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転生したけど、ただの高校生やってます  作者: 岸波圭太
転生と、静かな始まり
1/7

転生しても、朝は眠い

「君は、もう十分に頑張ったから」


そんな言葉を最後に、俺の人生は終わった――はずだった。


気がつくと、知らない天井。知らない顔。けれど、息はちゃんとできて、心臓も動いてる。

鏡に映ったのは、前世より少し若くて、なんだか眠たそうな高校生の顔だった。


生まれ変わった世界に魔法も剣もない。

あるのは教室のチャイム、朝の満員電車、そして――眠い目をこすりながら通う学校。


そう、ここは「ただの高校」だ。

俺の転生は、世界を救うためでも、復讐のためでもない。


ただ、前世でやり損ねた“普通の青春”をやり直すためのものだった

第1話:転生しても、朝は眠い


――目が覚めた時、俺はまず天井を見つめて、こう思った。


「あれ、病院じゃないのか?」


真っ白じゃない天井。鉄の匂いもしない。聞こえてくるのは、遠くの鳥の声と、目覚まし時計の電子音。


俺はベッドの上で体を起こし、隣に置かれたスマホらしきものを手に取った。

見慣れないロゴ。機種もメーカーも知らない。けれど表示された日付と時間は、確かに“朝”だった。


そして、画面に映った自分の顔――


「……誰だよ、これ」


鏡を見ると、案の定、自分じゃない。

黒髪、二重の目元、そして少し眠たげな高校生の顔がそこにある。

俺は、“九條くじょう 陽翔はると”という名前の高校生に転生していた。



前世は、冴えないサラリーマンだった。

営業職。満員電車。パワハラ上司。袋ラーメン。残業。残業。残業。


そして、帰宅途中に交通事故に遭い、気づけばこの世界だった。


転生する瞬間、夢か現かの中で“誰か”が言っていた。


「あなたはもう十分に働きました。今度は、普通に青春をしてください」


それが、神なのか管理者なのかは知らない。けれどその言葉を、なぜか忘れられなかった。



制服を着て、家を出る。

知らない道、知らない町。でも、なんとなく空気は“日本っぽい”。

不思議と道に迷わず駅に着き、通学電車に乗った。これが意外とスムーズで、自分でも笑ってしまう。


「……意外と、普通だな」


少し揺れる車内で、窓の外を見ながらつぶやいた。

前世でも何度も見た景色。でも、今は全てが新しい。


高校生活。青春。部活。恋愛。友達。


「俺にそんなもん、できるのかね……」


ぼやく俺の前に、ふと影が差す。


「――あの、席、ここいいですか?」


見上げると、ひとりの女の子が立っていた。

茶色の髪を肩まで揃えた、眼鏡をかけたおとなしい雰囲気の子。手には小説本。


「あ、ああ。どうぞ」


彼女はぺこりと会釈して、俺の隣に腰を下ろした。


その日、電車の中で、ふたりきりの静かな時間が流れた。

俺の「転生後の人生」は、こうして始まったのだった。



次回:

第2話:図書室で出会った君は、たぶんヒロイン


ここまで読んでくださって、ありがとうございました!

「転生」と聞くと、バトルや魔法やスキルがたくさん出てくる作品を想像するかもしれませんが――

うちの主人公・陽翔くんは、目覚ましで起きて、制服着て、電車に乗って学校へ行きます。普通です。めっちゃ普通です。


でもその「普通」が、前世ではできなかった大切なことだったりします。


第1話はまだ始まりの一歩ですが、これから少しずつ、陽翔の“やり直しの青春”を描いていきますので、どうぞ気楽に見守っていただければ嬉しいです。


それでは、次回――図書室で出会う、ちょっと不思議な彼女のお話でお会いしましょう。

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