第44話
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紫苑たちが戦闘を繰り広げている中、北地郡に進出した一刀たちは袁紹軍と睨み合い状態が続いていた。
と言うのも、進攻してきた袁紹軍であるが、陣を固めて動かない状態でいたので、これには一刀たちも困っていた。
「あいつら、攻めに来たくせに攻撃仕掛けてこないってどういうこった」
「うーん、訳が分からないね、お姉様」
「なあ、このままじっとしているのも何だし、ちょっと攻撃を仕掛けてみようぜ、朱里」
「翠さんの気持ちは分からないでも無いですが、今はこちらから不用意に動く訳には行きません」
「どうしてなの朱里?」
「今、私達は兵を分散されている状態で、万が一ここで私達が負けることになれば、一気に長安を突かれてしまう可能性があります。もしそうなれば、私達に袁紹軍を食い止める兵がもうありません。ですので、ここは我慢して下さい」
「翠、蒲公英。ここは朱里の言うとおりだ。ここでの戦いはこれ以上敵を進ませないことが第一、敵を追い払うことさえ出来れば俺たちの勝ちだから、翠、今回は我慢してくれ」
朱里や一刀から説得を受けると翠や蒲公英も
「チェ、ご主人様からそう言われると反対出来ないじゃないか…」
「あれ~お姉様、顔を赤くして何言っているの~」
「蒲公英、お…お前何に言ってるんだよ!」
一刀から優しく諭された翠が照れくさくなっているとそれを見た蒲公英がからかっていた。
そして一刀は、朱里に紫苑たちの戦況を確認したが、現状では、まだ戦闘状態としか分からなかったので、今は耐えるしかないと朱里から言われると一刀も紫苑たちのことを心配しつつ、袁紹軍を一刻も早く駆逐することを誓っていた。
一方、袁紹軍こと司馬懿軍では
「向こうもなかなか我慢強いわね」
「はい陽炎様、包囲網に囲まれているから、早急に攻めてくると思いましたが、向こうにああ守備を固められてしまうと攻めるには厳しいです」
「そうね…、松羽。このまま兵の損失を控えて守っておくのもいいけど、せっかくここまで来たから、まずは小手調べをしてみましょう。そうでないと若竹も怒るでしょうから」
「そうですね、あいつもいつ攻撃するんだと言って、手ぐすね引いて待っていますからね…」
ちなみにこの松羽は名を徐晃、字を公明といい、そして若竹が名を張郃、字を儁艾と言う、本来ならこの2人は魏の名将であるが、なぜかこの外史では司馬家の家臣となっており、そして現在并州を守っている郭淮こと梅香を入れこの3人を、司馬家の「松竹梅」と呼ばれていた。
「ではあなた達に2万の兵を与えるから、まずは噂の北郷軍の強さを確かめてきなさい」
「分かりました」
松羽が離れると陽炎は1人になると、独り言のように
「北郷一刀に曹操、孫策、劉備に袁紹、袁術…この戦乱に最後に笑うのは誰かしら…、そして勝者は必ずこの中から出るとは限らないわよ…」
そう呟くながら陽炎は新たな戦乱襲来に内心笑みを浮かべていたのであった。
袁紹軍の動きに一刀たちも察知し、
「敵が繰り出した兵は2万ですか…」
「取り敢えず、こっちも私と蒲公英に2万の兵で出ようか?」
「いいや翠、俺も出るぞ」
「は…はわわ、何言っているのですか!ご主人様」
「そうだ!朱里の言うとおりだ。ご主人様自ら出てどうするんだよ!」
「そうだよ、ここは私たちの出番だからデーンを構えていてよ、ご主人様」
3人は一刀の出陣に反対したが、一刀は
「おいおい別に先陣切るわけじゃないよ。取り敢えず先陣は翠に任せて、俺は後方に控えておくよ。何かするにしても敵の目を引き付けるには俺が出るのが一番だからさ、なあ朱里」
一刀が朱里に同意を求めるように言うと朱里が溜め息を付きながら、
「確かにご主人様に出ていただくと敵はご主人様の方に目が行きますが、あまりこのような事をしたくないのですが…」
「だって仕方ないだろう、皆が一生懸命戦っているのに俺だけじっとする訳にはいかないし、それに紫苑や璃々は寡兵で戦っているんだ。早く討って出て助けに行きたいくらいだ」
一刀は未だに戦っている紫苑や璃々を心配になり、多少気が急いていた面が出ていることに気付き、そ朱里は作戦の遂行上、紫苑と璃々に負担を掛けていることや一刀の焦る気持ちが出ていることに対して申し訳ない気持ちになり
「ご主人様、申し訳ありません。紫苑さんや璃々さんに負担を掛けさせて、ご主人様にもこのような思いをさせて…」
朱里が謝ると一刀も少し冷静さを取り戻すと
「いいやすまない朱里、別に朱里が悪い訳じゃないよ。やはり皆のことが気になるが、やはり璃々のことがどうも気になってしまうんだ。俺たち皆、それを承知でそれぞれ戦っているのだが、どうしても俺や紫苑が考えてしまうと璃々を安全なところに置きたくなってしまうからね。冷静な目で判断してくれる朱里がいたからこそ、こうして戦えるからさ。元気だしてくれよ」
一刀がそう言いながら、朱里を慰めるとようやく朱里も気を取り直し
「確かにご主人様の言うことも一理ありますので、ではこちらの作戦は…」
朱里は3人にそれぞれ指示をして、先鋒翠、そして後陣に一刀が同じく2万の兵を引き連れ出陣、そして遊軍として本陣に蒲公英に朱里という布陣を構えた。
一刀たちの出陣を見て徐晃と張郃は
「なあ若竹、大将自ら出陣するってどう見る?」
「まあ罠か策の可能性が高いが、取り敢えず当ってみないと分からないね」
「取り敢えず、遭えて仕掛けみるのも1つの手だろ?このまま何もせずに帰ったら、何しに来たか分からないからね。まずは私の部隊で仕掛けてみるさ」
現状では見合っていても仕方がないので、様子見で仕掛けてこととし、袁紹軍は先鋒張郃、後陣に徐晃という布陣で構え、そして先陣が激突した。
開戦早々に張郃が早くも押し出し、
「こいつはいいわ、周りは全て敵。どいつもこいつも斬って斬って斬りまくりなさい!」
北郷軍は張郃軍の勢いに飲み込まれようとされたが、
「どけどけーーー!」
雄叫びと共に、逆に敵を蹴散らしながら翠の部隊がやって来た。
「随分と派手なことやってくれたじゃないか。私の名は馬孟起、テメエは誰だ?」
「あんたが錦馬超か、噂通り強そうだね。私の名は張儁艾だ。あんたの首を貰いに来たよ!」
いきなり若竹が翠に斬り付けたが、これを翠が余裕で阻止。
「おいおい、いきなりかよ。上等だ、私が相手になってやる!」
2人はそのまま一騎打ちに突入し、乱戦状態になっていた。
一方、本陣で戦況を見つめている陽炎は、総大将の一刀が自ら出陣していることについて、策としては余りにも露骨に見えてしまい、真意を量りかねている状態であった。そして独り言で
「このような戦で総大将自ら出張るとは…。何か目的があるのだろうか…?」
「ただやっかいなのは本陣に諸葛亮に馬岱を置いていることは、どこか空いた隙を付いて、強襲を掛けてくるつもりだろうから、迂闊に兵を繰り出すこともできないわ…」
陽炎は自ら思考の海に入ってしまう状態に陥ってしまった。
一刀の考えとしては、基本この戦いにおいて袁紹軍(司馬懿軍)の兵の強さや将などを多少なりとも見定めたいのが主な目的であるが、ただ司馬懿は策士でもあることから、一刀自身が出陣するとこちらに何か策があるのではないかと勘繰り多少なりとも兵の展開が遅くなることを期待する程度であった。
ただ本陣の予備として蒲公英を備えていることで、こちらは蒲公英の機動力を生かした攻撃が可能であることから、敵もそれを警戒しているのか、迂闊な行為に出れないため戦いは一進一退の膠着状態になっていた。
そんな中、一刀と朱里の元に伝令がやって来たが、2人はその伝令の内容を聞いて、この包囲網戦が終息方向に向かっていることが分かった。
朱里は、一刀の部隊に伝令を送り、陽動で部隊を動かすように指示をした。
一刀の部隊が翠たちの戦いを迂回するように左側に回り込む動きを見せたため、陽炎は松羽に一刀を押さえさせ、本陣に蒲公英を迎撃する部隊を僅かに残し、本陣からも兵を出して、一刀の部隊の左側に横撃することとし、そして命を下そうとした時に慌てて斥候が帰ってきた。
「申し上げます。我々の南側から、敵本陣から出てくる部隊と違う別の敵部隊約5千が迫ってきております!」
「これは恐らく敵の新たな援軍ね…、仕方ないわね、今回の戦はここで手仕舞いよ。今度、戦う時はこのような局地戦ではなく、大きな舞台で戦いたいものだわ…フフフ」
新たな援軍が来る知らせを聞いた陽炎は、この包囲網戦が崩壊したと判断し、このままであれば兵の数で蹂躙させられる恐れがあるため、前衛に構えている松羽に殿を務めるよう指示し、そして部隊を本陣まで引き上げる鐘を鳴らした。
引き上げの鐘を聞いて、翠と若竹はそれぞれ決着が付くことができなかったので、悔しがっていたが、翠はその時、まだ援軍が来ることを知らされていなかったので、敵に何らかの罠と判断し無理な追撃を避け、こちらも一刀を守りながら部隊を本陣に引き上げた。
そして一刀たちが本陣に引き上げてから間もなく、援軍が来た紫苑が本陣に現れた。
実は戦闘中に一刀のところに伝令を出したのは紫苑の弓騎隊であった、紫苑は函谷関の戦いを終えてから、すぐに一刀のところに駆け付けようとしたが、丁度戦闘中であったため、そのまま連携して敵部隊に横撃するつもりであったが、先に察知され、敵が本陣の防備を固めたため、紫苑も無理をせずに本陣に現れたのである。
そして紫苑を見た一刀が安心した表情を見せ
「紫苑無事だったか…」
「ええおかげ様で無事でした、ご主人様も無事で良かったですわ。翠ちゃん、蒲公英ちゃん、朱里ちゃん、ご主人様を守ってくれてありがとうね」
紫苑からお礼を言われると3人は照れながら笑っていた。
そして朱里が
「紫苑さん、私たちのところに全ての情報が入ってきていませんので、今までの知っている限りの情報を教えて貰えませんか?」
そして紫苑がここ以外の包囲網戦の結果を説明、そして璃々も無事の話を聞くと一刀と朱里は安心した表情を見せた。
そして紫苑が援軍に来て、2日後には袁紹軍は一刀たちの追撃を警戒して引き上げを開始したので、一刀たちは無理な追撃をせず、両軍引き分けの形でこの戦いを終結したのであった。
袁紹軍が引き上げてから、ようやく一刀と紫苑の2人きりになる時間ができて、
「紫苑が来てくれて本当に助かったよ。紫苑が来てくれなかったら、まだこの戦いも長引いていただろうし、璃々のことも分からない状態で多分やきもきしていただろうな」
「ご主人様が本当に無事で良かったですわ。でもなぜこの戦いに自ら出陣なされたのですか?」
紫苑がやや怒りながら、一刀に聞くと
「……紫苑や璃々が前線に出て戦っているのに、俺が後ろで戦うというのが我慢できなくて…」
「そうですか…、ご主人様のお気持ちは分かりますが、ご主人様は私たちの夫でもあり旗印なのですから、できるだけ自重していただきたいですわ」
「それは無理な話だよ、璃々も戦っているのに親としては子供に好いところ見せたいしね」
一刀が紫苑に心配掛けないように笑顔で言うと
「仕方ないですね、でしたらご主人様には今後色んな鍛錬に励んでいただかないといけませんが、しかし今回は朱里ちゃんの言うことを聞かずに出陣したことに反省していただきますわ」
紫苑も一刀の説得を諦めて、そして何時もの笑みを浮かべた顔に変わり
「まずは、私を心配させた罰で…私にお茶を飲ませ、お菓子を食べさせてください」
「そ、それくらいだったら…」
またとんでもない罰を与えられると思っていた一刀は、机の上に置かれていた茶を紫苑の口元に持っていき、お菓子を切って楊枝に刺して
「じゃあ紫苑、あ~ん」
「あらあら違いますわ、ご主人様、口移しでお願いします」
「えーーーーーー!!」
「さっき、反省していただくと言いましたが嘘ですか?」
ワザと紫苑が寂しい表情をすると
「…ご、ごめんなさい嘘ではありません」
「では、お願いしますね♪」
一刀は何故か周りを確かめ
「(誰もいないな…。よし!!)」
茶を口に含み、目を瞑って待っている紫苑に近づくと一刀は紫苑に
「くちゅ…。んっ…」
口に含んだ茶を流し込んでいくと
「ふふ…いいですわ。もう一杯ください。ご主人様♪」
艶っぽい声で促す紫苑に一刀は何か違う戦闘モードが入ってしまい、再び一刀と紫苑は官能的な口づけが続けると、お互い久々ということもあって、そのまま戦闘態勢に突入してしまった。
後日、別の3人から、紫苑と同じようなことをせがまれたのは別の話である。
こうして一刀包囲網戦は、何とか防衛を果たし、戦局は新たな場面を迎えるのであった。