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真・恋姫無双 〜新外史伝〜  作者: 殴って退場
第11章 荊州の変
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第107話

魏と晋の決戦の結果は一刀の元にも入っていた。そして一刀は今後の対応について、まずは朱里たち軍師勢に徴集を掛けた。


「今回は河内郡での反乱、そして味方に付いたはずの鐘会が裏切った事により、魏が敗退した大きな原因だと思います」


「それで今回の敗退で魏の勢力は大きく減じ、晋が兗州に冀州・徐州の大半を制圧しました上に、曹操さんの主要の将でもある夏侯淵さんが行方不明になっているそうです」


朱里の報告を聞いて、一刀と紫苑は秋蘭が行方不明になったことに驚いたが、それについては表情には出さずに黙って聞いていた。


「魏の勢力が減じた事は良い事だが、晋が予想以上に勝ち過ぎた面があるな」


「そうっすね。それに今後足元を備えるという意味で新たに加わった兵たちについて、身辺調査をする必要があると思うっす」


法正こと夕霧に引き続いて姜維こと晶が意見を述べるが、


「間者に対して洗い出しする必要はあるけど、味方に付いた将を疑うのはどうかと思うけどな…」


一刀が晶の意見に対してやや否定的な意見を述べる。


「あの……ご主人様。意見を言ってもよろしいでしょうか?」


ここで遠慮しながら諸葛均と名を改めた雛里が進言する。


「降った身となった私が言うのも何ですが、ご主人様の身の回りにいる将についてはそれほど気にしなくてもいいかと…」


「どうして雛里ちゃん?」


「それはね…朱里ちゃん。ご主人様の周りにいる女性の半数近くはご主人様と結ばれているでしょう。それにまだご主人様を狙っていそうな女性がいるという話も聞いているの、それでそんな状態で誰か裏切ると思う?」


「……それは」


「それ以外の人たちもご主人様に何らかの形で命を救って貰った人が多いでしょう。だからそういう意味で大丈夫だよ」


「そう言われると確かに安心だけど…」


朱里は雛里の意見を認めるものの表情は複雑そうな顔であった。


「それで、ご主人様。先に交した魏と晋との不戦の約定はどうなるおつもりですか?」


「そうだな…まだ晋と魏の決着が完全に付いていないだろう。こちらから二国の戦いに手を出すつもりはないし、俺たちもまだ荊州とかを完全に固めきれていないから、今は内政を充実させるつもりだよ」


一刀がそう答えると朱里はその答えに満足したのか異論は挟まなかった。


「でも近い内に私たちも一度長安に引き上げて、今後に備える必要がありますわ」


「そうだね…。取り敢えず洛陽に抑えの部隊を置いて、晋並びに魏の監視も引き続きする必要はあるけど」


「それもそうですが、新たにご主人様の身の回りを固める親衛隊を増強する必要がありますわ」


「どうして、紫苑?」


「今、私や璃々ですら弓騎隊を率いてが初雪ちゃんや初霜ちゃんたちがいますけど、王たるご主人様が直属の部隊に他の将が居ないというのもおかしな話ですわ」


「それもそうだな。幾ら何でも国王たるかず様が一から十まで自分の部隊を指揮するというのも何とも変な話だぜ」


それに付いては夕霧も同意する。


「それに…ご主人様。貴方一人だけの身体ではないのです。それは璃々が戦場に出ているので、ご主人様が一緒に戦場に出る事についてお停めしません。しかしできる限り、身の安全を確保して欲しいのです。そうしなければ他の者も安心して戦えませんので…」


紫苑から心配する声を上げると一刀は頷き


「分かった、紫苑。別に俺の部隊に新たな将を置くことに異存はないから。細かい事は皆に任せるよ」


そして2週間後、洛陽に留守の部隊を残して部隊の大半を一度長安に引き上げることが決まり、そして部隊の再編することが決まったのであった。


一方、晋は今回の魏との戦いで領土が拡大し、そして魏制圧、並びに蜀や呉を牽制するため、本拠地を兗州の東郡に拠点を変えた。


この場所は、洛陽と青州の中間点にあり、また魏の現在の本拠地である青州を制圧するためには後方の拠点として交通の便が良く、更に洛陽や呉に対しても睨みが効くところもあった。そんな中陽炎と妹である楓こと司馬孚、白雪こと蒋済が話し合いを行っていた。


「冀州の方はほとんど、私達に従うことになったぞ」


「意外と早かったわね」


「ああ、元々冀州は家柄に靡くところがあるところだからな。元々の家柄が低い曹家に従うよりは、漢の名門でもある司馬氏に従うことの方が抵抗は少ないみたいだ」


「司馬氏という名もたまには役に立つものね」


白雪の報告を聞いて、陽炎は自分の血筋も偶には役立つものだと微笑を浮かべていた。


「それで姉上、今後どうするおつもりですか?」


楓は姉に今後の事について敢えて聞いてみた。


「そうね…。私は別に天下統一には興味がないわ。ただあの曹孟徳に私の実力を見せ付けたいのよ」


「それでは魏を滅ぼすとしても、蜀と呉には手出しをしないと言うことなのですか?」


「まあ私はそれでも良いと思っているわよ。ただそれは北郷一刀と孫策、この二人の力量が如何ほどなのかそれ次第だわ」


そして話を終えた後、楓がこの話を現在、負傷療養中の鐘会こと葵にこの事について話をすると、


「何よ、それ。そんな事の為に私は目を失ったんじゃないわよ!」


「ち、ちょっと落ち着きなさい」


葵は激怒していた。それは、いずれ陽炎が天下統一をすると信じて、今まで草として耐え、そして今回の寝返りで世間の噂では比裏卑怯の者として悪評が立ち、怪我したことも天罰と言われてきたことも全てを陽炎のためと思い捧げてきたが、その当の本人がその天下統一の意志が無いことに自分が今まで尽くして来たことが何であったのか、不満を隠せずいられなかった。


しばらくすると興奮が収まり、そして怪我に差し障りがあるので安静するように楓から言われ、そして楓が部屋から出ると、一人部屋に残された葵は、


「陽炎様がそのつもりだったら、私にも考えがあるわ……」


そう呟きながら、邪悪な笑みを浮かべていた。


丁度その頃、璃々と翠と星蒲公英らは洛陽の郊外において、部隊の演習を行っていた。


「はぁ~疲れ~た。早く帰って風呂に入ろう」


「ホント…今日の訓練厳し過ぎるよ~」


璃々と蒲公英は訓練のきつさにぼやいていたが


「おいおい、二人ともこれくらいで泣き言言うなよ」


「そうだな。あれ位の訓練で泣き言とは、今度はもっと厳しくする必要があるな」


二人の愚痴に翠と星は涼しい顔をしながら、更に厳しい訓練をすることを告げると二人はここで文句や愚痴を言ってしまうと更に訓練の量が追加されると思い、ここは閉口するしか無かった。


「あっ!?あそこで兵たちが騒いでいるから、ちょっと見てくるね!」


そんな嫌な空気から逃げるかの様に蒲公英が、兵が何か騒いでいたようであったので、これ幸いとこの場を離れた。


それを見て残された三人はあからさまな蒲公英の行動に苦笑を浮かべていた。


「ねぇ。これ何の騒ぎなの?」


蒲公英が騒ぎの輪に兵士に聞くと兵士も驚きながらも報告する。


「こ、これは馬岱将軍!実は行き倒れと言いますか…落武者らしき者がそこの川近くで倒れていましたのを発見し、今、助け上げているところです」


「落武者?」


「ええ。最初は私達も行き倒れかと思ったのですが、その者を見ると戦装束の上に腕や足など多くの箇所に傷が見られましたので」


「えっ?それで、その人まだ生きているの?」


「はい。ただ意識は無いので、早急に手当てする必要がありますが…」


「それじゃ、早く医者に見せないと」


「どうした、蒲公英?」


漸く蒲公英に追い付いた翠が声を掛けると、蒲公英は皆に今までの事を説明する。


「そうか。では蒲公英、お主悪いが先に城に戻って、医者の手配をしてくれるか」


「うん。分かった」


説明を聞き終えると星は蒲公英に医者の手配を指示すると蒲公英は素早く馬に乗り、直ぐに城に向かった。


そして蒲公英が出発してから間もなく兵士たちが、漸く倒れている者を引き上げてきた。


すると三人は引き上げられた者がどの様な人物か覗き込むと


「えっ?」


「これは…」


「何故、ここに?」


三人はそれぞれ驚きの声を上げた。


そして三人は、お互いの顔を見る。


「何故お主たちはこの者を知っているのだ?私は以前主が交渉した時に同席していたので知っていたが」


「私と翠お姉ちゃんは、黄巾党の乱の時に直接見た事があるから…」


星と璃々は兵に聞こえない様に態と主語を抜いて小声で話す。


璃々たちが驚いたのは無理も無かった。兵たちに助けられたのは、何と魏の将で現在行方不明となっていた夏侯淵だったのだから…。


ご意見・ご感想あれば喜んで返事させていただきます。(ただし誹謗中傷等は止めて下さいね)

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