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真・恋姫無双 〜新外史伝〜  作者: 殴って退場
第12章 魏滅亡
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第125話・後編

「華琳様!」


「華琳様、それはどうかと~」


「秋蘭、もう一度言うわ。許して欲しければ北郷紫苑を切りなさい。そうすれば貴女の魏の復帰を認めてあげるわ」


華琳の思わぬ言葉に稟と風の二人が諫言するが、華琳は二人の言葉を無視して秋蘭に非情な命令を下す。


「華琳様、そのような命令、お止め下さい。紫苑殿は私の命を救ってくれた恩人。恩人に手を掛けるなど…そのような事できません。何卒再考の程を!」


「そう…貴女は私よりこの女を選ぶのね…春蘭!」


「はい。何でしょう華琳様」


「春蘭。貴女が代わってこの女を討ち取りなさい」


「えっ…しかし華琳様…」


流石の春蘭もこのような状況では、躊躇った返事しかできない。


「姉者、止めてくれ!私の命の恩人を斬る事は、私の武人としての誇りを汚すつもりか!?」


「うっ…」


秋蘭からそう言われると、武人としての気高い誇りを持っている春蘭は、秋蘭の命を救った紫苑を斬る事に躊躇い苦悶の表情を浮かべ、華琳の方を見る。


華琳は春蘭に代わって陽華(曹仁)、明華(曹洪)に命じようとしたが星・真里(徐庶)が紫苑を庇う形で、眼力で威圧していた。


「仮にも覇王と名乗られるお方が、自分の手を汚さずに他人の手を汚させるとは、いい御身分ですね。少なくともご主人様はそのような事は言いませんわよ」


紫苑は完全に華琳を見下す言葉を投げつける。


「季衣、絶を貸しなさい!」


華琳は背後で華琳の武器である『絶』を持っていた季衣から有無も言わさず奪い、玉座から降りて、紫苑の眼前に立ち『絶』を突きつける。


「貴女、この場を支配しているのを私という事を忘れているようね。土下座でもして命乞いでもしたら助けてあげてもいいわよ」


絶対的優位の中、華琳は紫苑に屈辱的な目を合わせてやろうとしたが、紫苑はこれに動ぜず


「曹操さん…貴女、少しお灸を据える必要があるわね」


今の華琳はもはや覇道を歩む者では無く、我が儘で、強がりで、そして虚勢を張った女の子であることを。紫苑は、自分の手を汚さずに秋蘭に対して自分の殺害を命じたそんな華琳を見て怒りを感じていた。


「お灸を据える、面白い冗談ね。この状況でどうやって私にお灸を据えるのかしら」


そして華琳は紫苑の首の後ろに『絶』を構え、いつでも紫苑の首を狩る状態にして冷酷な笑みを浮かべて


「この『絶』は切れ味がいいから、ちょっとでも動けばいつでも貴女の首を狩ることができるわよ」


今の紫苑は会談の為、武器を取り上げられた状態であり、華琳の絶対的優位の状況であった。そしてこのような状況では紫苑が発した言葉も華琳にとっては冗談にしか聞こえてなかった。


「貴女にその勇気があるのでしたら、いつでもどうぞ」


「ただ…貴女がこの場で私を殺すのであれば、覇王としてでは無く、武器を持たない使者を斬った愚者として、その恥を天下に鳴り響きますわよ」


紫苑は華琳の目を見据えながら言い放つ。


「ぐっ…!」


周りから見たら、紫苑の行動は『斬れるものなら斬って見よ』と言う捨て身覚悟の態度に見えるが、紫苑自身は、『一度の人生で、一刀と璃々と共に面白い事をしてきたのだから』という開き直った事を考えながらも『まだご主人様の子供を産むまで死ねことはできないわ』というこの場では全く想像できないことを考えていた。


(「ここで北郷紫苑を斬る事は容易い。だがこの場で殺せば私の矜持や世間体に係わるわ…」)


紫苑の言葉に華琳はズバリ指摘されたのか、頭の中で一瞬葛藤していた。


だが紫苑はそんな華琳の隙を見逃さなかった。


紫苑は両手で『絶』の柄の部分を両手で掴み、一気に自分の方に引きずり込もうとしたが華琳はそれに気付き抵抗しようとしたところ、紫苑は無防備になっている腹部に前蹴りを入れた。


流石の華琳も紫苑がそのような蹴り技など使ってくることなど想像ができず、見事に飛ばされた。


そして逆に紫苑が倒れている華琳の顔に『絶』を突き付けるが、紫苑は笑みを浮かべ


「このような形で貴女を屈服させたとしても貴女は納得しないでしょう。正々堂々と素手で決着を付けましょう。そして負けた方は勝った方の言うことを聞くこと、この勝負受ける覚悟おありですか?」


紫苑は手にしていた『絶』を傍にいた真里に預け、素手での決着を提示する。


「何ですって…貴女、どれだけ私を愚弄するつもりなの!」


「別に愚弄するつもりはありませんわ。ただ今の貴女に負けない自信があるから言ったまでの事、それとも尻尾を巻いて負けを認めますか?」


紫苑の言葉に華琳は


「その言葉、後悔させてやるわ!」


言葉と同時に華琳は紫苑に拳や蹴りなどを出して行くが如何せん、体格に差があり紫苑に難なく捌かれてしまい、攻撃を受けながらも紫苑の表情には余裕があった。


そして華琳はそんな紫苑の表情を見て、顔を歪めながら


「知力、武力、胆力だけじゃなく、皆から慕われている包容力にその羨ましい身体!そんな貴女が何故君主じゃないのよ!」


若干この場に合わない発言があったが男卑女尊の考えを持っている華琳は紫苑が上に立たず、一刀の傍にいることで満足していることに怒りの声を上げる。


だが紫苑は華琳の言葉に対して


「女性の幸せは好きな男性の傍にいて、そして好きな男性の子供を産むことよ。だから私はご主人様である北郷一刀の傍にいることが一番幸せなの。だからそれ以上の事は望まない。それに私の能力も時間と努力があれば身に付く物、別段驚く物では無いわ」


「そして曹操さん、貴女の覇道とは人を物扱いにして出来る簡単な代物なの?そんな物、力を持った我儘な子供が作り上げた脆い物よ。」


「貴女に分かる物ですか!私の大事な物を悉く奪われた悔しさが!」


華琳は覇道が司馬懿に阻まれ、そして自分の側近である秋蘭が紫苑の策略により一刀に奪われ、現状何一つ自分の思い通りにならないことに苛立ちを隠せないでいた。


時間が経てば、状況が変わるかもしれないが紫苑ほど人生経験が無い華琳にとっては、この苛立ちは苦痛であった。


更に眼前に女として自分を上回るのではないかという紫苑が居り、その紫苑が一刀に仕えていることは、口ではああ言ったものの一刀の器は紫苑に匹敵するかそれ以上あるということで自明の理で、そして噂では北郷璃々も並々ならぬ逸材であると聞いていた。


華琳はそのような状況で『覇王』を自負する事に自信を失いかけていた。


自ら『覇王』の道として歩いてきたつもりであったが、それが成就できないことに徐々に歯車が狂い、そして今、華琳の心中は二つに分かれていた。


「我が天命はまだ尽きていないという私」


「潔くこのまま蜀に降れと言うという私」


しかし「私を信じ、ここまで付いて来てくれた者達の為にも私はここで屈する訳にはいかないわ!」と華琳は弱気な心を振り払い紫苑に立ち向かう。


紫苑は少し目付きが変わった華琳を見て


「あら…目付きが変わりましたね。ではここから本気で相手をいたしますわ」


「何ですって!秋蘭。あの女、そこまでの力があるの!?」


じっと見ていた桂花は驚きの声を上げると秋蘭は無言で頷く。


「春蘭!貴女、華琳様を助けなさいよ!」


「馬鹿を言うな。これは1対1の勝負、華琳様が武人として勝負している以上、私が割って入る訳にはいかん」


春蘭はそう言いながら厳しい表情をしながら華琳を見ていた。春蘭の様子を見た桂花も割って入る力が無い以上黙ってみるしかなかった。


そして華琳が先程よりスピードを上げて何とか一撃を加えようとするが、紫苑はそれを見切り、そして華琳が繰り出した右ストレートを受け止め、そしてその勢いを利用して腕を取ると流れ作業の様に腕を極め、気が付くと華琳は地面に押さえ込まれていたのだった。


「どうです。まだやりますか?」


紫苑の言葉に華琳もようやく観念したのか


「……私の負けよ…好きにしなさい」


そう言われると紫苑は押さえ込んでいた華琳を起こす。


「ここは貴女に負けたから素直に従うわ。でも私の心まで縛られた訳ではないわよ」


華琳はまだ意地があるのか、敢えて皮肉な言葉で返す。


「流石、乱世の奸雄、曹孟徳ね。分かっていますわ。貴女が一筋縄でいかないこと位」


「ですが、晋を倒すまでの約束は守っていただきます。その後はどうするか、曹操さん貴女に任せますわ。(でも…ご主人様の事が分かれば、戦おうという気は起こらないと思いますがね)」


紫苑は、恐らく一刀が華琳たちを何れ何らかの形で籠絡することを予想していた。


だがこの時点での華琳では、そのような籠絡されるような考えは全くなく


「ええ分かっているわよ、約束は守るわ。そして私を助けたこと、貴女たちを後悔させて上げるわ」


華琳がそう言ったものの、取り敢えずは承諾したことで紫苑は、何とか無事使者としての役割を果たしたのであった。


華琳と秋蘭の関係修復は後日書く予定です。


ご意見・ご感想については喜んで返事させていただきます。(ただし誹謗中傷等については無視します)

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