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真・恋姫無双 〜新外史伝〜  作者: 殴って退場
第11章 荊州の変
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第120話

新年あけましておめでとうございます。


年内に投稿するつもりでしたが、間に合わず新年早々の投稿となりました。


今年もよろしくお願いします。

一刀の体調も徐々に回復し、同じく負傷していた焔耶の体調も無事回復してきたので、一刀は近日中に焔耶の裁判を取り行う事を決めようとしていた。


そんな中、今まで自主謹慎に近い状態でいた馬良(雪風)が一刀に面談を求めてきた。ただ他の将にあまり聞かれたくない話ということで、その話に立ち会いするのは紫苑と璃々の二名を要望し、それ以外の将を排除して欲しいということであった。


この話を聞いた時、愛紗は


「またご主人様の命が狙われる可能性があります!」


と主張したが、紫苑が


「愛紗ちゃんの心配は分かるけど、もしご主人様の命を狙うのであれば、態々私や璃々を立ち会いさせないわ」


紫苑の説明に皆が納得したので、雪風との会談に臨んだ。


雪風は会見早々に一刀に謝罪するが、


「この度、愚妹の事で北郷様たちに迷惑を掛け、申し訳ありません」


「貴女の責任じゃありませんから、頭を上げて下さい」


一刀はそれを気にすることなく、気軽に話すので雪風も素直に従った。


「それで何故、馬謖さんはご主人様を暗殺する事になったのですか?」


そして紫苑が一刀に代わって、早速質問をする。


「それは妹が残した手紙とそれと魏延の話、そして私の憶測が入りますが、それでもいいですか?」


「ええ、お願いします」


「はい。妹との仲は悪く無かったのですが、ただ妹は元々自分の才を認めて貰いたいという野心が強く、度々私に兵を上げて荊州を奪う様に進言したのですが、仮に荊州を奪ったとしてもそれ以上の事はできないのとそんな妹の為に兵の命を粗末にできないと判断した私はそれを退けました。しかし妹は自分の野心を叶える為、劉備様に仕えたのです」


「ですが、妹が魏延と共に独断専行を行った結果、漢の滅亡を招いたため、自分の失地回復と魏延の劉備様の敵討をしたいという心理を利用して北郷様を暗殺を行い、そしてその報酬として晋での高位を戴こうと鐘会と手を結んだものだと思います」


「理由は分かったけど、でも馬謖は何故手紙に魏延の事を載せていなかったのだろう」


「それは分かりませんが、その事に北郷様にお願いがあるのです」


「何かな?」


「今回の一件、全ての責任は我が妹にあります。魏延は妹の口車に乗せられた形なのです。そこで勝手な申し出と重々承知はしています、何卒魏延の減刑をお願いしたいのです。これは死んだ妹が死ぬ間際に全ての責任は私にあり、魏延についてはただ利用しただけだと言い残して死んでいきました。勿論、一族の長である私にも責任があります。その処分も私は受けます」


「ちょ、ちょっと待ってよ!そんなご主人様を暗殺しようとした人を再び野に放つつもりなの!?」


「ですが元々魏延が北郷様を暗殺しようとして理由は劉備様の敵討が理由。その劉備様の生存が確認された今、その可能性が低いかと」


雪風の提案に璃々が反対するが、雪風は


「馬良さん、貴女の言い分は分かりますわ。でも再び暗殺などしないという何処に保証はあるのかしら?」


紫苑は、助命嘆願する理由は理解できたが、一刀の命が狙われた今、魏延が再び命を狙わないという保証が無い事に懸念があり、少なくともそれが無い限りは話を進める気は無かった。


「保障ですか…これが保障になるのかどうか分かりませんが、私が直接魏延の面倒を見ますわ」


「それって、魏延を貴女の直臣にするの?」


「いいえ。私も妹の管理不行き届きの責を取って職を辞して、許される事なら魏延と共にこのまま故郷に帰り、二人で妹の菩提を弔いながら過ごすか若しくはこのまま何処か違う地に行きその片隅でもひっそり暮らそうかと思っています」


一刀や紫苑は自分の地位を捨てて魏延の命を守る馬良の意図を掴みかねていた。


「何故、自分の地位を捨ててまで魏延さんを守るの?」


「そうですね……私自身何もしてやれなかった妹への謝罪もありますし、そしてその死んだ妹の願いでもあります」


「……取り敢えず話は分かったよ。それを考慮に入れて明日決断する。今はそれしか言えないけど…それでいいかな」


一刀の判断に雪風は一刀が、何が何でも死刑という考えで無い事を察し、一刀の意見を尊重して、頭を下げて部屋を出た。


雪風が部屋を出てから璃々は


「ご主人様はまさかあの女を助けるつもりなの!」


「それは判断付きかねるけど、ただ魏延の気持ちは分からないでもないかなって」


「何でそんな気持ちが分かるのよ!?」


璃々が疑問の声を上げるが、一刀の返事に紫苑は少し得心したのか一刀に代わって説明する。


「璃々、もしもの話だけど、ご主人様が今回本当に殺されていたら貴女その後どうするつもり?」


「勿論、ご主人様を殺した人に仕返しをするよ!……あっ!」


璃々も紫苑の説明を聞いて璃々も同じ事をしてしまうことを理解できたものの、複雑な表情を浮かべたままであった。


「ですがご主人様、安易に馬良さんの助命を受けてそのまま減刑という訳にはいきませんわ」


璃々の気持ちを察して、流石の紫苑も国の体裁もあるので、一刀に甘い処分を下さない様に釘を刺す。


「それは分かっているよ。甘い処分じゃ愛紗や翠あたりは納得しないだろうから」


「でも…ご主人様はあの人を助けたいのでしょう?」


一刀は驚いた顔をして璃々の方を向く。


「私、思い出した。昔、魏や呉と戦った時、捕えた将の命を奪わなかったことを、普通なら死刑にしておかしくないよ。でもご主人様は基本的に命を大切に考えるからそうしなかった。確かに今回暗殺という私たちから見たら卑怯な手かもしれないけど、でも相手からすればご主人様を討ち取ることができる数少ない手段の一つだよね。そう考えると戦で命を狙われるのと変わらないような気がするんだ。だから、罰は仕方がないけど、命が取らない方がいいんじゃないかと思ったの、でも私自身本当はご主人様の命を狙うような人、死刑にしてもいいんだけどね」


「「璃々…」」


一刀と紫苑は璃々の意見に驚きを隠せないでいた。


「ですが、魏延さんの処置について桃香ちゃんや雛里ちゃんはどう思っているのかしら?」


確かに紫苑の言う通り、魏延は桃香の仇を討つために一刀を討とうとしたが、その前に蜀漢決戦の時に魏延と馬謖が先駆けの功を狙うため独断専行を行い、結果的に漢が敗れた原因になった。


一刀もその事について気になっていたので、璃々に桃香と雛里を連れてくるように頼み、二人は緊張した顔で部屋に入って来た。


そして一刀が今までの事を説明して、桃香や雛里の意見を聞いてみた。


「こんな事、私が言ったらいけない事だけど…、私が死んでいた事になっていたから、焔耶ちゃん仇を討とうと思ってあのような事をしたんだと思うの、だから私も一緒に責任を取るからできれば焔耶ちゃんの命を救って欲しいの」


「ちょっと待って下さい、桃香様。桃香様の気持ちは分かりますが、その前に焔耶さんは我々の最後の戦いで私たちの指示に従わずに勝手な行動を取った結果、国を滅ぼした原因を作った責任者の一人です。それをご主人様に責任転嫁して、自分の行動を正当化しているだけです。ですので、ここは厳しい処分を行った方がいいかと…」


桃香の助命案に対し、雛里は最後の戦いで独断専行を行った失敗を逆恨みして一刀暗殺を実行した焔耶に厳しい処分を主張した。


「そんな雛里ちゃん…」


桃香が雛里に抗議の声を出そうとしたが、一刀が手を出して桃香を押さえ抗議の声を制した。


「明日二人にも会議に出て貰らう、そして明日皆で話し合おう」


一刀はそう言ってこの場を解散させた。


そして翌日、荊州にいる将を集め、焔耶に対する処分が話し合われたが、


「ご主人様の命を狙った奴の命を助ける必要はない!」


「ご主人様だけではなく桃香様までに迷惑を掛けた者に対して掛ける情などありません!」


翠と愛紗が死刑を主張するのに対し、


「確かに一様の命を狙った事は許されないが、しかし彼奴は鐘会や馬謖に利用された様な物、死刑を免じ杖打ちの上国外追放で如何か」


元同僚の夕霧(法正)が焔耶を擁護する。そして桃香は夕霧に雛里は翠たちの意見に賛同する中、紫苑と璃々は一刀に決断を委ねることで無言だったが、同席していた桔梗も何故か無言を貫いていたが、意見が一通り出た後


「お館様、儂の意見を言って宜しいか?」


一刀が頷くと


「本来ならあ奴のやった事は死刑だと言われても仕方がない事。しかし弟子の不始末は師匠である儂にも責任があります。ですので儂にも何らかの罰を与えて戴き、その代わりあ奴の死刑を免じて戴きたい」


「桔梗!?」


「桔梗さん?」


夕霧と桃香は驚きを隠せず、二人は桔梗を見る。


「桔梗、それでいいのか?責任を取ると言うことは、唯では済まない事は分かって言っているだろうね」


「お館様、それは覚悟の上じゃ」


桔梗は野暮な事は聞くなというばかりに微笑を浮かべながら言い切ると一刀は


「ハハハハ」


急に一刀は大声を出して笑い出した。


「ご主人様、何故笑うのですか!」


「そうだ!桔梗の心意気を馬鹿にしているのか!」


愛紗と翠は一刀に怒りの声を上げるが、一刀は


「ごめん、桔梗。別に桔梗の心意気を蔑ろにした訳じゃないんだ。色々賛否両論はあるけど、桔梗や桃香、それに馬良さん、これだけの人から命を救って欲しいと言われる人物もそうそう居ないよ」


一刀は言葉を切って


「本来なら死刑だけど、しかし死刑にするのも惜しいと思っている自分がいる。けれども蜀漢決戦での独断専行を行った件もあるから、無罪放免という訳にはいかない。だから笞刑(鞭打ちの事)100回、その後謹慎処分とし馬良さんに預けることとする。そして桔梗の罰は一生俺を裏切らない事、それを罰とする」


結果的に焔耶を助命した上で、馬良の職を辞すことを許さずに焔耶を監視すると共に再教育を委託し、そして桔梗には実質罰では罰を与えたが、この一刀の発言に桔梗は一瞬間が抜けた様な表情を浮かべたが、その後急に


「ハハハハハ!お館様、その言葉、しっかりと受け取りましたぞ!今日は無理でしょうが、何れ約束を果たして貰いますぞ!」


一刀の言った言葉に対して桔梗は一刀の意図とは違う意味で受け取ったが、桔梗の押しの強い言葉に否定の言葉を口にすることができず、横にいた紫苑が以前桔梗から一刀の事について話し合った経緯もあり、璃々と共に苦笑を浮かべるだけであった。




一刀の裁定に紫苑や璃々は同意し、そして死刑を主張していた翠や愛紗は桔梗に心中複雑であったが、桔梗の覚悟を見せられては黙っているしか無かったのであった。


改めて焔耶に対し刑を告げられると、焔耶は今までの自分の失態を黙って聞き言い訳せず刑に服した。そして悲鳴を上げずに刑を受け切り、治療の後、馬良と共に郡都に向った。


こうして荊州の変は一応の決着を見せ、そして再び新たな戦いへと移るのであった。


ご意見・ご感想については喜んで返事させていただきます。(ただし誹謗中傷等については無視します)

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