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真・恋姫無双 〜新外史伝〜  作者: 殴って退場
第12章 魏滅亡
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第123話

晋との交渉後、魏からも使者がやって来たが、使者としてやって来たのは稟であった。


今回の使者として華琳は色々と考えたが、桂花は男である一刀を嫌っている上、以前使者と来た翠に対して暴言を吐いた経緯もあり除外、風についても以前愛紗を罠に掛けたことがあり諍いがある恐れがることからこれも除外、そして消去法で稟が選ばれたのであった。


と言っても元々の能力が高く、個性の強い魏の軍師の中では一番の良識と言っても過言では無かった。


そして稟が一刀への見舞いの言葉を述べた後、話は本題に移る。


「ところで北郷様、二つほどお話したい事がありますが」


「何?」


「まず一つ目ですが、今回の晋の行為、我々も許しがたい一件です。ここは、私たちと手を結んで晋を打倒しませんか」


稟の口から出た晋に対する共闘であるが、これがもう少し早ければ魏と手を結ぶ事も考えたが、先に晋と手打ちしたため、一刀の性格上これを反故することは考えられなかった。


だが秋蘭の事もあるので、一刀は


「話は分かりました。まずは貴女に会っていただきたい人物がいます。璃々、“彼女”を呼んできてくれ」


「うん、分かった」


璃々が一旦部屋を出た後、連れて来た人物を見て稟は顔色が変わった。


「秋蘭殿……生きていたのですね」


秋蘭生存の噂は聞いていたものの、実際にその姿を見ると嬉しさと共に驚きを隠せなかった。


「ああ、そこにいる一刀殿に助けられて、今こうしてこの場にいることができた」


「それはどういうことですか」


一刀は事情を説明したが、事情を聴くと稟の顔は渋い表情に変わってきた。


というのは秋蘭が紫苑の強引な手段で一刀に降る形で嫁いだ事やそれを拒絶せずに素直に降ったことに怒りと困惑が表情に表れていた。


「北郷一刀殿、北郷紫苑殿、貴方たちはこのような手段を取って恥ずかしくないのですか!」


稟は一刀たちを批判するものの、紫苑はそのような批判は承知の上で表情を変えずに


「あら、そうかしら。貴女の主君、曹操さんも可愛くて才能のある女の子を見れば他勢力でも引き抜くことを厭わないでしょう。私もそれと同じことをしただけですわ」


これは以前、華琳が愛紗を引き抜こうとしたことに対して揶揄したのであるが、これは当時劉備軍の弱体化と華琳が愛紗を欲していたというのが目的もあり、実際に紫苑が言ったことは間違いでは無かったことから、稟は黙るしか無かった。


「稟、確かに私は一刀殿には嫁いだが、これは異性として好きになっただけだ。そして華琳様を裏切ったつもりは毛頭ない」


「それはどういう意味ですか?」


「では聞くが、この状況で魏は晋に勝つことができるか?」


「それと今回の件と何の関係があるのですか」


「まあ聞け、このままだと魏は晋に滅ぼされる可能性が高い。だから私は卑怯者と言われるのを承知の上で一刀殿にお願いをしたのだ」


秋蘭の言い分に怪訝な顔をする稟。


「そこからは俺が話をするよ」


今まで黙っていた一刀から漸く事情を話すと分かったので、稟も聞く姿勢を整える。


「まず結論から言うと、蜀から魏への援軍は出せない」


「な、何故ですか!?」


現状の魏の国力では晋の攻勢を防ぐのがやっとの状態で、この状況が続けば衰弱死するのは時間の問題で、蜀が晋を攻撃して貰えれば事態は好転して再び魏が中原へ進出することが可能であるが、その前提条件が崩れれば魏存亡にも関わってくる。


「こちらにも都合があるので、それは言えない。だから援軍の件は諦めて欲しい。でも君たちを救う用意はある」


「援軍を出さずに私たちを救うって、そんな都合のいい方法があるのですか!」


一刀の謎々の様な話に怒り心頭になる稟。


「ああ、あるさ。でも君たちにも代償を払って貰う必要はあるけど」


一刀の冷静な口調に稟は冷静さを取戻して落ち着いた口調で


「では、聞きましょう。その方法とやらを」


「それじゃあ…」


一刀の説明は稟だけでは無く、初めて説明を聞いた秋蘭。それに紫苑と璃々以外の将も驚きを隠せなかった。


「……このような事は、流石に私の一存では決める事はできません」


「だろうね。それにこの作戦は呉の協力も必要だ。それにそちらから呉へ協力を依頼しても恐らく無理だろう。俺達でも頼んで引き受けてくれる可能性は良くて五分五分だ。だがこれ以外の方法に他の方法があればいいけど」


「説明を聞いて秋蘭殿の行動は分かりましたが、まだ私たちが負けると決まった訳ではありません。私たちが勝てば問題はありません」


稟は秋蘭が一刀に嫁いだ事で、蜀と魏の架け橋になろうという心算は分かったが、今、晋に備え戦っている者に取っては秋蘭の行動が裏切り行為に見える恐れがあり、また稟にも意地というものがある。


「稟、頭を冷やさぬか。お主らはそれが厳しいと分かって、こちらに来たのではないのか」


「それは…」


「確かにお主が言うとおり勝てれば問題は無い。もし敗れた場合、南は呉、北と西は既に晋に押さえられ東は海で逃げ場所が無い状態だ。そして絶地に追い込まれお主たちは非業の死を遂げる可能性が高い。それが臣として正しいことなのか」


旧知である星から正論を言われると稟も返す言葉が無い。


そしてしばらく静寂が流れ


「……分かりました。取り敢えず、私からこの事については曹操様に話をしておきますが、今の状況では、恐らく曹操様はこの話は受けないと思います。それに今回の秋蘭殿の取った行動は、曹操様に取って感情的にも受け入れがたいものです」


「曹操様は、そのような屈辱の生を受けるよりも栄光のある死を選ぶでしょう」


「では私が魏に行って、曹操さんに今回の経緯を説明して説得しますわ」


「えっ?」


「紫苑、それは危険だ!」


「そうだよ!わざわざ紫苑が行く必要なんてないよ!」


稟は驚きの声を上げ、翠や蒲公英などは反対の声を上げる。


「なぜ紫苑が行く必要があるのだ?その理由を聞かせてくれ」


皆が反対する中、星は紫苑に質問する。


「今回の秋蘭さんの一件、もし秋蘭さんを止めなければそのまま魏に帰国していた。そのまま帰らせたら、折角ご主人様が命を掛けて守った命は無駄になる恐れがあったわ。だから私は自分の判断でこうしたの。だから今回の責任が私にあるわ。お願い、ご主人様に皆ここは私に任せてくれないかしら」


「駄目よ。私が代わりに…」


「いいえ、璃々さんには呉に使者として行っていただく重要な役目がありますので代わることは無理です」


これを止めたのは真里であった。


璃々が紫苑に代わって使者に行くつもりであったが、璃々は一刀の見舞いのお礼に“天の御遣い”の一人として、呉への使者と行くことが内定していたのでこれを外す訳には行かなかった。


取り敢えず、稟には一度席を外して貰い再度皆で話し合いをしたが、


「紫苑どうしても考えが変わらないのか」


「ええ…こうなる事は覚悟の上でしたから」


一刀は心配になり翻意させよう紫苑を説得するが、紫苑の考えは変わらなかった。


「だが今の魏は、既に追い詰められている状態。秋蘭さんには申し訳ないですが、万が一紫苑さんを人質にして晋との戦いに参戦を要求されたら、これに従うしかありません」


朱里の意見は尤もであった。


「勿論、私も同行して姉者や他の者にそのような事はさせない」


「ですが、もし曹操さんが紫苑さんの命を取る様に命令した場合、秋蘭さんどうするつもりですか?」


朱里の最悪を想定した質問を聞いた瞬間、皆の目は自然と秋蘭に注がれた。


「その時は……華琳様を敵に回してでも、我が命を持って紫苑殿を守る。それが命を救われたせめてものの恩返しだ」


秋蘭の覚悟を聞いた皆は反論することは無かった。そして紫苑の魏への派遣が決定的となり、随員として


「向こうで翠に喧嘩を売った小娘(桂花の事)が、紫苑さんに何か文句を言うかもしれないから、私も行くよ」


と戦える軍師である真里(徐庶)と稟や風と旧知の仲である星が護衛として行くことになった。


そして帰国する稟と共に紫苑たちは魏に向け出発し、その後璃々も呉に向け出発したのであった。







ご意見・ご感想については喜んで返事させていただきます。(ただし誹謗中傷等については無視します)

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