第3話
久しぶりに見る翠を見て一刀たちは、心の中で
(((「これは西涼に来たな」)))
と思ってしまった。
しかし翠は武器を持っていた一刀たちを見て、身構えてしまい、槍を示し
「お前たち、いったい何者だ!」
一刀たちに怒鳴ってところ、翠の後から来た少年らが
「姉貴(お姉様)、誰かいた?(のか?)(の~)」
ガヤガヤ言いながらやって来た。
一刀は、取り敢えず冷静に話をする必要がある思い
「ちょっと話をしないか」
と言って持っていた武器を地面に置き、紫苑らも同じように武器を地面に置いた。
翠は一刀たちから殺気を感じないことから、槍を下げ
「悪いな、こんなところであんた達がいたので不審に思い、槍を突きつけてしまって」
そう言いながら話し合いに応じる姿勢を見せた。
翠の様子を見て一刀らは、やはり前の記憶が無く、別の世界に来たことを改めて感じた。
一刀が改めて、この状況を把握するため翠に
「では申し訳ないが、いったいここはどこで君たちは誰かな?」
と質問すると翠が
「ここは涼州の武威郡の武威の町の外れさ」
更に自己紹介を始め
「あたしの名は馬超。姓は馬、名は超、字は孟起、涼州太守馬騰の娘だ、横にいるのが弟の馬休に馬鉄、それに従姉妹の馬岱だ」
翠が紹介すると3人はそれぞれ挨拶をした。
それを見て一刀が
「俺の名前は北郷一刀」
と言うと紫苑が
「私は妻の北郷紫苑で、こちらが妹の璃々です」
現代の名前で自己紹介をしていた。
それを聞いて一刀が紫苑に小声で
(「おい、いいのか、元の名前を使わなくて」)
(「ええ、さっきも言ったとおり別の私たちもいる可能性がいるから、同じ人物が2人もいたらややこしいでしょう。それにご主人様と結婚して名前が変わったのですから、別に間違ってはいないでしょう」)
と笑顔で語った。
翠が一刀の名前を聞くと怪訝そうな顔をして
「変わった名前だな、姓が北で、名は郷で、字は一刀と言うのか」
「いいや、姓が北郷で、名が一刀で字はないよ」
「字がないって、いったいあんたらどこから来たんだ?」
「この国とは違う1800年以上過ぎてからある日本という国で、今は倭国って言われているところから来たんだが、分かりやすく言うと、馬超さんが今の時代から秦の始皇帝の時代に変わって来たって言ったら分かるかな…」
一刀が翠に説明したものの、翠は頭の中で疑問符を付けながら
「う~ん、分かったようで・・分かんねえ・・」
と頭を抱え込んでいた。
そこで弟の馬休が
「すいません、姉貴に変わって質問ですが、ではあなた様方は、いったいどうやってここまで来たのですか?」
「昨日、部屋で寝ていて、起きたらここにいたとしか言いようがないな…」
「それでは、もし良かったら持っているもの見せてもらいますか?」
馬休が言うと一刀らが持っているものを確かめると、なぜか一刀が携帯電話、紫苑がお金、璃々がスナック菓子を持っていた。
馬休が携帯電話を見て一刀に尋ねると
「これは何ですか」
「携帯電話。俺のいた時代じゃ当たり前の道具で、遠くにいる相手と話すための道具だよ。この世界じゃその機能は使えないけど、カメラなら使える」
「「「「かめら?」」」」
「そう、写真…精巧な絵って言えばいいのかな。それを写す道具だよ。とにかく論よ証拠。誰かそこに立って」
「はいはーい♪私を撮って見て~」
馬岱が名乗りを上げたので、携帯から
「カシャ」
携帯電話からシャッター音がしたところ翠が
「なんだ?今の変な音は」
「出来たって合図・・・ほら」
そう言って一刀が携帯の画面を翠たちに向ける。携帯の小さな画面に4人の少年が詰め寄り、彼ら達からすれば信じられないほど精巧に映っている馬岱を見てに感嘆の声を漏らした。
更に馬休が、紫苑が持っていた硬貨を見て
「すごい精巧な作りだな・・」
と驚き、そして璃々が翠と馬鉄に
「これ食べてみる?」
スナック菓子を示したが、さすがに気味が悪いと思い翠たちが手を出さなかったので、璃々が
「あ~毒が入ってると思ってるのでしょう、じゃあ私が食べてみるからね」
そう言いながらスナック菓子を開け、2人の目の前で食べ始め、璃々が菓子を翠たちに配り、恐る恐る食べてみると
「「うまい~」」
2人とも争うよう食べていたため、すっかり璃々に餌付け状態にされていた…。
それを見て馬休と馬岱が
「この馬鹿姉貴!馬鉄!いったい何してんだよ!食べ物に夢中になってどうするんだ!」
「お姉様~皆の前で恥ずかしいから止めてよ~(涙目)」
2人は説教を食らっていた。
食べ物に夢中になる翠を見て一刀たちは心の中で
(((この世界でも翠(ちゃん、お姉ちゃん)は翠(ちゃん、お姉ちゃん)だな・・)))
3人はなぜか納得していた。
馬休と馬岱に説教されて、気を取り直して恥ずかしながら翠が一刀に
「す…すまねえ、食べ物に夢中になってしまって、それで単刀直入に聞くけど、ところであんたらさ天の御遣いなのか?」
「う~ん、天の御遣いと言い方はどうかな?見ての通り、普通の親子だし、俺らが見せた物も俺等の世界ではありふれた物で、それに特別な能力や術を持っている訳じゃあないけどな」
「しかし、俺らがここに来たということは、何らかの天命があって、ここに来たということだろう、恐らく今は、世が乱れ、民など苦しんでいることであろう、だったら俺らは、民が普通に暮らし、普通な人生、普通な恋愛などできるように戦うつもりだ」
と熱く語った、一刀は以前の世界では前線には立っていたが自らは戦っていないことを気にしており、今度は自ら武器を持って戦うことを心に決めていた。
翠はそんな一刀を見て
「こいつ、今まで見てきた男たちと全く違うな…」
何となく一刀を気になり始めていた。
そこで翠は
「せっかくだからよ、うちの城に来て、うちの母さんや私や皆に色々とあんたの国のことや理想を聞かせてくれないか、そして出来れば私らの国に仕えてくれないか」
翠が言うと
「ぜひ来ていただけますか」
「よろしくお願いします」
「お兄さんら来て、仲良くしようよ~♪」
馬休、馬鉄、馬岱も揃って一刀らに城に来て貰えるよう嘆願した。
一刀は、他に行くあてもないことや4人の願いを無下にする気もないことから素直に願いを受け入れた。
そして紫苑と璃々にも確認すると
「「いいですわ、ご主人様」」
2人も同意して、翠らの案内で城に向かった。