ貴女はそこまでして、劉璋様にお仕えしようするのですか?」
朱里は疎まれながらも劉璋に仕える涼月の心境が分からなかったので聞いてみると涼月は、静かにこう答えた
「亡き夫が劉璋様に仕え、病気で亡くなった時に遺言で、自分の分まで劉璋様に仕えて欲しいと…、だからこそ夫に代わり命を懸けて、劉璋様にお仕えしてきました。でもこれで夫のところに行けますから、悔いはありませんわ」
それを横で聞いていた寂しそうな顔をして紫苑は
「張任さん…、貴女は亡きご主人さんの事を思う気持ちは十分に分かるわ。でもね…ご主人さんは貴女が早く死んで傍に来て貰うことを望んでくれているかしら?」
「………」
紫苑に言われると涼月は返す言葉が無かった、そんな中紫苑は言葉を続けた。
「私も最初の夫を病で亡くしたの。でもまだ私の場合、子供が居たからこそ淋しさに耐えれたわ…」
紫苑は初めにそう切り出しながら、30歳以上離れた叔父と結婚をした事や最初の世界で一刀に出会った事、そして一刀の世界を経てこの世界にやって来た事を余すことなく語った。
その間、涼月は紫苑の話を聞き入り、最後に
「私は勿論ご主人様も愛していますし、最初の夫も愛していますわ。でもこうやってご主人様を愛したり、そして笑ったり泣いたりすることができるのは生きているからできることなのですよ。ひょっとしたら貴女が別の世界に行って、死んだご主人さんと会えるかもしれませんわ。でもそれは生きていなければ、出来ないことですしね」
「……それでも死にたいと言うのであれば、お止めはしませんわ。……でも、死んだらもう、それで終わりですから。……よく、考えてみてください」
そう言って、紫苑は話を締めくくった。
紫苑の話を聞いて、涼月は沈黙したままであった。
そして一刀が涼月に
「……これから、どうされますか?」
「……配下になれと、言わないの?」
「勿論、張任さんの腕を買っていますからそう言いたいですけど。でも、強制はしません。張任さんの納得いく答えを出していただければ、それでいいですが、決して無駄死にだけはしないで下さい…」
「分かった…、その言葉に甘えさせて貰うわ。でもその前に2つ程の質問があるけど、いいかしら?」
涼月から言われると一刀が無言で頷いた。
「まず1つ目は、貴方は私たちの国を攻略しているけど、貴方の目指しているものとは?そして劉璋様の扱いを聞かせて欲しいの」
「正直言って、俺たちでもやれることはたかが知れているかもしれないけど、今、世が乱れ、民などは苦しんでいます。だから俺たちは、皆が普通に暮らし、普通な人生、普通な恋愛などができるような普通な世の中にするために戦っていくつもりです。あと劉璋さんの扱いは、生かせておくのが許されない悪人でない限りは命まで取る必要はないと思っています」
一刀が答えると涼月は無言であったが、納得した表情を浮かべていた。
「では2つ目の質問なのですが、これは北郷紫苑殿にお聞きしたいの。貴女は今、北郷紫苑と名乗られているが、私にはどうしても貴女の素顔が私の同僚と瓜二つとしか言いようがないわ。さっき貴女は別の世界から来たと説明していただいたけど、実は貴女、その時名乗っていた別の名があったのでは?」
涼月の質問に紫苑は微笑を浮かべ
「なかなか読みが深いですわね、張任さん。……そう貴女が言った通り、確かに別の世界では私は違う名を使っていましたわ。でも今はその名前を捨て、北郷紫苑として生きていますわ。でも…これでは貴女の質問の答えになっていませんわね」
「私の以前の名は、姓は黄、名は忠、字を漢升、そして真名を紫苑と呼ばれていたわ…。でも、私の今の名は北郷紫苑、決してこの名前を捨てることはありません。だから私は、この世界では「黄忠漢升」の名を使うことはありませんわ」
改めて紫苑は、「北郷紫苑」として、この世界で一刀と共に生き抜くことを決意表明したのであった。
紫苑の決意を聞いた涼月は
「やはりそうでしたか…、これでようやく納得しました。それで貴女の回答に対するお礼ではありませんが、私が言っていた同僚の「黄忠」は、巴州を守っています。容姿については貴女と瓜二つで、そして思慮深く武勇にも優れています。後は彼女と会って判断された方が良いでしょう」
「それと貴方の並々ならぬ決意を聞かせて戴きました。私としてもここまで聞かせて戴いた限り、貴方の納得いく答えを出したいと思います」
涼月は紫苑に頭を下げて一礼して、すっきりした表情で答えた。
すると今まで黙っていた璃々が、急に涼月にあることを尋ねてみた。
「ねぇ張任さん、もしかしてその黄忠さんに子供がいるの?」
「えっ…と、貴女は?」
「ああ、ごめんなさい。私の名前は北郷璃々と言います。今、話をしている北郷紫苑の娘です」
「はぁ?」
涼月の頭には、璃々から名前を聞くとこの世界の黄忠の娘でいる幼い璃々を思い出していたが、しかし今いる紫苑と璃々の姿を見たら親子というよりは、どこからどう見ても姉妹にしか見えかったので、思わず驚きの声を上げてしまった。
「あっ…ごめんなさい。大きな声を上げて、確かに黄忠には幼い娘がいるわ。でもどうしてそんなことを聞くの?」
涼月は疑問の声を上げると璃々は
「やっぱりこの世界のお母さんがいるのであれば、この世界にも私がいるかどうか気になって」
璃々から言われると涼月も納得した表情を見せた。
しかし涼月の心の中は別の事を考えていた。今の紫苑と璃々は、どう見ても姉妹で、先の紫苑の説明の中でこの世界に来た時に「若返った」と言っている…。
正直今の紫苑の年齢について想像を浮かべていたが、涼月の頭の中で年齢を確認するのは危険という警報を察知した為、これ以上の詮索は無用と考えた。
(…北郷紫苑殿と黄忠の共通点は分からぬが、取り敢えずこの2人に、年齢について詮索することは危険であると…)
涼月は、現在唯一紫苑と黄忠を知る人物として、なぜかそう感じてしまっていた。
そして朱里は、また後日話し合いすることで、涼月を丁重な捕虜の扱いをしながら別室に連れて行った。
一刀たちは、涼月の話を聞いて、この世界の黄忠と出会うことを楽しみになっていたのであった。
~おまけ~
葭萌関を陥落させた一刀たちは細やかであるが、星たちの慰労を兼ねて祝勝会が開かれていたのだが…
「だいたいご主人様は、なぜあんなところで星お姉ちゃんとキスをしているのですか!」
「そうだ!そうだ!紫苑や星お姉様ばかり優遇して、私たちも相手してよ!」
「このエロエロ魔人が、何て恥ずかしいことしてるんだよ!」
「うっ…大変申し訳ありません…(俺が自ら進んでしたわけじゃないのに何で説教を受けてるんだ…)」
一刀はすでに酔っている璃々、蒲公英それに翠まで加わり、葭萌関を陥落させた時に紫苑と星が取った行動について、何故か一刀が説教を受けている状態であった。
「はわわ…紫苑さん、止めなくいいのですか?せっかくの祝勝会が、ご主人様の吊し上げ大会になっていますよ」
「う~ん、あの3人の気持ちは分からない訳でもないわね。それに今、私たちが止めに入ったら、その怒りの矛先がこちらに向きますから」
「ふむ、確かにこういう時は、触らぬ神に祟りなしと言うではないか。我々は益州の酒を堪能しておこう」
「あら、いい考えね」
一刀が説教されているのを見て朱里は、紫苑と星に尋ねたが、2人は当事者にも関わらず、怒りの矛先をこちらに向かないよう、早々に自分たちの世界に入っていたのであった。
「でもいいの朱里ちゃん?あの子たち、このままご主人様を連れていくわよ。せっかくだから貴女も久しぶりにご主人様と一緒に過ごしてきたら?」
紫苑からそう言われると
「は…はわわ…、そんな恥ずかしいでしゅう~」
朱里は顔を赤くしながらも、璃々たちに拉致状態になっている一刀に付いて行ったのであった。
星が素直に譲る紫苑を見て
「紫苑、今日はいいのか?」
「ええ偶には譲らないとね…それに4人だったら割り当てが少ないでしょう♪」
紫苑が笑顔作りながらはっきり言うと、星は声に出して言わなかったが
(「流石、紫苑……」)
そう思いながら、星は明日、紫苑と一緒にご相伴に与ろうと考えた。
そして翌朝、一刀はきっちり璃々たちに絞り取られてボロボロになっていたのを、朝・昼・晩の紫苑特製の料理をおいしく食べて見事に回復をさせたが、晩になると今度は、紫苑と星に昨日待たされた分として、逆においしく食べられたのであった…。
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