なんで私たちが………!!!!
拙者は学生でござる。そして今、拙者の学校は絶賛受験休み中でござるのだ٩( ᐛ )۶ヤッタァァァァァァ
ガタゴトガタゴトと馬車が鳴る。揺れに合わせ体が宙に浮いた。
騒がしい喧騒が近づいてきた。
目的地であるローデンという街に入ったようだ。
帝都に近い都市だからか街並みに大した変化はなく3〜4階建ての家屋が肩を寄せ合い続いている。
パニックになって逃げ惑う群衆の中、2台の馬車だけが逆行して進んで行く。喧騒の中心地へ。
「捜査局だ‼︎捜査局がきたぞーー」と馬車を見た群衆の中の誰かが叫んだ。それに呼応して馬車の周りで歓声と安堵が広がる。
バカバカしい。私たちが来た所で必ずや鎮圧できるといわけではない。この世に絶対は存在しないのだ。
対魔族魔導捜査局。主に潜伏している魔族の炙り出し、及び帝国領内に出没した魔族の駆逐を任務とする対魔族専門の捜査、防諜、保安機関である。
とはいえ私たちは情報課、様々な情報を組み合わせて潜伏している魔族を特定するのが仕事だ。実際に魔族に対処するのはまた別の部署の仕事だ。今回のように潜伏していた魔族が急に暴れ出した場合、即応課が対応する.......はず...............なのに......
「なんで私たちが現場に出なきゃならないんですか?課長‼︎」
「実働部隊は全部例の魔族探しに駆り出されていないって言ったでしょーが」
つい先日、帝都にネームドという特別指定個体の魔族が潜伏してしる事がわかったらしく、いま捜査局は血眼になって探しているという。だもだからってぇぇーーー、何も本部情報課が出る必要ないでしょーー。
「しょうがねぇだろ。ローデンに1番近い局は本部なんだから」
「捜査局本部の中にも色々課あるのに。どーせまた課長が変な正義感出して手あげちゃったんでしょう」
「いーだろ別に。人助けできて万歳、死んだら天国にいける」
「よくありませんよ。情報課なんて戦闘力ゴミです。ホントに天国行っちゃいますよ」
どうしてくれるんだ全く。下位魔族ならともかく中位以上がいたらこいつらだけじゃ手におえないぞ.........と思った矢先であった。なんの前触れもなく轟音が轟いた。強いていえば魔族が暴れている現場へ到着間近だった事ぐらいか。
「何事だ⁉︎」
「先行の馬車が吹き飛びました!」
「魔族か。乗員は?」
「馬車が吹っ飛んだ先で潰れてます。あの感じでは全員圧死でしょう」
なるほど、先行馬車の乗員は5人。つまり私の尊い同僚が5人死んだわけだ!!
まぁ問題なし。そんなに仲良くなかったから。
それより問題なのはこの馬車の乗員が6人ということだ。要するに魔族相手に6人で立ち向かわなければいけなくなったのだ。
馬車を降りるとすでに市街戦を思わせる景色になっていた。
家と家の間には瓦礫の一本道があり、一番奥に原型を留めない馬車があった。
元はここにも建物があったはずだ。馬車が吹き飛ばされる過程でこの一本道ができたのだろう。潰れた馬車の合間からは血の下垂れる腕が突き出ていた。
言い訳程度に私は身体を向け心の中で祈りを捧げた。
その時だった。
再び背後で轟音が轟くと共に人影が出現した。
「なんでよりにもよって私の真後ろに出てくるかなぁ」
そう愚痴るように呟きながら後ろを振り返る。
長く伸びた爪に二本の角。それ以外は不気味なぐらいに人間と同じ見た目をしている。鍛冶屋のような格好をしたその男からは魔族特有の禍々しい気配が溢れ出ていた。
大方予想はつくが一応その場で位判定魔術を発動する。
まぁやはりと言うべきか、中位魔族だった。
魔族を目の前に思考する。
勝てる確証がない以上、下手に動かないほうがいいだろう。しかしだ、今私は魔族の目の前にいるのである。それこそ手を伸ばせば届くぐらいに。最優先はここから脱却することだ。しかしそのためには動かずにはいられない。
実を言うとこのまま魔族をぶち殺す事はそこまで苦ではない。
でも周りの目を考えるとできないのよね......................あれ?結構詰みじゃない私?
魔族がゆっくりと右腕を引く。殴る前の予備動作だ。どうやら目の前の魔族は私にこれ以上の思考を許してくれないらしい。次の瞬間、拳がとんでもない速さで私の顔面に向かって飛んできた。
おいおい、乙女の顔を狙うなんて酷いじゃないか。
ともかくして私の人生は幕を閉じたのであった。
「何が幕を閉じましただコノヤロウ!ぼさっと突っ立ってんじゃねぇ!!!」
そんな怒号とともに私の周囲に結界が構築された。どうやら衝撃を背後に受け流す効果のある結界のようだ。
魔族の拳を受け止めた結界はそのエネルギーを背後に開放した。解放された衝撃はそのまま背後にあった家屋にあたる。まだ手付かずだった綺麗な建造物が一つ、この世から消え失せた。
振り返ればい課長含めた5人はすでに馬車の裏に隠れていた。結界を発動したのは課長のようだ。
対魔族魔導捜査局本部 情報課課長カミル・ド・サン=クレール。その優れた観察眼と処世術で情報課のトップまで上り詰めた人物だ。確か出自はド・サン=クレール伯爵家だったはず。結界術に関しては国内随一の使い手集団だ。なるほど確かに先ほどの防護結界は見事なものだった。
そんな感じで課長のおかげで命拾いしたこの命を無駄にしないよう馬車の背後に移動する。
「いやだって、今のみました?拳で家吹っ飛びましたよ?もう隠れても無駄ですって。死です、死。どーせ死ぬなら堂々と立ってましょうよ」
「まあそうなんだが、いちおう、一応な、戦うっていう姿勢をだな、見せよう、な?」
「いやもうあれ手に終えるレベルじゃないでしよ」
心の中でお前らがと付け足す。
隙間から魔族を見ると周りの宙に大量の瓦礫がゆっくりと周っている。物体を操るタイプのようだ。なんで我が帝国領内に潜伏している可能性のある魔族リストの中で瓦礫を操るのは確か一人だけ。瓦礫のリュイネルという魔族だったはずだ。
おそらく課長が認識阻害の結界で私たちを覆っているのだろう。こちらの位置にはまだ気づいていないようだがバレるのは時間の問題にも思えた。
「確かにな。俺らには手に負えないな。俺らにはな」
何が言いたいんだこいつ?
「セリーナ・シャルトル。お前、本当は強いだろう?」
繰り返すが情報課の戦闘力はゴミだ。使えるのは基礎的な攻撃魔術程度、そんなのでは魔族は倒せない。うちには情報の分析が得意な人が配属される。裏を返せば戦闘魔術が得意な人材はほとんどいない。そう、ほとんどはである。
例外もある。
なんせ私は情報課に潜入しているだけなのだから。
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