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告白の唄

作者: WAIai
掲載日:2026/08/22

「ー好きです」

顔を真っ赤に染めて、萌が告白すると、同級生はもじもじとする。

萌は飛んでいる赤とんぼよりも、目立つ顔色で、じっと答えを待つ。

周りは庭なので、人気はなかった。

コスモスが風で揺れ、可愛らしく奏でる中、2人は黙ったままとなる。

ー駄目なのかな…?

胸をドキドキさせながら、答えを待っていると、廊下から明るい笑い声が聞こえてくる。

皆、私達に注目してないわよね、とか思いつつ、そちらへ視線を向けると、同級生ー開がようやく口を開く。

「ごめん!! 俺…その」

ご、と聞こえた時から、萌は気づいてしまった。

開はおしゃべり上手で、一緒にいると楽しいので、彼女になりたかったが、もしかしたら誰かいるのだろうか。

「あ、あの…。誰か好きな人とか、付き合って欲しい人とかいるの?」

思いきって拳を握りしめながら聞くと、開は首を横に振る。

「そう言うわけじゃなくて…。その」

項をかきながら、開は一度口を閉ざすと、眩しそうに太陽を見る。

秋の日光は優しく、萌の傷を癒してくれるようだった。

じっと獲物を狙う肉食獣みたいに待っていると、開がようやく答えを出したようだった。

「ー友達から始めないか?」

「え…」

その告白に、萌は驚いた声を出す。

友達ならとっくになっているはずと思っていたが、それは自分の気のせいだったのだろうか。

諦めきれず、萌は必死の形相で聞いてみる。

「友達って…もうそういう関係でしょう? 2年間も同じクラスなんだし」

「そうなんだけど…どうも恋愛に疎いみたいで、俺」

照れたように言うと、開は手を差し出してくる。

「友達としてよろしく。な?」

「…うん」

少し不満、いや、大分不満だったが、仕方なく手を差し出し、握手する。

すると開の大きな手が力を入れてくれ、思わずどきりとする。

「友達として聴いて欲しい唄があるんだけど…」

「唄…? 何の?」

「いいから。俺の好きなバンドなんだ」

スマホを取り出すと、開は器用に操作し、曲を流す。

前は何だろうと待っていると、優しい音色が聴こえてくる、

それは自分を包み込むような柔らかさで、聴いていて心地が良かった。

男性ボーカルの声もぶれずに、強くしなやかに歌っており、萌はびっくりして目を開く。

「誰の曲?」

「えっとね、これ、4人組のバンド」

開が接近したことで、ドキドキが止まらないが、気になるので覗き込むと、まさしく今の曲にぴったりのタイトルだった。

「いい曲だね」

耳を澄まし、虫の合唱とともに流れるバンドの曲。

今の2人にはぴったりの歌詞だった。

ー友達からか。

しょうがないと萌は我慢する。

確かに進路や友人づきあいなどで、多感な時期なので、付き合うとなると、重荷にはなりたくなかった。

萌が泣き笑いのような表情となると、開は慌てて聞いてくる。

「今の曲、嫌だった?」 

「ううん。そうじゃない。さっきも言ったけど、すごくいい曲」

褒めると、開は爽やかに笑う。

全く人の心も知らず、愛嬌を振りまくなんて、卑怯だと思う。

「LIVEがあったら、行ってみないか?」

「え…。LIVE?」

いきなり言われて、開は少し顔を赤くしながら、萌に言ってくる。

「お前といると楽しいし、明るくなるから、いいかなと思って。駄目?」

「ううん、駄目じゃない…!! 行こう、LIVEに!!」

ぐいっと開に迫り力説すると、彼は「あはは」と軽く笑う。

「よし。じゃあ、まずはCDを貸してやるよ。どうだ?」

「え、CDを貸してくれるの? じゃあ借りる。気に入ったもん」

まだ流れている曲は、失恋の心には優しく響き、前向きにしてくれる。

しかも彼が好きなら、何でも覚えていたかった。

「明日、持ってくるな」

「うん!! すごく楽しみ!!」

萌はようやく笑顔を浮かべると、結んだ手をゆっくり放す。

「じゃあ友達として、よろしくお願いします」

「おう。友達として、まずは一緒に色んなことを楽しもうぜ」

「うん!! …あ、チャイムが鳴った」

萌がそう言うと、開も気づいたらしく、慌てて行こうとする。

それを手を伸ばして止めると、萌もスマホを取り出す。

「LLINE交換して。あとアドレスも教えてくれるとありがたいんだけど」

「それならいいよ。…ほら」

2人はスマホをいじり出すと、素早く打ち込む。

登録が済むと、開が腕をひいてくる。

「行くぞ。先生に怒られたら、たまったもんじゃない」

「それはそうね。じゃあ行くわよ、友達!!」

萌は少し吹っ切ったように言うと、庭を後にしたのだった。

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