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転生したけど、ただの高校生やってます  作者: 岸波圭太
転生と、静かな始まり
5/7

三浦さんって、誰かと仲良くなることあるんだ?

誰かのことを少し気にし始めると、周りの声が気になってくる。

あの人はどう見られてるんだろう、自分はどう思われているんだろう――

そんなこと、前世では気にも留めなかったのに。


「普通の高校生活」を送るはずだった俺の心に、

少しずつ、誰かの存在が根を張り始めていた。


彼女の過去を知っても、俺の気持ちは変わるのだろうか。

それとも、もっと近づきたくなるのだろうか。

第5話:「三浦さんって、誰かと仲良くなることあるんだ?」


昼休み、俺は校舎の裏のベンチに腰を下ろしていた。教室より静かで落ち着くこの場所は、最近の俺のお気に入りだ。

パンをかじっていると、クラスメイトの会話が頭の中でふとよみがえった。


――「三浦さんって、誰かと仲良くなることあるんだ?」


昨日、図書室の帰りに耳にした、何気ない一言。

問いかけというより、少し冷めた呟きに近かった。

俺はその声に、なぜか少しだけ胸がざらついた。



放課後の図書室。

俺がドアを開けると、三浦ほのかはすでにいつもの席にいた。

いつも通り静かに本を読んでいて、俺に気づくと軽く会釈する。


「……今日も来たんだね」


「来ちゃダメだったか?」


「ううん、嬉しいよ。少しずつ、“来てくれるのが当たり前”になってきてる」


その言葉に、俺の心のざらつきは少しだけ消えた。

けれど、どうしても気になっていた。あの言葉のこと。


「……ほのか」


「え?」


「クラスで、ほのかのこと、“人と仲良くならない”って言ってる人がいた」


「……そう」


彼女は本を閉じた。いつもの落ち着いた表情から、少しだけ目を伏せた。


「実はね、中学のとき、少しトラブルがあったの」


「トラブル?」


「簡単に言えば、“本ばっかり読んでる変な子”って言われて、ちょっと浮いてた。

それで、誰とも深く関わらなくなったの」


俺は何も言えなかった。

彼女の静けさには理由があったんだ。


「だから、九條くんとこうやって話すの、今でも不思議なの」


「でも俺は、変だなんて思わないよ。むしろ……本を大事にしてるの、いいと思う」


彼女の表情が少しだけ緩んだ。

それは、図書室の柔らかな夕日にも似た、優しい笑顔だった。



帰り道、俺はふと、空を見上げた。

“普通の生活”を望んでいたはずなのに、少しずつ、誰かのことを考えて動くようになっている自分がいた。


もしかしたら、これはもう“普通”じゃないのかもしれない。

でも、それでも――悪くないな、と思った。



次回予告:

第6話「“昔の話”は、今を縛るものなのか」

今回も読んでいただき、ありがとうございました!


第5話では、ほのかの少しだけ触れにくい「過去」と、それに対して九條がどう向き合うのかを描きました。

“図書室の彼女”という存在が、だんだんと物語の中で特別なものになっていく――そんな気配を感じていただけたら嬉しいです。


「普通の生活」を望む主人公が、「誰かと関わることの難しさ」と「それでも踏み出す意味」に気づき始めた回でもあります。

小さなやりとりや言葉の選び方が、二人の距離を少しずつ縮めていくのを、これからも丁寧に描いていきたいです。


次回は、彼らの日常にちょっとした“波”が立ち始めます。

「静かな青春」のその先へ。ぜひ楽しみにしていてください。

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