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アンナレッタと風の騎士

 リカルドは今日に自分の身におきた変化に戸惑っていた。

 リカルドには、先日まで人間だったころの記憶が鮮明にあるのだ。

 砂漠のオアシスの小国の王子だった。

 義母に命を狙われ、騎士の格好をして身を守っていた。

 風の精霊が、自分を守っていてくれたことも……


 彼を落ち着かせようと、風の奥方は別の棲み処に移動していった。


 リカルドと言えば、透けた手を見て、ただ、ただ、溜息をついていた。


『俺が精霊だって!? 何をしろって言うんだよ!!』


 その時だった。


「あれ!? 奥方はいないの? お前は誰? 昨日までいなかったな。ここは風の奥方の寝床だぞ」


 幼い少女の声だった。

 幹から顔を覗かせると、赤茶色のくせ毛を三つ編みにした女の子が大声で叫んでいた。

 だが、魔力が凄いようだ。

 その子が声を出しているだけで、お仲間らしい半透明の精霊達が吹き飛ばされていた。


<やめろよ!! ここは上位の精霊の棲み処だぜ!! 壊す気か!?>


「じゃあ、お前は誰? どうしてここに居る!?」


<俺はリカルド・カスパールって言うんだ。気が付いたらここに居たんだ>


「ふ~~ん……お前は騎士か?」


<違うよ、訳があるんだ……>


 この時点で、アンナレッタがほくそ笑んでいたことに、新米精霊のリカルドは気が付いてない。


「お前は風の生まれたての精霊ね。風の騎士で良いかな? お前なら上位に行けそうだ。私と契約しよう」


 アンナレッタはニッコリと笑って言った。

 リカルドには、何が何だか分からない。アンナレッタの笑みに寒気がしたくらいだった。


「風の騎士、リカルド。アンナレッタ・エル・ロイルとの契約がここに成立した」


 リカルドはあんなに動かなかった身体がアンナレッタの頭上に移動していった。


<なんで~~??>


「肉体の無い精霊が簡単に名前を言ったらダメじゃん!! 簡単に支配されるぞ!!」


<俺が上位に行けるって、なんで分かるのさ!?>


「私の声にも動じないし、風の奥方の棲み処で生まれるなんて、かなり稀だぞ」


<それで? お前は誰だよ~~?>


「名乗っただろ!!アンナレッタだ。アンナと呼べ。これでもロイル家の姫だぞ、敬えよ」


 それを聞いたリカルドは、身体が動かせ範囲でアンナレッタの前に降りてきた。


<ロイルの姫だって!? 見えね~な~~>


 リカルドは冗談で言ったつもりだが、その言葉にアンナレッタはキレた。


「うるさーーい!! それでも私はロイルの姫なの!!」


 リカルドは自分から、力を引き出されているのが感じられた。


 物凄い突風が吹いて、この日風の奥方はお気に入りの棲み処を一つ失った。

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