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真・恋姫無双 〜新外史伝〜  作者: 殴って退場
第12章 魏滅亡
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第124話

「ふぅ…」


「ご主人様、紫苑さんたちの心配するのは分かりますが、溜め息ばかり吐かれますと幸せが逃げると言いますよ」


紫苑が出発して3日経過したが、心配のあまり仕事中何度も溜め息を吐く一刀に朱里が注意する。


「でも仕方がないよ、朱里ちゃん。今回の交渉かなり難しい話だから、ご主人様が心配するのは無理ないよ」


今回、紫苑や真里(徐庶)が不在になったため、臨時で一刀や朱里の手伝いをしている雛里が一刀の心情を察してフォローを入れてくれた。


「確かにここで心配しても仕方がないけど、やはり皆の事が気になってね」


するとコンコンと扉が叩かれ


「入っていいよ」


一刀の返事が聞こえると扉が開く。


「ご主人様!お茶持って来たよ~♪」


メイド服に身を包んだ桃香がやって来た。今日は雛里が一刀の手伝いをしている為、何時より一生懸命、仕事をしなければ張り切っていたが、そんな桃香を見て一刀は


「ありがとう……ってそんなに急ぐと危ないから」


声を掛けたが


「大丈夫、大丈夫……ってキャー!」


大丈夫と言ったその次の瞬間に桃香は転び、見事にお茶を零していた。


「はわわ!」


「あわわ!桃香様、何をしているのですか!?」


桃香の転倒を見て慌てふためく朱里と雛里。それを見て一刀は逆に気が紛れてたのか、微笑を浮かべながら


「やれやれ仕方がないな」


と言いながら片付けを手伝い始め、そして一刀は自然と紫苑たちがいる東の空に目をやっていたのであった。


~晋~


「陽炎様、魏攻略の準備ですが、後、冀州の兵が集まり次第、何時でも出陣できます」


司馬懿(陽炎)に報告しているのは、先の一刀暗殺未遂により制裁を加えられた葵、曾て鐘会と呼ばれた人物であった。


彼女は無断で一刀暗殺を謀り失敗、その詫びの為、名目上死刑となり、桃香と同様その名を失い現在は杜預(注「とよ」と読みます:字を元凱。詳しくはウィキペディア参照してください)と名乗っていた。


そして顔の両側にそれぞれ三本の創があったが、これは陽炎から制裁を受けた時に、付けられた傷が跡として残ってしまった。


更に髪を短く刈り上げ、更に顔の下半分を布で覆い隠し、以前の雰囲気と全く違うため、兵はこの人物を鐘会と気付いていなかったのであった。


報告を聞いた陽炎は


「分かったわ。引き続き兵を集めてちょうだい」


「では私はこれで…」


「ちょっと待ちなさい。貴女に話があるの」


報告を終えて下がろうとした葵に陽炎が呼び止めた。呼び止められた葵は制裁を受けた事もありやや強張った表情を見せる。


そんな葵の姿を見て、陽炎は軽く微笑む。


「そんな緊張しなくていいわ。今更、貴女の命を奪うことはしないから」


「はぁ…」


陽炎から言われても葵は簡単には警戒を解かなかったが、陽炎はそれを気にせず話を続ける。


「フフ…まあいいわ。何故、私が貴女の命を奪わなかったか、その理由分かるかしら?」


「……いいえ。私ごときが陽炎様の心中、読むことなど…」


葵は不用意な回答をせず、言葉を選んで答える。


「そんな口調、貴女には似合わないわよ。私は、貴女のその性格が羨ましいわ」


葵は陽炎の真意が分からなかったが、陽炎は話を一方的に続ける。


「貴女の欲望と野心の強さ、そしてそれを隠そうとしないところにね」


葵の欲望と野心の強さは、元々欲の少ない陽炎から見れば自分が持っていないものを持ち、そして己に対して忠実である。陽炎から見れば、ある意味分かりやすく、変に無償の忠誠を誓う者よりも信用が出来ると感じていた。そんな葵を陽炎は羨ましく思っていた。


「私の無いものを貴女は持っている。だから私はそんな貴女が気にいっているのよ。私は、曹操に誘わるのが嫌で袁紹殿に仕えたが、その袁紹殿が敗れたから、曹操に対抗するために仕方なく立ち上がったわ。もしこれが最初に北郷一刀に誘われていたら、私も喜んで仕えたかもしれないわね…。今となっては無理な話でしょうけど」


「なぜ今、この話を私に…」


葵はここまで開襟した陽炎を見るのは初めてだったので、


「何故かしら、貴女を見てそんな話を急にしたくなったの。もういいわ下がっても」


「陽炎様。下がる前に一言だけいいですか」


「私は何があろうとも、一生貴女の部下です。それだけは信じて下さい」


思わぬ葵の言葉に陽炎は一瞬頬が緩み


「分かったわ。では次の魏との戦い、それを証明してくれるわね」


「必ず、期待に応えてみせます」


葵は力強く答えたのであった。


~魏~


一方、魏では晋の防御策に激論が繰り広げられていた。


その中心は桂花と風で、桂花の案は残った戦力を全て注ぎ込み晋との決戦に挑むというもので、正に乾坤一擲の策で、これには桂花と犬猿の仲である春蘭も賛成していた。


一方、風の案は主力を山東半島に移動して防衛線を短くして守備を固め、いずれ晋が蜀か呉と戦う時に反撃で出るまで耐えるという案であったが、いずれも一長一短があり、話が纏まって無かった。


それと二人とも蜀の参戦については考えていなかった。だが、それについて桂花は、男の助けはいらないという感情的な、そして風は最悪を想定しての事であったが。


だが華琳は、このままジリ貧で倒されるよりは勝負に打って出た方が良いという桂花の案に傾いていた。万が一敗れ、司馬懿の前に屈するよりも華麗に滅びた方が自分らしいという考えもあった。


そんな中、稟からの書状が届き、華琳は使者の兵から手紙を受け取り、手紙を読むと華琳は、最初は喜びの表情を見せたが、段々顔が険しくなり、最後には怒りの表情を隠そうともせず、


「何よ、これは!」


手紙を読み終えると同時にその手紙を地面に叩きつけたのであった。


「ど、どうされたのですか!?華琳様」


普段ここまでの怒りを見せない華琳を見た桂花は恐る恐る声を掛けると華琳は


「この手紙を読んで見なさい!」


桂花と風が手紙の方を指差す、そして二人は手紙を拾い上げて読むと


「えっ!?」


「なるほど~」


その手紙の内容を見ると二人の表情は対照的であった。


稟から手紙の内容は、書き出しは一刀たちのお蔭で秋蘭が救助され、その後、蜀との交渉不成立となったことが書かれていたが、華琳にとって一番の衝撃であったのは秋蘭が紫苑の策もあるが、自ら一刀に嫁いだ事が書かれていたことであった。そして最後に紫苑が秋蘭らを連れ魏に今後について交渉に訪れることで締めくくれていたが、それを見た華琳は秋蘭の行為に対して烈火の如く怒った。


一応、稟の手紙では秋蘭が嫁いだ理由の一つに魏の為を思っての事は書かれていたが、華琳にとっては飼い犬に手を噛まれた行為としか思えなかった。


風は手紙を読んで、ある程度の理解を示したが、桂花は


「やはり、男って屑よ!あの男が秋蘭を無理やり手籠めしたに違いないわ!」


「何!それはどういう事だ!」


それを聞いて春蘭が血相を変えて桂花に詰め寄ろうとしたが、


「待ちなさい!春蘭」


華琳は春蘭を止めて、手紙の内容を話す。春蘭はそれを聞いて秋蘭の生存していたことに安堵したものの、秋蘭が一刀のところに嫁いだ事に対して


「信じられん…どうしてだ、秋蘭」


呆然自失の状態になってしまった。すると風が


「華琳様~手紙では北郷紫苑さんが秋蘭ちゃんとこちらに来ますが、どうするおつもりですか?」


「そんなの決まっているわ!捕まえてしまえばいいのよ!!」


桂花の意見に風は呆れた表情をしながら


「桂花ちゃん、それ本気で言っているのですか?そんなことすれば、蜀は晋と手を結んでしまい、そして西涼から騎馬隊がやって来て、あっと言う間に蹂躙されてしまいますよ」


「じゃあ、どうするつもりよ!」


「まずは向こうの話を聞いてからでしょうね~」


「何、生ぬるいこと言っているのよ!」


「待ちなさい、桂花。風、向こうは兵を出すつもりは無いが話し合いに来ると書いてあるけど、これはどういう目的かしら?」


少し冷静になった華琳が風に質問する。


「この手紙だけでは難しいですが、考えられるとしたら呉に援軍を出して貰うのでは?」


風の考えは、蜀から直接兵を出すことは出来ないが、代わりに同盟国である呉に援軍を出して貰うのではないかと考えられた。稟の手紙にも、理由は不明であるが蜀と呉が会談することも書かれていたのであった。


ただ稟の手紙に一点隠されている事があった。稟には今回の件について全て話したが、一刀は稟が手紙を送る際、一つだけ条件を付けたのであった。


「秋蘭の件はいいけど、今回の計画について手紙で書かないで欲しい。秘密の保持というのもあるけど、手紙では伝わりきれない部分があるから、先に聞いて変に曹操さんに誤解を招きたくないんだ。それに二つも同時に嫌な事を聞くと余計に気分が悪いだろうから」


という一刀の言葉を聞いて、稟も華琳の感情面の事を考えて段階を踏んだ方が良いと判断して、これを承諾したのであった。


「そう…取り敢えず、あれこれ考えても仕方が無いわ。まずはいつでも兵を動かせる様、準備をしておきなさい」


「それで会談の事だけど…、このまま向こうの言いなりにされるのは癪ね。それに私の“秋蘭”を奪い取るなんて許せないわ。桂花」


「はい!」


「私たち“魏武”のやり方で出迎える準備をしなさい」


「華琳様、それはどうかと~」


風は桂花にそのような形で出迎える準備をさせたら、話を拗れさせる可能性があるので忠告するが、


「貴女の忠告は、今は受けないわ」


感情的になっている華琳は風の忠告を退けた。


紫苑たちはこのような状況を待ち受けている魏に知らず向っていたのであった。





ご意見・ご感想については喜んで返事させていただきます。(ただし誹謗中傷等については無視します)

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