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第85話〜巧妙な罠〜

「かなうさん!!!そろそろ限界かも!!!」


空に浮かんだ海水が、もう間もなく落ちてくると

米丸が私へ向けて声を張った。


水が無くなった海底へと降りていた私は、

倒れていた人魚を抱き抱える。


「今戻る!!!!」

 

彼と同じように声を張り、戻ると返した。


そして私は、海底へと降りてきた時と同じように

硝子の音階(シンデレラ・ステップ)を唱えた。


シャラララ__


地上へ向かって現れる、階段になったガラスのパネル。


「水が落ちるまでには間に合うさ。」


そう言って私は、現れたパネルを1枚ずつ踏み

(のぼ)って行く。


ド〜レ〜ミ〜♪__

 

踏んだパネルは、ドレミと1音ずつ音が鳴るのと同時に

足が離れると消えていく。


高所恐怖症には耐えられないだろうが、

これは、急な足場に困った時に使える

基礎魔法の1つである。


タッタッタッタッ(ファ〜ソ〜ラ〜シ〜♪)


私は、パネルを軽快に走り抜け、

海底から人魚を連れ去る。


この人魚、メシ食ってるか?ってレベルで軽すぎる。

例えるなら、わっさん12体分くらいの重さ。


私は、チラリと人魚の様子を見ながら走り続ける。


……気を失っているのか目は閉じたまま。

 

初めてみるが、御伽噺(おとぎばなし)に出てくるような人魚とは

また違った雰囲気を感じる。

 

鱗とか鰭でキラキラ感はあるんだけども、

なんというか……ダーク寄り?闇落ちみたいな。


まぁ、魔物扱いされてるし……。


ゆらゆらと揺れる長くて黒い髪は、

闇そのものを見ているようだった。


「間に合ったな。」

「ギリっすよ。」


ザッパァァアアアアアン!!!!!!!!!


あと少しで海水に押しつぶされるところだった私達を

砂浜にいた米丸が空間移動の流星の瞬き(トリック・ポート)を使い、

安全圏へと移動させた。


海底へと叩きつけられた海水が天高く跳ね返り、

頭から海水を被る。


「吸収してタプタプだ……。」


水分を含んで少し膨張したわっさん。

風も吹いてるせいか、砂が全身に(まと)わり付き

砂のおばけのよう。


「帰ったらシャワーだな……。」


私もかなりずぶ濡れである。


水も滴るいい女……なんつって。


私は、抱えていた人魚を砂浜へと下ろし、

自身のシャツに含んだ海水を絞り出した。


幸い、コートと剣は

手持ちのアイテムを10個まで預けられる

【仮想ボックス】へ預けていたから問題無い。


この仮想ボックスはランク50から使用出来る。

 

しかし、グラさんのようにシステム解析が出来る人は

ランクに関係なく独自の仮想ボックスを

作ってたりもする。


「甲冑錆びるかな……?」


唯一、ずぶ濡れでは無いとはいえ

海水をたっぷり浴びた米丸の甲冑。


蘭のことだから錆に強い

コーティング加工とかもしてそうだけどな〜。


「甲冑脱いだら?」

「え゙っ…嫌っす。」


いっそ、その暑苦しい鎧脱げよと私は言った。

 

今更ながらコイツの素顔を知らない。

ちょっとの興味本位で聞いた。


「なんで?」

「それは……まぁ……。」


頑なに脱ごうとしない上、理由も教えてくれない米丸。


きっと見た目へのコンプレックスを抱えてるんだろうと

何となく思った。


「別に中身がどうあれ米丸は米丸だろ。」

「それはそうなんすけど……。」


とは言え、私も強要したりはしない。


仮想ボックスからハンカチを取り出して

米丸に渡した。


「気になるならこれ使いなよ。布面積小さいけど。」

「いや、いいっすよ。自分で使ってください。」


はぁー?!

かなうちゃんが折角、優しさをお裾分けしたってのに!!


他人には優しくできる紳士な米丸だが、

自分へ向けられた優しさは遠慮する。

こいつァ……なんて不器用な男なんだと私は思った。

 

「かなう、顔に全部出てるぞ。」

「お前はその顔どうにかしろよ。」

 

ついに全身砂まみれになったわっさんが言う。


「全く……。」


私は、わっさんへ乾燥魔法をかけて水分を吹き飛ばし

砂を払った。

ついでに自分の衣服に染み込んだ水分も飛ばす。


「軽くなった。ありがとう。」


一丁前に、感謝は言える犬なのだから憎めない。


「俺にも乾燥魔法かけてくれれば良かったのに。」

「あ、確かに。」


ハンカチじゃなくてそっちにすれば良かったか。


太陽の恵(サン・ドレイン)


ごめんごめんと言って、私は米丸にも乾燥魔法をかけた。


「あざっす。」


米丸は感謝を告げると、人魚をどうするのかと聞いた。


「なんか不穏だよね。」


目は閉じ、グッタリとした人魚。

 

この人魚が、グラさんの見た真実だとしたら

下手に攻撃はできないと思った。


きっと、倒したらクエストクリア扱いで

振り出しに戻るだろう。


「起こしてみる?」

「まぁ、それが1番ベターなんじゃないっすか。」


そうだよねぇ。


「おーい。」


私は、砂浜に寝かせておいた人魚を揺らし声をかける。


「反応無いな。」

 

起きる気配は無い。


魔法で起こしてみるか。


目覚めの鐘(バースト・チャイム)


私がアトリエの目覚まし時計にもかけている魔法。

 

この魔法は、どんなに寝起きの悪い人にでも効く

究極の目覚ましだ。


ヴゥ……__


その効果は抜群。


気を失い、眠っていた人魚が魘されながら

瞼を上げた。


「……っ。」


見覚えのあるその瞳に、私は絶句した。


「グラさんが伝えたかったことってもしかして…。」


米丸も気付いたのか、驚きを隠せない様子で話す。


開いた人魚の瞳は赤と青。

よくよく見たら、姿は変わっているが

顔のパーツは何も変わっていない。



「……舞依ちゃん。」


それは、ここに居るはずがない存在。


しかし、その事実で確信へと変わったこともある。


「どうやらこのゲームの魔物は、

死んだ魂から作られているようだな……。」


その当事者である魔物のわっさんが言う事で

さらに現実味が増した。


「そんな……ありえねぇっすよ……」

 

こんなの酷いと怒りを露わにする米丸。


魔物化した舞依を目の前にして

私達は手も足も出ない。

 

それを知っていて(おび)き寄せられたとも

言いざるを得ない状況。


グラさんの誘拐も含め、何か裏がある。


「米丸、人魚に気を取られるな。

周囲への警戒へも強化しろ。」


「はい。」


この罠を仕込んだ黒幕、

もしくは手下が隠れているかもしれない。


このスケールのゲームを1人で動かすには無理だ。

確実に何人か協力者はいる。


「チッ……。」

 

人魚化した舞依が起き上がり、

虚ろな目で私達を見つめた。

 

うねうねと触手のようにしなる

黒い髪に紛れた赤いメッシュ。


記憶はもう無いのか、

私達を見ている彼女は警戒した様子だった。

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