第90話〜苺乃雛子〜
「反応が遅れてるでち!!!」
バシッ__
「ひぇぇ〜〜!!」
フリフリのレースが付いた扇子でバシバシ叩かれる私。
絶賛、苺乃さんとのワンツーマンで
体術の訓練を受けている鳴宮うつつです。
「余計なこと考えるな!!でちよ!!」
「ふぁいっ!!!」
バシッバシッ__
「それじゃ雛から1本も取れないでちゅ!」
痛いよ……
苺乃さん、可愛い見た目に反して容赦ない……。
どうしてこんなにコテンパにされているかというのも
ほんの数十分前__
かなうさんが予約していたという
市民体育館並の大きさの部屋。
私が試験の時の部屋と雰囲気は似ていたが、
その部屋の広さは全く別物であった。
「さっき来る時に、霧香とうつつには説明したが
今日は体術と魔法の訓練を2時間やる。」
かなうさんが全員を集めて話し始めた。
「そして、その訓練は1人2組のペアで行う。
雛とうつつ、米丸と霧香、そして私と愛依だ。」
「ズっ……ん゙ん゙。なんでもないです。」
絶対今霧香さん、ズルいって言おうとした。
凄い、愛依さんに向かってガン飛ばしてる……怖いよ。
「このペア訓練は、対抗戦までの1ヶ月の間で
今日含めて4回、ペアを入れ替えて行う。」
今日は、指導者ポジを固定して
戦術強化をするためのペアだと言った。
時間は多そうに見えて意外と少ない。
全員がこの訓練で"何か"を習得できるように
かなうさんも全力でサポートしてくれるとの事。
「大きな怪我だけはしないようにね。」
そう言うと、かなうさんは愛依さんを連れて
職業や使える魔法の聞き出しを始めた。
「さぁ、雛達もやるでちよ!」
また会えて嬉しいと苺乃さんはニコリと笑った。
同じ気持ちの私もニコリと笑顔を返したところ
シュッ__
苺乃さんは突然、回し蹴りをした。
間一髪で避けるが、私はバランスを崩し倒れる。
ドスン__
「へぅ……ゔぅ……」
「ふむふむ。危機察知能力は高いでちね。」
苺乃さんは倒れた私の手を取り、体を起こした。
「うつつちゃまの課題は、体感でちゅ!」
ビシバシ行くでしゅよ〜!!!と言って
レースの可愛らしい扇子を2本取り出す。
「雛に3回扇子を当てることが出来たら、
今日の体術特訓はおしまいでち!」
__そうして、苺乃さんによる私への訓練が始まった。
「あん!どぅ!とろわ!」
バレリーナの踊りのように柔らかくしなる身体を使って
扇子で私を攻撃してくる苺乃さん。
機動性だけで言ったら、
かなうさんや紫雨さんを超えるレベルの身体能力である。
見た目が幼いからと言って油断しては行けない。
実くんだってそう。
このゲームは見た目で判断しては行けない時が多々ある。
きっと、ギルド対抗戦もそういう場面に
何度か直面するかもしれない。
そういった状況の時、私は何をすればいい……?
「考えろ……私っ!!」
バシッ__
私の後ろへと滑り込み、踝を叩く苺乃さん。
また、ダメだ……。
同じく扇子を持った私の手は、
一度も苺乃さんに当てられていない。
「はぁ……はぁ……。」
意外とすぐに来た体力の限界。
何故だろう……そんなに走ってないのに。
「一旦休憩しましゅか?」
手も足も出ない私の様子に、苺乃さんは
優しく休憩した方がいいと語りかけた。
なんだか悔しいけど、息も切れている。
「水飲んできます……。」
私は、ロビーの自動販売機へと向かった。
ガコン__
ウェルスの電子決済で購入した水が
取り出し口に落ちた。
私はそれを拾い、その場で開けて飲んだ。
走るのは得意なはずなのに、
それすらも機能してくれなかった。
どうして……。
「昔の雛にそっくりでちねっ!」
「わっ!!?」
1人だと思っていたところに、苺乃さんの声がした。
その声に驚いた私は蓋が開いたままのペットボトルの水を
飛ばしてしまい頭から水を被った。
カランカラ__
「なんでいつもこう……。」
水浸しになった床から、
空になったペットボトルを拾った。
「ごめんなしゃっ…!雛が驚かせちゃいまちたね……。」
「いえ、お気になさらず!」
そうは言っても、気遣いが出来る彼女は
新しい水を買ってくれた。
「あ、ありがとうございます。」
「いいでちよ、これくらい!綺羅々星!」
そして、こぼした水も魔法で綺麗に片付けてしまった。
魔術師過ぎる……。
「しゅこし、昔話でもしましゅか。」
「訓練はいいんですか……?」
皆が頑張っている中、私1人苺乃さんに甘えて
話していても良いのだろうか。
「えへへ。しょんなとこも、本当にそっくりでち。」
苺乃さんは昔の自分を重ねるように
私の手をとって、優しく撫でた。
「大丈夫でちよ。話は10分で終わるでち。」
その後、50分訓練に時間を費やせば
何も問題無いと苺乃さんは言う。
「それなら……ぜひ。」
どんな昔話なのだろうか。
苺乃さんとかなうさんの思い出話とか……?
まさか、日本昔話とかグリム童話では無いと思うけど……。
「雛とかなうちゃまがアカデミーに通っていた頃の
お話でち。」
ちなみにこの話は、雛とうつつちゃまの2人だけの秘密で
おねがいちまちゅね!と苺乃さんは、前置きを話して
楽しそうに笑った。
次回から数話、視点なしで雛子とかなうの出会いの
回想編に突入します!
訓練?過去話が終わったらちゃんとさせます!!!




