第105話
かなり話が強引な設定かもしれませんが、それでも良ければ読んで下さい。
河内郡で反乱の知らせを聞いて華琳は舌打ちをしながらも
「やるわね、司馬懿仲達。この時を狙って反乱を起こさせたのね」
「ええ恐らくそうでしょう。河内郡は元々司馬氏の本拠地、私たちが対峙している間に立ち上がり、私たちの後背を突く。いい手です」
稟が敵将である司馬懿仲達を褒める様な発言をすると
「何、呑気に敵を褒めているのよ!」
桂花は激怒するも華琳はそれを気にする訳でもなく
「このまま敵に後背を突かれると拙いわ。こちらに向っている秋蘭に命じて河内郡の晋軍を叩くよう伝えなさい」
そう言いながら華琳の陣では動揺する様子を見せなかった。
反乱の報を聞いて動じる様子もなく構えている華琳の陣を見て
「まだこれ位では動じないか…。それが何処まで続くかしら」
「でもあの子、私の命令を無視して無茶しなければいいけど…」
陽炎は一旦言葉を切り、少々不安な発言をしたが、しかし楽しげそうに呟いていた。
一方、反乱を起こした河内郡では既に東へ向け軍を出発させていた。
「さあっ、この季達様の後について来るのよ!あたしの兵である以上、敵に遅れを見せるのは赦さないから!!」
「全く…嵐後先考えずに進軍するなんて、馬鹿でも出来るわよ……」
「それ…どういう意味よ!楓お姉さん!」
「貴女…お姉様から聞いていたでしょう。不用意な行動を取るなと。それに貴女が大好き
なお姉様が以前あの曹孟徳に言い寄られたからって、ここで力んでも仕方ないでしょう。大人しく言われた通りの指示に従いなさい」
「うっ…分かったわよ!従えばいいのでしょう!従えば!」
姉の楓に言われ渋々従ったが嵐であったが、その嵐は気が逸っていた所為もあり、得物片手で愛馬を走らせ始めていたのである。この嵐こと司馬馗は文系の司馬氏では珍しく武が得意で、そして姉の司馬懿を尊敬していた。だが一つ欠点と言えば恋愛感情はないが陽炎に対するシスコンの持ち主で、以前華琳が陽炎に言い寄った事に激怒していた。現に、今こうして彼女一人が暴走を始めているのも、その時の事を思い出していたからであった。
「まぁ、仕方ないか……。あの子お姉様に懐いていたから。それに万が一あの子を死なせたり、任務に失敗した場合、お姉様を悲しませることになるからね…。あの子が暴走した時、抑えられるのはお姉様か私だけだから……」
呆れ顔をしながら妹の嵐の暴走を止めた楓こと司馬孚は司馬懿の妹であるが、姉の陽炎と比べ、大胆さに欠ける面はあるが堅実な手腕の持ち主で、与えられた命令を過不足なく果たすことのできる指揮官でもあった。
だからこそ陽炎は妹である楓に信頼して指揮を命じ、そして軍勢は陳留に向け進軍を開始した。
華琳から河内郡の晋軍鎮圧の指示された手紙が受け取ると秋蘭は合肥の守りを鐘会に任せると、急ぎ陳留に戻っていた。反乱軍が陳留に向っている知らせを聞くと秋蘭は
「これは早々に撃破しないと後々、影響するな」
「そうですね~。幸い敵さんはこちらに向って来てくれていますので、その点は助かりますが」
風の言葉を聞くと秋蘭は黙って頷き、晋軍を迎撃するため出陣した。
そして晋軍2万と魏軍3万が官渡で激突する。
晋軍の兵の動きを見て秋蘭は
「流石、鍛えられた兵たちだ。我々の兵と見劣りしない。だが…将は戦慣れしていないみたいだ。斗詩と流琉の部隊に先陣と後陣の狭間を突くように伝えろ」
晋軍は先陣の嵐が魏軍の旗を見るなり進軍を速めてしまいその結果、後陣の楓の部隊と間隔が空いてしまい、そこに秋蘭に突かれてしまった。
隙を突かれた楓は
「もうあの子は!」
先陣にいる嵐に文句を言いたかったが、それどころではなくこのままでは部隊が分断され全滅する恐れがあった。
「部隊を密集させ、そのまま防戦に努めろ!」
楓は撤退せず、何かを待つようにこの場に踏みとどまって防戦に努める。
晋軍の動きを見て、風が疑問に感じた。
「おかしいですね…」
「どうした風?」
「このままであれば、敵は我が軍に各個撃破されるのは時間の問題なのです。ですが敵の本陣は退却もせずにいるのはまるで何かを待っているみたいなのです」
「ふむ…援軍か?」
しかし秋蘭は敵に援軍があるとしても現在、華琳と対峙中の本隊くらいしか大規模な援軍は見込めないはず、他にどこから援軍があるのか思考していると
「た、大変よ!陳留が晋軍の手に渡ってしまったわ!」
行き成り、陣に飛び込んで来たのは以前華琳に命を助けられ、現在、数え役満姉妹と名乗っている次女の地和であった。
そして地和の後ろには妹の人和、そして恐怖のあまりに震えながら姉の天和にしがみ付いている美羽の姿であった。
この4人は軍とは別に行動していたため、陳留に滞在していたのであったが人和から説明を受けると秋蘭と風は驚きを隠せなかった。
何と陳留を陥落させたのは先に呉から投降した鐘会であったからだ。
「くっ!鐘会は晋の二重間者だったか!」
「まさか鐘会さんが晋と通じているとは…不覚を取りました」
秋蘭と風は鐘会の謀反に怒りの声を上げる。
「人和、鐘会が謀反を起こしたのは分かったが、それは間違いなく『晋』の旗であったのか?」
「ええ、間違いないわ。留守居役の人が、落城する前に何とか私たちを逃がしてくれて、何とかこの事を伝えて欲しいと言って……」
秋蘭の質問に人和は涙を浮かべ説明した。
「秋蘭様。このままではまずいので一旦、流琉ちゃんたちをこちらに戻して今後の事を考えましょう」
「そうだな」
風の言葉を聞き入れ、秋蘭はこれ以上の戦いを避け、部隊を本陣に戻すと共にこの状況を華琳に急使で送った。一方晋軍も損害が大きい為、一度軍を後退させ部隊の再編を行っていた。
そして本陣に斗詩と流琉が戻ったが、この状況ではいずれ挟撃され部隊が瓦解する恐れがあり、何らかの手を打つ必要があったが風はある事を提案する。
「このままでは我々は全滅の上、華琳様は敵に挟撃されてしまいます」
「ですので、ここに追撃阻止の部隊を置いて、華琳様と合流。そして青州に本拠地を定め再起を図るべきです」
風は一部隊を犠牲にして残りの部隊を無事華琳の所に戻すことを考えた。現実、今いる部隊のみでは陳留の奪還は困難であり、ここで固執すれば部隊が全滅する恐れがあるため、風は苦渋の決断をしたのであった。
「ですが…その敵を阻止する殿の役目務めるのは、かなり困難だと思うのですが…」
斗詩が深刻な顔をしながら言うと周りも分かっていたのか、一瞬静寂な雰囲気となる。
「では、私が残ります」
流琉は自分が殿を務めると言い出したが
「流琉、お前ではまだ無理だ。私が残ろう」
この軍の大将である秋蘭が残ると言い出したのであった。
「そんな秋蘭様!」
「流琉、お前の武はもう私に引けを取らようになってきているが、ただ皆を逃がすとなればお前はまだ経験が浅い。だからここは私に任せろ」
「では秋蘭さんが残らなくても代わりに私が残ります」
斗詩が秋蘭に代わって残ると言い出したが、秋蘭は無言で首を横に振りながら
「斗詩の気持ちはありがたいが、流石に今回の失態を晴らさずして、このまま華琳様に合わせる顔がないからな。すまないがここは私に譲ってくれないか」
秋蘭から真剣な顔をされて頼まれると斗詩も黙って引き下がるしかなかった。
「秋蘭様、必ず帰って来て下さい!」
「流琉、私はまだ死ぬ気は更々ないぞ。勿論無事に帰るつもりさ」
流琉の問いに答える秋蘭であるが、秋蘭の心の中では生還は難しいと思っていたが、敢えてここでは口にしなかった。
風は敢えて無言を貫いたが、風も誰かが殿を務める時点で既に生還は難しいと考えていた。だから秋蘭も本来なら、手元に自分の部隊1万くらい残せることも可能であったが、
「多くの兵がいたら撤退が困難になる」
という理由で秋蘭は少しでも兵を生かして華琳の元に辿り着かせようと思っていた為、自分の部隊の半数を説得して撤退する部隊に加えたのであった。
そして魏軍は挟撃される前に秋蘭の部隊を残し退却を始め、残った兵で守りを固めていた。
一方、陳留を占領した鐘会と胡奮は官渡に向け進軍。
そして態勢を立て直した司馬孚と司馬馗も鐘会と合流したのであった。
「鐘会。貴様、どうして呉を裏切り、更に魏を裏切った!なぜだ!」
秋蘭はどうしても鐘会の裏切りを許せず戦いの前に敢えて舌戦を挑んだ。しかし鐘会から帰って来た答えは予想外なものだった。
「何故…、それは簡単な事よ。私は司馬氏の草…つまり間者だったのよ。私が合肥に派遣されるずっと前から司馬氏に仕えていたの。だから呉から魏への裏切りは仲達様の指示だったけど、魏を裏切る時は私の判断に任されていたの。だから、今が好機だと思い兵を出したのよ。貴女たちが私に何かあると思って監視していたみたいだけど、残念だったわ」
「そして貴女の主君にも真名を教える機会が無くなってしまったわね。ハハハハハハ―――!」
鐘会は勝ち誇った様に笑い声を上げたが、この笑い声に秋蘭が静かに怒りの炎を上げ
「そうか…華琳様を侮辱した行為。まずは返させて貰おう!」
秋蘭は素早い動きで手にしていた餓狼爪を鐘会に放った。
すっかり慢心していた鐘会はこれを避けることができず、真面に右目に矢を受けてしまう。
鐘会は、その場で倒れると右目に矢が刺さったまま
「ゆ、許さないわ!あ、あの女を今すぐ討ち取りなさい!」
先程と打って変わり、周りから見たらみっともない姿で秋蘭を討ち取る様に命じるが兵たちは動揺を隠せないでいた。これを見ていた胡奮こと燕が
「今すぐ士季(鐘会の字)を下げな!今からこの私を指揮する!」
「な、何を!」
「いいから下がれ!今のお前の姿を見たら兵たちの士気が下がる!」
燕は強引に鐘会から指揮権を奪い、魏軍に攻撃を開始すると同時に司馬姉妹の軍も攻撃を開始した。
そして晋軍の休まぬ猛烈な連続攻撃を受けると兵力の差もあり、流石の魏軍も堪え切れず全滅してしまった。だが戦死した兵たちの遺体を調べたが、秋蘭の死体は見つからなかったのであった。
だが秋蘭が力戦した結果、撤退した魏軍は無事に華琳と合流できたのであった。
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