第17話
一刀たちは、武関で黄巾党を破り、宛城に向かっていたが、宛城の手前、約30里手前で陣を張り、宛城を攻撃する部隊の集結を図っていた。
そして、官軍で今回の指揮官である張遼の名で、一刀の陣で軍議が開かれようとしていた。
~曹操の陣~
「あら、秋蘭どうかしたの?」
「華琳様、これを」
と言って手紙を渡した。
華琳と呼ばれた女性、名は曹操、字は猛徳で、現在は陳留太守である。
秋蘭と呼ばれた女性、こちらは名は夏侯淵、字が妙才、華琳の右腕的存在、姉に春蘭こと夏侯惇がいる。
そして手紙を見て華琳が
「軍議に参加しろ…か」
「仕方がありません、華琳様、まだまだ我々は力不足なのですから」
「あら、秋蘭、そういう意味で言ったのではないのよ、今回、この戦いに参加している陣営を見たら、会うのが楽しみということを。孫策に劉備、そして馬騰軍の指揮官である天の御遣い人がどんな人物か」
「そして我が覇業の敵と成り得るかどうかをね…」
「秋蘭、すぐに桂花(荀彧)を呼んで、軍議に出席するわよ」
~孫策の陣~
「軍議なんてめんどくさい~、冥琳代わりに行ってきて」
「馬鹿な事言うな雪蓮、お前が行かなければ、誰が行くのだ?」
雪蓮と呼ばれている女性、名は孫策、字は伯符、現在、袁術の将として軍を率いている。
そして冥琳と呼ばれている女性、名は周瑜、字は公謹、孫策の軍師でもあり、盟友で「断金の交わり」を交している。
「仕方がないか、取り敢えず、行きましょうか?」
「おや、やけに素直にだな」
「まあね、行った方が面白いと、私の感が囁いているのよね」
「面白いか…、まあその感が外れたことがないから信用はするけどな」
「そうね、さあ行きましょう、孫呉復活の第一歩を踏み出すために…」
~劉備の陣~
「ほええ~沢山集まっているね~」
「桃香様、まもなく軍議が始まりますので、準備の方を」
「うん、ありがとうね愛紗ちゃん、あと雛里ちゃんは?」
「雛里ももうすぐしたら、こちらに来ますので」
「しかし、一刀さんらと会うのも久しぶりね、皆、元気でやっているかしら」
「実は私も、皆と会うのが楽しみです」
「ふ~ん、愛紗ちゃん、一刀さんが気になるの?」
「い、いいえ、そんなことはありませぬ」
「そうか、そうか、さあ軍議に行こう、愛紗ちゃん」
「そんなのではありません!桃香様!」
先の2人に比べ、呑気な桃香たちであった。
~一刀の陣~
そして、各軍の代表者と軍師が集まり、そして警護の武将については別室で待つこととなっていた。
そしてお互いの自己紹介を終え、朱里が現状の把握ということで、各軍勢を人員を公表すると
馬騰軍 20000
張遼軍 15000
曹操軍 25000
孫策軍 15000
劉備軍 15000(公孫讃の援軍込み、公孫讃自身は、自領守備のため参戦出来ず)
そして現在、宛城に籠城している黄巾党本隊は約10万くらいで、首謀者の張角らも一緒にいるという情報であった。
そして、霞が
「一応、ウチが大将みたいになってるけど、頭使うのを苦手やから、各軍いい軍師連れてきてるやろ、無茶な策ではない限り、承認するから、あんじょう頼むで」
丸投げな提案を出してきた。
それを聞いた一刀が内心
(「おいおい、それはないだろう、いくらこの国の5本の指に入ろうとする軍師らがいるとは言え、それは無茶苦茶だろ」)
と思っていると華琳が
「あなた、なかなか面白い提案するね」
すると霞が
「ああ下手に私が、策を立てるよりは、皆、いい軍師連れてきてるんやろ、それやったら、兵の被害が少なくすむよう策を考えてくれるやろ、アホな作戦を立てて被害を増やすのは、嫌やからな」
「確かに、それはいい考えね、下手な指揮で兵を死なすよりはよほどいいわ」
と雪蓮も同意し、一刀も桃香も同意したので、各軍の軍師を中心に策を考えることにした。
そして冥琳が朱里に
「現在、敵の食糧状態は分かるか?」
「詳しい量は分かりませんが、ただ10万の大軍を抱えてますから、潤沢ではありませんね」
「ふむ…」
すると桂花が
「それだったら、敵を誘き寄せるよう、偽の食糧の輸送隊を作るのは、どうかしら」
そして雛里が
「その輸送の荷物の中に兵を潜ませたらどうでしょうか」
と言うと、続いて冥琳が
「そうだな、これに敗残兵を装った黄巾党にこれを襲わせ…」
最後に朱里が
「偽の伝令を使い、敵兵を城から出して、救助に向かわせて、わざと救助させ、そして、その敗残兵と輸送隊の中に潜ませた部隊で城中に入る…」
そして一刀が
(「さすがにこれだけの軍師がいたら、多少の兵力の差なんか問題にならないだろうな…」)
と思いながら
「俺らが攻めた時に中から蜂起するか…」
と言うと、華琳、雪蓮、桃香は
「この案が一番妥当じゃない、まともに攻めても被害が多そうだし」
「そうね、こちらの兵が少ないから、被害が少ない方が助かるわ」
「皆、すごいね~、こんな策考えつくなんて…」
3人は様々な反応を示していた。
そして、霞もその作戦を了解し、あとは各軍の軍師で詳細を詰めることなり、軍議は解散する運びとなったが、すると一刀のところに華琳がやって来て、いきなり
「あなたが噂の御遣いなのね、噂と違って、ずいぶん普通なのね」
(「相変わらず、キツい言葉を吐くな、華琳は」)
内心思いながらも、一刀も皆が見ている前で、舐められては駄目だと思い
「ああ、確かに見た目は普通だけとね、噂の曹操さんも当てにはならないな、人を見かけで判断するなんて、身体同様に器も小さいのかな?」
と切り返すと、華琳は一刀の見事な切り返しにあっけに取られたが、そして表情を元に戻し、
「なかなか面白いね、あなた、今の会話の切り返しやそして涼州での治政の噂も聞いているわ、ぜひ私に仕えないかしら」
と人材収拾に余念がない華琳が一刀に誘いをかけたが、一刀はあっさりと
「あ~、それは無理だな」
断ったので、華琳は少しムッとした表情で一刀に
「それは、何故かしら?」
「愛する妻を捨てて、曹操さんに仕えることできる訳ないだろう」
一刀がその拒否理由を答えると華琳もその回答に驚き
「え!?妻ですって?」
「ああ、俺には愛する妻が3人いるが、そのうちの1人が、錦馬超さ」
と一刀が自信満々に答えると、華琳はさすがに驚きを隠せず
「そ、そうなの残念だわ」
(「すでに馬家に先手を打たれたか…、何か手段を考えて出直しだわ」)
「でも、私は諦めないからね、また出直しから来るわ、秋蘭、桂花は帰るわよ」
と言って、華琳たちは自分たちの陣に帰った。
それを横で見ていた雪蓮が一刀に
「ふ~ん、あなたって、結婚しているのね」
「ああ、そうだよ」
「何で馬超と結婚したの?」
「何で、好きに決まっているからだろう、それ以外になるかあるのか?」
「聞き方が悪かったわね、馬超のどこに惚れたの?」
「話を聞いていなかったか?俺にはすでに妻が3人いるんだ、翠…馬超は3人目の妻で、馬超はそ
んな俺でもいいから結婚したんだ、そんな馬超の意志を無視した言い方は失礼だな」
一刀が雪蓮に指摘すると、さすがに雪蓮も
「ごめんなさいね、そういうつもりじゃなかったわ、ただあなたに興味があって聞いてみたかったの」
「その血を貰えるのは、馬家だけなの?」
雪蓮が一刀に言うと、一刀もさすがに目が点になり、雪蓮が一刀に
「だか~ら、私はどうって、聞いているの」
「いや、それおかしいだろ、いきなり初対面でそんな話になるのは?」
「全くだ、雪蓮、帰るぞ」
「いたた~」
雪蓮の背後から、髪の毛を引っ張っている冥琳の姿があった。そして冥琳が一刀に
「すまなかった、呼び方は、北郷でいいか?」
「ああ北郷でいいよ、気にしてはいないけど…、周喩さん、いつも孫策さんこんななの?」
「ああ…、突拍子な事を平気で言ったり、実行したりするからな」
冥琳が一刀に言うと、思わず一刀が冥琳に
「…苦労しますね」
「分かってくれるか…」
「ぶ~ぶ~、私をそんな変な人みたいに言わないの」
雪蓮が文句を言うも、冥琳は、一刀に迷惑を掛けたことを謝罪して、無理やり雪蓮を連れて帰った。
今度は、桃香、愛紗、雛里がやって来て、
「こんにちは、一刀さん」
「お久しぶりです、一刀殿」
「お、お久しゃしぶりです」
3人が挨拶をしたが、一刀は雛里に
「朱里と話をしたの?」
「は、はい、元気そうで良かったでしゅ」
「戦いが終わったら、ゆっくりと話をする時間があったら、また話をするといいよ」
「はい!」
と元気よく返事をした。
そして一刀は、桃香と愛紗に
「皆、元気そうで良かったよ」
すると桃香と愛紗も
「うん、一刀さんも元気そうで良かったよ」
「またお会いできて、何よりです」
「そうだな桃香、あれからここまで兵とか集めてすごいな」
「私だけの力じゃ無理だよ、愛紗ちゃんや鈴々ちゃんに雛里ちゃん、そして凪ちゃん、真桜ちゃん、沙和ちゃんもいるからだよ」
一刀は聞いたことがない人がいたので
「そのあとの3人は、誰?」
「あ~、ごめんなさい。楽進ちゃんに李典ちゃん、于禁ちゃんのことだよ」
一刀は、それを聞くと
「(この3人って、本来曹操の配下だよな…何でだ?)」
疑問に思っていると愛紗が
「その3人は、別の町で「大梁義勇軍」という義勇軍として、賊から町を守っていたのですが、町を攻められた時に、近くにいた私たちが助け、そして取り敢えず、この乱が治まるまで、一緒に戦ってくれる仲間ですよ」
と補則説明してくれた。
「へ~、大したもんだな。また機会があれば、紹介して欲しいな」
「うん、いいよ」
「3人とも、怪我しないよう頑張れよ」
一刀が桃香らに激励すると、桃香らも一刀と笑顔で別れた。
そのやり取りずっとを見ていた紫苑と翠が
「ご主人様、曹操さんや孫策さんに、ずいぶん翠ちゃんのことを熱く語っていましたね」
「見ていたのか紫苑、話の成り行き上、こんな話になってしまったけど」
「ちょっと妬いてしまいましたけど、ちょっと翠ちゃん見て下さい」
一刀が翠の方を見ると、顔を赤らめて放心状態になっていた。
それを見て一刀が翠に
「何、顔を赤くしてるんだよ」
「い、いや、あんなに妻だと強調されると逆に照れてしまって…」
「だって事実だろ、翠はかわいいのだから、もう少し自分に自信持てよ」
一刀がそう言いながら、翠の頭を撫でると、翠も
「こ、子供じゃないんだ馬鹿するなよ」
「いいじゃないか、俺が好きでやっているのだから、それとも触れるのは嫌か?」
「嫌じゃないけど…、ご主人様がいいのだったら、触ってもいいよ」
最後は照れながら言う翠であった。
そして各軍の軍師と協議した結果、3日後に作戦を開始することに決まり、黄巾党討伐の最終決戦を迎えるのであった。