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真・恋姫無双 〜新外史伝〜  作者: 殴って退場
第11章 荊州の変
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第118話

一刀の暗殺未遂事件は何時の間か各国首脳に伝わっていた。


~呉~


「何ですって!その話は本当なの!!」


周泰こと明命から一刀暗殺未遂の話を聞いた蓮華は大声を上げながら驚きを隠せないでいた。


「それで誰の仕業なのだ?」


驚きながらもいち早く冷静さを取り戻した冥琳が明命に聞く。


「はっ。首謀者である鐘会は現場から逃走。そして馬謖が死亡、魏延が負傷の上、捕縛されたとのことです」


「何、鐘会だと!それは間違いないのか明命」


「はい。私もこの話を聞いて念入りに調べましたが事実です」


「チィ、あの腐れ外道が!呉や魏を裏切った上に一刀の命を狙うとは…ぶっ殺してやるわ」


「待て雪蓮。それで北郷の容体は?」


「それが…建物の下敷きとなり、今だ意識不明との事です……」


「そんな……」


明命の言葉を聞いて蓮華たちは言葉を失い、今の自分たちでは一刀を救えない事を悟ったのであった。


~魏~


魏にも一刀暗殺未遂の話が入っていたが、それと一緒に入って来た情報についての話題となっていた。


「北郷一刀が暗殺された現場に鐘会が居て、それを秋蘭が助けたという話は事実なの?」


一刀が暗殺未遂を受けたと現場に秋蘭が居たという報告をした桂花に怪訝な顔しながら聞く華琳に


「はい。どうも事実の様です。鐘会と言い争った時に鐘会が秋蘭の名を呼んでいたそうで」


「何!それじゃ何故、秋蘭はここに帰ってこないんだ!」


秋蘭が無事な知らせを聞いたのは良かったが、何故本来仕えるべき主である華琳のところに帰ってこない事に怒りを露にする春蘭。


「そんな事、私に聞いても分からないわよ!どうせ北郷が何らかの方法で秋蘭を攫って、自分の物にしようとしているじゃないの」


「……桂花。その話本当かしら」


「ヒッ!?」


明らかに憶測で言い返した桂花の言葉を聞いて、明らかに怒りの表情を浮かべる華琳を見て驚く桂花。


「まあまあ華琳様、今の桂花ちゃんの言ったことは当て推量ですから――」


「そうです。華琳様、秋蘭殿がどの様なお方か一番華琳様がお分かりのはず」


風や稟から助言が入ると直ぐに冷静さを取戻して


「そうだったわ。仮に北郷から言い寄られてもそれを跳ね返す気概を持っているわね。それで、もし秋蘭が生きているならば、何らかの理由で蜀に留まっていると考えるのが一番納得できるわ」


「ではどうなされますか。蜀に正式に出して、秋蘭様の返還を要求しますか?」


「そうね…、今はこのまま静観しておきましょう。蜀は今、混乱している状態で、この状況で使者を出しても直には返事が出せないわ。それに秋蘭は必ず私のところに帰ってくるわ」


稟の質問に華琳はそう答えたが、その内容に納得できない春蘭は


「華琳様!直ぐに蜀に使者を出して、秋蘭を返す様に要求すべきです!それとも…」


「馬鹿な事言わないで春蘭。私が秋蘭を手放す訳にないでしょう!」


「では何故!」


「向こうは何らかの理由で秋蘭を預かっていると思うわ。秋蘭も私を捨てて蜀に行く訳ないでしょう。それに北郷は秋蘭を無理やり家臣とかにする様な男ではないわよ。恐らく秋蘭に何かがあって私に連絡ができなかったと思うの。だから向こうから正式に使者を来るのを待つ。それにもし秋蘭が北郷に助けられた場合、秋蘭の意向を無視して返還を要求するのはどうかと思うわ」


華琳からそう言われると春蘭も渋々認めるしかなかったが、


「では華琳様、蜀に北郷一刀殿の見舞いと秋蘭殿の消息を確認するための使者を送り、その際に蜀と同盟を結んで共に晋を攻めてはと提案してみたらどうでしょうか?」


以前、反撃のため旧領である冀州などで魏残党による反乱を蜂起させたが失敗に終わり、そして魏の勢力は日に日に弱って行く中、現状を打開するために稟は蜀との同盟を進言する。


「そうですね~、それも一つの手かもしれませんが現状では、我々からそれを切り出すと向こうの下風に立たされる恐れがありますが華琳様がそれを良しとしますか?」


「冗談じゃないわ!何故華琳様があのような男に膝を屈する必要があるのよ!」


「では桂花ちゃん、この状況を打開できる良案あるのでしょうか?」


「うっ…」


風の意見に桂花は反論するが、風から正論を突かれると返す言葉が無かった。


華琳もこのまま晋に抑えられた状態では、現状を維持することはできてもこれ以上の勢力拡大は早急に望めないのは分かっていた。


以前一刀に晋に勝った暁にはいずれ自分と雌雄を決する戦いを約束していたが、今の自分の境遇ではと無意識に自嘲の笑みを浮かべていた。


「分かったわ。ちょっと考えさせてちょうだい。ここが私たちの正念場になりそうだから」


華琳は全員を下がらせた後、一人で考えていたが


「皆の手前、ああ言ったけど…秋蘭、北郷の元に何時までも居ないで、早く私の元に帰ってきなさい…」


華琳は秋蘭が一刀に奪われる予感を感じて、そう呟いたのであった。


そして晋は、魏や呉が情報を入手したにも関わらず、この件について一切動かず沈黙を保っている状態であった。




丁度その頃、一刀は意識が無い中、ある夢を見ていた。






―――今、俺は何かを“観”せらせている感覚であった。そして昔、どこかで見た宮殿の広間で紫苑と出会う切欠を作った人物と戦っていた。


「死ね、北郷一刀!!」


一刀を最初の外史に連れて来た人物――そして道士の服を着た男…“あの”左慈が現れ一刀に向って蹴りを放つ。


そして一刀はそれをまともに受けて床に転がるが、頭の中は疑問が湧き出ていた。


なぜ左慈が急にこの世界に表れたのか…そして一刀はあれほど修行したはずなのに何故か身体が云うことを利かない。自分でもこれほど弱かったのだろうかと思うが、一刀は何とか立ち上がり左慈を睨んだが、左慈は苛立った声で諦めるよう呼びかける。


「諦めろ、北郷。所詮外史は外史だ。もうこの外史は貴様が死んでこの世界は壊れる……ここにいる人、物、そして生きるもの全て無くなる。たかが外史の傀儡の分際、あの黄忠やその娘も所詮幻。幻が無くなり元に戻るだけの話だ」


「ふざけるな!」


一刀が声を荒上げ、それを否定する。


「お前達がどれだけ偉いか知らないが、貴様に紫苑や璃々を殺させはしない!」


左慈は一刀の答えが気に喰わなかったのか明らかに苛立ちを見せながら今の動きが鈍い一刀には見切れない速さで腹部に蹴りを入れ、吹き飛ばす。それでも一刀は身体がボロボロになりながらも不死鳥の様に再度立ち上がり、手に持っていた愛刀「紫電」を持って左慈に向ける。だが、その行動を鼻で笑う左慈がこう言った。


「フン…今の貴様なら赤子の手を捻るようなもの。それなら、その想い…ここで終らしてやるよ。その想いを抱いて死ね、北郷一刀!」


一刀は紫電を振るうが左慈の蹴りに勝てず、剣が宙を舞う。そして左慈は冷酷な言葉を出す。


「とどめだ、死ね」


そして左慈は手拳で一刀に止めを差しに行く






――グシャ


と何かが潰れて砕けた様な音がしたが何故か一刀自身は痛みを感じていなかった。一刀は一瞬何があったのか理解できなかったが、左慈を見ると


「ギャァァァァァ――――――!!」


大声を叫ぶと同時に左慈の顔を見ると左慈の両目にはそれぞれ矢が突き刺さっていた。


一刀は矢が飛んで来た方向を見ると紫苑と璃々が立っていた。


それと同時に痛みでもがき苦しんでいる左慈の後ろに有った鏡が光り始めた。










そしてしばらくして一刀の目が薄らと開かれ始めた。


「うっ……ここ、は……?」


「ご主人様!大丈夫!私だよ、璃々だよ!」


「ご主人様…よくぞご無事で…」


この時一刀の傍にいたのは紫苑と璃々で、先行していた翠と共に連れられた華佗の治療を受けた後に到着した紫苑と璃々の三人で静かに居させようと翠の配意であった。


「璃々…ここは?それに紫苑、どうしてここに…」


まだ自分の状況を飲み込めていない一刀は二人に事情を聴く。そして二人の説明を聞いて漸く事態を把握した一刀は、まず自分を暗殺しようとした焔耶たちについて現在も焔耶は安静療養中で一刀の意向で直接本人から事情を聴きたいということもあり、怪我が回復するまで処分保留という形が取られた。


一刀が指示を出し終えると紫苑は悲しそうな顔をしながら、


「ご主人様…私…弱くなりましたわ…」


紫苑の突然の告白に一刀と璃々は驚いたものの、その後どういう言葉が出てくるのか分からない為、敢えて言葉を返さない。


「ご主人様が暗殺されかけたという話を聞いて、私…目の前が真っ暗になって……このままご主人様が居なくなったらどうしようかと…私、ご主人様が居なくては駄目な女になったかもしれませんわ……」


紫苑は一刀の暗殺未遂を聞いて逆上したことについて一刀に謝罪していたが、紫苑自身、暗殺未遂について直接関係ないがそれについて何もできなかった自分を攻めていたのであった。


「そんな事ないよ。お母さん」


「えっ?」


璃々の言葉に紫苑は驚きの声を上げる。


「それは弱くなったんじゃないよ。ご主人様とお母さんの二人の情がそれだけ深いということだよ。もしかしたらお母さんと逆の立場だったら私もお母さんと同じことをしていたと思うの。私たちとご主人様との絆はそれだけ強いものだもん」


「完璧な人間なんて何処にもいないんだから。紫苑も気にすることないよ、紫苑が普段はどんな人物かって皆知っているしさ、それに今回は俺がもう少し注意しておけばこんな事にはならなかったかもしれない。それに夢で二人は俺を助けてくれたんだ」


一刀は目覚める前に夢の中であった出来事を二人に話した。


それを聞いた紫苑と璃々は無言で一刀を抱き締める。二人は一刀の温もりを確かめ、そしてもう二度と一刀を離さないという強固な意志表示の様に……。


そして紫苑は一刀に対して真剣な表情で


「ご主人様、一つ私と約束して下さい」


「何、無茶な条件じゃなかったら、ありがたいのだけど…」


「いいえ、戦に出るなとか申しません。ただ一つ……私よりも長く生きて下さい。もう私は御主人様無しでは一人で生きていく自信がありませんから……」


何時もよりやや表情硬い笑顔を見せる紫苑の切実な願いを聞いて一刀は


「紫苑……分かった、約束するよ。でも紫苑も孫や曾孫を見るまで生きて貰わないとな」


「…はい。命ある限り、私もご主人様と共に生きますわ」


一刀と紫苑はお互いを確かめるかのように両手を握りあっていた。


それを見ていた璃々が


「でもさっきのご主人様の返事…ちょっとおかしくないかな?」


さっき一刀が答えた返事に璃々が疑問の声を上げる。


「どうしてだい?」


「だって今のお母さんと私って、見た目歳がそんなに離れていないから一応姉妹という形を取っているんだよ。これで私が子供を産んで孫と言っても、周りからみたら変だと思われちゃうよ。だからお母さんにはもう一人子供を作って貰わないと♪」


璃々の答えに一刀と紫苑は顔を見合わせ


「ハッハハハ」


「フフフフフ」


二人はそれを今更の様に思い出し、


「そうだったな、璃々。じゃ紫苑にまた子供を産んで貰って、その子が孫、その孫が曾孫を産んで貰うまで生きて貰わないと。勿論、璃々にも紫苑と同じように頑張って貰わないとな」


「あらあらご主人様、そうでしたら怪我が治ったら一層頑張って貰わないといけませんわ♪」


「そうだよご主人様、私たちをここまで虜にしたのだから責任を取ってね♪」


一刀の言葉に二人は笑顔を浮かべながら答えたのであった。




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