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プロローグ:前世英雄説

世界には、たまに前世の記憶を持って生まれてくる人がいるらしい。


テレビで見たのかYouTubeで見たのか曖昧だが、彼はその話がずっと頭から離れないでいた。何故なら彼自身、『あれ、もしかしたら俺も前世の記憶あるんじゃね?』と思っている節があるからだ。


「だから、俺はそこで色んな奴に囲まれてて、すっごく祝福されてるわけよ」


彼--『星宮馨(ほしみやかおる)』は今日も今日とて、友人に自分の見る夢について語っていた。彼は幼い頃から、同じ夢を何度も何度も見るという。寸分狂わず全く同じ内容の夢なので、余計に彼の「前世、世界の英雄説」に熱が入ってしまっていた。小学校、中学、高校ときて、未だに周囲の人間へ広めている。友人達もまた否定したりせず、演説の観客のようなたたずまいで聞いてくれていた。


「ほう、皆お前を待ち望んでいた、と」

「そういうこった! そんで、俺そこだと違う名前で呼ばれててー…」


キーンコーンカーンコーン……


やがて授業の始まりを告げるチャイムが鳴る。どうやら時間も忘れて熱心に語っていたようだ。友人の机は既に準備が整えられているが、馨の机は平坦なままである。


「ちゃんと準備はしとけよー。世界の英雄サマ」

「やべ…放課後も俺の英雄譚を聞かせてやるから覚悟しとけよ!」


バタバタと音を立てながらなんとか教科書を取り出し、準備を完了させる。

6時間目の授業は歴史。授業をする先生はオカルト好きで有名で、よく授業と関係の無い話を合間にする。授業時間まるまる潰した実績を持つかなり変わった人物だ。

ガラガラと扉が開かれ、先生が入ってくる。


「は〜い皆、今日は先生授業する気全く無いから、代わりに面白い話を持ってきました〜」


授業開始一発目にこんな発言する先生、この人以外にいるだろうか。困惑を覚えつつも、馨は内心楽しみにしていた。それはクラス全員も同じで、先生の話は意外と好評なのだ。単純に内容がおもしろいので、皆聞き入っている。授業が潰れるからというのも大きな理由だが。


「じゃあ早速だけど、皆は『輪廻転生』って聞いたこと、あるかな〜」

「輪廻転生?」

「センセー何それー」


ーー輪廻転生


聞いた事があるようなないような。クラス全体が漠然としている中、先生は話を続ける。


「簡単に言うと〜、人は何度も生まれ変わってるっていう、宗教の考え方です。人は死んで終わりじゃなく、また別の生命として何度も生死を繰り返しているんですね〜」


つまり死んだら天国とか地獄に行って終わりじゃなくて、また人や他の動物として生まれてくるということ。それってつまり…



■■■


(あれって多分、そういうことだよな…?)


駅のホームの最前列に並びながら、馨は今日の授業の話について思考を巡らせていた。今までもあの先生の話は興味深いものばかりだったが、今日の話はずば抜けて馨の興味を引くものだった。

つまり、前世の記憶を持つ人というのは、輪廻転生によって生まれ変わってきた人ということなんじゃないか? 前世も人間だったという者も、猫だったという者もいると聞く。なんという事だ、と馨は思った。


(これでまた、前世、英雄説が濃厚になってしまったじゃないか…!)


正直冗談半分で言っていた時期もある本人だが、

『輪廻転生』を新たに知った事により、説の信ぴょう性が高まってきていた。

やがて電車の到着を知らせる放送が鳴る。


(…今死んだら、俺は次何に生まれ変わるんだろう。金持ちの家のペットとか、競馬場を駆け抜けるダークホースとか…!)


--ま■なく、5番線に■■行きが到■します。


(いや、ここはもういっちょ世界の英雄にでも…)


--危ない■す■ら、黄■い線の



トンッ



「え?」


背中に何かが触れた、と認識した瞬間、既に馨は線路上に叩きつけられていた。ドガッと鈍い音が鳴り、視界が強く点滅している。背中を強くうち、呼吸が一時的に上手くできなくなった。



ーーー押された



不意に肩などがぶつかった拍子に落ちてしまったんじゃない。彼の背中を押したあれは、確実に『手』の形をしていた。

電車のブレーキ音、周囲のざわめきがやけに遠くに感じる。背中が、頭が足が痛い。起き上がるにも、足に響く激痛により叶わなかった。



ーーー誰が?何で?ソイツはまだ近くに…?



馨は力を振り絞り、顔をなんとか起き上がらせる。全身の痛みによりひどい顔をしているだろうが、本人にそんな事を気にする暇は無かった。痛みと焦りにより顔が青ざめ、汗がダラダラと流れてくる。



ーーー本当に死ぬのは、流石に勘弁してくれ



その時、ある不審者と目が合った。不審者だと断定したのはその格好。全身を謎の模様が入ったローブで包み、フードで顔がほぼ隠れている。ただフードから覗き込む全てを飲み込むような目と、その口元だけがよく見えた。



ーーー何、笑ってんだよ



もはや馨の耳には周囲の音も届かなくなっていた。ただ今は、彼を見下ろしている不審者に

満足げな笑みを浮かべているその人物に、視線を奪われていた。



ーーーお前が、押したんだろ



しかしその時、何も聞こえなくなっていたはずの彼の耳に、はっきりと声が聞こえてきた。



『ようこそ』



ーーーーーーーーー穢れた楽園へ



9月13日 午後5時頃 星宮馨は命を落とした

このまま2話まで!

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