第72話〜宣戦布告〜
動きが止まり、瞼を下ろしている556。
「とりあえず、要らんそうなデータは
削除しといたから大丈夫やと思う。」
556のデータ整理と制御機能を診ていたグラさん。
PCと556をケーブルで繋ぎ、データを書き換えている。
可哀想な気もするが、また暴走したら大変なので
神に関するデータや舘の記して全て消去してもらった。
「名前は、556のままでええ?」
「うーん。それなんだけどさ、【ココロ】って名前に
出来ないかな?556って中々呼びづらくて。」
確かに呼びにくさはある……。
「556でココロ。良くない?」
自分ネーミングセンスありありのありだわと
舞い上がるかなうさん。
「良いと思います。」
機械だけど、人のような感情がある556に
ピッタリな新しい名前だと思う。
「そう?まぁ、2人がそれでええっちゅうなら。」
カタカタとデータを書き換えていくグラさん。
「はっ!!誰やこの男!!!」
半睡状態で大人しかった紫雨さんが、
突然声を荒らげた。
「やっと起きたか。」
パチン__
かなうさんが紫雨さんにデコピンをした。
「いってぇ……!!自分何しはるん!!!?」
「うるせぇよ。他人の家で暴れるな。」
ああ……いつものだ。
良かった。
本当に目が覚めてなかっただけなんだ。
「魁斗にぃ起きたの?」
「起きたわぁ。それより、独楽千。
お前これどういうことなん?」
紫雨さんはスマホを取りだして、
実くんに送られたであろうチャットの画面を見せた。
[かなねぇが浮気してる!!!]
「おい、ほんとにどういうことだよ。
語弊がありすぎるだろ。」
あまりにも誤解を招きそうな字面に笑いが零れた。
「浮気……っふふ……くっ」
「うつつ〜〜?」
トスッ__
いてっ……。
かなうさんに軽くチョップをされてしまった。
「すみません、面白くてつい。」
ココロの調整をしているグラさんも
クスクスと笑っている。
「誤解だ、魁斗。
かなうは浮気どころか誰とも付き合ったことは無い。」
わっさんがさらに火種をぶち込んだ。
「お前は一言余計だ!!!」
流石にかなうさんも顔を真っ赤にしてプンプンである。
「まぁまぁ、皆落ち着きぃー。独楽千くん説明せんと。」
グラさんが母のように皆を宥めた。
思わず私も口が滑る。
「お母さん……!」
「誰がお母さんじゃ!!」
ツッコむところはちゃんと逃さないの
本当にグラさんって感じ。
「えっとえっと。」
説明するよと、実くんが言葉を挟んだ。
「かなねぇが、ギルド対抗戦に出るって。」
「はぁ?ギルド対抗戦?」
今まで聞いた事のないような低い声で紫雨さんが言った。
「誰と?」
なんだか空気がピリついた感じがした。
「うつつ、霧香、こめまる、グラさん。
即席ギルドだね。」
ちなみに、もう申請してあるとかなうさんは言った。
「ふーん。」
紫雨さんが不服そうに口をへの字に曲げた。
「ひぃ……。」
「ほぇ……。」
この場で名前を出された私とグラさんは
もう心臓がバクバクである。
今すぐこの場を離れたい、切実に……。
「即席っちゅうことは賞金目当てか?」
「ピンポーン。」
「ほな俺らとでも良かったんちゃう?
俺とかなうが組めば余裕やろ。」
それは本当にその通りだと思います。
私達はただの巻き込まれ……。
でも、金の力には抗えない……。
そうやって社畜時代も、ボーナスに取り憑かれて
育ったのだから。
とても未熟な生き物ですぅ……うぅ……。
「まぁ、そうだけどさ。そんな怒ること?」
ばかっ!かなうさんのばかっ!!
それは禁句では……!!
「そんな……?」
さらに不機嫌になる紫雨さん。
かなうさん見えてないの?
この人めちゃめちゃ嫉妬してるよ。
プライドだって高そうだもん…。
これ以上見てらんないよ〜〜!!!!
「よう分かったわ。かなうの気持ち。
自分らが狙ってる賞金、
AYAKASHIが貰いに行きますわぁ。」
紫雨さんが、前髪を掻き分けてかなうさんを嘲笑った。
初めて見る紫雨さんの赤い瞳__
かなうさんを見つめるその目は、
完全に狩りをするものの目だった。
「あぁ……もう……仲良くしてくれ……。」
私の切な願いはきっと届かないだろう。
「こうしてはおられへん。独楽千、俺らも出るで。」
「ほんと?!」
無邪気に喜ぶ実くん。
なんて純粋無垢なのだろうか……。羨ましい。
こちとら胃が軋みそうなのに。
「ほな、対抗戦で会おうな。」
そう言って、紫雨さんは実くんを連れて帰ってしまった。
「あ……。」
実くん、今日一日はファントム・ストーリーにいるって
言ってたけど大丈夫かな?
クエストで色々あったし、両親と向き合うために
滞在せずそのまま帰るかも……?
まぁ、何かあればチャットが来るだろう。
それより、問題なのは……
「かなうさん、どうするつもりですか。」
私は、ソファで寛いでるかなうさんに声をかけた。
「んー?別に?こうなることくらい分かってたよ。」
「そりゃそうやろなぁ。」
どうやら、かなうさんもグラさんも
AYAKASHIと戦うことになることは分かっていたらしい。
「今から作戦会議でもするー?」
霧香もこめまるも呼べば、
すぐ来るだろうとかなうさんが言った。
「せやね。出るなら詳細は知っときたいしなぁ。」
「うんうん。」
ギルド対抗戦ってどんなことするんだろうか。
「あ、ちなみに。ココロのメンテナンスは終わったで。
言葉の発音も調整したから前より聞きやすいかも。」
グラさんは、ココロの首元の鍵穴に
鍵を差し込み稼働させた。
「学習タイプのAIが搭載されてるみたいやから、
毎日沢山話しかけることで賢くなるかもしれへんな。」
かなり使えるAIやでと、
グラさんがココロの肩をポンポンと叩いた。
「ありがとう、助かったよ。」
「いーえ。これくらい容易いで。」
そう言ってグラさんは、かけていたゴーグルを外した。
〈ありがトウ、グラさん〉
確かに聞きやすくなってる……!!
グラさん天才すぎる。
「それじゃあ、2人を待ちますか。」
〈待ちマス。ココロも待てマス。〉
かなうさんがチャットで2人を呼びかけ、
私達は地下の探偵事務所に集まることになった。




