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真・恋姫無双 〜新外史伝〜  作者: 殴って退場
第12章 魏滅亡
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第130話

「舐めた真似してくれるわね…曹孟徳」


占領した魏の本拠地であった北海の食糧庫や金倉が全くない状況を見て陽炎(司馬懿)は苦虫を潰した表情を浮かべていた。


晋は満を持して魏攻略に開始、そして破竹の勢いで攻略をして、本拠地である北海は降伏した。晋の軍勢は意気揚々と城内に入城したが、城内を検分すると城内の食糧や金等が全くない状態であった。


そこで陽炎は、魏の残存兵を問い質したところ、城内の食糧や金について民や離脱する兵の退職金代わりに配ったということが明らかになった。


晋は民に配られた食糧を再び徴集する訳にもいかず、本国から輸送することにしたが、物資が全くないのはここだけでは無く他の城でも行われていることは明らかとなり、晋は再建へ大きな負担を余儀なくされた。


では本来いるはずの魏の軍勢は何処に消えたのか。


既に北と西は晋が押さえており、そして東は海、少数で脱出するなら兎も角多人数での脱出は不可能。


「南へ逃げたわね…。でも今まで関係が無かった呉が魏を受け入れするかしら」


陽炎は考えるとある人物が浮かび、それを繋げると一本の流れが出来る。


「……北郷一刀が裏で糸を引いていると言うことね…」


元々、敵対関係で魏と呉があるが、以前に蜀呉魏の三国会談があったことは既に判明しており、北郷一刀の仲介があれば正式に和解する事も可能。


特に呉は以前の戦いで蓮華が捕えられたが、交渉の末無傷で返還、そして賠償も形ばかりの物で、それを恩と感じれば、今回の蜀の要請を受け入れする可能性があり、そして魏はこのままでは滅亡は必至、再起を期すのであれば一番力を持っている蜀に亡命するのは可能性が高い。


そう結論出した陽炎は、徐晃・張郃・郭淮そして杜預(「とよ」と読みます。鐘会の偽名)を出陣させ、華琳追撃へ向かわせた。


一方華琳は、以前紫苑が魏に交渉した際に華琳に対し国を放棄、捲土重来を期して蜀に亡命するように進言されたが、感情の縺れか紫苑との決闘の末敗れ、これを渋々ながら受け入れた経緯があったため、心中穏やかでは無かった。


華琳は国を放棄する際、晋の国力増強、自分の名誉や求心力の低下を恐れ、何時か自分が帰ってきた時の影響力を多少でも残しておきたいという意図や司馬懿に対する嫌がらせも含め、脱出する際、必要以上に持ち運びできない食糧を領民に配って行ったのであった。


内心では


(「必ず、ここに戻ってみせるわ。」)


まだ華琳は天下の野望を捨てていなかった。


そして足手纏いになる文官や華琳に従う者の家族は北海の北西にある下密から一刀の依頼を受けた呉の船に乗せ既に呉へ向け出発していた。


華琳は再起を期する為、同行を希望する兵約2万を引き連れ、呉へ向け出発したのであったが、同行する兵の多さについて当初星は異議を唱えていた。


「今回の策は時が重要、そのような多く人数を連れられたら、敵に見つかる可能性が高く、最悪敵に囲まれてしまう可能があります」


「あら蜀は、兵の人数まで指定するの。私たちはそこまで貴女たちに指図される謂れはないわ。今後に備え、多くの兵が必要なの。そこまで蜀に負担掛けたくないわ。余計な口出しは無用よ」


華琳自らそう言われると、星も内政干渉という不要な騒ぎになる恐れがあったので、これ以上の口出しを控えたのであった。


だがこちらの進軍もあまり順調とは言えなかった、今までの強兵部隊であった魏軍だったら問題は無かったが、敗退後に徴兵された兵も多かったため、退却する速度は当初は速かったが、今までの兵の強さのつもりで強行軍を行った結果、日が進むに連れ、脱走する者が増え、更に疲れや負傷から退却に後れを生じる者の人数が日増しに増えたことから、逆に進軍が遅くなっていた。


これには流石の華琳や軍師たちも自軍の実力低下に驚きを隠せないでいたが、これ以上進軍を遅らせる訳にもいかず、ある程度の速さを保ち何とか進軍していたが、


「このままでは拙いかもしれぬ…」


これを見ていた星はそう言いながら、一刀やある人物と繋ぎを取り退却の援護を要請した。


これは星の判断であるが、これが結果的に大いに助かったのは後の話である。


一方、星からの手紙の知らせを聞いた秋蘭は、華琳や姉の春蘭たちの救出に向かわせて欲しいと一刀に嘆願するが


「晋との約定もあり、今、兵を出す訳にはいかないんだ。秋蘭、君には申し訳ない、ここは耐え忍んで欲しい」


一刀から諭されると秋蘭も大声を出す事なく


「すまない…。分かっていることなのだが、言わずにいられなかった」


そう言い残し、その場を去った。


これを横で見ていた紫苑が


「ご主人様、申し訳ありませんがここは秋蘭さんの為に一つ一肌脱いでいただけますでしょうか?」


紫苑は、主であった華琳を心配する秋蘭を慰める様に頼み込むと一刀は承諾して秋蘭の元へ向かった。


そして一刀は秋蘭を呼び出して互いに酒を酌み交わす。


「この身は蜀に降ったとは言え、やはり華琳様が心配で仕方がない。何か私に出来ることは無いだろうか…」


そんな中、秋蘭は心配そうな表情で呟く。


「秋蘭、君の気持ちは分かる。だけど今は無事にここに来る事を信じるしかない。だから辛い時は我慢せずに泣けばいいんだ」


一刀は強引に秋蘭を抱き締め、自分の胸に引き寄せる。


「今は君にしてあげる事はこれくらいの事しかできない」


「だけど、苦しみや悲しみがあるから人なんだ。そして苦しみがあるから喜びもある。だから信じよう、曹操さんたちの無事を祈って」


「……ああ、今はその言葉を信じよう」


「素直だね」


「言葉を斜めに捕えても仕方があるまい。女は本当に強いものだ。だが、今は甘えさせくれ…」


そう言いながら、秋蘭の目から涙が流れ続けていた。


翌朝、元気そうな秋蘭を見て紫苑は


「ご主人様、どういう方法で秋蘭さんを元気にしたのですか?」


「う~ん。それは内緒だね」


「あら、残念ですわ。ぜひ同じ事を私にもやって戴きたかったのですが」


「ほらほら拗ねないの。こうして秋蘭を慰めただけだから」


一刀が意地悪な返事をすると紫苑が少し拗ねた表情を隠さなかった、すると一刀は強引に紫苑の顔を自分の胸に持ってくると


「はぁ…こうしてご主人様の胸の中に抱かれるのも悪くないですわね……」


「そうなの?」


「ええ…しばらくこうさせて下さい」


「いいよ」


一刀と紫苑はしばらくこうしていたが


「ご主人様!お母さん!二人でまったりイチャついて、ずる―――い!!」


二人の姿を見つけた璃々も、同じような事を一刀に強請り、璃々にも同じ事をしたのは言うまでもなかった。


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