図書室の彼女の名前は、三浦ほのか
名前を知ることは、誰かをもっと身近に感じる第一歩だ。
放課後の静かな図書室で、俺は彼女の名前を聞いた。
三浦ほのか――
本が好きで、少しだけ寂しそうな瞳の少女。
彼女の夢や悩みを垣間見るうちに、前世にはなかった「人と繋がる温かさ」を感じ始めていた。
転生者の俺にとって、これはただの高校生活の始まりじゃない。
新しい「人生」が動き出す、予感だった。
第3話:図書室の彼女の名前は、三浦ほのか
放課後の図書室。夕陽が窓から差し込み、木の机を暖かく染めていた。
俺はほのかと隣同士に座り、同じ本を見ていた。静かな時間がゆっくりと流れる。
ほのかの指先が、ページの端をそっと押さえる。その動きはとても丁寧で、まるで本を大切に扱っているのが伝わってきた。
「九條くんって、やっぱり変わってるよね」
ほのかは微笑みながら言った。
「普通、転生者って言ったら、魔法使ったりドラゴンと戦ったり、派手なことやるもんじゃない?」
俺は苦笑いしながら答える。
「いや、俺はそんなの一切ないよ。ただの事故で死んで、記憶を持ったままここに生まれ変わっただけ」
「それがまた良いんだよ。飾り気がなくて、素直で。なんだかリアルな青春って感じがする」
彼女の瞳は、柔らかな光をたたえている。
「そういうの、羨ましいなって思うんだ。私、自分の人生に満足できてないところがあって…」
ほのかは少し目を伏せた。
「だから、本の中の主人公たちに憧れてる。成長して、変わっていく姿を見るのが好きなんだ」
俺はその言葉に胸が少し痛んだ。
前世の俺は、仕事と疲れでいっぱいで、何かに憧れたり、夢見たりする余裕なんてなかった。
でも今は違う。ここで、もう一度、やり直せる気がした。
「ほのかは、将来の夢とかあるの?」
俺が尋ねると、彼女は少し考えてから答えた。
「まだはっきりとは言えないけど…小説を書く人になりたいかもしれない。自分の言葉で誰かの心に届くような物語を書けたら素敵だなって」
俺は素直にその夢を応援したいと思った。
「いいじゃないか。夢があるって、強い武器だよ」
⸻
そう話しながら、俺はふと、自分の胸の奥に何か温かいものが広がるのを感じていた。
この場所で、ほのかと過ごす時間が、前世の孤独だった俺にとって、初めての救いのように思えた。
⸻
図書室の静けさは、ただの空間じゃない。ここは、少しずつ人と人が繋がっていく場所だった。
明日もまた、ここでほのかに会うのが楽しみになっていた。
⸻
「じゃあ、また明日ね、九條くん」
ほのかは少し照れたように笑って、軽く手を振った。
俺はその背中を見送りながら、心の中で小さくつぶやいた。
「よし、普通の高校生活、始めてみるか」
⸻
次回予告:
第4話「普通の学校生活って、意外と難しい?」
読んでいただき、ありがとうございます!
今回はほのかの名前が明らかになり、彼女の性格や夢に少し踏み込みました。
普通の高校生の青春ストーリーの中に、少しずつ「人と繋がる温かさ」が見え始めているのが書けてよかったです。
転生モノといっても、派手な異世界バトルはまだ先の話(?)なので、気楽に読んでいただけると嬉しいです。
次回は、さらに学校生活のリアルな部分や、ちょっとした悩みも描いていきます。
これからもどうぞよろしくお願いします!