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第11話

愛紗たちは一刀らに近付いているのには、気付かずに鈴々と言い争いをしていた。


「鈴々、我が儘言うな!今から行けば今日中には到着できる!」


「愛紗無理したら疲れるから、一度、町に行って食事してからでも遅くないのだ」


2人が言い争いをしていると、もう1人の少女が


「まあまあ愛紗ちゃん、ここまで無理して来ているのだから、取り敢えず町で食事でもしてから行こうよう?」


その少女が言うと愛紗は


「しかし桃香様・・」


愛紗が反論しようとしたところ、紫苑が


「まあまあどうしたのですか?こんな往来で口喧嘩などして」


桃香様と言われていた少女が


「す、すいません、見苦しいところお見せして」


「何か喧嘩をしていたけど、いったいどうしたの?」


「実はあるところに行こうとしてたのですけど、行く前に食事するしないで揉めてしまって……」


「いったいどこへ行くところだったの?」


「実は・・水鏡塾に行こうとしたのですが、御存知ないですよね?」


その少女が言うと


「実は私たちも今からそこに行くところだけど、今から行っても着くのが、夕方か晩になってしまうわよ、行くとしたら、この先の町で1泊してからの方がいいよ」


代わって真里が説明すると鈴々が


「ほら愛紗、鈴々が言ったことが正しかったのだ」


「お前は食事をしたかっただけだろうが!」


愛紗は相変わらず鈴々に厳しい態度だったので、一刀らは


(「この世界の愛紗(ちゃん、お姉ちゃん)も相変わらず手厳しいな…」)


内心そう思っていた。


すると愛紗が


「説明ありがとうございます。それであなた方も水鏡塾に行くとおっしゃっていましたが、失礼ですが、あなた方は何者ですか?」


逆に一刀らに尋ねると、翠が


「ああ私は涼州大守馬騰の娘、馬超だ」


「従姉妹の馬岱です」


「家臣の北郷一刀です」


「その妻の北郷紫苑ですわ」


「同じく妻の北郷璃々です」


「家臣の徐庶です」


とそれぞれ紹介したが、一刀は徐庶にすでに全ての関係を打ち明け、この旅では、必要な時以外は、翠の家臣で紹介するように説明していた。


それを聞いた桃香と言われた少女が


「え、えっ?西涼の馬超さんに、北郷さんって噂の御遣い様では…!?」


と軽く狼狽えて混乱していたが、愛紗が


「桃香様、先に自己紹介を」


「あっ、ごめんなさい。私は幽州の劉備で、字は玄徳と言います」


「私は義妹の関羽、字を雲長」


「同じく鈴々は、義妹の張飛翼徳なのだー」


それぞれ紹介したが、一刀は


(「この子が劉備か……、でも今回は愛紗や鈴々が本当に仕えるべき人物に出会えて良かったな」)


と密かに喜んでいた。


すると真里が、


「さっき、あなた方も水鏡塾に行くと言っていましたが、どういう用なの?」


そこで劉備が


「実は、私たちは世の中を憂い、何とかしたいと思い立ち上がったのですが、私たち3人だけでは限界があるので、そしてそこに優秀な軍師さんがいるという噂を聞いて、私たちの軍師になって欲しいとお願いにきたのです」


自分の理想を熱く語った。


すると翠が


「へえ~あんた達もか。私たちもその者にうちの国の軍師になって貰おうとお願いに来たのだが、こいつは勝負だな」


なぜか軍師勧誘の勝負事に意識が行ってしまっていた。


段々話込んでいるので、紫苑が


「ここで立ち話も何ですから、宿屋に行ってお話しましょう、せっかくですから、皆で一緒に泊まるのはどうでしょう?」


翠や蒲公英らは同意したが、愛紗が


「そんな見ず知らず者と一緒に泊まるのは・・」


「見ず知らず者って、そんな野暮なことは言わないの。せっかくこうして知り合えたし、それに私たちが誘ったのだから宿代くらいは出しますわよ」


紫苑が言うと鈴々が


「やった~宿代が助かったのだ」


「こら!鈴々勝手に決めるな!」


「愛紗ちゃん、せっかくだからお世話になっておこうよ。また帰る時のお金もいるのだから」


桃香が言うと、愛紗も観念したかのように


「わ、分かりました、ありがとうございます。お世話になります」


こうして皆で宿泊することに同意し、そして町に移動して、宿屋に入った。


そして一度、それぞれの部屋を別れてから夕食時に再び落ち合う話になり、愛紗たちが部屋に着いて落ち着いてから、桃香が


「あ~、まさか馬超さんと御遣い様らが来るとは思ってもいなかったよ~。でもそんな人たち相手に私たち軍師を勧誘できるかしら・・」


すでに弱気になり少々落ち込んでいた。


落ち込んでいる桃香を見て愛紗が何か思い立ったのか急に立ち上がり


「桃香様、鈴々、ちょっと外に出ていきますが、すぐに帰ってきます。鈴々、桃香様を頼むぞ」


「うん、分かった。気をつけてね」


「分かったのだー」


愛紗は2人を部屋に残して出ていった。


一刀たちも部屋に入り、皆が寛いでいたところに外の扉から


「失礼します、関羽です。部屋に入ってもよろしいでしょうか?」


訪ねてきたので、翠が入室を許可したので愛紗が入ってきた。


すると翠が


「どうした関羽、何の用だ?」


愛紗に聞くと、急に頭を下げ


「勝手なお願いですが、明日水鏡塾に行くのを遠慮していただきたい」


愛紗が突然そのようなことを言うと翠が怒気を込めながら


「それはどういうことだよ!勝手な事言うなよ!」


「それは分かっている。しかしそちらはすでにある程度人材が揃っているが、私たちは何もない状態で、頼りになる軍師が居なければ、今後の見通しにも影響する。勝手な申し分で本当に申し訳ないがここは手を引いてはくれないか」


愛紗が一方的に説明するも、真里が


「それは聞けない話ね。私は水鏡塾の卒業生だけど、私が水鏡先生に仕官するに一緒に挨拶に来て貰っている客人を追い返すことなどできないし、そしてあなた方のそんな勝手な言い分で、せっかくの人材をはいそうですか引くわけにはいかないわ。」


「うっ、確かにそうだが…」


愛紗が言葉を詰まらせると更に紫苑が


「関羽さん、それは劉備さんの命令で来たの、それともあなたの一存かしら?」


「わ、私の一存です…」


愛紗が言うと一刀が


「関羽さん、ちょっといいかな?貴女が劉備さんのために思って、こういう話をしたのは分からない訳ではないけど、しかし、貴女がやっていることが劉備さんが望んでいることかな?そして仕官するかどうかは、相手が決めることであって、俺たちが勝手に決めるものではないだろう?ここでそれを決めてしまうのはそれこそ勝手な考えではないのかな?」


一刀が愛紗に対して怒るわけでもなく諭すような口調で説明すると愛紗はそんな一刀の言葉に愛紗は不思議な感覚を感じ


(「何で初対面なのに、この人の言葉を素直に受け取ることができるのだろう?)」


愛紗は少し冷静になり考えると、再び頭を下げ


「申し訳ありません、私の考えが足りませんでした。確かに皆さんがおっしゃる通りです、決めるの相手であって私たちではありませんね。それこそ桃香様や私たちの熱意をぶつけて、来て貰えるよう頑張ります」


素直に謝罪し、


「あなた方には大変失礼なことをしてしまったので、そのお詫びと誤りを気付かせていただいたお礼に私の真名を預かって頂きたい」


愛紗がそう告げると、翠が


「別に気にしなくていいのに、本当にいいのか?」


「ああ、そしてあなた方と今後交友を深めていた方がいいと思うので、よろしくお願いしたい」


愛紗が承諾すると皆、真名を交換した。そして一刀は愛紗に


「俺たちは真名がないので、北郷と呼ばれると3人もいるから誰かと分からないので一刀、紫苑、璃々とそれぞれ呼んでくれないか」


愛紗は顔を赤らめて


「そっ、そんな呼び捨てなどできません」


「いいからいいから」


「で、では一刀様と呼んでもいいですか」


「様はいらないんだけどな…」


「いっ、いいえ!そんな御遣い様を呼び捨てできません!」


(「何で初対面のはずなのにこれだけ緊張しているのだ?そして胸が熱くなるのだ?)」


内心なぜか動揺している愛紗であったが、結局この遣り取りは一刀が折れることなったのである。


そして、その後少し雑談をして愛紗は部屋を離れ、食事に行く準備をしていると紫苑が


「ご主人様、愛紗ちゃん、何かご主人様に気になっているみたいですわよ」


「え、そうか?全然そんな風には見えなかったけどな」


何時もの鈍感ぶりを発揮し、そして璃々が一刀のそばに来て、小声で


「ご主人様、また愛紗お姉ちゃん手を出したら、駄目だからね~」


「璃々何言ってるんだ。向こうは俺のことは何も思っていないんだぞ、無理に決まっているだろう」


「はぁ~ご主人様…もう少し自分の事を自覚しようね。前の世界も含めて、今までその笑顔で何人の女の人を落としてきたの?」


「えっ、何で璃々がそんなこと覚えているんだよ…」


「それは私も記憶に残っている部分もあるし、あとはお母さんに教えて貰ったから♪」


璃々が笑顔で答えられると一刀は首を項垂れていた。


「でもご主人様、根拠はないですが何かこれから愛紗ちゃんたちも色々と絡んでくると思いますけどね」


「それは女の感かい?」


「そうですわ、女の第六感かしら」


笑みを浮かべている紫苑であった。


そして再び全員が合流して、宿屋を出て近くの食堂で食事を始めて和気藹々と話をしていると、途中で桃香が


「あれ~愛紗ちゃん、何か馬超さんや御遣い様たちと親しく話をしているけど、どうしたの?」


「えっ、そうですか、普通に話をしているだけですけど?」


言葉ではそう言っているものの明らかに動揺していたので


「愛紗ちゃん、怪しい…」


「確かにおかしいのだ」


愛紗は2人の義姉妹から疑いの目を向けられていた。


そこで一刀が助け舟を出し


「劉備さんに張飛さん、さっき偶々愛紗と会って話をしたら、意気投合してお互いに真名を交換したんだよ」


一刀がさっきの事を隠して説明すると2人は


「えー、愛紗ちゃんずるい!そんな抜け駆けするなんて!」


「愛紗はずるいのだ!」


2人は怒り出し、そして


「私も真名を預けるわね、私の真名は「桃香」、だから皆もそう呼んでね」


「鈴々は「鈴々」と呼んで欲しいのだー」


2人が真名を預けたので、皆は真名の交換を行い、そして一刀は先ほどの愛紗同様に真名がないことを説明すると2


「分かりました、一刀さん」


「鈴々は、お兄ちゃんと呼ぶことにするのだー」


2人は一刀のことをそれぞれそう呼んでいた。


そして色んな話をしていると急に真里が真剣な顔付きになり


「ところで桃香さん、もしあなた方が国を治めるようになれば、どういう国にしたいの?」


「皆さんは、今、この国の状態をどうお思いですか?、役人たちは重税で民たちから絞り取り、民は賊が怯えて、日々の暮らしさえ困っている状態です。誰かがやらないと国がずっとこの状態ままです。だから私たちは立ちあがって、皆が笑顔で過ごせる平和な国にしたいのです」


桃香は自分の信念を答えた。


更に横から愛紗が


「では翠、あなた方はどういう国を目指しておられるのですか?」


逆に聞かれると、翠は目で一刀を見て、一刀もアイコンタクトで承諾したので翠は


「私たちは目指すのは普通の国だな、幸せの基準は人それぞれだから分からない。だったらせめて私たちは皆が普通に暮らし、普通な人生を送り、普通に恋愛し、そして皆が賊とかに怯えずに安心して暮らせるようにしたいと思っている」


翠は以前一刀が言っていたことについて賛同したので、一刀の受け売りの言葉であるが、それを桃香たちに説明すると、桃香は


「ほえ~、翠さんたちも私たちと同じような考えですね、だったら同士です。これからもよろしくお願いしますね」


そう言って、桃香は両手で翠の両手を握り、同士の契りみたいなことをしてきたので、翠も困惑しながらもこれに応じていた。


横で聞いていた一刀や紫苑は内心


((「人柄や理想は悪くないのだが・・、何となく不安があるな・・」))


桃香について何らかの不安を感じていた。


そして食事を終えて、一刀たちは桃香らと別れ、明日に備え、休むことにしたが寝る前に紫苑は一刀に


「今日、愛紗ちゃんたち見てどうでしたか?」


「ああ、3人とも仲良さそうで良かったとは思うが…、何となく桃香に不安がありそうだな。何の根拠もないのだけどな」


「あら、ご主人様もですか、私も桃香ちゃんは君主として甘さが目立つような気がして…」


「そんなこと言ったら、前の世界でも俺は皆から散々甘いと言われてきたぞ」


「でもご主人様は、締める時は締めてしましたが、桃香ちゃんは、何か全てに対して甘さを見せるような気がして…」


「そうかな?、まあ今、ここで心配しても仕方ないし、何かあったらその時考えよう」


「そうですね、あれこれ心配しても仕方がないですしね」


「何時まで話をしているの、もう寝るようよ~」


「「ああ、ごめん(ね)、璃々」


一刀たちは愛紗たちの再会を感謝し、深い眠りに入ったのであった。



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