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第87話〜様子見〜

うつつ視点です。

いつの間にか居なくなっていたかなうさんが

米丸さんを連れてアトリエへ戻ってきた。


「あ!かなうさんどこに行ってたんですか!」


勉強の休憩がてらに、霧香さんと

アトリエの手伝いをしようと1階へ来たところ

鍵も開けっ放しの状態でかなうさんが居なくなっていた。


「ごめん。緊急事態で。」


緊急事態……?

心做しか表情が暗く、米丸さんも下を俯いている。


「わっさん元気無さそうですが、

何か具合が悪いところでも……?」


霧香さんが心配そうに聞いた。


かなうさんに抱えられ、ぐったりとしているわっさん。

彼もまた元気がなかった。


「まぁ、それもある。」


今度こそアトリエの鍵を閉めたかなうさんは、

事務所で話そうと私達を地下へと向かわせた。


「あ、ちょっと待ってください。」

 

私は急いで、机の上に置きっぱなしだった魔法書や

ペンなどの勉強道具を片付ける。

 

「大丈夫です。」


そうして、いつものように綺麗な状態の机に戻ると

かなうさんは口を開いた。

 

「実は……。」


今から話すことは信じ難い内容でもあるかのように

隣にいた米丸さんが、カシャンと甲冑が掠れる音を

鳴らした。


「グラさんが誘拐された。」


かなうさんは悔しそうに顔を歪め、唇を噛み締めた。


それは本当についさっきの出来事だったと言う。

 

優しいかなうさんのことだから、

きっと自分の責任のように感じているのだろう。

かなうさんは何も悪くないのに。


「グラさんが参加したクエストにも足を運んだが、

そこで痕跡は途絶えていた。」


現在の消息は分からないけど、それでも居そうな場所の

目星はついてるとかなうさんは言った。


でも、そこへ行くための権限は無い。

まさに絶望的な状況だった。


「わっさんが元気ないのもそれが原因ですか……?」


霧香さんが聞いた。


普段から大人しいわっさんではあるが、

明らかにいつもと様子が違う。


「いや、ちょっと違うかな。

魔物の攻撃を食らってしまってね。」


その魔物についても、かなり深刻な話だと言った。


戦闘慣れしているかなうさんが言うその言葉は

相当なものだと、私はゴクリと息を飲み込む。


「舞依さんに会いました。」


空気の重さに耐えられなくなった米丸さんが、

かなうさんの口が動く前に状況を説明した。


「でも、彼女は俺らの知ってる人ではなくなってた。」


え……?


どういうこと……?


私は理解するまでに時間がかかった。


「えっと……舞依さんは生きてたってことですか?」


私のその質問に首を振る2人。


「じゃあ……?」

「魔物になったんだよ。」


私の疑問に被せるように、かなうさんは言った。


わっさんが負傷したのも魔物化した舞依さんの

攻撃によるものだと。

……彼女はもう、生前の記憶が無いらしい。


「人が……魔物に……。」


信じ難い内容ではあった。


しかし、今までそんな経験はいくつかしてきた。

目の前にいるわっさんだってそうだ。


彼らは人間の言葉や心を理解しすぎている。


「そうなんですね……。」


霧香さんから聞いていた話もあったせいか

その真実は、受け入れるしか無かった。


愛依さんが知ったらどう思うのだろうか……。

聞かずにはいられなかった。


「愛依さんには伝えるんですか?」


かなうさんは顎に手を当て考え込み、こう言った。


「今は伝えない方が良いだろうな。」


でも、いつか伝えなきゃ行けない時が来る。


行ったところで、自分が死んでしまっては

どうしようもない。

やはり、今は鍛錬に励むしかないのか……。


「それで……ギルド対抗戦の件なんだけど……。」


かなうさんは唸りながら対抗戦のことを話し始めた。


「正直、1ヶ月でグラさんが帰ってくるとは思えない。」


私達が見つけない限り、会うことは不可能に近い。


だから、対抗戦では代役を用意したいと

かなうさんは言った。


「代役って、一体誰にお願いするんでしょうか……?」


グラさんの穴埋めを誰にお願いするのかと

霧香さんが聞く。

 

かなうさんがギルド対抗戦への参加表明を申請してから

ほとんどのギルドが出揃い、人を引き抜くにも

大変な渦中に私達はいる。


ココロでも連れていく気だろうか…?

それとも、苺乃さんとか……?


「それこそ愛依だよ。」


愛依さんは、まだどこのギルドにも属しておらず

アイドルとしての知名度もぼちぼちだと

かなうさんは言う。


正直その説明は酷だが、最もであり

誘うなら今しかないと私も思った。


「いつか舞依ちゃんに会わせるためにも……

それから彼女の知名度アップのためにも。

今から鍛えておくのには、持ってこいのイベントだろ。」


確かに……。


「ただし、メンバー変更申請は前日ギリギリにする。」


それはそうだ。

今申請するのは、デメリットでしかない。


かなうさん1人の力で、これだけ多くのギルドが

動いている。

今変えたら、多くの人の注目の的になるのは間違いない。


「愛依ちゃんの実力は、私も知らない。」


それでも、かなうさんには対抗戦で

勝てる道筋が見えているのだろう。


「愛依ちゃんには既に説明してある。

それから、雛にも魔装具や君達の基礎魔法練習の

面倒を見てもらうよう交渉しておいた。」


いつの間に……流石しごでき……。


「米丸も折角このゲームに住み始めたのなら

一緒に練習したらどうだ?」

「良いんすか。」


でも、女子の輪に入って練習しにくいっすよと

米丸さんは言う。


そっか……米丸さん以外は皆、女だもんね……。

私も周りが男しかいなかったら遠慮しちゃう。


「甲冑にリボンでも付けたら?」

「舐めてんすか。それで女子になれたら

最初から玉なんてついてねぇっすよ。」

「お前モテないだろ。甲冑童貞め。」


なんてことを言うんだかなうさんは……!

失礼過ぎるにも程があるし、ここに来て初めての下ネタ。


いや、これは下ネタなのか……?

不思議と笑いを誘うネーミングセンス……。


それでも仲が悪いと感じさせないのは何故だろうか。

きっと、米丸さんが大人なんだよね。うんうん。

 

「俺には虎太郎が居るからいいんすよ!!」


かなうさんと言い合いをしていた米丸さんだったが、

結局、練習には行きたいらしく"また明日"と言って

時間と場所も聞かずに帰ってしまった。


大人……というより……

 

「どこか抜けてる……?」

「今更?アイツは天然だぞ。」


その言葉を聞いて私は納得した。

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