第4話〜異常発生〜
やってしまった。
いや、やってしまったと言うよりは
私の不運が招いてしまったに近い。
魔物の巣窟に気付かず、足を踏み込んでしまった私は今、大量の魔物に追いかけられている。
「ちょー!!!!?!
笑ってないで助けてくださいよ!!!!!
3時間近く楽しくノリノリで
"マジカルバナナ"した仲じゃないですか!!」
「ひぃ〜!あはははは!」
魔物に追われながら、
頭の中ではさっきの時間がフラッシュバックする。
追いかけられる3時間前__
暇つぶしに遊んだマジカルバナナが
バカみたいに盛り上がった。
「バナナと言ったらゴリラ」から
「ゴリラといえばドラミング」まで派生してたあの時間…
そして今、私が追いかけられている様子を
かなうさんは面白がっている。許せない。
「てか、魔物出ないって言ってたじゃないですか!!」
「私は"今は"出ない。そう言った。」
「……つまり」
かなうさんは大剣を手に持ち
大量の魔物に向かい、遠方からひと振りした。
「雷縛輪」
電気が走る大きな輪が現れ、その輪が魔物達を拘束する。
「ひとまずこれで大丈夫でしょ。
いやー、不運ったね。」
「不運ったって……。」
不思議な言葉を作るかなうさん。
電撃の輪で捕らえられた魔物達はミーミーと鳴いている。
「私達は転移魔法を使った裏ルートから
ココに来てるわけだけども…本来この場所は
集会所から転送してもらうのが普通。
さっきも言ったが、ココは
クエストくらいでしか来ないマップだ。」
そういえば……そう言っていた。
魔物が発生したってことを考えると……
「他に人が来たっぽいな。」
顔が強ばり、警戒した様子のかなうさん。
「しかも、こんな大量のS級魔物狩りのクエストを
するヤツなんて…相当クレイジーな野郎か
高ランク帯だぜ。」
かなうさんの目が怪しく光る。
私にも、さっきの攻撃が感電したのだろうか。
その様子に、背中がゾクッとした。
「うつつ、隠れてろ。」
「……は、はい!」
S級……高ランク帯……ってことは
めちゃくちゃ強いってことだよね!?
大富豪で2の上を行くJOKER的な……!!?
少しずつ状況を理解し始めた私は、身の危険を感じ
かなうさんの言う通り、草の茂みに隠れた。
ザッザッ__
「あれー?おかしいな。
魔物1匹も見当たらへんのやけど。」
「不思議ですね。魔物大量発生クエストを
申込んだはずなのですが……。」
「受け付けの嬢ちゃん、たまにポンするからなぁ。」
「そんなことより僕もう腹ぺこだよ〜!!
ここ食べ物も無くてホントやだ!」
あれは……紫雨さん?
昨夜と違って傘はさしていない…。
他の二方は、紫雨さんのギルドの人だろうか。
「皆さんお揃いでご機嫌よう。」
大剣をブンブンと片手で振り回しながら
挨拶をしているかなうさん。
普通に危ないんだけど。
「あ!ガラクタの姉ちゃん!」
「おぅおぅ、よく喋るベイビーだな。」
背が低い……小学生?のような男の子が
かなうさんに抱きつく。
かなうさんも満更でも無さそう…。
振り回していた剣を直ぐにしまっていた。
「かなう様いらしたのですね。」
これまた綺麗で巫女服のような着物を着た
美人のお姉さんが、かなうさんへ話しかける。
「ちょっと探し物をね。」
「かなう、また転移魔法使ったん?」
「別になんだって良いじゃないか。
おかげであと1時間半は帰れなくて惨めだよ。」
そんな惨めなかなうさんが面白いのか
紫雨さんはふーんとニヤついた。
「かなうがギルドに入ってくれるんやったら、
俺が転移魔法使うのを考えてもええけどな。」
「は?つべこべ言わず転移魔法使えよ。かなう様だぞ。」
かなうさん口わるっ!!!
本当に苦手なんだなぁ……。
「今来たばかりやで!誰が使うかあほ!
それに俺が使わんでも、クエストクリア後に帰れるわ!」
おぉ……売り言葉に買い言葉というか……。
紫雨さんも中々強烈だった。
「えぇー!姉ちゃんギルドに入ってよ〜!」
「くっ……そんな目で見るな…!」
あ、ショタに弱いぞこの人。
「かなう様……!」
「ま、まゆり……。好き。」
「あらぁ♡」
女性にはもっと弱かった。
「ま、まゆりは好きだけど!!
ギルドに入るのは……ごめん。」
ハッと我に返ったかなうさんは、お誘いを断った。
「だめかぁ。コレで98回目か。」
「あと2回で、リーダーの振られた回数
100を記念しますね。」
いくらなんでも勧誘しつこすぎるだろ……!
自宅に来る宗教勧誘より粘り強い……。
ミーミー__
「ひゃっ?!」
雷縛輪の効果が弱まったのか、逃げた一匹が私の元へと来ていた。
見た目は猫のような、毛玉のような真っ黒い生き物でこれがS級魔物とは思えないほど可愛らしい。
「あれぇ?昨日の嬢ちゃんやないの。」
「あちゃー。出てきちゃったか。」
ミーミーミーミー
拘束が解け、ワラワラと襲いに来る魔物達。
非力な私は急いで、かなうさんの元へ行き後ろに隠れた。
「なんだ、クエスト間違えてなかったわ。」
殺る気マンマンの紫雨さんは抜刀した。
「あーあ。逃げようかな。」
私の獲物じゃないしねと、
かなうさんは少しずつ後ろに下がっていた。
「血の円舞」
紫雨さんが敵の群れに突っ込んだ。
かなうさんは魔法がメインの剣技だったけど、
紫雨さんは違う。
剣が踊っている……!
クルクルと舞いながら大量の魔物を狩っていく姿は
まるでショーのパフォーマンスを見ているようだ。
ミ゙ー!!
「……。」
少し興奮気味の私に対して、
かなうさんはとても冷めた目をしていた。
「かなうさん、顔色悪いですよ。」
「朝ごはん食べてないからかなー?問題ないよ。」
ニコリと笑っているがその本心は見えない。
「戻ったら美味しいご飯食べなきゃね。」
ギーーギーー!!!!
魔物達の声色が変化した。
姿もどんどん大きくなってるような……。
「やっと正体を表したようやな。」
紫雨さんが舌舐りをする。
前髪でどんな表情をしているのかわからないけど、
見えている口元だけでも狩りを楽しんでいるように
感じた。
ギィィィィィ゙ィ゙ィ゙!!!
「え……?さっきの魔物は……。」
魔物たちの断末魔が不協和音のように重なっていく。
大量の可愛い魔物は1つの巨大な姿に変化した。
1つの身体に猫頭が3つ、背中には翼のようなもの。
シルエットのように実体のない
真っ黒な霧の姿をしていて、
明らかな強者感が漂っていた。
「こんなの無理ゲーでしょ!!!!」
私は叫んだ。
それはまるで巨大な闇。
空をも覆い尽くす暗黒さで、
ドラゴンとはまた違った恐怖を感じた。
「S級魔物夜猫冥神_
普段は可愛らしい見た目で群れていますが、
イタズラ好きで人を見つけると追いかけ回します。
その際に攻撃を与えるとこのような
三頭の禍々しい獣になります。」
近くにいたまゆりさんが、
図鑑レベルで完璧に魔物の詳細を教えてくれた。
「うっ…。」
頬を掠めた黒い霧からツンと嫌な臭いを感じる。
この臭い……苦手かも。
例えるなら人口密度の高い電車で複数の女性の香水と、
汗の臭いが混ざりあってキツく感じるアレ。
「はぁ……。だから攻撃しなかったのに。」
こうなる事を知っていたかなうさんは
頭を抱え、ため息をついている。
こういう理由を知っていて
拘束した後も攻撃しなかったのなら、
私を助けに動くまで時間がかかったのとか
ここまでのかなうさんの行動全てに納得できる。
「キミ達は、好んでこんな面倒臭い魔物を
狩りに来てるんだもんな…。」
解せないと、まだ頭を抱えている。
「まぁ、うつつ見てなよ。こいつら強いからさ。」
かなうさんの言葉を信用して、
私は彼らの戦いを見守ることにした。
「あれ、かなうさんは戦わないんですか?」
「私は痛めつけるのあまり好きじゃないからね。」
昨日1人でドラゴンをボコボコにしてた癖に…。
なんて思った言葉は心に留めておいた。




