第79話〜この世界のこと〜
〈対抗戦で使えソウな基礎魔法の数ハ、50デス〉
魔法書を読み込んだココロがデータを割り出してくれた。
「50……50かぁ……。」
それでも50という一気に覚えるには大きい数字。
「だ、大丈夫です!2人で分けて25ずつです!」
頑張りましょうと霧香さんが胸の前で拳を握り
ガッツポーズをした。
「頑張ります……!」
私も霧香さんの真似をしてガッツポーズをした。
「ココロ、この紙にさっき出してくれた
魔法名を書き出してもらえないかな?」
〈分かりましタ〉
私がそう言うと、ココロはペンを握り魔法に1から50の
数字のフリ、それからページ数を付けて書き出し始めた。
なんて親切なAIなのだろうか。
「わぁ……字綺麗ですね。」
「まぁ…ロボットですからね……。」
「そうでした。」
ココロの綺麗で正確な字に、
少しキラキラとした顔で感動する霧香さん。
こんな表情もするんだ。
彼女の新しい一面を見れた気がして嬉しくなった。
〈出来まシタ〉
ココロはペンを置いた。
「ありがとうココロ!」
〈朝メシ前でス!!〉
おぉ、急にユーモア出てきたな。
「それじゃあ、私は1から25を覚えます。」
26から50は、うつつさんにお願いしたいです。と
霧香さんが紙に線を引いた。
「分かりました!」
私は、ココロを連れてくる時に一緒に持ってきた
全く同じ魔法書のページを捲った。
「良ければ、使ってください。」
霧香さんは私に緑色の付箋を渡した。
「え、助かります……!ありがとうございます!」
めちゃめちゃ気が利く……ありがてぇ……。
私は貰った付箋を使って、覚える魔法のページに
ぺたぺたと貼っていった。
「色を変える魔法に、音を鳴らす魔法……。」
色んな魔法があるんだなぁ…。
これは候補に入ってはいなかったが、
カツラを飛ばす魔法や瞳の色を変える魔法
なんてのもあった……。
誰得……?
というかこの500もの魔法を生み出し、
著書した人って一体……。
著作者は誰だと私は名前を確認する。
「え。」
それは、私が良く知る人物。
「この本かなうさんが書いたのかよ……。」
通りで拭えない変な圧とセンスがあるわけだ。
「知らなかったですか……?」
納得している私に、霧香さんが言った。
「このゲームから"出られなくなって"から、
脳死で魔法をかき集めたと言ってました。」
霧香さんから出た言葉はさらに衝撃的なものだった。
「え……出られなくなってからって……。」
私の呟きに、マズいと思った霧香さんは
自身の口を両手で塞いだ。
「どういうことですか……?」
ここに来てからかなうさんとずっと一緒にいたから
きっと知っているものだと思っていたのだろう。
「え、えっと……その……。」
気まずそうに、霧香さんは両手の人差し指を合わせながら
視線を逸らす。
紅の瞳
私は、ちょうど開いていた魔法書のページに書かれていた
瞳を赤くする魔法を、霧香さんには聞こえないように
小さな声で唱えた。
そして、彼女と視線を合わせ頼み込んだ。
「教えてください。」
普段より強引な私の姿に驚く霧香さん。
そんな霧香さんの瞳には、
目が赤く光る私の姿が映し出されている。
魔法、成功してる……!
グビッ__
霧香さんは、温くなった紅茶を一気に飲み干し
隠すことを諦めたように渋々と話し始めた。
「……お姉様は3年間。
このゲームに閉じ込められているんです。」
その後、霧香さんは知っていることを全て話してくれた。
「このゲーム。ゲームに見せかけた"現実"なんですよ。」
私がずっと疑問に思っていたことが
その一言でスっと溶けるように理解できた気がした。
やっぱり……なんて気持ちもあった。
「ここに書いてある魔法も、今の世の中の
科学と技術さえあれば簡単に再現できますよ。
そんな現実を、ファントム・ストーリーは
ゲームのように見せている。」
呪文という名の言語によって
魔法という名のプログラムが発動される。
この現実自体が全てプログラムで構成されるように
なったから、ファンタジーも簡単に再現できてしまう。
「AI技術が進歩していることは全員が知っている
共通の常識であるのに対して、実際どんな形で
AI技術が使用されていたり世の中に埋もれているかは
一部の関係者しか知らないんですよ。」
つまりこの世界には、いつでもそのAIを屈指した
システムが作動できる状態になっているってことか…。
「ややこしいので、このファントム・ストーリーを
ゲーム扱いしてお話しますが……私……現実では
ゲームクリエイターなので、これがゲームでは無い
ということは、業界目線で見ると一目瞭然なんです。」
見せるクオリティが高すぎてビビります。
と霧香さんは苦笑いした。
「気づいているとは思いますが、私は
魔物と会話ができるスキルを持っています。」
スキルというのは、その人が元から持つ
個性や特技の言い換えでもあると言う。
どういうわけかその個性や特技は、このゲームへの
相乗効果で、現実よりも何倍もの効果だったり
その人にとっての影響を生み出すらしい。
「でも、私のスキルは魔物に自分のアイテムを
持たせなければ会話することが出来ません。」
レフにはリボン付けてますと霧香さんが言った。
スキルを使用するにも〇〇している時といった
条件的制限がある。
マスターの苦丁茶サイダーの件も
そういうことだったんだ……。
「へぇ……全部の魔物の声が聞こえるわけじゃ
ないんですね。」
レフの声は聞こえても
実際、虎太郎やクエストに遭遇する魔物の声は
分からないと霧香さんは言った。
「あ、でもこんな魔法もありますよ。」
人の心の声を言葉にさせる魔法__言魂
「もしかしたら、対抗戦でも
何かの手段として使えるかもしれませんね。」
霧香さんはそう言うと、攻撃系・煽り系と言った
魔法のカテゴリーを付箋に書いて本に貼っていった。
あ、私も付箋をそういう風に使えばよかったか……。
霧香さんの作業を見て真似し始める。
「対抗戦、無事に上手く行けば良いなぁ。」
「そうですね、頑張りましょう」
「はい!」
私達は、拳を合わせ笑った。
__この時、私達は彼がここに居たことを忘れて
全て話していたんだ。
〈新しい情報ヲ全て記録しましタ〉
ココロという"最大の凶器"を。




