第35話
今回は数人のキャラが変わっていると思います。
特に桃香が変わりすぎていますが、しばらくはこの道を歩んで貰おうと思っています(決してアンチ桃香ではないです)
ですので、桃香が天然の子でなければ嫌だという方はUターンして下さい。
ようやく反董卓連合の戦いから3か月が過ぎようとしたころ・・
再び大陸の東から戦いの火蓋が切って落とされた。
~一刀の部屋~
この情報を持って来たのは情報担当の真理で、現在この場には、一刀・紫苑・朱里で残りの者は他の場所での政務に兵の訓練や町の警戒に出ていた。
そして真理から、
「ちょうどいいところに居たわ、他国にいる密偵から情報を持って帰ってきたけど、……皆、信じられない話だけど、よく聞きなよ」
報告する真理に戸惑いの表情が見られたので、紫苑が
「あまりいい話ではなさそうね」
「……うん、直接的には私たちには関係ないけど、ここにいる3人に璃々・翠・蒲公英あたりが接点あるかしら、この話を聞いても最初は信じられないと言うだろうね」
「まず情報は2つあって、まず1つは曹操が黄巾党の残党が反乱を起していた青州を完全に鎮圧して、青州を支配下に置いたことよ」
「確か青州は孔融が治めていたけど、どうなった?」
一刀が真理に聞くと
「孔融は私たちとの戦いから帰国してから、すぐに攻め滅ばされてしまったわ。しかし孔融の遺臣たちが曹操に助けを求めると、曹操は待っていたとばかりに夏候惇や夏侯淵たちを中心に黄巾党の残党を攻めて、瞬く間に鎮圧したわよ」
紫苑が
「確かに曹操は黄巾党を攻め滅ぼした手腕も素晴らしいことですが、青州を手に入れ、更に勇猛果敢な黄巾党の兵も多数傘下に入れたことは、これからの戦いにおいて有利になってきますわね」
「たださすがにしばらくは青州の治安維持や兵の再訓練には時間は掛かるでしょうから、すぐに袁紹や劉備との戦いはないでしょうけど」
「しかし曹操軍としたら袁紹軍と事を構える前に勢力拡大のため、先に劉備軍との戦いは避けられないでしょう……」
現在、劉備軍の軍師になっている雛里を心配する朱里であったが、しかし次に真理から2つ目の情報を聞いた瞬間、この人物を知っている一刀たちに衝撃が走った。
「朱里、ここから特にあんたにとっても重要な話だ、よく聞きなよ」
「劉備が徐州の内乱を制し、完全に支配下に置いたが、しかしその時の戦いにおいて捕えた将兵のうち、劉備に従わない将兵約300人を皆殺しにして、そしてその首を城下に晒したそうよ……」
その情報を聞いた3人は、あまりにも桃香の信じられない行為に立ち尽くしていた。
そして一刀は
「その情報は事実か……?」
「私も最初その情報が信じられなかったけど、他からも同一の情報が複数入ってきたから間違いじゃないわ」
「で……でもそれは桃香さんや雛里ちゃんが直接実行したのではなく、他の人が暴走して行われたのでは……」
朱里が真理の情報が間違いであって欲しいという願いを込めた言葉であったが、真理から返ってきた言葉は無常にも
「残念ながら朱里、今回の一件は劉備と雛里が中心となって実行されたそうよ」
「え……何で雛里ちゃん、こんなこと……」
朱里にとっては未だに信じられない事で、その場で放心状態になってしまった。
「でもなぜこのようなことになってしまったのか、その理由分かりますか?」
紫苑が真理に聞くも
「残念ながら、まだ理由については分かってないわ」
「でもなぜ桃香と雛里が中心になっていたのですか、他に愛…関羽や張飛たちはその場に居なかったのですか?」
「詳しい経緯は分からないけど、ちょうどその時に徐州にも青州の黄巾党の一部が流れ込んでいる話があったから、その2人は恐らくそちらの討伐に行っていたのかもしれないわね」
一刀自身もなぜ桃香たちがこのような行為をしたのか、疑問が湧き出ていていたが、このような情報が少ない状況では答えが出るはずも無かった
そして未だにショックから立ち直れていない朱里を見かねて、一刀が紫苑に
「紫苑すまないが、朱里を自分の部屋まで送ってきて貰えないか」
「分かりましたわご主人様、朱里ちゃん、今日の仕事はいいから部屋に戻ってちょっと休みなさい」
紫苑から言われると朱里もようやく言葉を発し
「……ありがとうございます、ご主人様、ちょっと休ませて貰います」
言葉少なく、そして足取り重く部屋を出て行った。
そして残された一刀たちは困惑な状態でその日を過ごしたのであった。
~徐州~
「いったいどういうことですか、桃香様!説明して下さい!」
「お姉ちゃんいったいどうしたのだ?」
烈火のごとく桃香を問い詰めている愛紗と普段の桃香の行動から考えられない事に不安になっている鈴々がいた。
事の発端は桃香たちが徐州に赴任してから、大半の豪族たちは帰順したのだが、元々以前の太守陶謙に対しても反抗してきた一部の豪族たちが桃香に従わないことを通告してきた。
それを当初、愛紗と雛里で討伐に行く予定であったが、青州黄巾党の残党の一部が徐州に流れ込み、国境を荒らしている情報が入り、そこで急遽予定を変更して、愛紗と鈴々に黄巾党鎮圧するように指示をし、反乱している豪族たちに対しては桃香・雛里に凪たち三羽烏で討伐することが決まった。
そして最初に当った豪族に対して、雛里の策などもあり、兵も損なわず快勝したのであったが、しかしその豪族の当主もそれなりに人望があったのか、兵たちも最後まで徹底抗戦してが、これを捕えることができた。
桃香や雛里たちは、捕虜になった兵たちに仕えるようにお願いしたが、豪族の当主やその幹部、それに慕う兵たちなどは桃香に下ることを拒否した。
そして再三説得をしたが意志を変えることができず、雛里は桃香に
「桃香様、彼らには再三投降して貰うようお願いしましたが、仕方がありません。彼らには、私たちの勢力拡大の手段として生贄になっていただきます」
「…生贄?」
「そうです、このまま彼らを解き放っても再び、私たちに抵抗するのは目に見えています。ですので、ここで彼らには全員死罪になって貰い、その首を城下に晒します。そしてこの話を他の抵抗勢力に流布して、私たちに抵抗すれば、このような目に遭うことを認識して貰います。そこで降伏の使者を送り、降伏すれば命を必ず助けように明言します。そうすれば、恐怖感を持った他の豪族たちも私たちに恐れをなして降伏し、いち早く徐州を平定できると思われます」
「……雛里ちゃん、他に方法はないの?」
「桃香様、確かに他に方法はあります。しかしそれでは時間が掛かり、他の勢力に狙われる恐れがあります。桃香様は力を付けたいとおっしゃっていましたね。そして私は桃香様に力を付けるためには、どんなことでもする覚悟です。だから桃香様にも覚悟を決めていただきたいのですと言いました。私はこの徐州を素早く平定して、桃香様に力を付けるためにと思い、このような非道な事を言いました。しかし最終的に決断するのは桃香様です、でも忘れないで下さい。あの時、一刀さんや曹操さんに言われた言葉を……」
雛里からそう言われると桃香は改めて思い出し
「そうだね雛里ちゃん、力が無ければ誰も何をするにも認めてくれないもんね。だから私は雛里ちゃんの言葉を信じることにしたんだよ」
「分かったよ雛里ちゃん、それじゃ雛里ちゃんの方針で行くことするね、そしてこの命令は私からの指示にしておいて」
桃香がそう言うと雛里は自分で責任を被ることを言ったのだが、桃香は首を振りながら
「これで私も逃げないと覚悟を決めたことだから、雛里ちゃん一連托生だよ」
「桃香様・・」
こうして2人は改めて決意を新たにしたのであった。
その後桃香と雛里は、凪たちに今回の処置を告げると凪たちは反対したが、民たちに危害を加えないことや今回の戦いで無理やり徴兵された兵については釈放すること、そして桃香や雛里が自ら今回ここまで至った経緯と決意を語ると共に今回の刑の執行に立ち会い、そして2人の名前で刑の執行を執り行うことを告げられると凪たちも桃香たちの覚悟が固いことを知ると3人は桃香に従い、刑執行に立ち会ったのであった。
そして刑の執行が執り行われた後、先に黄巾党の討伐を終えて帰還した愛紗と鈴々が桃香の行為を聞いて驚いていたが、愛紗は以前一刀に言われたようにできるだけ冷静に考えるようにして、出した結論は桃香自身に直接理由を聞くまでは発言を控えることに努めた。そして遅れて帰還してきた桃香に問い詰めていたのであった。
そして愛紗が桃香に
「桃香様、単刀直入にお聞きします、なぜあのようなことをなされたのですか……」
「愛紗ちゃん……、私だってあんなことやりたくてやった訳じゃないよ。でもあのまま逃がしてもまた敵になると判断したからだよ……」
「では幹部以上の者を処置して、あとの兵士だけでも逃がせばよかったのではないのですか!?」
愛紗が怒気を押さえながら言っていると一緒にいた雛里が
「愛紗さん、桃香様を攻めないで下さい。このようなことを進言したのは私ですから……」
「雛里!お前がいて、なぜこのようなことを進言したのだ!」
雛里が進言したと聞くと、今まで我慢していた愛紗が激高するものの雛里は冷静に
「すべては私たちが力を付けるためです」
「どういうことだ?」
「でははっきり言います、今のままの私たちでしたら、隣国の曹操さんや袁紹さんに攻められて、桃香様の理想を掲げる前に全てが終わってしまいます。そのためには逸早くこの徐州を平定し、ここを足掛かりにして他国に攻める必要があります」
「そして平定するには一番早い方法が力による支配です、だから敵対する豪族に対して、このような処置を取ることにより、敵に恐怖感を与え、そして少しでも早く桃香様の傘下に収める必要があったのです」
「だから言ってあのような方法を取る必要があったのか!」
「では愛紗さん、他に短時間でこの徐州を平定する方法はありますか!あれば教えて下さい」
激高している愛紗に、皮肉な言い方で返事をする雛里に、すると怪訝そうな顔で鈴々が
「鈴々は難しいことは分からないが、じゃお姉ちゃんは、力を付けるためには民を泣かしても構わないのか?」
「鈴々ちゃん、いくら力を付けたいからって民を泣かせる真似はしないよ、これは約束するよ」
「分かったのだ、鈴々はお姉ちゃんの言うことを信じるのだ」
鈴々は桃香の説得を受け入れたが、愛紗は悲壮な顔をして
「では桃香様、一つお聞かせ下さい。あなたが掲げていた「この国を皆が笑顔で過ごせる平和な国にしたい」という理想は捨てたのですか……?」
「愛紗ちゃんそれは今でも思っているよ、でも一刀さんが言っていたように理想を掲げるには、今の私たちにはその力がない、だから今は理想を捨ててでも力を付ける時なの」
「お待ち下さい、桃香様、ではその力を付けるためには勢力拡大のために理想を捨てて、このような悪評を貰い、更にどんなことでもするつもりですか!」
「……そうだよ愛紗ちゃん、今の私たちには力がない、力がないから誰も私たちを認めてくれない、だ
ったら私たちが力を付けるにはどんなことでもしないといけないの!」
「だからと言って理想を捨てて勢力拡大しても信念が無ければ何の意味もありません!」
「でも最終的にはこの国を皆が笑顔で過ごせる平和な国にしたいという目的も理由も変わらないから問題ないでしょう!」
「桃香様が理想を覆して、勢力を拡大してもそれまでの過程でその理想や意義を掲げなければ口先三寸の徒と思われます!」
「桃香様が桃香様でなくなって、それでこの国を皆が笑顔で過ごせる平和な国にしたいと言って誰が喜んでくれると思っていますか!少なくとも私や鈴々は嫌です!桃香様!目を覚まして下さい!」
愛紗が目に涙を浮かべながら、桃香に訴えるも桃香は
「ごめんね愛紗ちゃん、でももう引き返すことは出来ないよ……」
「桃香様……」
桃香の決意が変わらないことが分かると、愛紗は一言言い残し、泣きながらこの場を走り去ってしまった。
これが桃香と愛紗との仲に亀裂が入る出来事になり、これを切っ掛けに波乱を呼ぶとは今の時点では
知る由も無かった……。