第10話
漢中に入る手前で翠が
「璃々、蒲公英悪いけど、先に町に行って、どこか治療やっている医者を探してきてくれよ」
と頼むと、2人は返事二つで、医者を探しに行った。
そして真里が皆に
「ここまで世話になってすいません。治ったら、一生懸命やりますので、よろしくお願いしますね」
そう言いながら礼を言うと一刀、紫苑、翠が
「あ~気にしなくていいよ。これから仲間なんだから」
「そうですよ。困った人を助けるのが当たり前なのですから」
「そうそう、気楽に行こうぜ」
3人は真里を気遣ってながらそう返事をした。
そして、話をしているうちに漢中の町の入口で璃々と蒲公英が待っていて、璃々が
「ご主人様~、医者を見つけてきたよ、何かここらで評判の先生らしいよ~」
「皆、こっちこっち」
蒲公英が先頭を切って案内をした。
しばらく町を歩くと、その場所にやって来ると診療所らしき看板が上がっていたそして中から大声で
「元気になれぇぇーーー!」
と男の叫び声が聞こえた。
それを聞いた一刀が蒲公英に
「ここに間違いないよな……?」
「確かに教えて貰った場所はここに間違いないと思うけど……」
一刀たちを案内してきた蒲公英も少々心配になっていた。
そして一刀が取り敢えず、普通に治療して貰ったら問題ないだろうと思いながら中に入り、医者らしき若い男性に
「すいません、怪我人を見て貰いたいのですが、よろしいですか?」
「ああいいぞ。怪我人は何処だ?」
負傷している真里を診察室まで一刀たちが付き添った。
その医者の診断の結果、手足の擦過傷に打撲であったが、あと医者曰く
「傷の影響か、また旅の疲れもあるんだろう、君の気が少々弱ってきている、気を回復するのに針を打つのだが、因みに身体に針を刺しても大丈夫か?」
「大丈夫です」
真里が了解の返事をしたので、針治療するため、一刀たちは一旦診察室を出た。
そして診察室から再び
「一針同体!病魔覆滅!元気になれぇぇーーー」
再び大声を出していたので、皆は
(「もう少し静かに治療出来ないか・・」)
と内心思っていた。
しかし、治療が終わってから、真里が本当に怪我をしていたのかと思うくらい元気な姿で戻ってきたので、一刀はこの医者のことが気になり、名前を聞いてみると
「私の名前は華佗というのだが、君たちの名前は?」
華佗から聞かれるとそれぞれ自己紹介をしたが、一刀は
(「え~華佗って、こんなに若い男だったのかよ」)
内心驚いていたが、すると一刀が
「華佗先生一つお聞きしたいことがあるのですが」
「ああ悪いけど、先生と言われるのは堅苦しいから、華佗と呼んでくれないか」
「分かりました、では俺のことも一刀と呼んで下さい、先生はどんな病気も治すことができるのですか?」
「さすがにそれは無理だな、まだまだ修行中の身だ。しかし、どんな患者にも全力を尽くして治療をして、そして1人でも多くの命を救いたいのだ」
華佗は自分の信念を述べた。
一刀は信念を語った華佗を感じ、そして治療して元気になった真里を見て、
「華佗、お願いがあるんだが、1人治療をお願いしたい患者がいるのだが」
武威にいる碧の治療を懇願した。そして翠や蒲公英は、一刀が華佗にお願いしているのは、碧が何らかの見込みで治る可能性があるという一刀の言葉を聞くと。一刀だけに負担を掛ける訳にはいかないとばかりに
「先生頼む!お母様の病気を何とか治してくれ!」
「私からもお願いします!伯母上様の病気を治して下さい!」
2人は急に土下座をして、華佗に何とか治療をして貰うよう頼み込んだ。
これには皆が驚き、そして華佗が
「2人とも顔を上げてくれ、医者は患者を診て、病気があれば治すのは当たり前だ、治せるかどうかは分からないが、必ずその患者を見に行くよ」
華佗が答えると、2人は抱き合って喜んでいた。
しかし華佗もさすがに名医で、ここでの患者もいることで、すぐに出発はできないということもあり、一刀たちも旅の途中ということだったので、翠は華佗に碧への面会状と手紙を渡し、碧の治療を託したのであった。
そして一行は漢中を離れ、一路荊州に向かうことになったのだが、一刀が真里に
「なあ真里、誰か知り合いに俺らの軍師や文官になってもいいと者はいない?」
「ああ、今からちょうど案内しようと思っていたけど、皆、水鏡塾って、知っている?」
真里が皆に聞くと、名前に聞き覚えがあった紫苑が
「詳しくは知らないけど、ひょっとしたら司馬徽先生がやっている私塾のことかしら?」
「正解!そこの生徒は皆、優秀で各地に官使なっている人間が多いの、私も一応卒業生なんだけど、私の場合、母上が殺されたから敵討ちするため、中途半端な卒業になってしまったのよ、だから今から先生に敵討ちの報告とひょっとしたら私の後輩で凄い優秀な子がまだいるかもしれないから、いたら紹介しようと思ってね」
真里が説明を聞くと、一刀や紫苑、璃々は内心、知っている知識である人物の名前が浮かんでいた
((ひょっとしたら・・ちゃん?))
「へ~、その子の名前は?」
一刀がそれを億尾に出さずに真里に聞いてみると、
「名前は諸葛孔明と龐士元よ」
一刀らは真里から聞くと内心、
(「やはり朱里か…、しかし今回はまだ荊州にいて、更に龐統もいるって?」)
今更ながら、以前と違う世界に感じている一刀だった。
因みに横にいた翠と蒲公英は
「「誰それ?」」
不思議そうな顔をしていた。
一刀は、真里に改めて2人はどんな人物か確認すると
「私よりは能力は段違いに凄いわ、2人とも志が高いので、主君に値しない人物だったら、いくら言っても仕官は無理ね、ただあなたたちだったら可能性はあるわ、ただ…」
「ただ…、何だよ」
「イヤ、これはあまり気にしなくていいよ、愛嬌があると思ってくれても」
何かを隠している真里であった。
そして荊州に到着して、もうすぐ目的地である水鏡塾に行く途中で、翠や蒲公英が
「まあ、真里あとどれくらいで、着くんだ?」
「少し疲れたから、休もうよ~」
「今日中に行くとしたら、到着するのは夕方か夜になるから、今日はこの近くの町で休んで、明日尋ねるのでどうかしら?」
真里が言うと、皆、納得して、この先の町で宿泊することにした。
そして、一行が町に行く途中の道の分岐点で、3人連れの一行が道に迷っているのか、道の真ん中で何か揉めている様子であった。
しかし、一刀、紫苑、璃々には何か聞き覚えのある声に、そして久しぶりに見るある人物の姿が見えてきた。
璃々がその姿を見ると、その声を聞くと一刀に
「ねえ、ご主人様、あの声にあの姿って……」
「多分間違いないだろうな紫苑、やはりあれは……」
「間違いないですわ、でも1人見かけない子もいますわ……」
3人ともその姿の人物たちの2人に見覚えがあった。
そして一刀らは、心の中で
(「久しぶりだな(ね)・・愛紗(ちゃん、お姉ちゃん)に鈴々(ちゃん、お姉ちゃん)・・」
思わぬ再開に思いを寄せていたのであった……。