第67話〜とある舘の摩訶不思議⑩〜
かなう視点です
「さてさて、暴れ放題な状況ってわけか。」
気を利かせた実が、うつつを連れて
部屋を出てくれた。
流石にこの狭い部屋の中じゃ、
うつつ達にも攻撃が当たってしまうかもしれない。
ナイスアシストだよ。
〈アナタカミシンジテナイ……!!!!コロス!!!!〉
怒りを露わにする人型魔物。
いや、人型AIと言ったところか。
コイツからは、魔力が感じられない。
だから実も躊躇したのだろう。
「殺すなんて物騒な。」
できれば瞬殺したいところだが、鬱憤を晴らしたい。
まるで運命がそうすべきだと言うように
私の魔力はカスカスだった。
ここに来てから魔力を使いすぎた。
使えてもあと、1回か2回ってところか……。
私は左手の手袋をそっと撫でた。
「この世界に神がもし存在したとしたら、
それは素晴らしい"ファンタジー"だろうね。」
私は大剣を手に取り、構えた。
〈コロスッコロスッ!!!!〉
言葉を覚えたての赤ちゃんのように同じ言葉を発し、
私に向かって大きな十字架の形をした剣で攻撃してきた。
「剣技も格別に得意じゃなさそうだ。」
振るう剣は的外れ。
簡単に避けられるレベル。
「もっとマトモな太刀筋でやれよ。面白くねぇな!!」
私は、人型AIの周りを囲むように
剣を振りながらグルグルと移動する。
だが、その剣は中々本体には当たらない。
コイツ、一丁前に防御はしやがる。
「お前やっぱ魔物じゃないな。」
コイツの動きはマニュアル通りに動く機械のよう。
〈ワタシカミシンジル、キサマシンジナイッッ!!!〉
この通り、喋れる魔物は"知性"を持つが
コイツは持たない。
中身のないAIとズレた会話をしている気分になる。
「あぁ…反吐が出そう。」
この部屋もそうだ。
部屋自体の仕掛けやディテールは知性を感じるのに…。
どこかでズレている。
それが解決しなくては、コイツを倒すことも出来ない。
万一、倒した暁に舘が爆発でもしたりしたら……?
考えたくないけど、そういうパターンもある。
下手に攻撃したくないなぁ。
ああぁぁ!!!
こんな時、機械に詳しいグラさんがいれば
サクッとこんなやつどうとでも出来るんだけどね!!
キンッ!!カキンッ__!!
この狭い空間で金属音がひたすら鳴り響く。
何か、部屋にヒントは……。
魔物の攻撃を剣で受けながら、
私は同時に部屋の探索もする。
〈カミシンジナイヤツ、コロスッコロスコロスコロス!!!!!〉
「……ったく!!しつこい男はモテねぇぞ!!」
神を"信じてない"と言ったことから執拗に執着される。
やはり、コイツの暴走を止めるには
こちらも思想でぶつけるしかないのか…?
本棚にあった"対話の本"が目に入る。
「お前、名前は…?」
せめて単純な会話でも出来ればと思い
私は襲ってくるコイツに話しかける。
〈ナマエ、"カミ"ニアタエラレタ!!!
スバラシイバンゴウ!!!〉
「お……?」
手応えあり。
このレベルくらいの会話ができるなら、
私のもう1つの固有スキル【月ノ誘引】の
効果が期待できるかも。
私は、暴走したソイツを止めるべく
剣技を交わしながらもソイツと"目を合わせ"
質問を繰り返した。
「その番号はなんて言う?誰から貰った?」
〈ゴーゴーロク!!!カミッテイッテルデショォォォ!!〉
556ね…。
あくまで、神の"本当の名前"は
彼のデータに記録されていないようだ。
「一家心中は556の仕業か?」
〈イッカシンジュウ……?カミヲシンジナイヤツ……?〉
一旦整理しよう。
556はきっと、この部屋の主である長男が作った
最高傑作の"友達"ってところだろう。
この時代から機械の技術に長けているやつは珍しい。
ましてやAIなんて発展したばかりのはずだ。
相当な知性の持ち主だと、彼の本棚が物語っている。
宗教本の他に対話の本、機械に関する本や
趣味であろう星占いの本が綺麗に並べてある。
しかし、どういうことだろうか。
学校の教材は見当たらない。
原因は分からないが、引きこもりをしていると見えた。
「知ってるか?人間って太陽の光を浴びないと
どんなに賢くても心も頭も腐るんだよ。」
〈…………ニンゲン……クサル……。
カミハ、クサリマセン。クサッテマセン。〉
556のその返しが、もう答えだった。
彼は引きこもり、556を造り
出来上がった友達に自身の思想を押し付けた。
それを素直に受け取った556は
言わば友達というよりは、長男の信者第1号。
机の上にある勧誘ポスターは自作のようだ。
引きこもっていたからこそ、
この信仰は外には出ていない。
2人だけの寂しい信仰だった。
「あんたの神は、殺された。そうだな?」
〈コロサレタ…………コロサレタコロサレタコロサレタコロサレタッ!!!!!カミハコロサレタッ!!!!!!!
カミノカゾクモ!!!ミンナ、ドクヲノミコンダ!!
ゴーゴーロク、ドクヲノマセタヤツヲコロシタ!!!〉
狂喜乱舞に"真実"を語る556。
神の家族……毒……なるほど。
それで、コイツは"次々と舘に訪れた家族"を
復讐心で殺した。
この舘に訪れた人々が亡くなったのは
556の仕業だということが分かった。
じゃあ、毒を飲ませたのは……?
「剣をおろせ。」
カンッ__カラン__
556は、私の"命令"で剣を離して床に落とした。
「お前は神を殺した奴が憎いか?」
〈ニクイ……!!!〉
歯を食いしばり、怒る556。
「なら、お前は私の仲間になるべきだ。
私もさっき居た2人も神を殺していない。
ここで戦うだけ無駄だ……手を組もう。」
私は、556の目を見つめる。
「私達なら、お前の憎い相手に会わせることが出来る。」
着いてくるか?と私は556に手を伸ばした。
お互い戦うべき相手ではない。
目的は一緒なのだから。
〈ソレシンジテモイイ……?〉
「ああ。誰がなんて言ったって、
私は天才であり"神も恐れる"存在だからな!!」
ハハハと私は高らかに笑った。
〈カミヨリスゴイ……?!!!アナタスゴイ!!〉
556は私の手を握った。
「純粋でよろしい。」
やはり、そこには生物の温かさは無く冷たかった。
556と肩を組んで部屋から出たところを
うつつと実に驚かれたのは言うまででもない。
これが、コミュニケーション。
心を通わせる魔法だよ。




