第57話〜怨霊クエスト〜
賑やかになるとは思ったが……
「どうしてこうなった……。」
廃墟の舘をバックに、目の前で浮遊している魔物。
私は、子供がみたら泣くレベルで強面な
フランス人形の魔物と対面していた。
遡ること数時間前__
「かなねぇ。僕、みんなでクエスト行きたい!」
そのみんなの中に私も含まれていた。
「私は……遠慮したい…ナ……。」
かなうさんも実くんも強いし、
私が居なくても勝てるでしょ。
「うつつも必要だろ。
回復魔法使えるのマジでデカいからな?」
「うつつねぇちゃん回復魔法使えるの?!」
凄い!と言って、実くんが私の腕を掴んだ。
「そうだよ〜このお姉ちゃんはな、ヒーラー様なんだ。」
「ヒーラー?!めっちゃレア職業!!」
へぇ、ヒーラーってレアなんだ……。
「そういや、期間限定の来てた気がするな。」
「期間限定?楽しそう……!!」
実くんは目をキラキラさせている。
けど、私はやはり乗り気では無い。
「実くん、ホントにやるの……?」
「次いつ2人とクエスト行けるか分からないもん。」
実くんは、可愛く口を尖らせ
彼のチャームポイントでもあるマロ眉を下げて
頼み込んでいる。
そんな顔して、そんな可愛いことを言われたら……
断れるわけが無いですよねぇ……。
分かってる。分かってるんだ……!!
その顔が計算されたあざとさで作られてることくらい!
でも、そのあざとさに大人が勝てるわけない……。
そうして連れてこられた期間限定という名のクエスト。
「で、これはどういうことですか……?」
イヒヒヒヒヒッ__
不気味に笑うフランス人形。
参加したクエストがまさかホラー系だとは
思ってもいなかった。
「めちゃめちゃ呪われそう。」
倒しても倒さなくても呪われそう……。
まぁ……私はすでに、不運体質という
呪われてるような身なんですけど。
これも魔物?作り物じゃなくて……?
私は、フランス人形に近づきマジマジと
ディテールを観察した。
「本物だ。」
魔物は普段のクエスト通り、
お化け屋敷特有の作り物というわけでは無さそう。
「よく冷静に言えるな!!?」
実くんの後ろで、子鹿のように震えているかなうさん。
怖いの苦手なら、なんでこのクエストを選んだの。
アホなのか?
「距離取った方がいい。攻撃されるから…!」
かなうさんの言葉にハッとして、
近づいていたフランス人形から私は離れた。
この時期になると毎年あるらしい。
所謂、夏の風物詩__
討伐出来るタイプのお化け屋敷だという。
確かに、昼間にクエストをしているというのに
辺りは夜かと思う程に暗い。
「怖いならリタイアします?」
「別に怖くないし!ビビってるだけだ…!」
「かなねぇ……動きにくいよ……。」
実くんでさえ平気なのに、情けないなぁ。
それでも意地はあるのだろう
リタイアはしないと言った。
「私が先頭で行きますから、援護してくださいね!」
私は杖を握りしめて、再び一歩ずつ
フランス人形へと近づく。
「僕も戦うよ!」
タンクだもん!と実くんも前へ来た。
「実……うつつ……。」
後ろでキュンキュンするな。
最高にダサいよ、かなうさん……。
ヴァッ……ッ!!!
フランス人形が鋭い歯をチラつかせながら、
私達に向かって、口から紫色の禍々しい火の玉を放った。
どどど、どう避ければ?!
「ぐつぐつ!土鍋壁!!!」
実くんのユニークな技名によって現れた
ドーム型の巨大な防御壁。
「このまま炒めて〜!青椒肉絲の反逆〜!!!」
実くんは、防御壁へと吸収させた攻撃を
カウンターとして魔物にダメージを負わせる。
休む暇もない攻撃の連携は、まさに提供スピードが速い
中華料理屋さんにいる気分を味わった。
イヒッ……ヒヒヒッ……
かなり攻撃が効いているようだったが、
まだ倒せてはいない。
私も何か力になりたい。
このクエストでヒーラーとしても一歩成長出来れば……!
「天使の加護!」
私は、味方の防御力が一定時間上がる魔法をかけた。
「うつつ……いつの間に?」
かなうさんは少し驚いた様子だった。
「私だって、伊達にゆる〜く平和に
過ごしてきたわけじゃないんですよ?」
店番中や空いた時間に、かなうさんから貰った
魔法書を読んで少しずつ使えそうな魔法を試していた。
実践的に使うのは初めてだけど……。
「それでもやっぱり攻撃魔法は出来なかった。
だから、全力でサポートさせて欲しいです。」
なんて前線を張りながら、サポートするヒーラーは
私くらいだろうか……。
でも、今日たまたま
いつも頼りになるかなうさんが情けなかったおかげで
自分が少し、前を向いて成長出来た気がする。
「うつつねぇちゃんかっこいい…!
それじゃあ、この敵の〆は僕がいただくよー!」
そう言って、実くんは
秋刀魚の形をした剣を取り出して
フランス人形を一刀両断した。
剣を振った時に、秋刀魚の目が光って
なんかシュールだった。
その武器どこで手に入れたの……?
面白い武器もあるんだね……。
「ごちそうさまでした!」
実くんは、剣をしまい魔物に向かって
手を合わせながらぺこりと笑顔でお辞儀をした。
「次行くよ〜。」
そして、実くんは
さらに先を行こうと足を進める。
「え?待って、まだ続くの?」
私は、呆然としているかなうさんを引き連れながら
実くんに聞いた。
「うん?だってお化け屋敷だよ?」
どうやら、舘に入って謎を解かなければ
クリアにならないらしい。
「まじか……。」
そういえば、いつも魔物を倒した時に出る
クエストクリアの演出もない。
あのフランス人形は前座だったってこと……?
「毎年ステージが違うからワクワクする!」
去年は、廃墟遊園地だったと実くんは言う。
無駄に凝ってるってことは、それだけ
この期間限定クエストがユーザーの中で
好評なんだろうなぁ…。
バサバサバサッ__
コウモリのような何かが木々の隙間から通り抜けた。
「ひいっ!!」
私にしがみつく、かなうさん。
このビビリ加減も異常なものだ。
大人1人を抱えて進む足取りはかなり重かった。
次話からしばらくの間、舘の謎解きクエスト編へと入ります!
もう少し、話の構成を練りつつズレが無いように書き上げたいので、次回更新は1週間後の25日(水)に2話ずつ投稿していく形となります。
待たせてしまうのですが、その分クオリティの高い話になっていますのでぜひ期待してお待ちいただければと思います……!




