第96話〜昂り〜
かなう視点です
「さてと、ヒアリングしていこうか。」
私は愛依ちゃんを床に座らせ、
自分もまた対面して座った。
「職業は決まってるの?」
「一応…これ言うのもなんか今だからこそ
恥ずかしいんですが、私も舞依ねぇも道化師なんです。」
恥ずかしげに道化師をやっていると告げる愛依ちゃん。
それもそのはず。
舞依ちゃんが亡くなった後、アイドルの夢を叶えるために
また1からデビューの準備をしている彼女。
プロデュースする私が決めた新しいコンセプトはピエロ。
なんとも解釈一致すぎる職業であった。
「なるほどね、運命的だね。」
「ははっ……。」
私のロマンチックな回答に、
困った様子で笑う愛依ちゃん。
舞依ちゃんが亡くなることもまた運命だったと受け取れる
私の回答に悲しくも笑うしか無かったのだろう。
本当にピエロだ。
「クエストとかはよく参加してたの?」
空気を変えるべく、私は次の質問をした。
「このゲームは私達にとっては息抜きそのものだったので
クエストはよく行ってました。」
ランクも107とそこそこ頑張っているようだった。
ランク30ちょいのうつつと霧香に比べたら
即戦力にはなると思った。
2人にもこの訓練で頑張って貰わなければと
私は、雛にコテンパにされているうつつと
微妙な距離感の米丸と霧香を横目に見た。
「固有スキルは?」
「固有スキルはまだ……。」
なるほど、まだ見つけられてないと。
「じゃあ、固有スキルを見つけるのも今回の課題だね。」
「はい。」
私は、取り出した小さなメモ帳に
[愛依 課題:固有スキル]とペンで書いた。
「基礎魔法はどれくらい使える?」
「えぇっと……」
愛依ちゃんは、持ってきたカバンから
分厚い本を1冊取り出した。
それは私が著書を務めた
【誰でも使える!簡単な魔法!】という魔法書。
うつつと霧香にも渡している。
それを今日、愛依ちゃんが持ってくるなんて……
この子見る目が良いね。育て甲斐がありそう。
「ここまでは頭に入ってます。」
愛依ちゃんが指したページはこの本の4分の3ページ
つまり、400以上の魔法を覚えていると言った。
うつつと霧香には全部覚えろなんてハッタリかましたのに
書いた本人ですら300くらいしか覚えてない……。
それをこの子は超える数を覚えていると言った。
「良いね。君、センスあるよ。」
「ありがとうございます……!
あの……サインいただけたりとかは……」
その一言に私は驚いた。
しっかりこの本のファンじゃねぇか……。
「良いよ。私が書いてたって知ってたんだね。」
私は持っていたペンで本の背表紙の内側に
スラスラとサインを書いた。
こんな時のために、無駄に
サインを書く練習しといて良かったぁ〜〜!!
「初めて会って名前を聞いた時に、もしかしてと思って……!その時は、話すことですら緊張しちゃって上手く会話も出来なかったんですけど、でも今こうしてお話出来て同じ空気を吸えてサインまで貰えて私幸せすぎます!!!これから、一緒に訓練したりプロデュースも出来るんですか???ご褒美すぎませんか??」
ここまで一呼吸でペラペラと早口に、
私への熱を語り出す愛依ちゃん。
しっかりオタクだ〜〜!!!
え、私感動しちゃう!!!
「握手とかいる……?」
「良いんですか!?」
調子に乗った私は、愛依ちゃんに手を差し出した。
ペシッ__
しかし、その手は愛依ちゃんに握られることはなく
我が相棒、わっさんの手によって弾き飛ばされた。
「しっかりしろ、かなう。」
お前が1番訓練に出遅れてるぞと怒られてしまった。
「……そうだね、ごめんね愛依ちゃん。」
「いえ……!」
わっさんの喝入れで正気に戻った私は、
仕切り直して訓練を始める準備をする。
「ここの部屋は、仮想戦闘システムを使って
自在に好きな魔物と戦える機能もあるんだ。」
あくまで仮想だから、自分が傷ついたり
怪我することは無いから安心して欲しいと私は伝える。
「そうだねぇ、夜猫冥神戦でもしてみる?」
それは、AYAKASHI達が瞬殺したS級魔物。
AYAKASHIの平均ランクは350で
夜猫冥神の討伐適正ランクは90から。
今の愛依ちゃんのランクだとやや苦戦はするが
倒せなくは無い魔物である。
「この魔物と戦ったことは?」
「ないです……。」
なら、好都合。
愛依ちゃん"1人"でどこまでやれるのか見てみたい。
「ハンデを付けよう。1撃だけ私が助っ人で入る。
入って欲しい時に、好きな食べ物でも叫んでよ。」
部屋に備え付けてあるシステムコンピュータを使い、
別で訓練してる子達とのスペースを仕切りで分けて
私は、愛依ちゃんだけの空間を作った。
「魔物出したらすぐにそっち行くから始めてね!」
行くよと呼びかけて、私は夜猫冥神を召喚した。
ミーミー__
ワラワラと天井から降ってくる夜猫冥神達。
攻撃を加える前の個体はきっと100を超えるであろう。
コイツらは動くものを追い掛ける習性があるため、
100もの個体を捌くには技やスキルだけではなく
体術も必要とされる。
「どう魅せてくれるかな〜。」
私はワクワクと高まる好奇心を抑えながら
愛依ちゃんの戦闘を見守った。
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