第68話〜とある舘の摩訶不思議⑪〜
「あの……もう攻撃したりしないんですか……?」
仲良くなったと言って、かなうさんはさっきの魔物……
【556】と一緒に長男の部屋を調べている。
「大丈夫。そうだよな?」
〈ハイ、コウゲキシマセン
アナタタチニコウゲキシタラ、カミノテンバツウケマス〉
556も、しないと言うのなら多分大丈夫なのだろう……。
「はっ……やっぱりな。」
かなうさんは、写真アルバムを見て何かの確信を得た。
「何か分かりました?」
「あぁ……鍵の暗号では無いけどな。
これは真実に繋がるピースだ。」
かなうさんはそう言って、私に写真を見せてくれた。
「この子って……。」
その写真に写ってる男の子が2人。
片方はこの部屋の主であった長男。
もう1人は……
「"妹"……のそっくりさん?」
この舘に住んでいた女の子によく似ている
男の子だった。
「妹じゃなくて、正確には"弟"だよ。」
〈カミト、カミノオトウト!〉
私が考えを巡らせている中、556は写真を指さし喜んだ。
「え。この子が弟だと言うなら
どうして、女装なんかを……?」
「それは、私に聞くよりも
"実"に聞いた方が分かるだろ。」
実くん……?
「……。」
立ちながら、俯いた状態の実くん。
私との視線は交わらない。
彼と……この写真の子に一体何の関係が……?
「ズルいよ、かなねぇ。」
震えた声で、実くんは俯いたまま言葉を発した。
「黙っていたのに、なんで分かっちゃったの?
僕喋りすぎた……?」
2人の会話に私はついていけていない。
実くんは何を隠していたの?
というか隠していたことにも私は気付けなかった。
かなうさんは歓迎してくれたけど、
私、探偵は向いてないんじゃ……。
「喋りすぎてなんかいない。
ただ、意識的に避けてるなと感じたから気づいた。」
「そっかぁ……。流石だね。いいよ、話してあげる。」
実くんは、顔を上げて泣きながら笑った。
「僕、学校でイジメられてるって言ったでしょ?
その本当の原因って……僕が……
"女の子のフリ"をしてるからなんだ。」
実くんの口から語られる真実は衝撃だった。
「でも……今は……。」
私は、今は普通に男の子の姿だよね?と口を挟んだ。
彼がここで、女の子のフリをしている姿
私は見たことがなかったから。
「当たり前じゃん……。
この世界では、誰からの柵も無く
自分が1番自分らしくいられる。」
きっと、写真に写ってる弟も僕と同じだと
実くんは言った。
「母さんは女の子が欲しかったんだって。
だから、男の子として生まれてきた僕を
女の子として育ててるんだ。」
与えられるものは可愛い物ばかり。
「しょうがないよ、自分がそういう環境で生まれて
育ったんだもん。我慢するしか無かった。」
でも、その我慢は続かない。
「この子も家族に対して我慢が爆発したんだよ。
気持ちが痛いほどにわかるからさ、クエスト進むうちに
しんどくなって、このクエスト早く終わらないかなーとか
考えてた。」
だからあんなに急ぎ足で……。
「一家心中の犯人は"弟"だと僕は思ってる。」
実くんはその根拠を語った。
「彼は母を殺しても自分が死んでも
後悔が募ると考えた。」
そして、召使いと父の不倫関係も知っていて、
兄の宗教にハマるほどの異様さにも気づいていた。
だから、一家心中という形で取り残された誰かが
苦しまないように終わらせた。
その結果、思いもよらぬ者……
556だけが生き残り、暴走したAIが舘に訪れた人達を
次々と殺してしまった。
「うんうん。」
実くんから語られる物語の真相に、
かなうさんも首を縦に振っている。
「ホラーあるあるだよね。めっちゃ怖いくせして、
その裏に悲しい物語があるの。」
確かに……。
〈コレツカエマスカ?〉
しんみりとした空気をぶち壊すように、
556がある物をかなうさんへ渡した。
「流石機械というか……うん。」
なんとも言えない気持ち。
「実は、現実とどう向き合うつもりだ。
この世界で理想と向き合っていても
現実の問題は解決しないだろう。」
かなうさんは、556から"円盤"を受け取った。
それをクルクルと回すように調べながら
実くんへ問いかけた。
「今日は良くても、じゃあ明日はどうする?
先生が教えてくれない答えは
自分の手で見つけるしかないぞ。」
その問いかけは、私にも通じるところがあった。
私の場合は逆だけど……。
「そうだよね…。
僕、本当は向き合わなきゃいけなかったのに。」
爆発の仕方を間違えたと実くんは言った。
「明日、家帰ったらちゃんと両親に思いをぶつけろ。
ここで吐き出したこと全てだ。」
「うん。かなねぇ、ありがとう。」
頑張ると言って、実くんは零していた涙を拭った。
「さっさとクエスト終わらせよーぜ。
私もそろそろ限界ちゃんよ。」
確かに……異質的な空間にいるせいか
精神も体力もかなり持っていかれている気がする。
「この円盤だけど、リビングに蓄音機あったよな…?」
たしか、あったはず……!!
私は、メモしていた紙を取り出してかなうさんに見せた。
「よし、リビング行くぞ。」
コレを聞きたいとかなうさんは部屋を出る。
その後ろをついて行く556。
「もう機械を手懐けてる……。」
「うつつねぇちゃん、僕達も行こう!」
部屋を出ていく556の背中を見つめていたら、
実くんに一緒に行こうと手を差し出される。
「あ、うん……!」
その手を握り、私達は後を追った。
謎解きに気を取られすぎた私達は忘れていたんだ。
彼らの存在を……
「オーマイガー!!!!!!!」
1階で叫ぶかなうさん。
周りにはあのキョンシー達。
そういえばリビングに閉じ込めていたんだ…。
「かなうさん息!!!」
私が息止めてと言うと、
かなうさんは思い出したかのように
息を止めてリビングの中へと入っていった。
見失ったキョンシーは、556に群がった。
〈イタタタタタ……アタタタタタ!!クスグッタイ!〉
556的にはじゃれ合いだと思ってるらしい。
「今のうちに僕達もリビングに入ろう!」
キョンシーが556に気を取られているうちに私達も
息を止めながらキョンシーを撒き、リビングへと入った。
明日は12時投稿です!




