第三十一章:再会
三十一章です。ブックマークありがとうございます!アクセス数とか見ているとほんと、やる気がでてきます。投稿して本当によかったです。今回挿絵にチャレンジしてみました。小説の文章をプロットにほぼそのままつくりました。(なぜか魔法のステッキ持ってましたので削除しましたが)服装のイメージだけごらんください。顔のデザインはコレジャナイ感…。
昨夜の喧騒が嘘のように、王都の朝は静かだった。豪華絢爛な宿『ハッスルキャーッスル』の朝食会場。だが、そこにエルキアの姿はなかった。アルトは、皿の上の冷え切ったパンを、まるで罪の味でも噛みしめるかのように、力なく口に運んでいた。
「アルト……昨日は『失敗』じゃない。だから落ち込む必要もないんだ」
オルダが、スープを飲み込むと低く落ち着いた声で言った。
「お前はとりあえず何も考えずに、ただ一年、全力で己を鍛えるんだ。そして三年半後の『月の蝕』に備えろ。エルキアのことは俺がフォローしてやる。だから今は、前を向け」
「……うん、わかった。ありがとう、オルダ」
アルトは小さく頷いた。愛という言葉の重さに押し潰されそうになっていた彼にとって、オルダの「鍛えろ」という単純明快な指示は、唯一の救いだった。
「よーし、さっさと食べたら、王宮に行くための着替えをするぞ。いつもと違って手間どるからな」
ホテルのラウンジには、「正装」に身を包んだ男たちが顔を揃えていた。
アルトは、身体のラインがはっきりと出るタイトなズボンに難色を示していた。
「オルダ…このピチピチしたズボン嫌いだ…!」
「あぁ、アルト、俺も嫌いだぞ、師匠はいつも通りなんすね」
「あぁ、これ自体が正装みたいなもんだからな。俺がピチピチを穿いてみろ、浴場の時みたいに、誰も近寄ってこなくなるからな。だから俺はヒラヒラでいいんだ」
「トイレ行ったか?」
「「はい」」
その時、ラウンジの入り口付近が「ざわ……」と波打った。
宿泊客や従業員たちが、一斉に息を呑み、左右に道を開ける。
「お、エルキアが来たな、それじゃあ行くぞ」
「…ほぅ、これはこれは」
オルダが声を漏らし、ラッシュが感嘆の声を上げた。
「うわ……。もう『エルフの女王』と言われても、誰も疑いませんよ」
そこに現れたのは、芸術品そのもののようなエルキアだった。
新緑の瑞々しい色合いを模したオーバーチュニックには木漏れ日のような金糸が施されている。その下から覗く羽衣のような純白のシェーズが、彼女の歩みに合わせて軽やかに舞う。気品高く三つ編みでまとめられたきらめく銀髪が絶妙なアクセントとなり、その芸術品を大切に包み込むかのような臙脂色の高級感漂うマントは、これまた豪華な金糸の刺繍で彩られている。それは、森の静寂と王都の華やかさが完璧に融合した姿だった。
(『あいどる』であれば当然だな…我もあれくらい縦にも大きく、立体的になりたかった…)
アルトの肩の上で、りっちゃんが内心で毒づく。
「ごめんなさい、準備に手間取って朝食会場にいけなくて…」
エルキアは伏し目がちに言った。その声は、昨夜の動揺を隠しきれず、どこか震えている。
「あまり派手な服は苦手だわ…」
「そんなことないよ!エルキア、とても似合っているよ」
アルトの屈託のない言葉が飛んだ。
「ひゃっ!?ア、アアアアアアルトッ!?ほ、褒めてくれてありがと!さ、さぁ、いきましょ、早く!」
エルキアの顔が一瞬で赤く紅潮する。
(だめだ、昨晩のことを引きずっていて中身が壊れている…)
ラッシュは天を仰ぐこれから始まる祝賀会の結末に戦慄する。
(主様!主様!アルトも昨日は反省しているようです。普段通りに接すればよいのですよ!)
(それができたら苦労しないわよ!あぁ、公共の面前でまた私に対する愛を説かれようものなら死んじゃうわ)
(それは自重するそうですよ!成人するまで、主様を守れるまで)
(~~~~!!!なんて子なのあの子は!!このまま連れ去りたいくらいだわ)
(あーもう!どっちなんですか!とりあえず今日は距離をとりたいということでよいですね?その方がいいですよ)
(まかせるわ…後、りっちゃん露払い役をお願い。あの子に近づく全てのメスを殺し尽くすのよ…)
(ウサギのぬいぐるみに無茶ぶりをしないでもらえますか!?やばい時は何か対処します)
『アルト、我を肩に乗せろ。今日一日ここからお前をサポートすることになった。主様は今日は体調がすぐれないのだ、いや、自然にすれば治るから今日だけはそっとしておいてやるのだ。わかるな?』
「うん、わかった。エルキア、大丈夫?」
「だ、大丈夫です! 近寄らないで!」
『そっとしておくんだ!』
宿の前に、黄金の装飾が施された近衛騎士団の馬車が停まった。
「オルダ殿、エルキア殿、お迎えに参りました」
凛とした声と共に現れたのは、銀の甲冑を纏ったアンジュだった。
「アンジュさん、お久しぶりです」
「アルト殿、皆さんもお変わりないようで! さぁ、馬車にお乗りください。国王陛下がお待ちです」
エルキアが馬車に乗り込もうとした、その時だった。
アルトがスッと、彼女の前に跪くようにして手を差し出した。エスコートの仕草だ。
(りっちゃん!? これは誰の差し金!? 私を殺す気なの!?)
(いや、主様! これは……アルトのアドリブ!体調がすぐれない主様を労わる、 無意識の天然スキルです!)
(なんですって!? 触れると逆に転びそう……あぁ、でも、尊いわ……!!)
エルキアは震える指先でアルトの手をほんの少しだけ借りると、逃げるように馬車の中へ飛び込み、シートに深く沈み込んでぐったりと天を仰いだ。
(りっちゃん、私、お姫様になっちゃった)
(…よかったですね)
(…あ、今お腹を蹴ったわ)
(エスコートされただけで想像妊娠!?)
そんなアルトの姿に驚愕するアンジュ。
『男子、三日会わざれば刮目して見よ』とはよく言ったものだ。まさかあの『無自覚台風男』のアルト殿があのような紳士然とした振る舞いができるとは…エルキア殿…いいなぁ…そして今日もとてもお美しい…。
皆が馬車に乗り込んだことを確認し、アンジュが御者に合図を送る。
馬車が動き出すと、オルダが窓の外を見つめながら口を開いた。
「アンジュさん。俺たちは王宮のマナーなんてものは皆無なんだ。旅の時と同じ振る舞いをして、不敬罪で斬り殺されないか心配なんだが、大丈夫か?」
アンジュは微笑んだ。
「ご安心ください。その点は考慮してあります。公式の場では静かに座っているだけで結構です。その後、国王陛下と王子殿下が、無礼講で会食できるよう個室を用意しておりますから」
「そうか。なら一つ、王子に確認してほしい。今回の『月の蝕』について、そして例の特効薬の件……これは国王の耳にはどこまで入っている? 話題に出しても良いものか、調整を頼む」
オルダの瞳に、夜の『コンカフェ』で見せたあの鋭い光が宿る。
「承知いたしました。王子殿下にお伝えしておきます」
やがて、馬車は王宮の正門を潜り抜けた。
アルトとラッシュは、その光景に圧倒され、言葉を失った。
空を突くような白亜の尖塔、整然と並ぶ近衛兵たち、そして壁面に刻まれた王国千年を象徴する精緻な彫刻。それは、辺境の村で育った少年たちの想像を絶する「文明の極致」だった。
「……すごいね、ラッシュ」
「あぁ、このでかさだ、掃除が大変そうだな…」
馬車を降りると、そこには一人の老紳士が待機していた。
「皆さまのお世話係を務めます、王宮執事のシュナイゼルと申します。何なりとお申し付けください。これから皆様を祝賀会場の控室にお連れさせていただきます。お荷物はそのままで結構です。それでは…」
アルトはふと思い出したように、アンジュを追いかけ、声をかけた。
「アンジュさん、あのお花のことなんですが……」
「お花?」
「はい。以前おっしゃっていた『ユキシロハナ』ですが、結局どこを探しても見つからなかったんです」
アンジュの顔が、わずかに強張った。
(聞こえていなかったかー…!!)
「え!? もしかして、その花のことをエルキア様に聞いたのですか……?」
「いえ、聞いていません。エルキアには内緒にしようと思って」
(それはそうだ…もし知られていれば、今頃命は無かったことだろう)
「それで、代わりになる別の花を自分で見つけたんです。これ……受け取ってください」
アンジュは頭がくらくらした。
『黒オディア』花言葉はー『あなたはあくまで私のもの』
そして
『シロベリー』花言葉はー『あなたの死を望みます』
つまり…『騎士団を除隊して俺の所有物になれ』ということ!?
…はっ!?落ち着くのよ!アンジュ・ド・ヴィランシィ!
「アルト殿…このお花をちゃんと調べたのですよね?」
「はい。調べました。アンジュさんの言う通りに。あ…でも、シロベリーは知りません。それは、僕がアンジュさんに黒オディアを渡すと言ったら、これも渡すと良いとくれたものです。」
つまり、アルト殿の所有物になるために、全てを捨て命を賭ける覚悟があるか?という宣戦布告!?でもアルト殿は『俺の所有物になれ』と言っている。
「はは……は……。アルト殿、つまり、死を覚悟せよ、ということですか……」
「え? いえ、そんな物騒な……。やはりユキシロハナの方がよかったのでしょうか?」
「う、受け取り……ます! ありがとうございます! しかし、今すぐというわけにはいきません! 私にも……騎士としての覚悟を固めるお時間をくださいましーーー!」
アンジュは叫ぶように言い残すと、弾かれたように部屋を飛び出していった。
(受け取りおった!? ……あの騎士娘、そこまでの覚悟を持っておったのか!主様に、なんと報告したものか! ?)
肩の上で、りっちゃんが愕然とする。
「? アンジュさん、急いでたのかな」
きょとんとするアルト。
(アルト……お前、本当に無意識に世界を滅ぼすタイプだな)
背後で見ていたラッシュが、遠い目で呟いた。
(どうしましょう…父上、母上…アンジュは剣よりも大事なものができたかもしれないです)
アンジュは顔を真っ赤にし、震える手の中の花をまじまじと見つめる。
すると背後から、アンジュの同僚であるアリエットが声をかける。
「アンジュ~、見ていたわよ~?いつの間に殿方とそんな仲になったの!?
しかし今のアンジュの耳には届かない。そしておもむろに腹部を押さえる。
「…あ、今お腹を蹴ったわ」
「……え?」
近衛騎士団設立以来の大スキャンダルが産声をあげるのか!?…風雲急を告げる中、祝賀会の幕がいよいよ上がろうとしている…。
三十一章読んでいただきありがとうございます。毎回蓋を開ければギャグ要素ばかりですみません。今回のエピソードってストーリー的に進展あまりないんですよね。アンジュとの再会で花は再登場しなきゃいけなかったのですが。もう、花はいいです…。
プロットつくってて、前回の余韻を引きずっているから当然回収しなきゃと考え、結局ギャグ入っちゃった…という感じです。もう少しで新たな展開が待っています。もう少しだけお遊びにお付き合いください。




