第63話〜とある舘の摩訶不思議⑥〜
「2人とも遅い!!」
2階の廊下で私とかなうさんを待っていた実くん。
「ごめんごめん。で?部屋はどうよ。」
かなうさんがキョロキョロと2階の様子を見回しながら、
探索したのかと実くんに聞いた。
「部屋は、さっき見つけた間取りの通りの数。
この鍵はここの部屋だと思う。」
そう言って実くんが指さした部屋は、
初代の夫婦が使用していた大きな部屋だった。
「開けるね。」
実くんは、先程入手したアンティーク調の鍵を
鍵穴に深く刺し、ゆっくりと回す。
ガチャ__
「全員頭を下げろ…!!!!」
扉が開いた瞬間、かなうさんは叫びながら
私と実くんの頭を上から掴み、床へと強く押し込んだ。
「わっ!!」
力で強引にしゃがませられた私と実くん。
ヒュッ__
頭上を何かが通る音が聞こえた。
「な、何ですか!急に!!」
「向こうの壁見てみろよ。」
かなうさんが指したのは、この部屋の扉と向かい合う壁。
「ナイフ……っ……?!」
壁には1本のナイフが突き刺さっていた。
丁度、胸くらいの高さの位置。
頭上を通ったあの音って……
ゾッとした。
もしあのまま、立っていたら確実に仕留められていた。
「初見じゃこのトラップに気付くの無理だろ。」
しかし、扉を開く前から
壁にはナイフの刺し跡が複数箇所あった。
かなうさんは、それに気づき
この部屋にはトラップがあると見通していたと言う。
「それなら開ける前に言ってくださいよ!!」
「いや、もう実が開けてたから間に合わないと思って。」
ごめーんね♡とウインクを決めながら謝るかなうさん。
顔が良いから余計腹立つ……!!!
「かなねぇ……この部屋ヤバそう……。」
トラップが仕掛けられてた部屋を見た実くんが、
ヤバいと忠告する。
一般的な寝室部屋にある家具に混ざり、
異質的で普通の家庭には無いような
拷問器具が置かれていた。
「この夫婦はSMプレイが趣味だったのか?」
子供もいるってのに悪趣味だね。と言って
かなうさんは部屋の探索を始めた。
「大丈夫ですか……またトラップとかあったり……。」
探索を始めるかなうさんと実くんだったが、
私はトラップに怖気付いて中々部屋の物に触れられない。
「大丈夫。罠には必ず仕掛けがある。
それが見つかれば対策できるし怖いことは無い。」
かなうさんはベッドの上にあった縄を手に取った。
「例えば……このクローゼットとか怪しいよね。」
そう言って、クローゼットの取っ手部分に
縄を縛りつけた。
「実、防御壁の準備よろしく。」
「任せて!土鍋壁!!」
任せてと言った実くんは、私達ではなく
クローゼットを囲むように防御壁を作った。
「引っ張るぞ……3、2、1。」
ガコンッ__
かなうさんは縄を使い、クローゼットの扉を開けた。
ガルゥゥウウウウ……
クローゼットの扉が開いた瞬間に
物凄い勢いで飛びかかってきた魔物。
その魔物は、羊の仮面を被った狼のような姿で
なんとも言えない…不気味さがあった。
「あぁ!!もぅ!実が選んだ2倍速のせいで
魔物の対処がめんどくせぇよ!!!」
縄から手を離し、背中の大剣に手をかけるかなうさん。
ガァルルゥゥウ……ゥア゙!!
防御壁を壊した魔物は、体を揺らしながら
機敏に部屋中を駆け回った。
「雷縛輪……!」
かなうさんは魔物を拘束しようと雷縛輪を使う。
フンッ__
「ちっ……効かないのかよ…。」
しかし、すぐに拘束の輪は解かれてしまった。
「これはどうかな……!仔羊鉄拳!!」
「馬鹿っ!無闇に近づくな!!」
かなうさんが実くんに向かって叫んだが、遅かった。
実くんが魔物へ近づき、手刀を入れようとしたところ
魔物によって攻撃を阻止される。
ワルィゴォォオ……オシォキィ゙ィ゙イ゙イ゙!!!!
まるで、なまはげのような叫び。
魔物が、そのまま実くんを捕まえ攻撃態勢に入る。
「ど、どうすれば……!」
戦闘に不慣れなせいで、
私は何も出来ずにあたふたとしていた。
でも、この状況は初めてじゃない……。
あの時は"捕まってた側"だったけど。
「これでも喰らえ……!!!!」
私は、魔物に向かって自分の杖を投げ飛ばした。
ドスッ__
それは、見事に魔物へと当たった。
ガルゥゥ……?!
「うつつねぇちゃん……!!!」
杖が当たった隙に、実くんは魔物の手から逃れ
攻撃を回避した。
一か八かが当たって良かった……!
「うつつナイス……!!!」
英断だと、かなうさんに褒められる。
しかし、まだ魔物は倒れていない。
その上、私は杖を手放してしまった。
「こりゃ連携だな。実、私が足止めしてる間に
魔物の仮面を目掛けて、刀で切ってくれないか?」
「おっけー!」
あとは戦闘慣れしている2人に任せよう。
「落雷断……っ!!!」
かなうさんは、魔物の懐へと入り込んだ。
そして、魔物に向かって落ちてきた雷と大剣で
串刺しにし、動きを止めた。
「実、今だ……!!」
「足の速さは負けるかもしれないけど、
ジャンプの高さなら僕の方が上だよっ!!!」
かなうさんの合図で、
実くんはかなうさんの背中を飛び台にして
宙に舞った状態から仮面を目掛けて刀を振り下ろした。
「必殺・白根研磨……!!」
ガッ………ァ゙ァ゙ァ!!!
実くんの秋刀魚ソードで真っ二つに割れた羊の仮面。
仮面が急所だったのか、
みるみると魔物の体が消えていく。
「あ、ごめん……うつつ。
魔物への回復頼んでたのに倒しちゃった。」
「いや、良いですよ。私も杖持ってなかったので…。」
私が投げたことによって床へと転がった杖。
そこには哀愁が漂っていた。




