表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真・恋姫無双 〜新外史伝〜  作者: 殴って退場
第10章 波乱
104/134

第104話

魏軍は晋軍との戦いの為、既に陳留を出発。決戦の地である白馬に到着していた。


到着してさっそく華琳は、晋軍の布陣を視察に来ていたのだが、晋軍の布陣を見て一言


「流石ね。そう簡単に隙が見つからないわ」


「この布陣、見事な物です。これを打ち破るのは簡単ではありません」


「何を言っている、稟!華琳様、こんな陣など私が打ち破ってみせます!」


華琳と同行していた稟は感心していたが、護衛として同行していた春蘭は心配無用とばかりに豪語していた。


「フフフ…春蘭、期待しているわよ」


「は、はい!」


「華琳様」


華琳の返事に春蘭は喜んでいた。すると本陣で華琳の代わりに仕事をしていた桂花がやってきたが、春蘭は桂花の姿を見るなり喧嘩腰になってしまう。


「貴様!華琳様と私の邪魔をしに来たのか!」


「煩いわね!誰が華琳様とアンタとイチャイチャをさせるものですか!」


「ハイハイ、二人とも止めなさい。桂花、勝手に本陣を離れ私に付いてきたのではないでしょうね…」


華琳は本来、本陣に居なければならない桂花が本当に自分に付いて来たのではないかと思ったが、桂花は慌てて


「し、失礼しました!華琳様。只今、蜀の使者が華琳様に面会を求めて参りました」


「蜀の使者がね…、それで使者には誰が来たのかしら?」


「そ…それがあの錦馬超が使者として来ているのです」


翠自体は武勇に優れて名も知られていたので使者としての格という面では全く問題なかったが、ただこういった交渉事に今まで優れているという話は聞いたことが無い。その為、桂花としても相手がどういう意味でここに来たのか戸惑いを隠せないでいた。


「稟、この使いどう見るかしら?」


「そうですね…正直、相手の話を聞かないと分かりません。取り敢えずは会ってみないことには」


流石にこれだけでは判断が付きかねるので、華琳は本陣に戻り翠と会談することとなった。


本陣に戻ると華琳は挨拶もそこそこに翠から手渡された一刀からの手紙を見た。


手紙の内容にあっては蜀呉同盟の通知及び、これ以上呉攻略した場合における不戦の盟約の破棄が書かれていた。


華琳にとっては、今のところこれ以上呉を攻略する気は無かったが、まさかこの段階で蜀と呉が手を結ぶとは思ってもみなかった。


渋い表情しながら華琳は


「これはどういうことかしら?裏で蜀と呉が手を結んで背後から、私たちを討つつもりなの」


盟約が破棄されれば蜀呉から挟撃され晋も加えられれば三方から包囲される事となってしまう事が明らかであったが、華琳とすれば一刀が裏切る気が無いからこそ態々、翠を使者として送ってきたことについては誠意があるものと思っていた。だが内容が内容であり、周りの者の目もあるので敢えて華琳は翠に質問した。


「それについては手紙に書かれているようにこれ以上、呉を攻めなければこちらからは手出しすることはないことは私が保障するよ」


翠は一刀が約束を破るような人物では無いことは分かっているし、そして信頼しているからこそ華琳に説明したが、しかし一刀の事を知らない者にとってはこのような言葉を信頼する訳が無かった。


「だから男なんて卑怯なのよ!そんなの信用できる訳ないでしょう!」


男を毛嫌いする桂花がここぞとばかりに翠に文句を言ったが、翠は前以て一刀から桂花の事を聞いていたので予想通りの人物であり、翠は我慢して聞き流していた。しかし桂花は調子に乗って要らぬ一言を言ってしまった。


「どうせ北郷一刀という男もその辺の男と一緒で、全身精液男みたいな物だわ!」


この一言に翠が切れてしまった。


「おい……てめえ。その悪口雑言、覚悟あって言ってるんだろうな…」


翠は携帯している剣を手に掛け桂花に近付こうとする。


「桂花!今すぐ馬超殿に詫びを入れなさい!」


「えっ…しかし」


「桂花!貴女は自分で何を言ったか分かっているの!ここにいる馬超殿は北郷殿の妻なのよ!」


桂花は失念していたのか、華琳に指摘され漸く思い出したが


「……馬超殿言い過ぎたわ。申し訳ない」


主君の華琳からそう言われると流石の桂花も自分の不手際を悔やみながら謝罪をするしかなかった。


「部下の非礼、私からも詫びさせて貰うわ」


華琳自ら詫びが入れるとは流石の翠も予想していなかった。


「へぇ。王自ら謝罪するとはねぇ」


「あら、珍しいかしら。部下の不手際を面倒みるのも君主として当然の事。まあ、手紙の件は了解したわ。それに正直言って、あなた達と相手をする余裕がないのも事実よ。それで一つ北郷殿に伝言しておいて欲しいの」


「ああ、いいぜ。それで伝言とは何だよ」


翠が緊張した面持ちで了解の返事をすると華琳は微笑を浮かべ


「そんな難しい内容ではないわ。私は必ずこの戦いに勝って、北郷殿と雌雄を決しに行くわ。それだけ伝えといてくれるかしら」


「…ああ分かったぜ。精々足元に救われない様にすることだな」


「フフフ…その忠告、有難く受け取っておくわ」


翠も華琳の気迫に負けない様に言葉を返すと華琳は一応の礼を述べ、翠を下がらせた。


翠を下がらせた後、華琳は


「まさか蜀と呉が手を結ぶとはね…。これは決戦を急ぐ必要があるわね…」


「それは分かりますが、焦りが出ますと指揮にも影響します。それに司馬懿殿は臨機応変の策を取れると聞いております。ここでの焦りが敗北に繋がります」


「そうね、貴女の言うとおりだわ。……取り敢えずさっき失態をした桂花でもおしおきして気分転換でもするわ」


稟が助言すると華琳は苦笑しながらも落ち着きを取り戻し、そして翠への暴言に対する失敗と気分転換としてその後で桂花にお仕置きしたことは言うまでも無かった。


一方、晋軍でも魏の布陣を見て司馬懿こと陽炎が


「流石、曹孟徳だわ。無駄が無い陣を引いているわね」


「しかしこのままずっと睨み合いするのも暇ですね。小手調べに兵を出してもいいですか?」


「貴女が勇猛なのは認めるけど、駆け引きは苦手でしょう。ここは大人しく待っていなさい」


若竹こと張郃が出兵を主張するも姉貴分の徐晃こと松羽に止められてしまった。


「それで陽炎、あっちとは連絡が付いたのか?向こうが動かないとこっちに勝目はないぞ」


「心配しなくてもいいわ。さっき梅香が帰ってきて、二日後に向こうも動くそうよ」


白雪こと蒋済が疑問を呈すと陽炎は先に戻っていた郭淮こと梅香の報告を聞いて、これで策が整ったこと報告すると、皆は漸く戦局が大きく動くことを期待しながら戦意を高めていった。


「さて曹孟徳殿。私からの贈り物、綺麗に受け取って貰えるかしら……」


そして陽炎は周りに聞こえない様に眼を光らせながら呟いていた。


一方、一刀は翠から会談時の話の内容を聞いていた。聞き終えて一刀は苦笑しながら紫苑に


「向こうの心証を害してしまったかな」


「しかしいずれは敵となるべきお方、気にしなくてもいいと思いますわ」


「ですが曹操さんは既にこちらを意識していますが…正直これはよくない兆候ですね」


「それはどういう意味だ?」


朱里の言葉に翠が疑問を上げる。


「今のところ翠さんのお話だけで判断している面は否めませんが、どうも曹操さんは司馬懿さんを侮っているのではないかという点なのです。まだ晋との戦いに勝敗を決していないうちに次の敵でもある私たちを既に意識しているということは既に何らかの形で勝利への確信があるのか…」


「若しくは相手を侮って油断をしている可能性があるかもしれないと」


一刀が後の言葉を繋げると朱里は無言で頷いた。


「しかし、英雄と言われた曹操さんの事ですので、そう言った油断はないとは思いますが、ただ相手の司馬懿さんの情報が少ないので何とも言えない面があります…」


「でも両者とも優れた人物、どちらが勝っても最終的にはご主人様の最大の敵と思いますわ」


紫苑が話していると慌ただしい音を出して部屋の扉が開かれるのと同時に璃々が現れた。


「璃々、もう少しゆっくりと扉を開けなさい」


紫苑は璃々の慌てている様子にも動じず注意するが、当の璃々は紫苑の落ち着きぶりに苛立っていたのか大声で


「お、お母さん。それどころじゃないの!河内(かだい:洛陽から見て黄河の対岸にある郡)で反乱が発生したんだよ!」


璃々からの報告を聞いて場は一気に凍りついたのであった。



ご意見・ご感想あれば喜んで返事させていただきます。(ただし誹謗中傷等は止めて下さいね)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ