第70話〜とある舘の摩訶不思議⑬〜
人形は剣が突き刺さってもなお、笑い続けていた。
イヒヒヒヒ……アハッハハハハ!!!!
「気味悪ぃな。刺しても死なねぇぞコイツ。」
かなうさんが何度も人形を刺すが、人形は倒れない。
「かなねぇ、下がって!!握飯爆弾!!」
実くんがボムを投げた。
ドォォン__
爆発するボム。
イヒッ!ヒヒヒヒヒッ!!
「効いてない?!」
どうやら、ボムでもダメなようだった。
人形はクルクルと回りだし、黒い何かを生み出す。
「攻撃してくる!!防御頼んだ!!!」
かなうさんの声で、私も戦闘に参加しなくてはと
ハッとする。
「天使の加護!!」
「土鍋壁!!」
防御力アップの魔法を唱えたことで
実くんのバリアが強化された。
フッ……フンッ!!!
人形が黒い玉を私達に向かって蹴り飛ばす。
「鍋耐えろ〜!!!!」
ガガガガガッ__
バリアが攻撃を玉を受け止める。
受けた衝撃で火花がチリチリと舞っている。
「うつつ、人形の刺傷に向かって
回復魔法を流し込んでみてくれないか?」
物は試しだと言わんばかりに、
かなうさんはあの時の提案を今やれと言う。
「えぇ?!どうなっても知りませんからね!!」
失敗したらかなうさんに処理してもらおう。
そう思いながら、私は人形へ向かって回復魔法を唱えた。
「治癒魔法!!」
みるみると傷が癒えていくフランス人形。
フグッ……ヴッ?!ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!!?
「え……。」
傷が癒えていくのと同時に、もがき苦しむ人形の姿。
「ど、どういうこと……。」
本当に除霊の効果が…?
「まだ止めるな!このまま魔法を流し込め!!」
止めそうになった私の手を、かなうさんは上から握った。
ヴゥ……ゥア゙……ア゙ァ゙……
魔法に包まれた人形は、ついに抵抗しなくなり
動きが止まり床に落ちた。
「もう大丈夫だろ。実もバリアありがとう。」
かなうさんは止めていいよと手を離して
床に落ちた人形を拾った。
「見ろこれ。」
それは、テレビに映ってた綺麗なフランス人形。
さっきまでの魔物とは180度違う姿。
「なんで?!マジック?!」
実くんが、変なの〜と人形を掴む。
「私の勘が当たったな。」
ヒーラーが使う回復魔法には魔物にも効果がある。
それは、傷の回復だけではなく魔物の魂までも癒す力。
元々魔物も赤子のように綺麗な身体を持っていたんだと
かなうさんは言った。
「コイツらだって醜い姿になりたくて
魔物になったわけじゃないと私は思うんだ。
傷ついて、傷ついて…自らも傷をつけて。
そんなことを繰り返しているうちに
コイツらは、心が黒く染まっていた。」
この世界のことをよく知るかなうさんの事だ。
魔物の生態にも詳しいのだろう。
「うつつ、キミはこの世界の闇を救える力がある。」
かなうさんが私の手を取り両手で掴んだ。
「私と一緒に……。」
そこまで言葉を発したかなうさんは口を閉じた。
「……?」
凄く困ったような、辛そうな、
そんな顔で私から視線を逸らした。
「ごめん……今はクエストが先だったね。」
明らかに言葉を濁していた。
でもそんなの、モヤモヤする。
それは私にとって、
どんな謎解きよりも一生続くモヤモヤに感じた。
だから、私は今日ココでかなうさんと向き合いたい。
この世界と向き合いたい。
かなうさんが視線を逸らそうが関係ない。
自分の目で確かめろと言われて、色々考えたけど
その確かめるべき答え…私にはまだ分からない。
それでも__
「かなうさん。」
私をこの世界へ引き止めたのは
紛れもなく目の前の彼女である。
かなうさんは、私に何かを成して欲しくて
ファントム・ストーリーに留めている。
だったら、私だって……!!
「私、この世界が大好きです。この世界にいる人達も。」
かなうさんや実くん、まゆりさんとか
沢山の人達に出会えて人生が変わった。
本当に第2の人生を送っているみたいに華々しくて
今までの現実の生活とは正反対。
「でも、たまに感じるんです。この世界の歪み。」
完璧だからこそ見えてくる恐怖。
ゲーム中の通話や情報漏洩の禁止、
華毒蜘蛛の言葉、舞依さんの事件、
幻警の存在にフィンちゃんのデータ…
そして度々感じるかなうさんの不審な発言。
「私は、鳴宮うつつは変われるんだってことを
過去の自分に証明したいっ!!!!
私も貴方と一緒にこの世界と戦わせてください!!!!」
その言葉は私の心の叫びだった。
ずっと変わりたかった。
変われるキッカケが欲しかった。
そんな時に手を伸ばしてくれたのは、かなうさんだ。
「この手は、もう二度と手を離しませんから!!!」
私は、かなうさんの手を掴んだ。
あの時、かなうさんの言葉を信じず
手を離したのは本当に馬鹿だった。
おかげでスキルは手に入れられたけど……。
「そっか。強くなったね、うつつ。」
かなうさんは空いた片方の手で拳を作り、
"ココが強くなった"と自身の胸をトントンと叩いた。
その1つの仕草で、今の私を認めてくれていることを
言葉にしなくとも伝わってきた。
なんだか、私の胸が熱くなった。
「分かった。うつつちゃんが〜?
そこまで必死にお願いするならぁ〜?」
しかし、熱くなった胸が冷めるのも早かった。
「心肺急速冷却……。やっぱこの人何か変……。」
さっきまでの張り詰めた空気はどこへやら。
ふざけ出すかなうさん。
でも、これは彼女なりのYESなのだろう。
「えー?!2人だけで秘密の作戦会議?!」
僕はー?と実くんは口を膨らませている。
「お前にはAYAKASHIのヤツらがいるだろ。
これはギルド対抗戦へ向けての選手宣誓だよ。」
選手宣誓って絶対今やることじゃないでしょそれ……
かなうさん、嘘が下手すぎる……。
「てか!いつ出れんだよこの舘は!!!」
話題を変えるように、かなうさんは未だ現れない
クエストクリアの文字を探し始めた。
「多分最後の謎があるのかと……!」
彼女と向き合うという、この選択は
きっと間違っていない。
そんな自由なかなうさんの後ろを私も着いて
一緒に次の謎を探した。
長かった舘編終わりました!!!!!
謎解きとか舘のストーリー楽しめましたかね……?
楽しんでいただけてたら嬉しいです( ; ; )!!
明日の投稿は18時です!




