告白の唄
「ー好きです」
顔を真っ赤に染めて、萌が告白すると、同級生はもじもじとする。
萌は飛んでいる赤とんぼよりも、目立つ顔色で、じっと答えを待つ。
周りは庭なので、人気はなかった。
コスモスが風で揺れ、可愛らしく奏でる中、2人は黙ったままとなる。
ー駄目なのかな…?
胸をドキドキさせながら、答えを待っていると、廊下から明るい笑い声が聞こえてくる。
皆、私達に注目してないわよね、とか思いつつ、そちらへ視線を向けると、同級生ー開がようやく口を開く。
「ごめん!! 俺…その」
ご、と聞こえた時から、萌は気づいてしまった。
開はおしゃべり上手で、一緒にいると楽しいので、彼女になりたかったが、もしかしたら誰かいるのだろうか。
「あ、あの…。誰か好きな人とか、付き合って欲しい人とかいるの?」
思いきって拳を握りしめながら聞くと、開は首を横に振る。
「そう言うわけじゃなくて…。その」
項をかきながら、開は一度口を閉ざすと、眩しそうに太陽を見る。
秋の日光は優しく、萌の傷を癒してくれるようだった。
じっと獲物を狙う肉食獣みたいに待っていると、開がようやく答えを出したようだった。
「ー友達から始めないか?」
「え…」
その告白に、萌は驚いた声を出す。
友達ならとっくになっているはずと思っていたが、それは自分の気のせいだったのだろうか。
諦めきれず、萌は必死の形相で聞いてみる。
「友達って…もうそういう関係でしょう? 2年間も同じクラスなんだし」
「そうなんだけど…どうも恋愛に疎いみたいで、俺」
照れたように言うと、開は手を差し出してくる。
「友達としてよろしく。な?」
「…うん」
少し不満、いや、大分不満だったが、仕方なく手を差し出し、握手する。
すると開の大きな手が力を入れてくれ、思わずどきりとする。
「友達として聴いて欲しい唄があるんだけど…」
「唄…? 何の?」
「いいから。俺の好きなバンドなんだ」
スマホを取り出すと、開は器用に操作し、曲を流す。
前は何だろうと待っていると、優しい音色が聴こえてくる、
それは自分を包み込むような柔らかさで、聴いていて心地が良かった。
男性ボーカルの声もぶれずに、強くしなやかに歌っており、萌はびっくりして目を開く。
「誰の曲?」
「えっとね、これ、4人組のバンド」
開が接近したことで、ドキドキが止まらないが、気になるので覗き込むと、まさしく今の曲にぴったりのタイトルだった。
「いい曲だね」
耳を澄まし、虫の合唱とともに流れるバンドの曲。
今の2人にはぴったりの歌詞だった。
ー友達からか。
しょうがないと萌は我慢する。
確かに進路や友人づきあいなどで、多感な時期なので、付き合うとなると、重荷にはなりたくなかった。
萌が泣き笑いのような表情となると、開は慌てて聞いてくる。
「今の曲、嫌だった?」
「ううん。そうじゃない。さっきも言ったけど、すごくいい曲」
褒めると、開は爽やかに笑う。
全く人の心も知らず、愛嬌を振りまくなんて、卑怯だと思う。
「LIVEがあったら、行ってみないか?」
「え…。LIVE?」
いきなり言われて、開は少し顔を赤くしながら、萌に言ってくる。
「お前といると楽しいし、明るくなるから、いいかなと思って。駄目?」
「ううん、駄目じゃない…!! 行こう、LIVEに!!」
ぐいっと開に迫り力説すると、彼は「あはは」と軽く笑う。
「よし。じゃあ、まずはCDを貸してやるよ。どうだ?」
「え、CDを貸してくれるの? じゃあ借りる。気に入ったもん」
まだ流れている曲は、失恋の心には優しく響き、前向きにしてくれる。
しかも彼が好きなら、何でも覚えていたかった。
「明日、持ってくるな」
「うん!! すごく楽しみ!!」
萌はようやく笑顔を浮かべると、結んだ手をゆっくり放す。
「じゃあ友達として、よろしくお願いします」
「おう。友達として、まずは一緒に色んなことを楽しもうぜ」
「うん!! …あ、チャイムが鳴った」
萌がそう言うと、開も気づいたらしく、慌てて行こうとする。
それを手を伸ばして止めると、萌もスマホを取り出す。
「LLINE交換して。あとアドレスも教えてくれるとありがたいんだけど」
「それならいいよ。…ほら」
2人はスマホをいじり出すと、素早く打ち込む。
登録が済むと、開が腕をひいてくる。
「行くぞ。先生に怒られたら、たまったもんじゃない」
「それはそうね。じゃあ行くわよ、友達!!」
萌は少し吹っ切ったように言うと、庭を後にしたのだった。




