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精霊になったリカルド

 リカルドは、背中に熱い痛みを感じた。

(斬られた!!)

 瞬間的にそう悟った。


 と同時に、強風にさらされた。


 <リカルド王子、大丈夫かい? 君を安全なところに送るよ。風の加護の大きな君だ。きっと受け入れてくれるだろう……>


「ルパートはどうするんだ?」 


<オレはこのオアシスとも契約してるんだ。でも、オアシスを守りながら、君を銀の森に送るのはちょっと難しいかな……ハハハ……変な事になったら御免よ>


 ルパートの自嘲的な笑い方を聞いたのが、リカルドの最後の記憶だった。

 そして意識も失った。



 ▲▽▲



 大陸東部の聖地、銀の森__

 リドムの銀色の葉っぱが年中枯れないことから、こう呼ばれている。光の神イリアス・エル・ロイルが降りたった地である。

 ここには、彼を祀る光の神殿があり、神も()()にいた。


 その日の夜、珍しく神は人型になって、昔馴染みの精霊の風の奥方の巣に行って昔話に話を咲かせていた。この二人? は、ともに精霊族であった時からの旧知の仲でもあった。


 そこに強風が降り注ぎ、青白い炎が神の手に降りてきた。


<あら、何処から来たのでしょう?>


『時の()()より声がしたな。この者を助けてくれと。どうやら時空を超えてやってきたようだ……にしても……』


 銀色に淡く光る神は、フッと息をついた。


()だけを送られても困るというもの』


<まぁ……身体はどうしたのです?>


 艶っぽくて、色っぽい風の奥方が言った。


『元の時代でこと切れていたのだろう……天界であれば転生させてやれるが。身体がないのではな……風の気配の多い子だ。良き精霊となるだろう。身体が無くとも十分だ』


 神がそう言うと、呪文を言った。

 途端に、青白い炎が半透明の騎士の格好をした精霊になった。

 少年は、驚いている。


 神は満足そうに頷くと、その場から姿を消した。


<ここは、わたくしの巣ですわ。早く出て行って欲しいのですけど>


 声の方を振り向くと、胸の大きな上品そうな奥方のイメージの人……

 ではない。彼女も透けていたのだから……


<俺はリカルド、リカルド・カスパールだ>


<あなたは、もう精霊なのです。人間だった時のことは忘れなさい>


<精霊だって!!? 俺が? 俺は人間だぜ!!>


 リカルドが驚いて声を上げた。


()()ですわ。あなたは、精霊に生まれ変わったのです。ここは、わたくしの寝床です。早く人間と契約して出て行って欲しいですわ>


 奥方は容赦なく言った。


<ここから離れられないんだ!! 無茶を言わんでくれ!!>


<あなたなら上位に行ける要素はありますわ。ここで生まれたことが重要な事です。そして、その容姿。強い風の精霊になると思いますわ>


<精霊は、魔法使いを助ける役なんだろう? 俺がそうだった>


<人間であったことは、忘れなさい。彼らを支えるために我らが存在するのです>


 風の奥方は、リカルドの属性が風であることを教えてくれた。


<見た目通りの、風の騎士を名乗るとよろしいでしょう>


<奥方は誰かと契約しているのか?>


<いいえ、わたくしの力を御せる者がいませんの>


 奥方は深く悲しんでるように見えた。

 奥方には、奥方の歩んできた生き方があったのだろう。


<あなたは、これからですわ>


 奥方の声が妙に胸に引っ掛かった。

 肉体はもうないのに……

 リカルドは思った。

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