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真・恋姫無双 〜新外史伝〜  作者: 殴って退場
第5章 五路侵攻
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第39話

一刀たちは五方面進攻の話を聞くと、軍議することを命じ、長安にいる将はすぐに集合した。


軍議冒頭、情報担当の真里から各軍の進攻状況が報告された。


「まず羌からの進攻、これを便宜上、第一路と呼ばせて貰うけど、これが軍勢約5万、現在西涼にいる馬休、馬鉄が伏兵や罠を仕掛けて行軍を遅らせているけど、最終的籠城戦はやむを得ない状況、ただ詠からの手紙では2万の兵がいるので籠城戦は問題ないけど、兵力の差で敵を押し返すことが出来ないので、その分の援軍が欲しいとのことだわ」


因みに華雄も出陣したかったのだが、詠が月に頼みこみ、傍にいて守って欲しい旨を告げると渋々言うことを聞いたらしい。


真里が語ると、皆は後に残る4つの進攻状況を聞くため無言のままであった。


「次は第二路、これは益州からの進攻、成都から張任、巴郡から厳顔、魏延、法正が出陣、両軍合わせて約5万が漢中に向けて出陣しているわ」


「引き続き、第三路、これは荊州からの進攻、蔡瑁と張充、文聘が出陣、これが兵約3万」


「第四路、こちらは曹操軍が来るわ、夏侯淵を筆頭に曹仁、曹洪、そして軍師として郭嘉が付いている、こちらは兵約4万」


「最後に第五路、并州の袁紹だけど、こちらは残念ながら警戒が厳しく大将の司馬懿以外他の将が分からないの、こちらは兵が約3万」


真里が一通りの説明を終えると一刀は内心


(「この世界には司馬懿もいるのか…、しかも今回は更に孫策もいるし凄いレベルが高いぞ…」)


一刀たちは、今更ながら今回は凄い世界に来たことを改めて感じ、紫苑や璃々も一刀と同様にこの外史の意外性を感じていたのか、3人でお互い顔を見合わせると苦笑をしていた。


そして霞が冗談半分で


「なあ一刀、あんた何か恨み買ったか?」


「…曹操や袁紹なら確実に恨まれているかもしれないけどな…」


一刀がやや自虐的に答えていると碧が


「しかし私たちが、劉璋や劉表からは攻められても仕方がない状況だよ」


「それはどういうことだよ、お母様」


「考えてもみな翠、隣国に自分より大きな勢力がいたら、いつ自分たちが攻められると思いビクビクするだろう?ましてや今回は、誰が音頭をとったか分からないけどさ、向こうからすれば私たちを潰せる絶好な機会だ、奴らもそんな機会をみすみす見逃しはしないだろう」


碧がそう言うと皆は納得した表情をしていた。


「それでだ、誰をどの軍に当てるのだ?」


星が朱里や真里の軍師たちに確認すると朱里が


「これは私たちと音々音ちゃんと決めましたが…、まずはそれを聞いて貰えますか?意見がある方はその時お伺いします」


朱里がそう告げると皆は黙って、発表を待った。


「まず第一路ですが、こちらは碧さんと渚さんに当たって貰い、兵は3万付けます。これは羌の兵が強兵でもありますので、西涼にいる兵と合わせれば、兵は五分にしています。将については碧さんや渚さんが羌の方から恐れられているので、お二方よろしくお願いします」


「ああ分かったよ」


「承知したわ」


2人が承諾したが、すると次の瞬間、朱里が今まで見せたことのない辛い表情を見せ、そして璃々に


「璃々さん…、この戦い私に命を預けて頂けますか?」

突然唐突な発言をしたので璃々が発言する前に


「どういうことだ、朱里?」

「ちゃんと説明して貰えるかしら朱里ちゃん?」


一刀と紫苑が怪訝そうな顔したので朱里は


「はい勿論です、第二路についてですが、これは劉璋軍が輸送の問題などもあり、恐らく漢中から直接長安に突いてくると思います。ですので、我々は進軍途中にある陳倉に援軍1万を送り、そこに駐屯している兵5千と一緒にここを守っていただきます。そしてそこに行く援軍の将に璃々さんにお願いしたいのです」


「勿論理由はあります。まず璃々さんが防衛戦に不可欠でもある弓の扱いに秀でていること、そして天の御遣いであることです。今回の籠城戦は守りが主ですので、当然作戦は弓に長けた人に性格が沈着冷静粘り強いである方が条件になります。更に士気の向上についても天の御遣いが来てくれるのであれば、兵も我々は見捨てられていないと思い士気も下がることはしばらくないでしょう」


「この2つの条件に当てはまるのが紫苑さんと璃々さんなのですが、紫苑さんについては第四路の曹操軍を担当していただきます。だからこちらの指揮を璃々さんにお任せしたいのです」


朱里は説明したが、朱里の言葉に紫苑が


「朱里ちゃん、見捨てると言う言葉があったけどどう言うことなの?」


言葉は穏やかであるが、表情は怒りを抑えている紫苑であるが、朱里はそんな紫苑を怯むことなく見据え


「見捨てると言い方は誤解を招く発言で申し訳ありません。しかしはっきり言います紫苑さん。現在我々は五方向から囲まれています。そして各方向に兵を向けてしまうため、ほとんど兵に予備がありません。ですので、どこか一方向でも撃破出来ない限りは、援軍は期待出来ないと考えて下さい。紫苑さんの第四路も同じよう理由で函谷関を死守していただきます」


「だからそういう理由で、璃々さんには死地に飛び込む覚悟をしていただくことであのような言葉をさせていただいたのです」


朱里の説明が終わると紫苑が


「……分かったわ朱里ちゃん、そういう理由だったのね。ごめんなさい」


「い…いいえ、こっちこそあのような言葉を言って申し訳ありません」


「そうか…まさに総力戦だね」


蒲公英がそう呟くと、一刀が璃々に


「璃々どうする?もし無理なら誰かと代わって貰うか」


皆が璃々の方に一斉に顔を向けると璃々は


「朱里…、貴女の事信じていいよね」


朱里が無言で頷くと、璃々は


「…分かったよ朱里、私、この任務引き受けるよ。もしこの任務を断っても戦いからは逃れることは出来ない。だったら私、この任務を私に任せた朱里を信じて戦うわ」


璃々が力頷くと一刀と紫苑は成長した愛娘を見て、嬉しく感じていた。


「紫苑さん安心してちょうだい。私たちが羌の連中を早く片付けて、すぐに璃々の応援に向かうようにするからさ」


碧がそう言うと紫苑は


「そのお心遣い、ありがとうございます」


言って一刀と共に頭を下げていた。


「ご主人様、お母さん心配しないで、私、こんな戦いで死ぬ気さらさらないから。まだやりたいことたくさんあるし、そして皆が私たちを助けてくれるのを信じているから」


璃々が元気よくそう告げると、場が少し好転したように感じた。


朱里が引き続き説明に入り

「そして第三路ですが、ここは包囲網突破の鍵を握っていますので、こちらに主力を投入します。霞さん、恋さん、星さん、それに音々音ちゃんに兵4万を付け、武関に行って劉表軍を迎撃してもらいます。ここの部隊に望むことは劉表軍の速攻撃破です」


「向こうの兵の練度や士気はそれほど高くありませんし、指揮する蔡瑁や張充はどちらか言えば水軍向きの将で、もう1人の文聘も霞さんたちの敵ではありません。それに音々音ちゃんを付け、確実かつ速攻戦で勝つことを期待しています。但し途中で作戦を変更する恐れがあるので、その時は必ず指示に従って下さい」


「劉表軍を撃破したら、連戦になり、大変申し訳ありませんが、素早く兵を二手に分け、曹操軍と劉璋軍に向けて下さい」


「任せとき朱里、その作戦必ず成功させるで」


「…必ず勝つ」


「厳しい戦いだが、遣り甲斐はあるな」


「恋どのがいたら、勝つこと間違いないのです」


それぞれ士気を高めていた。


「第四路については、先に説明しましたが、曹操軍が相手で函谷関の防衛です。ここは勿論紫苑さんに付いていただきます。理由は璃々さんと同じです。兵については1万5千しかいませんが……何とか守って下さい、よろしくお願いします」


「分かったわ朱里ちゃん、必ず守り切るわ」


「そして最後の第五路ですが、こちらは長安の北にある北地郡に出ます。そして翠さんを大将に、蒲公英ちゃんに私が出陣します。こちらは兵2万で行きます」


朱里が言ったところ、一刀が


「ちょっと待った朱里、俺もこちらに出陣するぞ」


「ご主人様危険です!長安にいて全体の動きに睨みを効かせて下さい」


朱里が一刀の出陣に待ったを掛けたが、一刀は


「朱里、皆、聞いてくれ。今回の袁紹軍の将の司馬懿は、俺が知る世界ではかなり有名で優秀な軍師だ。能力も朱里並、人によったらそれ以上の評価をしている人もいる。だから俺も出陣して確かめて司馬懿がどんな人物か確認したい、それに皆が出陣するのに俺だけ、長安にいることは耐えられない」


一刀がそう言い切ると真里が


「朱里、これは一刀さんが言うことを信じた方がいいわね。実際、今回の袁紹軍に偵察に行った者はほとんど帰って来ていない、正直こいつは不気味だよ」


「だから朱里、心配なら更に一刀さんと更に兵を1万付けて、向こうと兵数同じにしておくわ、それで出陣しなさい。こっち(長安)は5千で守るから。取り敢えずあと兵士希望者を募って、何とか兵を集めておくわ」


真里が朱里を説得するような形で、一刀出陣の案を提案すると、朱里もさすがに観念したのか


「仕方ないです…ご主人様、向こうでは私の指示に従って貰いますから、決して無茶な出陣は駄目ですから」


やや拗ねた言い方で言うと一刀は


「分かったよ、全て朱里に任せるから」


「これで決まりですねご主人様、最後に皆さんに言葉を発していただきますわ」


紫苑が最後に締めくくりの言葉を一刀に言うように促すと一刀は静かに席を立ち


「この戦いは非常に厳しい戦いになる。しかし俺たちは負ける訳にはいかない。俺たちの世界にこういう言葉がある「一人はみんなのために、みんなは勝利のため」」


「この言葉は、どれだけ優秀な者でも自ずと限界がある。しかし全体になればこれが個人でできることの何倍にでも力を発揮することができる可能性がある」


「だから俺は皆を信じている、だからそれぞれ皆もお互い信じてあってくれ。そして皆、再び元気な姿を見せてくれよ!」


一刀の激に


「「「「「おう!」」」」」


皆は意気に感じ、そして自然と戦いの準備に向かった。そしてそんな中、真里は星を呼び止め


「星、これをあんたに預けるよ」


真里は一つの小さい布袋を星に手渡し


「行軍中、行程の半分を過ぎた時にこの中に入っている紙を必ず見て、この指示に従ってくれ」


星は真里の顔を見て、ただ事ではないことを感じ


「このことを知るのは?」


「今のところ、私と朱里、後で一刀さんに伝える。それに霞には紙の中身は言わないが、必ずその指示に従うように言っておく。音々音には腹芸は無理だから黙っているし、紫苑さんや璃々にも変に期待させたくないから黙っておくつもりだ」


「中身のことは聞かぬが、我が軍にとっては良いことか?」


「一か八かの賭けだね。因みにこの作戦を考えたのは朱里だよ。私はこんな博打みたいな策は思いつかなかったね」

真里がそう言うと星は不敵な笑みを浮かべ


「これを見た時、皆の驚く顔が見物だが、真里よ、お主も色々気を遣って大変だな。これだけあれこれ気が付くもんだ」


「ふん、これも性分だ…」


「しかしお主のそういう周りを思う心遣いなら、お主と主と一緒になっても良いがな…」


「別に今のところは星たちの邪魔をする気はないよ」


真理がそっけなく言うと星がニヤニヤした顔で


「しかしこの世界では主より上の男はなかなかいないが、真理はいったいどういう男が好みかな?」


「べ…別に誰だっていいだろう!わ…私だって好きな男…」


「………」


「わ…悪い用事を思い出したわ!じゃあ!」


明らかに動揺した真理は、この場から逃げて去ってしまった。


それを見た星は


「フフフ…、これで真理をからかう話ができたな。朱里あたりから情報を仕入れておこうか…」


そう言いながら、星もこの場を立ち去って行った。


その後、真里と朱里は一刀に星に渡した物について説明をしたが、これは一か八かの作戦で、秘匿を要するため堅く口止めして、また作戦が失敗した場合の紫苑や璃々にも言わないよう伝えられると一刀も最初は難色を示したが、真理の説明を聞くと最終的には納得した。


そして一刀が真理に


「真理いろいろ気を使って貰って悪いな、真理が口止めするように言ってくれなかったら、やはり璃々のことが心配になってこのことを喋ってしまいそうだからな」


「一刀さん、このことはくれぐれ内密にしておいて下さい」


「ああ分かっているさ、期待していて万が一失敗した時に落胆が大きくなってしまうし、作戦上機密保持観点からも仕方がない」


「でも真理はいろいろ気が回るな、以前朱里の時にも世話になったし、今回も紫苑や璃々のことでもあれこれ気を遣わせて、真理には申し訳ないな」


「気にしないでちょうだい、むしろ作戦のためとは言え、紫苑や璃々や皆に黙っておくが気が引けるわ」


「皆分かってくれるさ、でも真理それだけ気が利くのだったら、将来良い嫁さんなれるな」


一刀がさり気なく言うと真理は、さっき星に言われたことを思い出し、そして今までそんなことを意識していなかった目の前の一刀を見て、急に恥ずかしくなり


「よ…嫁!?そ…そんなこと考えたこともないよ!」


「でも真理は世話好きそうで朱里や雛里からも慕われていたじゃないか」


「そうですよ、真理お姉さんだったら、良いお嫁さんになれますよ」


一刀に続いて朱里まで話に加わってきたので、真理は余計に恥ずかしくなり


「朱里あんたは余計なことを言わなくてもいいの!朱里!私たちも準備があるから行くよ!」


真理は強引にこの話を打ち切り、準備のために朱里を連れて部屋を出ていき、一刀も真理が動揺した理由をあまり考えずに、その後部屋を出たのであった。


その晩、一つの寝台に三人が『川』の字で寝ていており、そして真ん中に璃々がいたがこれからのことが不安で目が冴えて眠れない状態でいた。


そしてそんな璃々を見ていた紫苑が


「璃々、不安なの?」


「う…うん」


横に寝ている一刀を気にして小声で璃々だったが、


「璃々…」


紫苑が優しく璃々を抱きしめたが、璃々はこれに抵抗することなく素直に抱きしめられた。


紫苑に抱きしめられるとなぜか先程の不安感が徐々に消えていった。


そして紫苑が璃々に


「あなたが不安なのはよく分かるわ、だから何も言わなくてもいいの、今日はずっとこうして上げるわ」


そう言ってくれる紫苑に安心していた璃々であったが…、すると紫苑が璃々の顔を見て


「まだちょっと不安かしら?だったらご主人様…起きているのでしょう?」


寝ていたはず一刀が紫苑に呼ばれると2人の方に顔を向け


「やれやれ起きていたのが分かっていたのか…」


一刀がそう言うと紫苑は優しく笑みを浮かべて


「ではご主人様、璃々を前と後ろから抱きしめるのを手伝ってくれるかしら♪」


一刀も


「それはいいなあ」


「え?え?……」


璃々は理解できないまま、前は紫苑、後ろは一刀に抱きしめられた。


璃々は2人の行為に驚いたが、しばらくすると何とも言えない抱き心地の良さに、目がとろんとなっていく。


「璃々、朝までオレたちがそばにいるからな…」


「そうよ、安心して眠りなさい…」


そして優しく頭を撫でる一刀と紫苑だったが、やがて璃々は安心したのか


「スー…スー…」


夢の中にたどり着いていた。


2人は璃々の寝顔を見て


「やはり母親の力は偉大だな。安心して眠っちゃった」


「でもご主人様もいてくれないと困りますわ…」


「そうだね…。紫苑、俺たちも寝ようか。明日から忙しくなるから」


一刀が璃々を挟んで、先程のように紫苑の頭を優しくなでると


「そうですわね。では、おやすみなさい…」


こうして3人は眠りにつき、そして準備ができると、皆それぞれ戦地に赴いたのであった……。


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