第30話〜団結〜
「これ美味しいです…!」
あまりの美味しさに私は思わず、興奮気味に声を出した。
「だろ?沢山食べな。」
これもあれもと、
かなうさんが私のお皿に料理を盛り付けていく。
「あわわ…そんなにいっぱい……落ちちゃいます!!」
結局、創立パーティに参加することになった私。
冷めてしまわないうちにと、皆で食事をしていた。
「そんな頬袋いっぱいになるまで食い張って、
美味い美味い言うてたらマスターも喜ぶやろなぁ。」
グラさんがリスみたいやでと
私の頬をツンツンとつついた。
「マスターってS.D.Dのですか?」
「せやで。」
通りで美味いわけだ。
「ちなみにこれはなんていう料理なんですか?」
「それは、マッシュミートパイやな。
うつつさん、お目が高い。
それお店の看板メニューやで。」
看板メニュー……!!
サクサクのパイ生地の中には、トマトベースで煮込まれた
甘めの挽肉に、パンチの効いた黒胡椒。
それから、ホクホクで優しい味わいの
マッシュポテトが敷き詰められている。
「私、最後の晩餐はこれがいい……。」
それくらい美味しい。
「その気持ち分かります……。」
霧香さんもどうやら同じ気持ちのようだ。
「霧香のは味が少し違うだろ。」
かなうさんは霧香さんのパイを一口食べた。
「うっ……からぁ〜〜!!」
辛い辛いと舌を出し顔を真っ赤にしている。
自業自得というか……
この前の、苦丁茶サイダーの時の
紫雨さんと行動が全く一緒……。
「ほら、牛乳飲んでください。」
「がぅ!」
「私にゲロ吐かせる気か?」
牛乳を持ってきた米丸さん。
しかし、かなうさんはそれを頑なに受け取らなかった。
牛乳嫌いなんだ……。
「おぇっ……それを近くに寄せるな!!」
近寄る牛乳に嗚咽するかなうさん。
「匂いがダメなんだよぉぉ!!!!」
甲冑で表情は分からないが、
米丸さんきっとかなうさんの反応面白がってるわコレ。
「任せろかなう。俺が飲む。」
小さい舌を出し、ぺろぺろと
グラスに入った牛乳を飲むわっさん。
「がぁうがぁう!」
その様子を虎太朗が応援している。
絶対底の方届かなそうで可愛いし、
虎太朗可愛すぎでしょ。
何この癒し魔物コンビ推せるが???
私は、チラリと霧香さんの方を見た。
「辛いのがお好きなんですね…。」
気付いたら、霧香さんのお皿は真っ赤だった。
「はい。辛いものと高価なものは特に。」
うん分かる。お金はみんな好きだよね。
私も半分くらい……お金のメリットを感じて
このゲームで生活する事を選んだようなものだし……。
「あの……レフはわっさんみたいに喋るんですか…?」
ああぁ、何聞いてるんだろう私……。
仲良くなりたいだけなのに、会話が下手すぎる!!
初心者過ぎる切り込み方……!
「…?ずっと喋ってますよ。」
「え。」
約3秒の沈黙。
ああ、会話が終わってしまった。
だって、私にはレフの声が聞こえてないもの……。
「うつつさん、どんまい。」
何かを察されたグラさんに肩をポンポンと叩かれた。
「そういえば、うつつ。」
さっきまで騒いでいたはずのかなうさん。
骨付きチキンを頬張りながら私を呼んだ。
「鳥……食べるのはいけるんだ。」
「鳥って言わないで、チキンって言って。」
どっちも一緒だろ。
どうでも良過ぎるこだわり……。
「それより…私に何か用が?」
「そうそう。気になったことがあって。」
気になったことってなんだろう。
「あーでも、今はやっぱ良いかも。」
かなうさんは、チキンを骨の軟骨まで綺麗に食べ終わると
骨用の皿にそれを入れた。
そう言われると一番気になるヤツ……!!
くっ……焦らす……。
「あ、そうだ。もっと大事なこと思い出した。」
今の話とは違う内容なのだろうか?
「7月のギルド対抗戦。探偵事務所で組んで出るぞ。」
とんでもない爆弾発言に、
私以外の全員が同じ反応をした。
「「「え。」」」
探偵事務所のメンバーじゃない私には
関係の無い話だと思いながら聞き流す。
「うつつ。お前もだ。」
「え。」
突然の巻き込み。
「無理無理無理!!!!」
「もう申し込んだから。」
まだ武器もないし職業も決まってないのに?!
何言ってんの!!?
この人、ホントぶっ飛んでるって……。
「ギルド対抗戦は5人1組が条件だからね。」
頼んだよとウインクをするかなうさん。
「お姉様……あの…私も?」
霧香さんが心配そうな顔でかなうさんに、
しがみついていた。
「うん。」
「oh……Jesus……。」
霧香さんは膝から崩れ落ちた。
そう言えばずっと引き篭もってたんだよね……。
「私もクエストとか全然行ってへんのに……。」
「俺は……まぁ。なんとか。」
米丸さん以外、この状況絶望的じゃないのコレ。
「まぁまぁ、続きを聞き給え。」
なぜそんなお殿様みたいな口調…。
「私も普段は参加しないんだけど、今年の対抗戦は
激アツでさぁ。優勝ギルドはなんと……!!!」
普段参加しないっていうかなうさんが
参加したくなる理由……。
「賞金500万ウェルス!!!
5人で割っても100万ウェルス!!!1000万円だ!!」
1000万円?!!!!!!
金が嫌いな人間なんていない。
「「「「やる。」」」」
その莫大な金額に
全員が初めて一致団結した瞬間だった。




