第29話
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~一刀視点~
取り敢えず、初日の戦いを終え、皆、戦いの感想を語って盛り上がっていたが、璃々が紫苑と自分が射た矢で袁紹がおもらししたことを話して、皆は大笑いしていたが、約1名は何か他人事とは思えなかった表情をしていたのは気のせいだろうか……?
翌日、連合軍は袁紹を中心に攻撃を加えてきた、特に袁紹は昨日の恥を俺ら、全員殺して記憶から抹消したいのか、無茶苦茶な攻撃をしてきたが、無秩序な攻撃では関は陥落できない。
逆に不気味だったのが、曹操軍と孫策軍で、曹操軍は昨日夏侯惇が負傷したにも関わらず、早々復帰して前線で戦い、そして紫苑への敵討ちに静かに燃える夏侯淵も的確な射るから迷惑極まりないが、今のところ損害を押さえたい曹操の意向もあり、全力では攻めていない状態である。
一方孫策軍も、本気で攻め込んでいないが、隙があれば、関を奪い取ろうという動きをしている。
あとの諸侯は攻めるも兵の士気や練度も今一つなので、攻めてきても脅威ではない。
あと桃香の軍は、全く攻めてこないが物見の話では、現在後方待機になっている状態で、星の話では昨日、俺や月に対して暴言を吐いた愛紗を散々打ちのめし、恋も鈴々たちを打ちのめしたため、現場指揮する人物がいないらしい。
しかし、星と愛紗の話の中で、愛紗たちは袁紹の嘘を完全に信じていたそうで、それを星と恋が愛紗たちに指摘して完全に叩きのめした。
愛紗は、以前紫苑が言ったことを完全に忘れているのか、若しくは桃香の忠誠心で自分を見失っているのだろうか……、そして桃香も単純に袁紹の嘘を信じていたんだろうな、それで今後はどうするつもりかな……。
俺も他人を心配している場合ではないな……。
~一刀視点終了~
連合軍が氾水関を攻略開始してから2週間が経過して、一向に落ちる気配が無かった、そんな中、前線から外れて休息中、孫策軍の陣において冥琳が、前にある氾水関を見ていると
「関から出ている炊煙がいつもより多い……、まさか!」
「誰か、雪蓮を呼んできてくれ」
と伝令兵に雪蓮を呼びに行かせた。
炊煙を見て冥琳は
「この好機、利用させて貰うぞ……」
と呟いていた。
一方、その頃華琳も炊煙の多さに気付き
「それで桂花、貴女も敵が撤退間近だと思っているのね」
「はい華琳様、現在敵が我々を押さえ込んでいるにも関わらず、炊煙を多く出ていることは、出陣の可能性はあるでしょうが、我々が攻め込んで現在では、打って出ることは難しいでしょう、ですので今は撤退の可能性が大だとと思います」
桂花が意見を述べると華琳は、
「取り敢えず、春蘭、秋蘭、季依あなたたちはいつでも兵を動かせるよう準備しておきなさい」
「「「御意」」」
華琳は自分と桂花の意見が合致していたことから、春蘭らに汜水関占領の準備を進めた。
一刀のところに、ちょうど虎牢関を守っている朱里から伝令が来て、虎牢関の工事が終了したので撤退して欲しいとのことであったので、軍議をして、まず歩兵や弓部隊を夜陰に紛れて後退、その部隊を率いるのが、董卓軍は恋と音々音、北郷軍は璃々と真里である。
最初、璃々は一刀たち一緒に行動したいと主張したが、紫苑が
「あなたが、翠ちゃん、星ちゃんや渚さんに勝てるのだったら替わってもいいわよ」
怖い笑顔で言われると
「……ごめんなさい、まだ無理です……」
まだこの3人に勝てない璃々はあっさり引き下げた。
横で聞いていた一刀は笑いながら
「璃々我慢しろよ、では碧さん、紫苑、翠、星、渚さんに霞、華雄らの将と騎馬隊と弓騎隊で朝駆けの奇襲を加えて、そのまま連合軍の陣を横断して、俺たちは関に戻らずに迂回して虎牢関に引き上げる、奇襲時は曹操軍と孫策軍の方に近寄らずに行くからな」
一刀が作戦を告げると、翠が
「なあご主人様、なぜ曹操軍や孫策軍を避けるんだ?」
「正直、手強い敵だから、この両軍を相手にしたら面倒になる、まずはそれ以外の軍の兵を減らすのが一番だからな」
「そうやな孫策軍も手強かったし、まず奇襲を確実に成功させるのやったら、それが正解やわ」
「ふ~ん、分かったよ、ご主人様」
と一刀の意見に翠と霞も同意し、他からも異論が無かったので、方針が決まった。
そして翌朝の日の出が出るか出ない時に汜水関の門が開き、朝駆けの奇襲が始まった。
昨晩から警戒していた曹操軍と孫策軍以外の部隊は、完全にこの奇襲の備えがなされておらず、完全に混乱状態になっていた。
そして奇襲するのを見届けて、冥琳が明命を呼び、大至急、関の調査に向かわせた。
そして冥琳は、横にいたやや拗ねている雪蓮に
「なんだ不服そうだな」
「うーん、何で敵がこっちこないかなと思って」
「はぁ、まだ戦いは続くのだから、我慢しろよ」
「はいはい分かってるって、それでこれからどうするの?」
「明命の偵察が終わり、何も無ければ祭殿と明命に関の一番乗りをしてもらう」
「えーーー、私が行きたい」
「却下だ、万が一のことがあるからな、祭殿、お願いします」
「分かった、任せてくれ」
「それでだ雪蓮、お前をこのまま放っておくと、勝手に飛び出して、敵軍と戦いを挑みに行きそうだ
から、私と一緒に居てもらうぞ」
「ぶーぶー、人を戦闘狂みたいに言わないでよ」
「ほう、そうだと言い切れるのか?」
「うっ……自信はないかな?」
冥琳に指摘され、変に素直な雪蓮であった。
一方、曹操軍も一刀の奇襲を見て、曹操軍の方には攻撃の恐れがないと分かり
「仕方ないわね、こちらに掛かってこないから」
「春蘭、秋蘭、季依、貴女たちは今から関に攻撃する準備をしなさい」
「あと孫策たちが関の一番乗りを狙っているから、早く準備して行きなさい」
「「「御意!」」」
3人はただちに軍を動かす準備をしていた。
「今回はあなたにしてやられたけど、次はそうはさせないわよ、覚悟しなさい北郷一刀……」
すでに次の虎牢関に想いを馳せている華琳であった。
一方、一刀らは各陣を突破して、最後方にいる桃香の陣に突撃を開始した。
さすがに最後方になると、備えも間に合っていた。そしてようやく怪我から復帰していた鈴々や凪、真桜、沙和はそれぞれ指揮をして何とか防戦していたが、防衛線の一角が破られ、一刀と紫苑、星の部隊が桃香の本陣まで迫った。
そして本陣に迫ると愛紗が立ちはだかっていた。それを見た星が
「久しぶりだな、関雲長殿、あれから結論は出たか?」
星が愛紗に言うと愛紗は暗い表情を出して
「……正直言って私は迷っている…まだ結論が出ていない、そして今、私の心は出口のない迷路に迷い込んでいる気分だ…」
前回と会った時と違い、全てにおいて迷いが出ている愛紗を見て一刀が星を制して
「愛紗、事情は星…趙雲から聞いた、では一つ聞きたいが愛紗のいう正義は何かな?」
一刀から聞かれる愛紗は困った顔をしながら
「……ありきたりの答えですが、民を困らせている悪を倒し、民を救うことです…」
愛紗から聞くと一刀は
「うん、確かにその答えは、間違ってはいない、それではそれを踏まえて聞くが、今の俺たちは民を困らせている悪かな?」
一刀に言われると愛紗は
「確かにそこにいる趙子龍殿が言われるまで、あなたや董卓殿を悪と断じていました、しかしそれを確かめもせずにいた武を奮っていた自分が怖くなったのです……、本当に自分が正しかったのかと……」
愛紗がそう答えたが、一刀は前史や今まででもここまで弱気な愛紗を見るのは初めてだった。
そして一刀の横にいた紫苑が
「愛紗ちゃん、私からも一つ聞くけど、この世に絶対の正義はあると思う?」
紫苑に尋ねられると愛紗は
「絶対の正義…、恐らくないと思います……」
「正解よ愛紗ちゃん、正義の解釈も人によったり、その時の状況や立場によって変わるのよ、だから私から言えることは一つ、多数の人間を幸福に導くことができる行為、それを行なうことができるのを正義だと思うの」
「正義の解釈なんて色々あるのよ、一つの形なんてないのよ、だからそれを自分の目や耳で確かめて、それで皆にとってどれが幸せか考えて欲しいわ」
紫苑は愛紗を諭すように言った。
すると愛紗は一刀たちに頭を下げ
「先の暴言、大変申し訳ない…、貴方の言葉でまだ迷いが晴れた訳ではありませんが、私のやるべきことが分かったような気がします」
一刀たちは、愛紗が先程よりは顔つきが良くなっているのを感じていた。
すると、本陣から桃香と雛里がやって来て桃香が
「愛紗ちゃん!大丈夫?」
「大丈夫です、桃香様、ご心配おかけしました」
「よかった……」
そして一刀たちの方を見て桃香は単刀直入に
「一刀さん、いったい洛陽はどうなっているのですか?」
「桃香、それを教えてもいいけど、その答えを聞いてどうするんだ?それを聞いて有利な方に寝返るのか?」
一刀が厳しい口調で聞くと桃香が
「そうではありません!私はただ洛陽の人が困っているかどうか聞きたくて…」
一刀は桃香の言い方に何らかの不快感を感じ
「じゃあ教えてやるよ、洛陽は董卓が来てから治安とかは安定している、俺たちは色々な情報を調べて、袁紹の嘘が分かったから董卓に付いた」
「それでだ、これを聞いてどうするんだ桃香?」
桃香は少し間を空けて
「一刀さん、今更ですが話し合いって無理ですか?」
一刀たちは桃香の発言に唖然とし、そして横にいた雛里も
「あわわ……、何を言っているんでしゅか桃香様!」
雛里は桃香の発言にパニック状態になっていた。
それを聞いた一刀もさすがに怒りを隠そうとせず
「………桃香、本気で言っているのか?」
「…はい」
桃香が返事をすると一刀は無言で紫電を桃香の顔に向けた。
それを見た愛紗が
「一刀様!」
制止しようとするが、紫苑が
「大丈夫よ、愛紗ちゃん、ご主人様は斬るつもりはないから」
紫苑が言うと一刀が
「さすがに分かっていたか」
紫苑の洞察力に褒めて、そして桃香に
「桃香、君が言っているのは、自分がこういう風に有利な立場に立って、話し合いしましょうと言っているものだ、君の場合、それも自分の力では無く、他人の力を利用してな」
そして一刀は紫電を下げ
「では俺から君に一つ聞きたい、君の理想を聞かせて欲しい」
一刀が桃香に聞くと
「私はこの国を皆で笑顔で過ごせる平和な国にしたい、それだけです…」
桃香が自分の理想を言ったが、一刀はさっきの自分の中にあった不快感の理由が分かった。
(「桃香は理想は立派だが、今のところそれを成し遂げるための方策や力を持っていない、だから他人や家臣達の力を利用するのは分かる、しかし桃香は無意識に他人の力に依存し過ぎているし、更に自分の手を汚していない感じだから、言う言葉も全く重みがない……」)
と一刀は感じ取った。
「桃香、君の理想は立派だ、でもはっきり言うが今の君にそれを言う資格も力もない」
「君の言葉は全てにおいて軽過ぎる、これが全てだ、そして君の力無き理想は、皆にとっては甘い毒で迷惑にしかならない理想だ、だから今のところ、君の意見や理想は俺は一切受け付けない、もし俺に対して自分の意見や理想を通すのであれば、俺にその力を見せてくれ、そうでなければ俺は認めない」
一刀はそう言い切った。
それを聞いた桃香は
「そんな……」
一言言って立ち尽くしていた。
すると、劉備軍の他の部隊が桃香らの危機を感じ、増援にやって来たことに気付き、紫苑と星が一刀に引き上げるように告げると一刀が最後に桃香と愛紗に
「これでも2人の事は期待しているのだから、頑張ってくれよ」
そう言いながら2人の返事を聞かず立ち去って行ったが、この一刀の助言を聞いた桃香と愛紗の2人の間に、深い溝が出来てしまうとは今の時点は想像すら出来なかった……。