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現実的ファンタジア〜綺麗で完璧な世界で、私たちは闇と向き合う〜  作者: KAИАU
第1章【ようこそ"綺麗"で"嘘"だらけの世界へ】
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第1話〜悪夢〜

深夜23時__


「15連勤目、終わった……。」


消灯されたオフィス。

光るのは私のモニターだけ。

デスクには空の栄養ドリンクと、残業で削れた命の山。


バタリとデスクに倒れ込んだ。


「今日も頑張ったな私。

ほんと生きてるだけでも偉いってのに。」


男に二言はなしという言葉があるように、

まさに社畜に休みなし。


この会社に入社してから確実にスキルは上がったが、

その分視力は落ちた気がする。

あと寿命も確実に削れている。


……代償が重い。


「美味しいお肉を買って帰ろう。」


荷物をまとめて、私は職場を後にした。




「ただいまぁ……。」

 

フラッ__


「へぶっ」


靴を脱いだ瞬間、

バランスを崩して顔面から倒れ込んだ。


「……うう……いたいぃ。」


あぁ、床が冷たい。

もう、このまま眠りたい気分だ。


転んだ時に落としたレジ袋から、

半額シールの貼られた国産黒毛和牛が覗いてる。


「肉、食べなきゃ。」


私は起き上がり、リビングにあるリモコンを手に取り

テレビをつけた。


《連日、行方不明者が多発していると話題です。

昨日もまた1人の男性が行方不明になりました。》


深夜のニュース番組が流れ始める。


行方不明が多発だなんて……物騒な。


「あ、お風呂も洗わなきゃ…。」


風呂場へ向かった私は湯船の栓を抜き、残り湯を捨てる。

 

「……あれ?」


ボトルを振ると洗剤が無くなっていた。


嘘でしょ……。


「スーパー寄ったのにぃぃ!!!」


お湯も半分以上抜けてしまい、

追い炊きも出来ない状況であった。


あー、泣きたい。

諦めて今日はシャワーにしよう。


そうしてキッチンへと戻った私は、疲れきった体で

フライパンに牛脂を転がして肉を焼いた。


《続いて明日の天気です。》


もはやラジオのような扱いになっているテレビ。

もう画面なんて見ていない。


そんなことすら気にしなくなった私は、

焼いた肉を皿に盛り付けてリビングへと運ぶ。


「いただきます…!」


疲れた身体には肉。肉、肉、肉。

流石、黒毛和牛。美味しすぎるわ。


白米もあれば完璧だったけど、

価格高騰で中々買えず…。


最後に炊飯器触ったのいつだっけ?

もう2年はお米食べてないかも。


《それでは皆さん、おやすみなさい。》


ニュースが終わり、キャスターの人達が

おやすみと番組を締める。


深夜0時半か。

私もこのくらいの時間に寝れたらいいのにな……。


ここ最近は、仕事のストレスからなのか

毎日悪夢に(うな)され身体も休まらずヘトヘトだ。


おまけに眠りに入るまでに時間がかかるせいで、

睡眠薬が手放せない。


明日で16連勤。

それでも折れずに働いてる私は、たぶん偉い。


そうやって自分を励ますことで

私はメンタルを保っていた。


ギュルルルル__


「……うっ。急にお腹が。」

物凄く苦しい……。


食器を片付けていると、急に腹部が痛んだ。

ええ、それはとてもあの感覚に似ている。


「どうしていつもこうなんだか……。」


私は急いでトイレへ駆け込みお腹を押える。


さっき食べたお肉の消費期限を確認したら

今日の18時までの廃棄商品だったのだ。


たったの6時間で、腹痛に繋がるものなのか……。


半額で油断した……!!くっ……!!


ジャー__


長い格闘の末、

用を済ませた私は手を洗い、スマホを取り出す。

そして"いつものように"呟いた。



[今日スーパーでラッキーって思って買った半額の

黒毛和牛、食べた後に消費期限切れてるの気付いて

無事お腹壊した]



投稿っと。


早速いいねやリプライが届く


[限界社畜B子さん今日も不運すぎるwww]

[お腹大丈夫ですか?B子さんお大事に……]


こんな投稿を見て何が楽しいのか。

気付いたらフォロワーの数が2万5千人を超えていた。


きっと、人の不幸を見て自分はこの人よりも

幸せな人生を送っている……そう思うことで

不満や悩みを解消してるんだろうなって思ったら

なんだか虚しくなった。


それでもこんなくだらない呟きが辞められないのは

私自身もまたこの投稿を見知らぬ人に見てもらうことで

普段の生活からは得られない承認欲求を

満たしているから。


どうしようもない現代の魔物(モンスター)だよ。


ピコン__


突然、見知らぬ人からDMにメッセージが届いた。


[高難易度クエストに参加して

高レア資材と報酬をGETしよう!

新規ユーザーは高レア衣装も手に入る!

クエスト参加はこちらから↓↓↓

https://phantomstory.ssrank-quest]


いかにも怪しさ満載。詐欺の臭いがプンプンする。


最近増えたよね、こういうメール。

うんざりしちゃう。


「私は騙されませんよ〜。」


無視無視と言って

追加で来た別の通知のバーを消そうとした時、

指が滑り、リンクを踏んでしまった。


「……あ。」



「誤タップ…ッ!!バカバカ私の指ぃ!!」



__やってしまった。


そう思った時には、大きなドラゴンの顔が

私の目の前にあった。


猫のように鋭く私を見つめる瞳は

今から獲物を捕食するというオーラが漂っている。


少しでも動けば噛みちぎられそうだ。



「……これ死ぬやつ?」


手に持っていたスマホが落ちる。

 

武器とか何も持ってないんですけどー!!!

何?!最近のゲームリアルに作られてて怖すぎ!


いや、違う!違うよ。


これきっと夢だ。

そう、今までで1番の悪夢。とんでもない夢だ。


そうと分かれば何も怖くないや。

食われる瞬間、夢から覚めるやつでしょ。



どうにか自分を落ち着かせようと試みたけれど、

ドラゴンの口から伝わる熱気や

異様に肌寒い空気感、そして血腥(ちなまぐさ)い臭いが

妙にリアルで気分が悪くなってくる。


__吐きそうだ。



こういうのなんて言うんだっけ?

夢の中で、夢だとわかっている現象……。


ああ、そうだ。明晰夢だ。


「どうかこの悪夢が覚めますように……!!」

 

私は胸の前で手を組み、祈りのポーズをした。


ドラゴンが大きく口を開け、

私を飲み込もうとする。


ドラゴンに遭遇なんて私の人生で

今までにない経験。


何も出来ず、

ただ目を瞑って痛みに耐えるしかなかった。


風が吹き、木々が揺らいだ。

 

「ふふ、新しい冒険者かな?」


綺麗な女の人の声が、

私に向かって優しくそう言った。


私の他にも人がいて安心した…。

そう思って目を開けると__


声の主は、私のすぐ側に生えている

大きな木の上に立っていた。


凍印術アイシクル・エンチャント!!!!」


彼女は木の上から飛び降りた。

いや、ただ飛び降りただけじゃない。

 

大きな剣を背中に抱えながら宙で一回転という、

人間離れしたアクロバティックな動きに目を疑った。


「うそ………。」

 

一回転した彼女は、そのままドラゴンの頭を目掛けて

剣を抜き大きく振るうと、あの強そうなドラゴンが

一瞬にして氷漬けにされた。


ここまでの動きの流れ、体感3秒……。


「初めまして。」


地面に着地した彼女は、

氷漬けドラゴンを後ろに私へ挨拶をした。


この人、ドラゴンをバックに凄い堂々としている……。


「私は、帝月(みかづき)かなう。

通りすがりの"マジシャン"だよ。」


パチンと彼女が指を鳴らす。


その音と共に、氷漬けにされたドラゴンが

氷の粒となり粉々に舞い上がった。


「綺麗…………。」


彼女の綺麗て美しい水色の髪と相まって

舞い上がる氷の粒はとても幻想的だった。


「怪我は無い?」

「は、はい……!」


この人本当にマジシャンなのではないかと思うほど

さっきまでの恐怖も幻想的な景色も

__全てがイリュージョンのように見えた。

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こんにちは! Xから来ました。 疲れてて風呂に入れなくてもちゃんと自炊する主人公、えらいですね。 日常描写は感情移入しやすく、導入としてお上手だと思います。 冒頭「男に二言はない」という言葉の引用があ…
Xからきました! 主人公の日常パートが共感しやすくて良かったです 改行や句読点の使い方が独特ですね 執筆、頑張ってください!
Xの企画より参りました 第1話を拝読し、その完成度とテンポに驚かされました。主人公のB子さん(仮名)による疲労困憊な日常描写が、あまりにも生々しく胸に迫り、「これは私かもしれない……」と錯覚するほど…
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