第91話〜凸凹な関係①〜
視点なし
3話分ほど過去編入ります
魔法により、幼児化し続ける自身の症状を改善すべく
苺乃雛子はファントム・ストーリー内にある
アカデミーに通い始めた。
1年で卒業出来るという超短期制のアカデミーでは、
魔法に関する講義だけでなく、クエスト応用の体術訓練や
ファントム・ストーリー内でのライフスタイル講義など
様々な知識を学べる。
とは言っても、現実での学業や就業がある人もいる。
そんな人達の生活スタイルに合わせて、火曜か土曜の
どちらかを選択出来るよう、週に2回開校している。
入るための特別な資格や試験はないが、
毎年1月から3月の間でしか新入生を募集しておらず
通うためには1万ウェルス(10万円)が必要ではある。
そうした条件を達成した雛子は、毎週火曜日に
アカデミーへ通うことを決めた。
「ここが魔法の学べるところ……。」
この時、雛子はまだ赤ちゃん言葉でも
派手なピンクの髪色でもなかった。
「雛のクラスは……。」
雛子はスマホを取り出し、アカデミーからの
入学案内通知を開いた。
この学園では
《ロザリアン》《ブルレヴェ》《ポピフィネス》と
生徒を3つのクラスに振り分けていた。
「ロザリアンね。」
そうして、雛子はロザリアンとプレートが
掛けられた教室へと入る。
「貴方どこから来たの!!?」
「美しい!!美しすぎる!!」
「きゃー!こっちみてー!!」
教室の窓際の1席をクラスの女子達が
囲んでキャッキャと騒いでいる。
雛子の低い背ではその中心の人物は見えない。
静かな雰囲気を好む雛子にとって、その空気感は
耐えられるものではなかった。
しかし、まだ初日。次にここへ来るのも1週間後。
これが2ヶ月くらいずっと続くようなら、
クラスを変えてもらおうと思いながら
雛子は教室へ入ってすぐの1番前の席へと腰を下ろした。
先生が来るまでの間、雛子は少しでも知識を
身につけようと難解な羅列で刻まれた魔法書を
懸命に読み解く。
「ねぇ、あの人じゃない?」
「え?どこ?周りが邪魔で見えないんだけど。」
そんなに窓際の席の人物に興味があるのか
隣のクラスの女子達まで野次馬化する始末だった。
「……集中出来ない。」
パタン__
雛子は魔法書を閉じて、静かな所へ行きたいと
教室を出た。
そんな様子を、窓際の席へ座り
女子達に囲まれていた人物__帝月かなうは見ていた。
「きゃー!こっち見たぁあああ!!!!」
「バリイケメン。尊っ。」
「あぁ、今年入学出来てよかった。」
「推します、今日から貴方を推します!!!」
勝手に盛り上がっている女子達を尻目に、
かなうは、"私、女なんだけどな"と言葉には出さず
溜息を1つ吐いた。
ホームルームが始まるまで時間がありそうだと
時計を見たかなうは、静かな場所へ行きたいと思い
不得意な嘘で女子達を躱して教室を出た。
「ごめん。落ちてくる隕石止めなきゃ。
危ないから、キミ達はここで待っててね。」
そう言ってウインクでもすれば女子達の目は
ハートになる。
「「「か、カッコイイ〜〜!!!」」」
その後の教室では、「彼は不思議系イケメンだわ」とか
「いやいや、王道のヒーロー系よ」なんて盛り上がった。
ファンクラブが出来ていた事は言うまでもない。
静かな場所へ行きたいそう願って2人が辿り着いたのは
学園内にある天文台だった。
ギィィ__
かなうが天文台の扉を開けるとそこには、
先に教室を出た雛子の姿があった。
「先客が居たようだね。少しの間だけ、お邪魔するよ。」
その物腰柔らかい口調に、高身長で眉目秀麗な顔立ち。
雛子は一目見て、この男がさっきの騒ぎの中心人物かと
半分正解で半分不正解なことを思った。
「魔法……好きなの?」
かなうが本を読んでいる雛子に話しかけた。
お邪魔するよという言葉の通り、
静かに居座るだけではない様子のかなう。
「好き……なのかな。」
好きと言い切れない雛子は、下を向いた。
「魔法使いだから、自分のことをよく知らなきゃと思って
必死に読んでるんだと思います……。」
雛子はこのゲームでは、魔法以外扱えなかった。
でも、その魔法もまた雛子の身体を蝕んでいる。
原因が分かっていても、それを止める
万能な魔法は存在しない。
魔法で全て解決するのなら死人も生まれない。
このゲームはまるで現実だと、
雛子もまた自身の身体を通してファントム・ストーリーの
裏の顔へと近づいていた人物であった。
「ふーん。それってやっぱり好きなんだよ。」
「え?」
マイナスになる雛子の思考とは反対に
かなうはプラスに考える。
「好きじゃなきゃ本なんて読もうとしないし
今このアカデミーにいない。」
それは最もな発言だった。
「キミ、結構魔法好きでしょ。」
かなうは雛子に近づき、艶のある黒髪を一束掬った。
かなうの言葉や所作の一つ一つが
少女漫画の王子様キャラのように、雛子の目には
キラキラと輝いて映った。
「髪、ここだけ燃えた痕がある。」
かなうのその言葉に雛子はハッとした。
火炎魔法の練習をしていた時に焦がしてしまったのを
そのまま放置していたのだ。
「……目が良いんですね。」
「いや、視力は両目ともCだよ。」
「私の勘違いでした。眼科へ行ってください。」
雛子の鋭いツッコミの後、静まり返った空気。
そんなを空気含めて、かなうと雛子は可笑しくなって
笑い合った。
「ねぇ、名前は?私は、帝月かなう。」
「苺乃雛子です。」
凸凹な2人の関係を照らすように、
天文台の天井に散りばめられたガラスの星が
キラリと輝いた。
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