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ンードラロギア  作者: ああああ


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第三十四章 王の遺言

三十四章です。

「……幽霊ではないのかね?」


老いた国王の掠れた声が、夜風に混じって届いた。

豪華な法衣に包まれたその手は、震えながらも確かな力で、目の前の屈強な男――商人を名乗るオルダの肩を両手で掴んでいる。


「7年前に、国の未来のために死ぬつもりでした」


オルダは視線を逸らさず、静かに、だが重く言葉を紡ぐ。

「泥を啜り、剣を杖に、あの地獄で果てるのが私の本望だった。しかし、部下をはじめ、何よりエルキアが……あの女が、私を死なせてくれなかったのです」


シリウスは頭の中を支配する疑問をそのままこぼす。

「陛下、恐れながらこの方はどのような…?」


「私の本当の名前はガナーブ…。ガナーブ・フラック3世と申します」


「…!あの『軍神ガナーブ』なのですか!?」

アインザックは驚愕する。


オルダの出自を説明するためには東側国100年の歴史を解説する必要がある。

『ンードラ大陸』…この巨大な大陸で人類が生存可能な場所はわずかであり、大陸の南側と小国が存在する東側のみであった。余談ではあるが現在の南側の人種の国は、グロードル帝国、アルブール王国、フックヴェリス国、アンゾールマ国、マフ・ソド・イーグロ公国の5つの国である。


正暦2933年、今から100年前、東側を統治していた旧国家は内側から腐敗し、軍事力を持った20の領主が次々と独立を宣言。東側は血で血を洗う群雄割拠の時代へと突入した。


正暦2977年、オルダはアルブール王国と隣接する東側国の東南の外れ、ティアズ国の領主の5人兄弟の次男(ガナーブ・フラック3世)として生を受けた。


正暦2993年、ガナーブ(オルダ)が成人になった年に、父のフラック2世が急逝し、領内での泥沼の後継者争いへと発展していく。彼は他国の侵攻を阻むため、実の兄弟をすべて手にかけ家督を継承。


正暦3008年、ガナーブは高純度のマナの結晶を手に入れ、莫大な軍資金を背景にガナーブは次々と戦争で勝利を重ねる。先陣を切って戦うことからも『軍神ガナーブ』と呼ばれる。


正暦3018年、わずか10年で20あった東側国を1つにまとめあげることに成功、世に言う「ガナーブ革命」である。


正暦3026年、クーデターにより、ガナーブ暗殺、ティアズ国滅亡。


これが、東側国の表向きの歴史である。



「…東側国が血で血を洗う100年を歩むことになったのには理由がありました。それが、私が見つけた高純度のマナの結晶なのです」


「150年前、東側国でマナの結晶体が発見されたことはエルフの耳に入りました。彼らは用意周到に時間をかけて、東側国を解体していくことを画策したのです。その実行役として東側国に暗躍していたのがマルムーン教でした。彼らはマナの結晶体の見返りに陰ながらセレスティアル・サーバントを派遣し、自分たちの都合の良いように盤上を操作したのです」


「では、そなたもその高純度のマナの結晶をエルフに渡すことで覇権を掴んだのか?」


「いいえ、私は一人のエルフと出会い、世界のことを色々と知ることができました。そして、彼と高純度のマナを、エルフ以外の強大な影響力を持つものに渡すことで、資金を手に入れました」


「エルフ以外の強大な影響力を持つもの…それはまさか…?」


「はい。魔王です」


「ばかな…!そなたは人の身でありながら魔王に会っていたのか!?」


「ええ。ですが勘違いはしないでください。私はマナの結晶体を売っただけで、悪魔に魂を売ったわけではありません。余談にはなりますが、ひとつ、魔王に教えてもらったことをお教え致します。シリウス殿、聖教では『魔王侵攻』について、魔王の目的についてどのように解釈がされていますか?」


「魔王、つまり魔族とは日々常に人類の絶滅を望んでおり、聖教とエルフは常にその魔の侵攻と戦い続けている。魔族は自身の快楽を満たすために人類を虐殺する」


「そう解釈されますよね?それでは、ブラッディアイで魔物が暴走をした時になぜ魔王が人類側となって魔物と戦ったのでしょうか?」


「それは、神が魔王を従わせたから…」


「では、なぜ魔王は人類に侵攻したのでしょうか?」


「…わかりません」


「魔王は増えすぎた人類の人口を調整するために侵攻したのが目的でした。3億人を超えると3000万人に減らすそうです。」


シリウスが叫ぶ。

「なんのためにそんなひどいことをするのです!?」


「そう創られ、そうしなければ増えすぎた人類が自滅するから、と魔王は答えました」


「エルフも神話上でも、人種がその過酷な環境で生き続けるために火と魔法を与えたと伝えられています…私とエルフの友人は、神は人類をこの大陸に生き続けさせることが目的であるように、魔王とエルフを生み出したものであると考えると、魔王の行いは神の意思に純粋だが、エルフの行いは、実に歪んでいると感じました」


「彼女…リリアーノもその証人の一人です。彼女の祖国、バシュートはエルフ族によって滅ぼされました」


「私は、民の命と引き換えにマナの結晶体の利権を脅迫され、自らを犠牲に幕引きをすることを画策しました」


「このようにエルフ族…枢密院を「独善的」な振る舞いで無垢な民を殺害する存在と位置付けると彼らのやり方は非常に悪辣であることに気が付くはずです」


「サーガイル王子はそれを遺物に刻まれた真実から白日の下にさらそうとしています」


遠くで祝祭の笛の音が響く。しかし、このバルコニーだけは時間の流れから切り離された墓標のようだった。オルダは懐から、月光を反射して怪しく光る小瓶を取り出した。


「陛下、私はこの7年、商人として各地を巡り、見てまいりました。マルムーン教がいかに深く、寄生虫のようにこの国土と民を蝕み続けているかを。……そして、今宵の祝辞。陛下の覚悟が、痛いほどに伝わってまいりました。だからこそ、申し上げたい」


オルダは膝を突き、深々と頭を垂れた。


「陛下。どうか、この国の民と王家の未来のため、今一度この私を、あなたの『剣』としてお使いください。力になりたいのです」


沈黙が流れた。

国王はゆっくりと手を離し、手すりに背を向けた。その背中は、一国の主とは思えぬほど小さく、脆い。


「……そなたの気持ちは、ありがたく受け取ろう。ガナーブ殿。だがな、もう何もかもが遅いのだ」


国王の声には、怒りも悲しみもなく、ただ乾いた諦念だけが宿っていた。

「余も、そなたのように、国の礎となるためにこの命を捧げるつもりだ」


「もともと、王家の存続などどうでもよかったのだ。王がいなくても、民は土を耕し、飯を食い、生きていける。……だが、我が不肖の息子二人は違う。アインザックとシリウス……。奴らは欲にまみれ、教団の甘い汁を吸い、民のことなど塵ほども思っておらん。これは、王としての、そして親としての余の不徳と致すところ」


国王は自嘲気味に笑い、月を見上げた。


「そうであれば、親として、奴らを道連れに地獄まで連れて行くのが、最後の大事な務めだ。……時期に余は、息子に殺されるだろう。それでよいのだ。その混乱に乗じて、そなたが鍛えたアインザックとシリウスが奴らの悪事を暴き、純粋なサーガイルが王位を継承する。それが、余の描いた最期の筋書きだ」


「『兄殺し』という地獄の怨嗟をこの世界に残してはいかん。余がそれを地獄に持っていくのが良いのだ。東側国をまとめ上げようとしたそなたなら、その呪いがわかるはずだ。」


「ガナーブ殿……いや、オルダ殿。商人として、最後の商談をしよう。……息子のこと、頼みましたぞ。これほど高い買い物を頼めるのは、世界でそなた一人だ」


「…陛下、恐れながら私の商品は一品もの。しかも既にサーガイル殿が覚悟というお代を既にいただいております。サーガイル王子を『兄殺し』の汚名で汚すことなく全てうまく収めますよ」


「しかし、それは…」


「陛下…恐れながら…陛下は『軍神ガナーブ』と『死神エルキア』の力を侮っておりますな。良いでしょう、陛下のお命を狙うものを捕らえ、首謀者を白日の下にさらしてご覧にいれましょう」


「……ふっ、ははは! さすがは死地を越えてきた男だ。商売敵にするには、これほど恐ろしい相手もおらぬな」


王は、数十年ぶりに腹の底から笑った。その瞳からは先ほどの昏い諦念が消え、わずかながら、明日という日を信じようとする「王の光」が宿っていた。


三十四章読んでいただきありがとうございます。久しぶりにギャグ無し回です。これで大丈夫なのか?と逆に時間がかかりました。

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