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真・恋姫無双 〜新外史伝〜  作者: 殴って退場
第6章 徐州混乱
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第49話

お気に入りが徐々に増え、素直に喜んでいます。


ただコメントが他の作品より少ないのは気になり、少し不安です(笑)


今後とも応援よろしくお願いします。

風との会談が終わり屋敷に戻った愛香は、すぐに愛紗の部屋に赴き、帰宅の挨拶もそこそこに風の会談の事を説明、そして愛紗に風から預かっていた手紙を渡した


そして愛紗は手紙を一通り読んだが、内容は勧誘の手紙で曹操軍に移れば待遇等優遇する内容が書かれていた。そして読み終えた愛紗は手紙を机に置いた。


「私も舐められたものだな。幾ら桃香様と仲違いしているとは言え、私は桃香様以外の人物に仕える気がないわ!」


愛紗は怒気を強めながら言い放つと


「愛香、それで何と返事をした」


「はい、我々義姉妹は二君に仕える意思はないと。それで向こうがせめて義姉上に手紙を渡して欲しいことと後、この話を少なくとも明日まで黙っていて欲しいと。もしばれると私が捕まるからと…。それで私は向こうが文官の身でありながら1人で来る大胆さもあったことに感心したこともあり、この約束を受けました」


愛香が返事すると愛紗は


「うん、それでいい。騙されて相手に会って捕えなかったのは拙かったが、これは仕方がないか…。それに相手が流石に文官、武人たる者、武器を持たぬ人間を斬っても仕方がないからな。しかし…」


愛紗は愛香の処置を認めたが、途中で言葉を切り


「どうしたのですか?義姉上」


「いや、愛香がその者と会った時に誰かに見られなかったか?」


「いいえ店の者しか会っていませんが…」


「分かった。では明日悪いが、この手紙を桃香様か雛里に渡しておいてくれるか。こんな手紙を持っていたら、私が謀反人と勘違いされそうだからな。ただ愛香、これが他の者に見られていたら、その者を逃がしたことにお咎めを受けるかもしれぬぞ、まあ大丈夫だと思うがな…」


愛紗はそう言いながら苦笑いを浮かべ愛香に手紙を預けたのであった。


翌朝、愛香が登城すると同時に雛里の元に出頭するように言われた。愛香は昨日愛紗から預かっていた手紙を渡すいい機会だったので、そのまま雛里の部屋に向かった。


そして愛香が部屋に入ると部屋には雛里しか居なかった。


愛香自身は雛里を敵視している状態だったので、要件を終わらせて部屋から一刻も早く立ち去りかったが、いきなり雛里から出てきた言葉が


「単刀直入にお聞きしますが愛香さん、貴女…曹操軍の方と会っていましたね」


いきなりそう言われて愛香も驚き


「はぁ!?」


「実は昨日、貴女と曹操軍の方と会っていると密告の手紙がありまして…」


雛里が説明すると愛香は明らかに不機嫌な顔になり


「密告の手紙ね…それは本当かしら。雛里、あんた私に監視でも付けたんじゃない?何もかも知ってそうだから隠し立ても何もしないよ。昨日曹操軍の者に騙されて呼び出され、そして私や義姉上を引き抜きにやって来たと言ってきた。で、私と義姉上は二君に仕える心はないと言って断った。それだけの話。それと後、この手紙は曹操から義姉上に送られた手紙と私が呼び出しを受けた手紙だよ」


皮肉を言いながら、愛香は手紙を雛里の前に差し出した。


すると雛里は


「分かりました…。監視を付けたと言うのは心外ですが、私はそんなことはしていません。ではもう1つお聞きします。なぜ会った曹操軍の方を捕えなかったのですか?」


愛香は愛紗の言われたことを思い出し、そして複雑な顔付きをしながら


「そう言われると返す言葉がないわね…。向こうが大胆にも1人で来て、最後別れ際にここで会ったことを今日まで黙っていて欲しいと言われて…。私も武人の端くれ、向こうが覚悟を決めて私に会いで来ていたので、私もその心意気に応じた。ただそれでその者を捕えなかったと言われたら利敵行為と言われても仕方がない。それについては申し開きする気はないわ」


愛香がそう言うと雛里も複雑な顔になり


「愛香さん、貴女の言うことが事実だとしても敵を逃がしたことは事実です。あと事実関係も明らかにしたいので、貴女には当面の間、城の一室において私たちの監視下に入ってもらいます。いいですか?」


「ああそれは仕方ないね。ただ義姉上は手紙を見て憤激して、私にこれを届ける様に言っていたんだから、逃がした件には関係ないから」


「愛紗さんがそんなことをしないのは分かっています。ただ貴女がこのようなことになったので、調査する関係もありますので、愛紗さんの謹慎がしばらく延びることは覚悟しておいて下さい」


雛里がそう言うと


「ちょっと待て雛里、これは私だけの問題だろ!義姉上は関係ないだろう!」


「そうはいきません。私個人は愛紗さんのことはある程度わかっているつもりです。貴女もそのようなことをする人ではないことは分かっています。ただ組織の中ではこのようなことを曖昧にすれば国が滅んでしまいます。だから桃香様の一の家臣である愛紗さんを例外にするわけにはいかないんです!」


雛里から正論を力説されると愛香も返す言葉も無かったが、すると途中何か気付いたのか


「だから義姉上にも、あのような厳しい処分を言ったのか…?」


すると雛里が少し苦笑いしながら


「今は言えませんが、取り敢えず愛紗さんには悪いようにはしません。今は大人しくして貰えますか」


「信頼していいのだな」


「ええ命に代えても」


「分かった。では義姉上の事は頼む」


愛香が頭を下げて雛里に愛紗の事を頼むと雛里が隣の部屋にいた衛兵数名を呼び出し、愛香を別室に連れて行った。


そしてすぐさまその足で雛里は護衛を付けて愛紗のところに赴いた。


護衛の兵には屋敷には誰にも近付けさせないよう付近の警戒を頼んだ。


雛里がこのようなことを独断で決めたのは、変に他の家臣が騒ぎ出す前に事態の収拾を図ると共に先の密告の手紙が他の者に配られている恐れがあったので、それを利用されないように愛香を拘束して先手を打ったのである。


愛紗は雛里の訪問には驚いたが、雛里から


「愛香さんのことと今後について内密に話が」


雛里から言われると愛紗も徒ならぬことを感じ、部屋に誰も近付けさせず話に応じた。


そして雛里から愛香の一件についての当面の処置を告げられると愛紗は硬い表情をしたままだった。


「雛里…もし愛香を厳重に処罰するのであればその時は…」


「愛紗さん、この度のことは愛香さんが曹操さんの使者に騙されていただけのことです。敵を捕えずに逃がしたことについての責を負いますが、それ以外での処罰はいたしません。

ただ周りの目もありますので、当面はこちらで軟禁状態にはさせていただきます」


雛里は愛紗の言葉を途中で止め、必要以外の処罰をしないことを明言したことで愛紗もこのことについては雛里に対し素直に礼を言った。


「ただ愛紗さんの謹慎は世間での噂もあり、しばらく延長させていただきますが…」


雛里が申し訳なさそうに言うと


「フッ…私としては不本意だが、噂ではよりにもよって曹操軍に寝返るなどと、冗談としても笑えぬな」


愛紗は自嘲気味に言うと雛里は


「実はもう1つ別の件でお話に来たのですが、愛紗さんは桃香様のことをどうお考えですか?」


「愛紗さんもお分かりだと思いますが、はっきり言って今の桃香様は、愛紗さんと誓いを立てた時の桃香様ではありません…」


「単刀直入にお話します。愛紗さん、貴女は今後どうするおつもりですか、はっきり言いまして、貴女が桃香様と対立なされている状態では、いずれ派閥ができ国を二分する恐れがあります。否、現実に今回のように他国からこのように誘いの手が伸びています。愛紗さんは我が軍にとって大事な人ですが、このような状態では寧ろ危険人物になりつつあります」


雛里が一方的に言うと愛紗は


「好き勝手な事を言ってくれるな雛里。元々桃香様があのようにしたのは貴様の所為ではないか!」


愛紗は烈火の如く怒ったが、雛里はそれでも冷静に


「桃香様は、当初の抱いた理想について愛紗さんも知っての通り、北郷一刀さんや曹操さんに私たちの力がないから否定されてしまいました…。

では理想に近づけるためには、まず力を付けること。しかし桃香様の方針では力を付けることは難しい…でも力が無ければ何も出来ない。だから桃香様と私は理想を捨て、力を付けることを優先にしました。理想はあくまで理想であって現実とは違います…。理想を追い求め結果、国を滅びてしまったら、全てが終ってしまい無に帰ってしまいます。愛紗さんは理想を求めた結果、力がないまま我々が滅びてもいいのですか?」


愛紗は雛里の焦りは分からないでも無かった。桃香が徐州に赴任した当時は、領内は不安定であり、また周囲は曹操や袁術に囲まれ又黄巾党の残党も領内に進攻されていた。また曹操軍とは政治や軍事においても差があり、更に徐州自体が守りに向かない土地でもあったことから雛里にとっては一刻の猶予もなかった気持ちであったのであろう。


だが愛紗としてはこのような重大な方針転換を自分や鈴々に何の相談も無しに実行され、そして桃香と仲違いの上に桃香から誓いの破棄まで持ち出され、挙句の果てには謹慎まで受ける状態になったのは雛里の所為と言っても過言ではない。


愛紗から見れば、雛里のやり方は形振り構わぬやり方で、信義や理念は二の次で節操がないと見えてしまう。小さな豪族程度ならそれでもいいが、大陸を伸していく勢力になるにはやはり大義となる旗印が必要となる。それは取って付けてできるような物ではない、小さい勢力なりに理念等に基づいて旗印を掲げていればやがて大きな勢力なった時にそれが生きてくると愛紗は思っていた。


「では雛里に聞くが今はそれでいいかもしれんが、やがて勢力が大きくなった時、私たちは何を旗印に戦えばいい?何か大義が無ければ将も兵も付いてこぬぞ」


「その時こそ桃香様の理想を掲げて戦えばいいのです」


「バカな!そんなことで国が束ねられるか!」


「愛紗さん…、もう賽は振られてしまったのです。今更、後戻りは出来ないのです。後のことは後世の方が評価してくれるでしょう」


「雛里、貴様…」


雛里は辛い表情をしながら泣きそうになるのをこらえていた。そしてこの話はもうここ迄と話を打ち切り


「それで愛紗さん、貴女のことが問題なのです」


「今回、このようなことで済みましたが、今後、貴女の様な方に桃香様や私達の方針に反対し続ける者が出て来た場合、反対する者はいずれ貴女を旗頭にして新たな派閥が出来てしまうでしょう。国には派閥は必要ですが、しかし貴女の様に秀でた武を持ち、人望も篤い方は、やがては周りの者により桃香様や貴女を巻き込んだ内部抗争に発展する恐れがあるのです」


「ですが、愛紗さん、桃香様や私達は貴女を失いたくないのです。だから今までのことを水に流して、私達に協力して下さい!」


雛里が愛紗に協力を求めたが、愛紗は首を横に振りながら


「雛里気持ちはありがたいが、今のままではそれは無理だ。私が信ずる道を変えてしまっては、私が私で無くなくなってしまう。それに私までもが大義を捨てたら、今まで私達の旗の下で倒れた者にどう詫びればいい?」


「お主の心配だが、それは杞憂だ。私は桃香様と争うことは全くないから安心しろ。今、桃香様が理想を変えられていても、いつか必ず私が桃香様を以前の理想を持った桃香様に戻してみせる。だから私はこういう仕打ちに耐えてみせる」


愛紗は目を輝かせながら熱く語ったが、雛里は


「そうですか…」


雛里は愛紗の桃香を思う気持ちと理想を追い続ける一途な気持ちが羨ましくあり、妬ましくも感じた。


そして雛里は愛紗の屋敷を辞したが、その心はすでに今後起こりうる波乱をたった1人でどう防くのか、厳しい表情に戻っていたのであった…。


ご意見・ご感想をお待ちしています。


必ず返事はしますので。

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