第31話
少し短いです。
虎牢関の戦いは、袁紹と袁術の無策な攻撃などで当然落ちるわけがなく、そして他の諸侯たちも虎牢関の守りの堅さのために兵力損失を控え、攻撃もおざなりなものになっていた。
そして連合軍の士気も落ちてきて、そんな中行われている軍議も……
「キーーー、皆さん何をやっているのですか!あんな関を落とすのに手間取るなんて!」
麗羽が一人イライラしていたが、周りはしらけムードで、そんな中麗羽が、桃香が視界に入り
「劉備さん、あなた何も戦果を上げていないのですから、そろそろあなたの軍勢に総攻撃を掛けて貰お……」
麗羽が言うとするがその途中で華琳が
「麗羽、それはあなたにも言えるわね?それらしいことを言うなら、あなたこそ仕事らしい仕事をしたらどうかしら?」
「ふむ、それは言えるな。劉備の軍は汜水関で先陣を切って、痛手を負っているのに対して、袁紹殿の軍は関や汜水最初の虎牢関の攻撃でも被害は言う程受けていないではないのでは?我々は袁紹殿を総大将と仰いでいるが、決して家来ではないがな……」
雪蓮の代理(雪蓮はサボりという病気)に軍議に参加していた冥琳が冷たい視線を向けながら麗羽に対して、批判的な発言をすると、他の諸侯も麗羽、更に同じ袁家の袁術にも批判が相次いだ。
そして汜水関を陥落させている曹操・孫策軍の意向を無視できず、更に他の諸侯の批判も出てきていたことから、そばにいた斗詩が
「姫…、このままでは連合軍が崩壊する恐れが……」
と言うと麗羽が渋々ながら
「わ…分かりましたわ!この私たちが再び先陣を切って、関を落としてみせますわ、おっほほほ~~~」
こうして再び麗羽と美羽が先陣を切ることが決まった。
軍議が終わると桃香と雛里が華琳のところにやって来て
「曹操さんありがとうございます」
「ありがとうございます、本当に助かりました……」
2人が華琳に礼を言ったが
「礼を言われるほどのことはないわ」
「劉備、あなたに一つ聞きたいわ、あなたが目指すものは何?」
「私はこの国をみんなが笑顔で過ごせる平和な国したいのです」
桃香が華琳に言うと、華琳は軽く一瞥して
「フッ…分かったわ劉備、でもね一つ忠告しておくわ、あなたもっと大きな力を付けなさい、さもないとあなたが言ったことは一生実現できないわよ」
華琳はそう言って、その場を立ち去った。
そして残された桃香と雛里だったが、雛里が
「桃香様…」
呼び掛け、返事が無かったので、気になり桃香の顔を見ると桃香の目から涙が出ていた……。
そして桃香は
「う……雛里ちゃん……、私たち力を付けないと誰も相手にしてくれないよね……、悔しいよ……」
泣きながら雛里に語っていた。
それを横で聞いていた雛里も同じく、一刀や華琳の言われたことに内心悔しい気持ちを持っていた、そして桃香のために何とか力を付けたいと思っていた、更に今回虎牢関で一刀が出した防衛策が、朱里が提案したと思い込み、軍師として差が開いたのではないかと、嫉妬心も湧き始めていた。
(「このままでは私、朱里ちゃんに負けてしまう…」)
雛里は桃香に
「桃香様、このままでは私たちは、取り残されてしまいます」
「私たちが力を付けて、安定した勢力を築くまで、一旦、桃香様の理想を捨てていただきますか?」
「それはどういうこと…?」
桃香の疑問に雛里は
「今の我々には、桃香様の理想を掲げるための力は全くありません」
「ですが私は桃香様に力を付けるためには、どんなことでもする覚悟です、だから桃香様にも覚悟を決めていただきたいのです」
雛里から言われると桃香は少し考えた後、涙を拭い去り、そして
「分かったよ雛里ちゃん、私、雛里ちゃんの言葉を信じる、だから一緒に頑張ろうね」
二人はこうして決意を新たにしたのだが、この二人の決意が、愛紗との対立を作る切っ掛けになるとは今の二人には想像も出来なかった……。
一方、連合軍の軍議前日の虎牢関では、一通の書状が一刀たちに届いていた。
それは先に長安に向けて出発していた月たちが無事に長安に到着したとのことであった。
それを聞いた恋や霞、華雄、音々音の董卓軍の将たちも安堵の表情を浮かべ、そして一刀たちも一つの山を越えたことに安心をしていた。
そして朱里が
「それではご主人様、撤退する方向で話を勧めてよろしいですか?」
「ああ、月たちが長安に到着した今、俺たちもここにいる理由もない、連合軍の追撃を完全に諦めさせるために、最後に袁紹らに一撃を加えて撤退したいが」
一刀がそう告げると真理が
「なあ朱里、最後に一撃加えるのだったら、あれ使ったらどうだ?」
「そうですね、せっかく持ってきたのですから使いましょう」
朱里が更なる兵器を投入するのを予告すると
「しかし関を堅固にして、更にあんな物騒な物を持ち込んで来ている時点で負ける気はしないわ」
「主は、袁紹たちには全く容赦しませんな」
「そうだな、ご主人のやる事物騒この上ないな」
「蒲公英、敵が気の毒に思うな~」
「俺、味方で良かった…」
「でもこれを使えば確かに撤退は楽になりますわね」
「しかしあんな物騒な物まだ持っていたかと思うとゾッとするわ」
「霞、私もそう思うぞ、私なんか先陣切って、あれを浴びてしまうことを考えると……」
「か…華雄、変なこと想像するなです」
「ZZZ~~~」(居眠り中)
それぞれ言っていると朱里が
「では撤退の手順ですが、まず最初に碧さん、鉄さん、渚さん、真理お姉さんは騎兵中心で3万の兵を連れて撤退して、函谷関を固めていて下さい」
「その後恋さん、華雄さん、音々音さんたちは5万の兵連れて撤退して下さい」
「そして残りの私たちはもう一度連合と戦ったあとに撤退します、皆さん意見はありますでしょうか?」
朱里が周りを見回すと、特に意見が無かったので、これで最後の軍議が決した。
そして皆が準備のために部屋を出たあと、部屋には紫苑と璃々が残り
「ご主人様、何とか月ちゃんたちが長安にたどり着いて良かったですわ」
「さすがご主人様、前は月たちは命は助かったけど、名前を失って嫌な思いをしたけど、今回はうまくいったね」
2人は一刀を褒めたが、一刀は
「璃々、まだ戦いは終わってないんだ、うまくいくのは最後の戦いが終わって、俺たちが無事長安に到着して、初めて成功なんだ」
一刀から言われると璃々はやや拗ねた顔をしながら
「は~い、分かっているよ」
「でも最後のもう人踏張りだ、紫苑、璃々頼むぞ」
一刀から言われると2人は
「分かっていますわ、最後までやり遂げましょう」
「うん、頑張るからね」
3人はこうして虎牢関最後の戦いの準備を始め、そして碧たちが撤退してから2日後、袁紹たちが総攻撃を仕掛けて来たのであった……。