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イタチの短編小説

私は恋の終わりがわかる

作者: 板近 代

 私は恋の終わりがわかる。予知能力とも言えるレベルで、日付や時刻までしっかりとわかってしまうのだ。


 もちろん、今まで予知が外れたことは一度もない。男たちは私が感じた日時通りに、私の元を去っていった。


「明日はどこ行こうか」

「家にいてもいいかな。あんまり調子よくなくて」

「わかった。元気出たらどこかへ行こう」


 ()()()と別れる時がわかってから三度目の週末。私は、できるだけ思い出を増やさないための選択をした。


 いつもなら残り少ない時間を楽しむために、外出を選んだりもするのだが…………そんな気持ちになることができない。


 彼は私を嫌っていない。邪魔にも思っていない。なんなら、将来のことも考えてくれている。それが良く伝わってくる。


(じゃあ、私たちの別れる原因は何になるのか?)


 答えは簡単。十中八九、死別だろう。二人は特に問題のない健康体。であるならば、事故か事件か…………。


 そして――


「…………」


 見慣れない病院の天井。どうやら私はちょっと買い物に出た時に交通事故にあったらしい。


 私は思う。ああ、事故に遭うのが彼でなくてよかった。


「今、何日の何時?」


 私はたずねる。彼は私の手を握っている。


「九日の十時だよ。ひどい怪我にならなくてよかった……しばらくしたら退院できるってさ」


 彼は泣きながら答えた。私のすぐ隣で。そして、私が予知した別れの時刻は三時間前に過ぎている。


「ごめんね」

「あやまることじゃないよ。君が生きていて嬉しい」

「これからも恋人でいてくれる?」

「もちろん。君が望んでくれるなら、一生一緒にいたいよ」


 ああ、私にはこの愛の終わりがわからない。わからなくて、すごく嬉しい。

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