第13話
一刀と紫苑は、結局3日間、水鏡塾に逗留し、その間に水鏡を始め、朱里、雛里、桃香、愛紗などは、一刀の世界の政治や政策、文化などを講義し、そして璃々、翠、蒲公英、鈴々は、水鏡の講義を受けていた。
何人かは、講義終了後、脱け殻になっていたが・・。
そして約束の3日間を終え、一刀たちは涼州に、桃香たちは幽州に帰ることとなり、それぞれ帰る前に別れの挨拶をしていた。
翠が水鏡に別れの挨拶を終えると水鏡は朱里に
「身体には気をつけて、元気でやりなさい」
「はい、先生も身体に気をつけて…」
と涙を流していた。
そして雛里に対しても
「雛里ちゃん、離れてもお友達だからね」
「う…ん、ありがとうね、朱里ちゃん、元気でね」
と2人は、別れの挨拶を交わしていた。
一方、翠と鈴々は、稽古の勝敗が五分五分だったので
「今度会う時は、絶対勝ち越してやるからな」
「今度会った時こそ翠には負けないのだ、覚悟しておくのだ」
とこちらも再会を誓いあっていた。
そしてそれぞれが別れの挨拶を交わす中、一刀と紫苑が桃香と愛紗に
「桃香、愛紗元気でな」
「2人とも、身体に気をつけてね」
「うん、一刀さん、紫苑さんも元気でね」
「ありがとうございます、皆さんもお元気で」
とそれぞれ挨拶を交わし、一刀が桃香に
「桃香、これは俺からの参考意見で、これを聞いて判断については君の次第だ、俺から見て、君個人の性格や資質は俺よりかなり高いものを持っている、しかし上に立つ者としての覚悟というか甘さが見えてしまう、平和の時はいいかもしれないが、戦乱の世では、これが欠点になるかもしれないよ、それだけ肝に命じて欲しい」
と言うと桃香は引き締まった顔で
「ではお聞きしますが、上に立つ者に必要な物と何ですか?」
「いざというときに非常な決断を下せるかどうかだね?例えば1つの命を救うのに100の命を犠牲しなければならない時、桃香、君ならどうする?」
「私は、1つも100も両方の命を救います!」
「それは確かに理想だ、しかしこの1を救うのに100を犠牲にして両方共倒れする可能性がある、俺としたらこういう考えがあると、このことを分かって欲しいんだ、まあ俺ならこんな場面が巡ってこないように願うだけどな」
と一刀は桃香が物事を深刻に考えないよう、最後はおどけた言葉で締めくくった。
「ありがとう一刀さん、私のこと心配してくれて、取り敢えず私もそうならないように普段から頑張るからね」
と笑顔で返事をした。
そして紫苑は愛紗に
「愛紗ちゃん、これは私からの意見ね、あなたの桃香さんへの忠誠心は凄いわ、でもそれに拘り過ぎたら、この前のように周りが見えなくあることがあるから、気をつけてね」
「う…ん、確かにあれは申し訳なかった、もう少し冷静になって物事を考えるよう務めよう、助言感謝する」
「いいのよ、お姉さんからのおせっかいだと思って」
とこちらもお互いで笑顔になっていた。
そして別れの時が来て、お互い、またの再会を誓いながら、故郷に向け出発したのであった・・。
そして水鏡塾を出て、数日後、涼州へ帰る途中、荊州の新野の町の食堂で昼食中、翠が一刀に
「結局、軍師2名確保できたけど、武官はなかなか出会わなかったな~」
「そんな贅沢言うなよ、軍師も2人もいただけでも凄いんだぞ、翠」
「いや~分かっているけどさ・・、この旅でまともに勝負できたのが愛紗と鈴々くらいで、少し物足りないかなと思ってさ」
「もう~お姉様、結婚したんだから、もう少し落ち着いたら」
と蒲公英が嗜めると一刀が
「落ち着いたら、翠らしくなくなるだろう」
「わ!ひどっ」
と翠が落ち込んでいると、一刀と紫苑の間に座っていた璃々が、たまたま店の出入口付近にいたある人物の姿に気が付き、小声で
(「ねぇねぇ、ご主人様にお母さん、店の出入口付近にいる人って、もしかして・・」)
2人はその方向に目を向けると・・、その人物を見て驚いた。
((「何でここに星がいるんだ(の)?」))
と驚き、星は一刀らに気付かず、一刀らと離れた席に案内されて座った。
すると紫苑が一刀に
「ご主人様、ちょっと私に案がありますが、よろしいでしょうか?」
と一刀に耳打ちして話をすると
「面白いけど、うまくいくか?」
と一刀が半信半疑になっていたが、間で聞いていた璃々は
「何か面白そうね~」
と面白がっていると紫苑が更に翠に
「ちょっと話があるの、耳を貸してね」
と紫苑が翠に話をすると
「その話乗ったぜ紫苑、どうすればいい?」
と更に紫苑が翠に説明すると、
「分かったぜ、話を合わせるからな」
と納得していた。
すると朱里が紫苑に
「何の話しているのですか?」
「いい武官がいたのね、ちょっとした勧誘話よ」
と言われると横にいた真里や蒲公英は周りをキョロキョロし出した。
そして紫苑は、店の店員を呼び出し、ある事を説明して、店員に注文をした。
星が席に座っていると、店員が注文の品ですと言って、この店の最高級メンマを持ってきたが、
「おや?まだ私は注文を頼んでいないが」
と星が店員に言うと店員が
「あちらのお客様からの注文です」
と言って、一刀たちの方を示した。
「ふむ」
と頷いて、一刀の方にやって来て、星は
「私の大好物なメンマを注文してくれたことは感謝するが、一体何が目的ですかな?」
すると紫苑が
「失礼しました趙子龍殿、あなたの姿を見て、聞いた噂に似ていましたので、ひょっとしたらと思い、声を掛けさせ貰ったのですが」
「何、なぜ私の名を・・」
驚くと、翠がさっき紫苑が言っていた説明通り
「私は涼州大守馬騰の娘、馬超だけどさ、あんたの名前は西涼でも有名だよ、常山の趙子龍、それに美しくて強いという噂をな」
そして一刀も
「そう、あなたの強く美しい姿を見て、私たちもあなたが趙子龍に間違いないなと思ってね」
それを聞くと真里や朱里も話を合わせて
「私も旅先で聞いたことあるよ」
「荊州でも趙子龍さんの噂は聞いていますよ」
周りから言われると星は
「う…ん、逆に褒められると照れるではないか」
と恥ずかしいそうな顔をしていた。
これは以前の世界で紫苑が、星が普段一刀や愛紗などからかうが、逆に褒められると逆に素直な一面を見せていたので、逆にからめ手で攻めてみたのである。
そして、星が
「あなた達の正体は分かったが、一体何が目的かな」
と改めて聞くと、一刀が
「ああごめん、目的を言わずに、俺の名前は北郷一刀、馬超さんの家臣だが、実は趙子龍さんの話を聞いて、ぜひ馬家に仕えて欲しいと思ってね、声を掛けさせ貰ったんだ」
と言うと星は一刀の名前を聞いて
「北郷って、ひょっとしたら貴殿は、噂の天の御遣いと言われている人物か?」
「まあ世間では、そのように言われているけど、そんな大層な人物ではないよ」
「しかし、世間の評判では貴殿から西涼に来てから、今まで辺境の地であった西涼が栄えている話ですぞ」
「それは馬家の皆やあと横にいる紫苑や璃々の力があったからさ、そして新たに力を貸してくれる真里や朱里の力もこれから必要になるし、そして趙雲さん、あなたの力も必要なんだ、ぜひ来て貰いたいのだけど?」
「面白いお人だ、旅の途中でどうせ西涼に一度訪れてるつもりだったんだ、そして噂の錦馬超もいるし、貴殿や目の前ご婦人もかなりの武人、一度西涼に行って、あなた方の力を見てみたい、取り敢えずは客将という形なら、お引き受けするが?」
と言うと翠が
「よし決定だな、向こうに帰ったら勝負だな、趙子龍」
と言うと星が少し考え
「でも客将と言えども、信頼して槍を預ける身、改めて自己紹介しますが、合わせて真名もお預けしよう」
と言うと翠が
「いいのか」
「もしかしたら、このまま仕えるかもしれないし、信頼して真名もお預けするよ」
と言って
「我が名は趙雲、字は子龍、真名は星だ、よろしく頼む」
と言うと皆が自己紹介し終わると星が一刀に
「おや貴殿らは、今、紫苑と璃々と皆、同姓だが同じ一族かな?」
と星が一刀に聞くと
(「そうかこちらでは日本みたいに結婚して姓は変わらないからな」)
「一族というか、俺らの世界では結婚すると、姓が変わるんだよ、だから紫苑と璃々は夫婦なんだよ(現代の、一夫一妻はややこしくなるので説明せず)」
と言うと星が驚き
「おや、すでに先約とは、まだ追加は行けますかな」
と言うと翠が
「星!な…何言っているんだ、も…もうすでに私が3人目でいるんだ」
「何と。それでしたら、3人も4人も同じでしょう、ぜひ私も如何ですか」
「ご主人様、これ以上増やしたら駄目!」
璃々が言うと蒲公英が
「璃々いいでしょう~、それに星お姉さんずるい、4人目は蒲公英が狙っているからダメだよ~」
「は…はわわ…す、凄い女の争い、わ…私も・・どうしよう」
「これから面白くなりそうだね~」
そして更に蒲公英の発言を聞いて、慌てふためく朱里と今後を楽しみにしている真里であった。
そして客将として星を採用し、その後無事を旅を続け、武威の町手前まで帰ってくると、町の入口手前で馬休と馬鉄が出迎えに来ていた。
そして2人が皆の無事帰還の出迎え挨拶と真里・朱里・星の紹介が終わると馬休が
「義兄上、姉貴に蒲公英、母上の事ありがとうございます」
と言うと2人は頭を下げていた。
理由を聞くと、一刀と華陀と別れて約1月後に華陀が武威にやって来て、碧を診察した結果、心の蔵を患っており、このまま放置すれば1年持つかどうかのところだった。
それで華陀は、しばらく武威に留まると共に碧の治療に当たり、そして治療の結果、碧の身体もすっかり良くなり、今はまだ様子見だが武術の稽古も再開するくらいまで回復した。
武威の留守組は、華陀から武威に来た理由を聞き、一刀、翠、蒲公英の話を聞いて、3人には大変感謝していた。
そして馬休らの案内で城に戻ると謁見の間で碧と渚が待っていた。
そして翠が碧に
「お母様無事戻りました、そして新しい仲間3人を連れてきました。そしてお母様、病気が治って良かった・・」
と涙を流し、蒲公英や渚、朱里も貰い泣きしていた。
碧が
「ありがとう、でも皆が見てるんだ、泣く奴があるかい・・」
と言って碧も手で涙を隠していた。
そしてようやく落ち着き、全員の挨拶をし、ここでも皆、真名の交換を終えた後、真里、朱里、星は旅の疲れを癒すため、侍女の案内で退室した。
そして碧が改めて一刀に
「一刀さん達のおかげで、私の命が救われたわ、何かお礼をしなくていけないけど」
「いいえ、お礼はいいですよ、当たり前のことをしただけで、翠や蒲公英もそう思っていますよ。それに碧さん、俺達家族なのですから」
と言うと碧はその言葉に感動し、そして
「ありがとう、その言葉うれしいわ、でもに後日また違う形で何かお礼させて貰うから」
と言うと一刀は何か物でもプレゼントをするのだろうと思い
「分かりました」
と承諾したが、これが後日とんでもない形で帰ってくるとは一刀も想像していなかった。
そして夜になり、さすがに璃々は疲れて、もう寝ていたが、一刀と紫苑は話をするために一刀の部屋に入ると、なぜかしばらく使っていない寝台の布団が中に誰かいる状態であった。
一刀が布団を捲るとなぜか寝巻姿の翠が横になっていた。
これを見て一刀が困惑し、紫苑は笑顔になっていた。そして一刀が
「え~と、翠、ここで何してるのかな」
「え…え、ここでご主人様を待っていたのだけど・・」
「それで、どうして横になって待っているのか、分からないだが・・」
「い、いや、あのお母様の事で感謝しているから、これは、わ…私からのお礼と・・私も妻だから・・」
と言って翠は赤くなっていた。すると紫苑が
「あらあら翠ちゃん、ずいぶん積極的になったね~♪」
「では今日は積極的になった翠ちゃんに、ご主人様と私で更に女の喜びを教えようかしら~」
と言うと一刀と翠は驚き
「あらご主人様は、嫌ですの」
「嫌ではないけど、むしろ好きな方だが・・、ただ翠が・・」
と翠を見ると
「○▲※▽●~」
とパニック状態になっていたので、一刀が
「どうする、やめておくか」
翠は困惑しながらも嫌がる素振りを見せなかったので、紫苑が
「翠ちゃんもいいみたいだから、3人で楽しみましょう♪」
と言って、余裕の笑みを浮かべて閨に堕ちて行った・・。